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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1234367
審判番号 不服2008-19728  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-04 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 特願2002-548737「導電性基板と多層体との接続」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月13日国際公開、WO02/47099、平成16年 5月20日国内公表、特表2004-515084〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2001年12月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2000年12月9日 オーストラリア)を国際出願日とする出願であって、平成19年3月16日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月4日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされ、同年9月2日付けで手続補正書が提出されたものである。

[2]平成20年9月2日付け手続補正についての補正却下の決定
<結論>
平成20年9月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1、11-19、24及び
31において、絶縁体について、さらに「グロメットの形状」であり、「前記グロメットは前記第2のプラスチック層から形成され、かつ前記第1の層の成分を含ま」ないことを限定するとともに、請求項4、5、20、21を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の本願請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。
(2-1)本願補正発明
本件補正後の本願請求項に係る発明は、平成20年9月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。

「【請求項1】導電性基板と多層体との接続であって、前記多層体は、
前記基板に固定される第1のプラスチック層と、
前記第1のプラスチック層に隣接して配置され、かつ前記基板から間隔をあけられる導電層とを有し、前記第1のプラスチック層および前記導電層の両方は前記基板に重なる共通の端縁で終端し、前記多層体はさらに、
前記導電層と前記第1のプラスチック層との間に介在する第2のプラスチック層を有し、前記接続はグロメットの形状の絶縁体を含み、前記グロメットは前記第2のプラスチック層から一体的に形成され、かつ前記第1の層の成分を含まず、かつ前記グロメットは前記端縁の上に延在して前記基板から前記導電層を電気的に絶縁する、接続。」(以下、「本願補正発明1」という。)

(2-2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された国際公開第99/40634号(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図5により説明する。まず
図5によりポリマー電池装置50について説明する。
ポリマー電池装置50は、電池ケース51と、電池ケース51内に収納されたポリマー電池50aと、ポリマー電池50aに接続されるとともに電池ケース51から外方へ突出する一対のタブ59,60とを備えている。
このうち電池ケース51は後述する積層体シートをヒートシールすることにより形成される。
………
さらに正極55側のタブ59はAl、SUS製(ステンレススチール)の金属タブとなっており、負極56側のタブ60はCu、Ni、SUS製の金属タブとなっている。」(第3頁第7-22行)

(1b)また、図5には、電池ケース51を構成する積層体シートの共通する端縁の間から、ポリマー電池50aのタブ59、60が電池ケース51の外方へ突出する様子が示されている。

(1c)「「第6の実施の形態
次に図21乃至図23により、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図6(「第6」の誤記)の実施の形態は電池ケース用シートであって、該シートが下記(1)?(3)のいずれかの構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の金属箔層の一方の面、または両方の面に隣接して積層されるポリオレフィン系樹脂層の厚さが、10?100μmである点が異なるのみであり、他は第1の実施の形態と略同一である。
………
(2)第1の基材フィルム層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)
(3)第1の基材フィルム層/ポリオレフィン系樹脂層/金属箔層/ポリオレフィン系樹脂層/第3の基材フィルム層/熱接着性樹脂層(最内層)
………
また、金属箔層とその両側の基材フィルム層との間には、そのいずれか一方、または両方の間にポリオレフィン系樹脂層が、10?100μmの厚さで金属箔層と隣接するように積層されている。このポリオレフィン系樹脂は、熱接着性がよく、また、融点もしくは軟化点が比較的低く熱流動性に優れている。
従って、積層シートの端縁部をヒートシールして電池ケースを作成する際、特に、その開口部をシールする際、その端部を含む領域を、やや強目の条件(高い温度や圧力)でヒートシールすることにより、このポリオレフィン系樹脂層は、熱流動性がよく、且つ十分な厚さを有するため、加熱軟化されて端面に押し出され、そこに露出している金属箔層が覆い隠される。
その結果、内部から外側に延長されるタブ59、60が折れ曲がった場合でも、タブ58、59は、シートの金属箔層と接触することがなく、安全性が向上される。
そして、シートの最内層には熱接着性樹脂層が積層されているので、袋状の電池ケースの形成、および、その内部に電池の構成材料を収納した後の開口部の封止に際して、ヒートシールにより容易に熱接着させ、密封することができる。」(第59頁第15行-第60頁第20行)

(1d)また、図22には、外側から順に、第1の基材フィルム層、金属箔層、ポリオレフィン系樹脂層、第3の基材フィルム層、熱接着性樹脂層(最内層)が積層された積層シート、図23には、外側から順に、第1の基材フィルム層、ポリオレフィン系樹脂層、金属箔層、ポリオレフィン系樹脂層、第3の基材フィルム層、熱接着性樹脂層(最内層)が積層された積層シートが示されている。

よって、上記記載事項(1a)-(1d)によれば、引用刊行物1には、
「金属タブと積層シートとの接続であって、前記積層シートは、
前記金属タブに固定される熱接着性樹脂層と、
前記熱接着性樹脂層に隣接して配置され、かつ前記金属タブから間隔をあけられる金属箔層とを有し、前記熱接着性樹脂層および前記金属箔層の両方は前記金属タブに重なる共通の端縁で終端し、前記積層シートはさらに、
前記金属箔層と前記熱接着性樹脂層との間に介在するポリオレフィン系樹脂層を有し、前記接続は前記ポリオレフィン系樹脂層から一体的に形成され、かつ前記金属タブから前記金属箔層を電気的に絶縁する絶縁体を含む、接続。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2-3)対比・判断
本願補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「金属タブ」、「積層シート」、「熱接着性樹脂層」、「金属箔層」、「ポリオレフィン系樹脂層」は、それぞれ、本願発明の「導電性基板」、「多層体」、「第1のプラスチック層」、「導電層」、「第2のプラスチック層」に相当する。
よって、両者は
「導電性基板と多層体との接続であって、前記多層体は、
前記基板に固定される第1のプラスチック層と、
前記第1のプラスチック層に隣接して配置され、かつ前記基板から間隔をあけられる導電層とを有し、前記第1のプラスチック層および前記導電層の両方は前記基板に重なる共通の端縁で終端し、前記多層体はさらに、
前記導電層と前記第1のプラスチック層との間に介在する第2のプラスチック層を有し、前記接続は前記第2のプラスチック層から一体的に形成され、かつ前記基板から前記導電層を電気的に絶縁する絶縁体を含む、接続。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明1では、絶縁体がグロメットの形状であり、かつ前記グロメットは第1の層の成分を含まず、かつ前記グロメットは前記端縁の上に延在しているのに対し、引用発明では、そのような限定がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された特開昭59-103280号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(2a)「第4図に示すように外装フィルム7の開口部に露出する端子板2と、開口部の内周縁に露出するフィルムのアルミニウム層7bとの距離が短いため、端子とアルミニウム層とが電気的に導通することがある。」(第1頁右欄第6-10行)

(2b)「第1図は本発明の実施例における扁平型電池の全体構成を示す縦断面図、…第3図は第1図の3(算用数字にて表記した)部分の拡大断面図である。……
7は負極側の外装フィルムで、負極端子板2を露出させるための開口8を有し、その内面には端子板2…が熱接着されている。
……
外装フィルム7…は……電気絶縁性、耐電解液性に優れ、しかも熱接着性を有する合成樹脂からなる内層7a…と、蒸着アルミニウム層7b…と、ポリエステル樹脂などの合成樹脂からなる外層7c…の3層を積層したものから構成されている。
……
12は外装フィルム7の内層7aを開口8の内周縁に向けて膨出させた膨出部…である。
これらの膨出部は、例えば外装フィルムへ端子板を熱接着する際、開口の周縁部近傍を加圧することにより、容易に形成することができる。
……
本発明の電池は上記のようにアルミニウム層の上下両面に樹脂層を設けた外装フィルムの端子板を露出させる開口部において、内側の樹脂層を開口部の内周縁へ膨出させたので、この膨出によりアルミニウム層の切断面が覆われるとともに、…端子板とアルミニウム層との距離が、第4図に示す従来例に比べて長くなり、両者の電気的導通による不都合をなくすことができる。
」(第2頁左上欄第11行-左下欄第16行)

(2c)また、第3図、第4図には、扁平型電池における開口部及びその周辺の様子を示す拡大断面図が示されており、第3図には、電気絶縁性、熱接着性を有する合成樹脂からなる内層が開口部内周縁に膨出して一体的に形成された膨出部が示されており、該膨出部はグロメット形状になっている。

上記記載事項(2a)-(2c)によれば、端子板(「導電性基板」に相当)と外装フィルム(「多層体」に相当)との接続において、前記多層体における内層、及び内層と隣接するアルミニウム層の共通する端縁上に延在して前記端子板とアルミニウム層を電気的に絶縁する絶縁体を形成し、かつ前記絶縁体をグロメットの形状で、かつ多層体と一体的なものとすることは、本願優先権主張日前に公知であったといえる。

よって、引用発明における絶縁体の形状は明らかでないにせよ、上記公知技術を勘案すれば、加熱軟化して端縁から押し出されるポリオレフィン系樹脂の量を調整する等により、熱接着性樹脂層および金属箔層の共通する端縁上に延在させ、かつグロメット形状の絶縁体とすることは当業者が容易になしえたことであり、その際、熱接着性樹脂に対するポリオレフィン系樹脂の比率を調整する等により、前記絶縁体に熱接着性樹脂成分が含まれないようにすることも設計的事項であったといえる。

そして、本願補正発明1が引用刊行物1及び2の記載からは予想しえない効果を奏するものとも認められない。
なお、審判請求人は、審判請求書(平成20年9月9日付け手続補正書)において、引用文献2(上記「引用刊行物1」)では、図22を参照すると、積層体は第3基材フィルムとして融点の高いPETを有しており、グロメットを形成するために第3基材フィルム1cを加熱することは不可能であること、また、この積層体の最内側に熱接着性樹脂層が必ず形成されるから、端面に押し出された溶融物にはポリオレフィン系樹脂層6aおよび熱接着性樹脂層3が含まれてしまい、「グロメットは第2のプラスチック層から一体的に形成され、かつ第1の層の成分を含まない。」という構成要件を開示していない旨主張している。
しかしながら、PET層を必ず溶融させなくとも、上述のとおり、加熱軟化して押し出されるポリオレフィン系樹脂の量を多くする等調整して、端縁に延在させ、かつグロメット形状とすることは可能であるし、また、本願補正発明1においても、積層体における第1の層4は、「端子2と多層体3との結合を改良するもの」ためのものであり(本願明細書【0069】)、「接着性を有する融点の低いポリマー」(【請求項6】)であることから、引用発明の最内層と相違するとはいえず、第1の層(最内側の層)に関して、引用刊行物1と本願補正発明1とが相違することを前提とした主張についても採用することはできない。

よって、本願補正発明1は、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(2-4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明
平成20年9月2日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1-35に係る発明は、平成19年9月20日付け手続補正により補正された請求項1-35に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】導電性基板と多層体との接続であって、前記多層体は、
前記基板に固定される第1のプラスチック層と、
前記第1のプラスチック層に隣接して配置され、かつ前記基板から間隔をあけられる導電層とを有し、前記第1のプラスチック層および前記導電層の両方は前記基板に重なる共通の端縁で終端し、前記多層体はさらに、
前記導電層と前記第1のプラスチック層との間に介在する第2のプラスチック層を有し、前記接続は、前記多層体から一体的に形成され、かつ前記端縁の上に延在して前記基板から前記導電層を電気的に絶縁する絶縁体を含む、接続。」(以下、「本願発明1」という。)

[4]引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(国際公開第99/40634号)、刊行物2(特開昭59-103280号公報)には、上記[2](2)(2-2),(2-3)に記載のとおりの発明が記載されている。

[5]対比・判断
上記[2](1)のとおり、本願補正発明1は、本願発明の絶縁体について、さらに「グロメットの形状」であり、「前記グロメットは前記第2のプラスチック層から形成され、かつ前記第1の層の成分を含ま」ないことを限定したものである。
そして、上記[2](2-3)のとおり、本願補正発明が、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明についても、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから。本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そのため、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願
は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-15 
結審通知日 2010-10-19 
審決日 2010-11-10 
出願番号 特願2002-548737(P2002-548737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大光 太朗  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 鈴木 正紀
田中 永一
発明の名称 導電性基板と多層体との接続  
代理人 酒井 將行  
代理人 堀井 豊  
代理人 野田 久登  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  

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