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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1234082 |
審判番号 | 不服2010-2472 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-04 |
確定日 | 2011-03-17 |
事件の表示 | 特願2005- 25433「半導体発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-340765〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年2月1日(優先権主張平成16年4月30日)の出願であって、平成21年8月28日に手続補正がなされたところ、同年10月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月4日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成22年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年2月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成22年2月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を以下のように補正して新たに補正後の請求項1とすることを含むものである。 「 第1導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた第2導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる活性層と を備え、 前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく、且つ、前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面が{11-24}面を含み、 前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有し、前記井戸層の厚さが3nmよりも大きいことを特徴とする、半導体発光素子。」 本件補正は、補正前(平成21年8月28日付け手続補正後のもの)の請求項1において、「前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面が{11-24}面を含み」との限定を行うものであるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 2 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物記載の発明 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-183460号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 ・・・ 【請求項3】 GaNまたはAlNの(0001)面より0.05度以上角度の異なる面方位の基板上に堆積された半導体素子。 【請求項4】 基板と光デバイスの発光層との間に量子井戸構造を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体素子。」 イ 「【発明の属する技術分野】本発明は半導体レーザなどの半導体素子に関し、特に基板と結晶の格子定数、屈折率等の特性が大幅に異なる材料を発光層や能動領域に用いた半導体素子に関する。」 ウ 「【0020】本発明の半導体素子は、AlNまたはGaNのようなウルツァイト構造の結晶を用いてGaNまたはAlNの(0001)面より0.05度以上角度の異なる面方位の基板上に形成されていてもよい。・・・特に基板がAlNまたはGaNであり、(h m-h-m n)(審決注:「(h m -h-m n)」の誤りと認める。)(|n/h|または|n/m|の一方が3以上または1/3以下、nは0ではない、hとmの一方は0でない、h,m,nは整数)面基板上に形成されていてもよい。この場合just面だけではなく微傾斜した面でも良い。・・・特に(1 1 -2 n)でnが4以上の偶数であることが実施形態として望ましい。この場合just面だけではなく(1 1 -2 n)から微傾斜した面でももちろん良い。・・・」 エ 「【0051】・・・ (実施例6)図10は本発明の第5の実施例の半導体光素子に関わる概略説明図である。1001-1014は(1 1 -2 4)面方位のAlN基板(1001)、Alnバッファー層(1002)、GaNバッファー層(1003)、AlGaN/GaN超格子バッファー層(1004)、n-GaNバッファー層(1005)、n-GaInNバッファー層(1006)、n-GaNコンタクト層(1007)、n-AlGaNクラッド層(1008)、GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)、p-AlGaNクラッド層(1010)、p-GaNコンタクト層(1011)、絶縁膜(1012)、p電極(1013)、n電極(1014)である。ここでAlnとGaNとは2%の格子歪みがあるが、超格子バッファー層(1004)を用いることで量子井戸内の転位密度を減らすことができた。また(1 1 -2 4)面を用いることでpのドーピング効率が(0001)面に対してGaNの場合で40%AlGaNの場合で20%向上することができた。また基板がAlNであるので熱の放散の効果が大きく最高発振温度がサファイア基板の場合の80Cから120Cまで上がった。 【0052】本実施例ではAlN基板を用いたが、基板としてSiCやGaNを用いてもよいことは言うまでもない。SiCの場合(0001)面から(11-20)方向に略13度傾ければ2-HのSiCで(11-24)方向となるので、その上には(11-24)面のGaNが成長できるようになった。」 オ 上記エを踏まえて図10をみると、 (ア)(1 1 -2 4)面方位のAlN基板(1001)上に、AlNバッファー層(1002)、GaNバッファー層(1003)、AlGaN/GaN超格子バッファー層(1004)、n-GaNバッファー層(1005)、n-GaInNバッファー層(1006)、n-GaNコンタクト層(1007)、n-AlGaNクラッド層(1008)、GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)、p-AlGaNクラッド層(1010)、p-GaNコンタクト層(1011)が順次積層されること、 (イ)p-GaNコンタクト層(1011)と接してp電極(1013)が形成され、n-GaNコンタクト層(1007)と接してn電極(1014)が形成されること、 がみて取れる。 上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている、と認められる。 「(1 1 -2 4)面方位のAlN基板(1001)上に、AlNバッファー層(1002)、GaNバッファー層(1003)、AlGaN/GaN超格子バッファー層(1004)、n-GaNバッファー層(1005)、n-GaInNバッファー層(1006)、n-GaNコンタクト層(1007)、n-AlGaNクラッド層(1008)、GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)、p-AlGaNクラッド層(1010)、p-GaNコンタクト層(1011)が順次積層され、前記p-GaNコンタクト層(1011)と接してp電極(1013)が形成され、前記n-GaNコンタクト層(1007)と接してn電極(1014)が形成される、半導体発光素子。」 (2)対比、判断 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「n-AlGaNクラッド層(1008)」、「p-AlGaNクラッド層(1010)」、「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」及び「半導体発光素子」は、それぞれ、本願補正発明の「第1導電型窒化物半導体層」、「(前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた)第2導電型窒化物半導体層」、「(前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる)活性層」及び「半導体発光素子」に相当する。 イ 引用発明1の「半導体発光素子」は、「(1 1 -2 4)面方位のAlN基板(1001)上に、・・・n-AlGaNクラッド層(1008)、GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)、p-AlGaNクラッド層(1010)・・・が順次積層され」るものであり、「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」の「n-AlGaNクラッド層(1008)」側の界面に直交する軸、及び「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」の「p-AlGaNクラッド層(1010)」側の界面に直交する軸のそれぞれと前記「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」におけるc軸とのなす角度はゼロより大きく、且つ、「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」の「n-AlGaNクラッド層(1008)」側の界面及び「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」の「p-AlGaNクラッド層(1010)」側の界面が(1 1 -2 4)面を含んでいる、といえるから、引用発明1は、本願補正発明の「前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく、且つ、前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面が{11-24}面を含み」との事項を備える。 ウ 引用発明1の「GaN/GaInNの量子井戸発光層(1009)」は、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層を含む量子井戸構造を有するものであるといえるから、引用発明1は、本願補正発明の「前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有し」との事項を備える。 したがって、両者は、 「 第1導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた第2導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる活性層と を備え、 前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく、且つ、前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面が{11-24}面を含み、 前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有する、半導体発光素子。」 である点で一致し、次の点で相違する。 井戸層の厚さが、本願補正発明では、3nmよりも大きいのに対し、引用発明1では、その具体的な値が不明である点(以下「相違点1」という。)。 上記相違点1につき検討する。 窒化物半導体基板上に、井戸層と該井戸層を挟む障壁層とからなる活性層を形成する半導体発光素子において、該井戸層の膜厚を40Å(=4nm)ないし70Å(=7nm)となすものは本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、特開2002-84038号公報(【0033】?【0040】)、特開2003-115642号公報(【0175】?【0188】)、特開2004-87908号公報(【0021】?【0023】)、特開2001-332817号公報(【0014】)参照。)、引用発明1において、井戸層の厚さを4ないし7nm程度の、3nmよりも大きいものとして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明1及び周知技術から予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年8月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「 第1導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた第2導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる活性層と を備え、 前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく、 前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有し、前記井戸層の厚さが3nmよりも大きいことを特徴とする、半導体発光素子。」(以下「本願発明」という。) 2 刊行物記載の発明 原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-223743号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 GaNからなる基板の上面に窒化物系半導体からなる発光層を形成してなる窒化物系半導体発光素子において、前記基板の上面がC面に対して傾斜していることを特徴とする窒化物系半導体発光素子。 【請求項2】 前記基板の上面の傾斜角度が、0.03°以上、10°以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。 【請求項3】 前記基板の上面の傾斜角度が、0.05°以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体発光素子。 ・・・」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はGaN等の窒化物系の半導体材料よりなる半導体レーザ、発光ダイオード等の窒化物系半導体発光素子及び窒化物半導体の成長方法に関する。」 ウ 「【0021】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。 【0022】先ず、図1に示すように、n-GaNからなる基板1のC面から所定角度θ傾斜した面上に、MOCVD法によりSiドープのn-GaNからなるバッファ層2を形成した。尚、この時の成長温度は1050℃である。その上にSiドープのn-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのn-クラッド層3、多重量子井戸構造の活性層4、Mgドープのp-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのp-クラッド層5、Mgドープのp-GaNからなる厚さ0.1μmのp-コンタクト層6をMOCVD法により順に形成し、更に、GaN基板1の下面にはn-電極7を形成し、p-コンタクト層6上にp-電極8を形成することにより発光ダイオードを作成した。 【0023】バッファ層2は厚さ1μm、Siドープのキャリア濃度が5×10^(18)cm^(-3)である。 【0024】また、活性層4は、GaNからなる厚さ0.1μmの一対の光ガイド層の間に、In_(0.02)Ga_(0.98)Nからなる厚さ60Åの障壁層と、In_(0.10)Ga_(0.90)Nからなる厚さ30Åの井戸層とが交互に形成された多重量子井戸構造である。尚、障壁層の層数は4層、井戸層の層数は3層であり、両側の層は障壁層である。」 エ 「【0028】この図2より判るように、GaNからなる基板の上面をC面から傾斜させ、その傾斜した上面上に形成された発光素子は、C面上に形成した発光素子(傾斜角度θ=0°)に比べ、p-コンタクト層6表面における格子欠陥密度は低下し、寿命が長くなる。尚、p-コンタクト層6表面における格子欠陥密度の低下は、基板1上に形成されるバッファ層2、n-クラッド層3、活性層4、p-クラッド層5の結晶性が良化したためであることは明らかである。」 上記摘記事項の記載を総合すると、引用刊行物2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている、と認められる。 「n-GaNからなる基板1のC面から所定角度θ傾斜した面上に、MOCVD法によりSiドープのn-GaNからなるバッファ層2を形成し、その上にSiドープのn-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのn-クラッド層3、多重量子井戸構造の活性層4、Mgドープのp-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのp-クラッド層5、Mgドープのp-GaNからなる厚さ0.1μmのp-コンタクト層6をMOCVD法により順に形成し、更に、GaN基板1の下面にはn-電極7を形成し、p-コンタクト層6上にp-電極8を形成することにより作成した発光ダイオードであって、 活性層4は、GaNからなる厚さ0.1μmの一対の光ガイド層の間に、In_(0.02)Ga_(0.98)Nからなる厚さ60Åの障壁層と、In_(0.10)Ga_(0.90)Nからなる厚さ30Åの井戸層とが交互に形成された多重量子井戸構造である、発光ダイオード。」 3 対比、判断 本願発明と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「Siドープのn-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのn-クラッド層3」、「Mgドープのp-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのp-クラッド層5」、「多重量子井戸構造の活性層4」及び「発光ダイオード」は、それぞれ、本願補正発明の「第1導電型窒化物半導体層」、「(前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた)第2導電型窒化物半導体層」、「(前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる)活性層」及び「半導体発光素子」に相当する。 イ 引用発明2の「発光ダイオード」は、「n-GaNからなる基板1のC面から所定角度θ傾斜した面上に、MOCVD法によりSiドープのn-GaNからなるバッファ層2を形成し、その上にSiドープのn-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのn-クラッド層3、多重量子井戸構造の活性層4、Mgドープのp-Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなる厚さ0.8μmのp-クラッド層5・・・をMOCVD法により順に形成」するものであり、「多重量子井戸構造の活性層4」の「n-クラッド層3」側の界面に直交する軸、及び「多重量子井戸構造の活性層4」の「p-クラッド層5」側の界面に直交する軸のそれぞれと前記「多重量子井戸構造の活性層4」におけるc軸とのなす角度はゼロより大きいといえるから、引用発明2は、本願発明の「前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく」との事項を備える。 ウ 引用発明2の「多重量子井戸構造の活性層4」は、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層を含む量子井戸構造を有するものであるといえるから、引用発明2は、本願発明の「前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有し」との事項を備える。 したがって、両者は、 「 第1導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層上に設けられた第2導電型窒化物半導体層と、 前記第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間に設けられており、窒化物からなる活性層と を備え、 前記活性層の前記第1導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸、及び前記活性層の前記第2導電型窒化物半導体層側の界面に直交する軸のそれぞれと前記活性層におけるc軸とのなす角度がゼロより大きく、 前記活性層が、井戸層と、該井戸層を挟んで該井戸層に電位障壁を提供するバリア層とを含む量子井戸構造を有する、半導体発光素子。」 である点で一致し、次の点で相違する。 井戸層の厚さが、本願発明では、3nmよりも大きいのに対し、引用発明2では、30Å(=3nm)である点(以下「相違点2」という。)。 上記相違点2につき検討する。 窒化物半導体基板上に、井戸層と該井戸層を挟む障壁層とからなる活性層を形成する半導体発光素子において、該井戸層の膜厚を40Å(=4nm)ないし70Å(=7nm)となすものは本願の優先日時点で周知であるから(必要なら、特開2002-84038号公報(【0033】?【0040】)、特開2003-115642号公報(【0175】?【0188】)、特開2004-87908号公報(【0021】?【0023】)、特開2001-332817号公報(【0014】)参照。)、引用発明2において、井戸層の厚さを4ないし7nm程度の、3nmよりも大きいものとして、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明2及び周知技術から予測し得る程度のものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-12 |
結審通知日 | 2011-01-18 |
審決日 | 2011-01-31 |
出願番号 | 特願2005-25433(P2005-25433) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 敏史、吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 杉山 輝和 |
発明の名称 | 半導体発光素子 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 近藤 伊知良 |
代理人 | 寺崎 史朗 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |