ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J |
---|---|
管理番号 | 1234208 |
審判番号 | 不服2008-29292 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-11-17 |
確定日 | 2011-03-22 |
事件の表示 | 特願2005-252739「衛星DMB受信装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 81176〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年8月31日(パリ条約による優先権主張2004年9月8日、大韓民国)の出願であって、平成20年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年7月18日付けで手続補正されたが、同年8月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月17日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年12月11日付けで手続補正されたものである。 第2 本願発明 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月11日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「少なくとも1つの放送チャネルのウォルシュコードをCDM復調するCDM復調器と、 前記CDM復調器から伝送された1つよりも多くのチャネルの各々の放送データを復号化し、使用者が視聴しようとする放送チャネルを選択する放送データチャネル復号部と を備える、衛星DMB受信装置であって、 前記放送チャネルは、 使用者により選択される放送チャネルと、 前記選択された放送チャネルの上位放送チャネルと、 前記選択された放送チャネルの下位放送チャネルと を含み、 前記放送データチャネル復号部は、 1つよりも多くのチャネルの各々の放送データを復号化する第1の復号部と、 前記第1の復号部により復号化された放送チャネルの各々の放送チャネルの放送データのうち前記使用者により選択された放送チャネルの放送データを選択して、前記選択された放送データを復号化する選択部と を備え、 前記第1の復号部は、前記選択された放送チャネル、前記上位放送チャネルおよび前記下位放送チャネルの放送データを同時にビットデインターリーブし、各チャネルに従ったビットデインターリーバで構成される、装置。」 第3 引用発明 原審の拒絶理由に引用された特開2000-115003号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば携帯受信端末や車載受信端末等の移動体を対象とするデジタル放送サービスを受信するデジタル放送受信装置に関し、選局等による放送サービスの切替時に発生する空白時間を低減できるようにしたものである。」(2頁1欄) ロ.「【0018】実施の形態1.図1は本発明の実施の形態1の移動体デジタル放送受信装置を示すブロック構成図である。図において、1は受信アンテナ、2はチューナ、3は復調回路、4はデインタリーブ回路、5は選択回路、6は誤り訂正復号回路、7は多重分離回路、8は情報源復号回路、9は増幅回路、10は出力部であり、4?10により放送チャンネル系統が構成される。復調回路3の放送チャンネル系統の出力とデインタリーブ回路4はそれぞれ複数存在する。11はデインタリーブ回路、12は誤り訂正復号回路、13は制御回路、14は選局操作スイッチであり、11?14によりパイロットチャンネルの複合及び受信装置の操作系が構成される。 【0019】本実施の形態1においては、受信アンテナ1により受信された放送信号はチューナ2に入力され変調信号が出力される。チューナ2から出力される変調信号は復調回路3に入力され、予め決められた数(複数)の選択された放送チャンネルが復調される。復調回路3の複数の放送チャンネル出力は、それぞれデインタリーブ回路4に入力されてインタリーブ処理から復元される。それぞれのデインタリーブ回路4の出力は選択回路5に入力される。一方、復調回路3ではパイロットチャンネルも復調されて出力され、デインタリーブ回路11に入力されてインタリーブ処理から復元される。デインタリーブ回路11の出力は誤り訂正復号回路12に入力され誤り訂正復号処理が施される。誤り訂正復号回路12の出力は制御回路13に入力され、選局操作スイッチ14による選局に基づいて、復調回路3及び選択回路5を制御する信号を発生する。 復調回路3では、全ての放送チャンネルを復調する場合を除いては、制御回路13からの制御信号に基づいて放送チャンネルを復調する。選択回路5では、制御回路13からの制御信号に基づき、複数のデインタリーブ回路4の出力信号から選択を行う。選択回路5出力の信号は誤り訂正復号回路6に入力され誤り訂正復号処理が施される。誤り訂正復号回路6出力は多重分離回路7に入力され、多重化された信号が分離される。多重分離回路7出力は情報源復号回路8に入力され、復号されて伝送側の情報源と同じ信号、元の音声/画像信号が復元される。情報源復号回路8の出力は増幅回路9で増幅され、出力部10から出力される。 【0020】従来例と同様に、送信側で例えばMPEG2で複数の情報源をそれぞれ符号化し、各情報源に対応するパケットをトランスポート・ストリームの形で多重化する場合には、多重分離回路7では多重されたパケットを分離し、情報源復号回路8ではMPEG2の復号化を行うことになる。 【0021】図2は本実施の形態1における復調回路3の構成の一例、符号分割多重方式を用いた場合を示すブロック構成図である。同図中、101,103,113,123は乗算器、102は第1の逆拡散符号発生器1、104は第2aの逆拡散符号発生器、114は第2bの逆拡散符号発生器、124は第2cの逆拡散符号発生器、105,115,125,106はQPSK(4相位相変調)復調回路である。図に示すように放送チャンネル系としては複数の組み合わせを用意して、複数の復調出力を出す。」(4頁5?6欄) ハ.「【0024】上述したように、本実施の形態1の受信装置においては、予め複数の放送チャンネルについてデインタリーブまでの処理を行っておき、それらデインタリーブ後の信号を受信装置における選局に基づいて選択し、以後の処理を行い元の信号に復元するよう構成したので、瞬断の対策としてのインタリーブの深さに起因する選局時の空白時間を大幅に短縮できる効果がある。」(5頁7欄) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0018】、【0019】、【0021】の記載、及び図1によれば、移動体デジタル放送受信装置は、放送チャンネルを符号分割多重方式で復調する復調回路(3)と、復調回路(3)から伝送された複数のチャンネルの各々の放送データを復号化し、使用者が視聴しようとする放送チャンネルを選択するデインタリーブ回路(4)、選択回路(5)及び誤り訂正復号回路(6)とを備えている。 また、前述の放送チャンネルは、複数の放送チャンネルを含んでいる。 また、前述のデインタリーブ回路(4)、選択回路(5)及び誤り訂正復号回路(6)は、複数のチャンネルの各々の放送データを復号化するデインタリーブ回路(4)と、デインタリーブ回路(4)により復号化された放送チャンネルの各々の放送チャンネルの放送データのうち一つの放送データを選択して、選択された放送データを復号化する選択回路(5)とを備えている。 また、前述のデインタリーブ回路(4)は、複数のチャンネルをデインターリーブし、各チャンネルに従ったデインターリーバで構成されている。 したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「放送チャンネルを符号分割多重方式で復調する復調回路(3)と、 前記復調回路(3)から伝送された複数のチャンネルの各々の放送データを復号化し、使用者が視聴しようとする放送チャンネルを選択するデインタリーブ回路(4)、選択回路(5)及び誤り訂正復号回路(6)と を備える、移動体デジタル放送受信装置であって、 前記放送チャンネルは、 複数の放送チャンネル を含み、 前記デインタリーブ回路(4)、選択回路(5)及び誤り訂正復号回路(6)は、 複数のチャンネルの各々の放送データを復号化するデインタリーブ回路(4)と、 前記デインタリーブ回路(4)により復号化された放送チャンネルの各々の放送チャンネルの放送データのうち一つの放送データを選択して、前記選択された放送データを復号化する選択回路(5)と を備え、 前記デインタリーブ回路(4)は、複数のチャンネルをデインターリーブし、各チャンネルに従ったデンターリーバで構成される、装置。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「放送チャンネル」、「符号分割多重方式で復調する復調回路(3)」、「チャンネル」、「デインタリーブ回路(4)、選択回路(5)及び誤り訂正復号回路(6)」、及び「デインタリーブ回路(4)」は、その機能において、本願発明の「放送チャネル」、「CDM復調するCDM復調器」、「チャネル」、「放送データチャネル復号部」、及び「第1の復号部」にそれぞれ相当する。 b.引用発明の「複数の放送チャンネル」と、本願発明の「使用者により選択される放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの上位放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの下位放送チャネル」は、上記a.の対比を考慮すると、いずれも、「特定の放送チャネル」という点で一致する。 c.引用発明の「一つの放送データ」と、本願発明の「前記使用者により選択された放送チャネルの放送データ」とは、いずれも、「特定の放送データ」という点で一致する。 d.引用発明の「複数のチャンネルをデインターリーブ」と、本願発明の「前記選択された放送チャネル、前記上位放送チャネルおよび前記下位放送チャネルの放送データを同時にビットデインターリーブ」とは、上記a.の対比を考慮すると、いずれも、「特定のデインターリーブ」という点で一致する。 e.引用発明の「移動体デジタル放送受信装置」は、音声又は画像放送を受信するから、DMB(Digital Multimedia Broadcasting)受信装置の一種である。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「少なくとも1つの放送チャネルをCDM復調するCDM復調器と、 前記CDM復調器から伝送された1つよりも多くのチャネルの各々の放送データを復号化し、使用者が視聴しようとする放送チャネルを選択する放送データチャネル復号部と を備える、DMB受信装置であって、 前記放送チャネルは、 特定の放送チャネル を含み、 前記放送データチャネル復号部は、 1つよりも多くのチャネルの各々の放送データを復号化する第1の復号部と、 前記第1の復号部により復号化された放送チャネルの各々の放送チャネルの放送データのうち特定の放送データを選択して、前記選択された放送データを復号化する選択部と を備え、 前記第1の復号部は、特定のデインターリーブし、各チャネルに従ったデインターリーバで構成される、装置。」 <相違点1> 「CDM復調」に関し、 本願発明は、放送チャネル「のウォルシュコード」をCDM復調するのに対し、引用発明は、「放送チャンネルを符号分割多重方式で復調」(放送チャネルをCDM復調)するものの、「ウォルシュコード」を用いるか不明な点。 <相違点2> 「DMB受信装置」の用途に関し、 本願発明は、「衛星」DMB受信装置であるのに対し、引用発明は、「衛星」の用途でない点。 <相違点3> 「特定の放送チャネル」に関し、 本願発明は、「使用者により選択される放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの上位放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの下位放送チャネル」とであるのに対し、引用発明は、「複数の放送チャンネル」である点。 <相違点4> 「特定の放送データ」に関し、 本願発明は、「前記使用者により選択された放送チャネルの放送データ」であるのに対し、引用発明は、「一つの放送データ」である点。 <相違点5> 「特定のデインターリーブ」に関し、 本願発明は、「前記選択された放送チャネル、前記上位放送チャネルおよび前記下位放送チャネルの放送データを同時にビットデインターリーブ」するのに対し、引用発明は、「複数のチャンネルをデインターリーブ」する点。 <相違点6> 「デインターリーバ」に関し、 本願発明は、「ビット」デインターリーバであるのに対し、引用発明は、「ビット」デインターリーバであるか不明な点。 第5 判断 そこで、まず、上記相違点1及び2について検討する。 DMB受信装置において、ウォルシュコードを用いた衛星DMB受信装置は、例えば、ETRI,‘Satellite Mobile Service Initiatives in Korea’,2004年6月6日,pp. 1-36,URL,http://www.isi-initiative.eu.org/getASMSdoc.php?id=20(6、7頁)に開示されているように周知であるから、本願発明のように「放送チャネル『のウォルシュコード』をCDM復調」すること(相違点1)、「『衛星』DMB受信装置」とすること(相違点2)は当業者が容易に成し得ることである。 次に、上記相違点3について検討する。 引用発明は、「複数の放送チャンネル」であるところ、使用者が一つの放送チャンネルを選択すれば、当然、選択された放送チャンネルの上位が、上位放送チャンネルに、選択された放送チャンネルの下位が、下位放送チャンネルになることは明らかであるから、本願発明のように「使用者により選択される放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの上位放送チャネルと、前記選択された放送チャネルの下位放送チャネル」とすることは当業者が容易に成し得ることである。 次に、上記相違点4について検討する。 上記相違点3についての検討で述べたように、使用者により選択された放送チャネルを、「前記」で引用すれば、本願発明のように「前記使用者により選択された放送チャネルの放送データ」となることは当然のことである。 次に、上記相違点5及び6について検討する。 通信一般において、ビットデインターリーブすることは周知であるから、本願発明のように「『ビット』デインターリーバ」とすること(相違点6)は当業者が容易に成し得ることである。 加えて、上記相違点3についての検討、及び引用例の上記摘記事項ハ.における「予め複数の放送チャンネルについてデインタリーブまでの処理を行っておき、それらデインタリーブ後の信号を受信装置における選局に基づいて選択し、以後の処理を行い元の信号に復元するよう構成した」との記載を考慮すれば、本願発明のように「前記選択された放送チャネル、前記上位放送チャネルおよび前記下位放送チャネルの放送データを同時にビットデインターリーブ」すること(相違点5)は当業者が容易に成し得ることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-27 |
結審通知日 | 2010-10-28 |
審決日 | 2010-11-10 |
出願番号 | 特願2005-252739(P2005-252739) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 洋、菊地 陽一 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 高野 洋 |
発明の名称 | 衛星DMB受信装置及び方法 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |