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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1234374 |
審判番号 | 不服2008-26661 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-16 |
確定日 | 2011-03-24 |
事件の表示 | 特願2001-132953「電気車に対するサービスの提供をビジネスとする方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-329020〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年 4月27日付けの特許出願であって、平成19年 9月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年11月26日付けで意見書が提出されたが、平成20年 9月10日付けで拒絶査定され、これに対して同年10月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月13日付けで手続補正書が提出され、平成22年 7月20日付けで審尋が通知され、これに対して同年 9月27日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成20年11月13日付けでした手続補正について (1)本件補正の内容について 特許請求の範囲は、平成20年11月13日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。 <<本件補正前の特許請求の範囲>> 「 【請求項1】 電気車の装置、機器全部または一部に対し、鉄道会社と各種サービス契約を結び、契約された電気車の車上の装置、機器の動作状態を常時監視、または、各種データを測定した情報を車上に設置した送受信装置により記録時または、契約事象発生時に地上の鉄道会社の指定箇所に契約した情報、またはサービスを提供することにより、鉄道会社に対し営利的に貢献することを特徴とする電気車に対するサービスの提供をビジネスとする方法。 【請求項2】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 契約した車両の車上に音声、文字テキスト、映像の入出力機能とマンマシン機能、送受信装置を設置し、地上の鉄道会社の指定箇所にも同様の音声、文字テキスト、映像の入出力機能とマンマシン機能、送受信装置を設置し、車上と地上の間に高速で大容量の通信機能を持たすことにより、車上と地上の間で音声、文字テキスト、映像等を提供することを特徴とする方法。 【請求項3】 請求項2記載の方法において、前記サービスは、 車上と地上、地上の基地間を伝送する音声、文字テキスト、映像のデータをデータの暗号化する機能を有する送受信装置を介すことにより、伝送途上で傍受された場合の情報のセキュリティを保った通信を提供することを特徴とする方法。 【請求項4】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 電気車の装置、機器、部品に関する設計側ならではの詳細なノウハウを、鉄道会社からの要求時に、情報として提供することを特徴とする方法。 【請求項5】 請求項4の方法において、前記サービスは、 電気車の装置、機器、部品に故障が発生した場合、サービス会社側が、車上の機器より取出した故障データより、故障を解析し、故障原因を突き止めて解決を行い、解決方法を情報として鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項6】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器より入力し、サービス会社側で、日時、編成、車両番号装置、機器、部品等に整理し、記録した情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項7】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器で発生した故障データをサービス会社側で整理し、情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項8】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器の指定の条件の動態時のデータを入力し、サービス会社側で整理し、記録した情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項9】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器の検修項目の条件に合致したとき、測定、記録したデータを判定を行い、測定データと判定結果をサービス会社側で整理し、鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項10】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器の変更履歴をサービス会社側で整理し、記録した情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項11】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器の故障・修理の履歴をサービス会社側で整理し、記録した情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項12】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器、部品の中で寿命のある消耗部品、交換部品に対し、動作を監視し、稼動時間、動作回数をサービス会社側で記録し、交換時期の情報を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項13】 請求項6記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車上装置、機器、信号の動作を常時記録し、サービス会社側で整理し、管理する。要求のあった日時、編成、装置の動作記録を鉄道会社側に提供することを特徴とする方法。 【請求項14】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 サービス会社側に、契約した車両の機器、部品ストックを在庫管理し、必要時に払い出し、補充する機能を持ち、また、払い出し、補充、在庫管理を電子化により行う機能を持ち、契約した車両の機器、部品の交換時、ストック品を提供することにより、修理時間を短縮し、車両の稼動時間を減らさないようにすること を特徴とする方法。 【請求項15】 請求項14記載の方法において、前記サービスは、 サービス会社側に、契約した車両の機器、部品ストックを在庫管理するにおいて、ソフトウェア内蔵機器の場合、インストールするソフトウェアも、車種、装置、基板において管理し、交換する物と共に、適切なソフトウェアをインストールして必要時に払い出す機能を持ち、また、ソフトウェアの払い出し、レビジョンアップ管理を電子化により行う機能を持ち、契約した鉄道会社の車両のソフトウェア内蔵機器、部品の交換時、適切なソフトウェアをインストールした上で機器を提供することにより、修理時間を短縮することを特徴とする方法。 【請求項16】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 電気車の車体、配線、装置、機器、部品等に関するドキュメントをサービス会社側のマシン内に記憶し、鉄道会社側から要求された車両の要求されたドキュメントの部分を鉄道会社側の端末画面に表示することを特徴とする方法。 【請求項17】 請求項16記載の方法において、前記サービスは、 鉄道会社側からドキュメントを指定しなくても、事象に必要なドキュメントの必要部分を選択して鉄道会社側の端末画面に表示することを特徴とする方法。 【請求項18】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 ダイヤ改正、新駅追加、駅、地上子等の位置変更などにして、多くの車両の車載機器内のデータを一夜にして一斉に更新しなければならない場合、指定された期日に遠隔操作にてサービス会社から各車上機器への通信にて指定されたデータを更新することを特徴とする方法。 【請求項19】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 サービス会社が納められた電気車のシステムに対し、電気車の運転、検査、管理等のそれぞれの立場において、システムを使用する鉄道会社の様々の人より、車上、地上の端末からその場その場で種々の生の意見、要望をインプットすることができ、サービス会社側に記録・整理し、定期的にバージョンアップの機会を設定し、ソフト、ハードのバージョンアップの際にインプットされた種々の要望を生かすことにより、使う人にとって最も良いシステムへ近づけることを特徴とする方法。 【請求項20】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 乗務員自身の緊急事態、乗務員が対応できない事態が発生した場合、車内カメラ映像、非常ボタン通報により、サービス会社から車上の乗務員へ、音声連絡する。緊急事態認識時は、鉄道会社、車庫等への非常通報することを特徴とする方法。 【請求項21】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 機器故障時の応急処置、操作がわからない場合など乗務員からの呼び鈴により、サービス会社が音声、メイル等で対応し、処置方法の詳細説明などをわかりやすく説明し、また、急病人等への場合、患者輸送等乗務員へのサポートをすることを特徴とする方法。 【請求項22】 請求項1記載の方法において、前記サービスは、 鉄道関係のシステム、装置、機器の新技術紹介、また、新しく導入した装置取り扱い説明ビデオ映像データ等で送付することを特徴とする方法。 」 <<本件補正後の特許請求の範囲>> 「 【請求項1】 電気車と、前記電気車の運行に係るサービスを提供するサービスセンタに設置されたサービスセンタ用コンピュータとを備え、前記サービスセンタが前記電気車の運行に係るサービスを提供する電気車サービス提供方法であって、 前記電気車が、前記電気車の運行に係る情報であるモニタデータを収集するステップと、 前記電気車が、収集した前記モニタデータを、前記サービスセンタ用コンピュータに送信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、前記電気車から前記モニタデータを受信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、受信した前記モニタデータに基づいて、前記電気車の故障を検出するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、故障を検出した場合、予め記憶された故障に関連する情報である故障情報に基づいて、故障内容を解析するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、解析された前記故障内容に基づいて、前記電気車の乗務員に処置を指示するための指示情報を、前記電気車に送信するステップと、 前記電気車が、前記サービスセンタ用コンピュータから送信された前記指示情報を受信するステップと を含むことを特徴とする電気車サービス提供方法。 【請求項2】 電気車と、前記電気車の部品の在庫を管理する倉庫に設置された倉庫用コンピュータと、前記電気車の運行に係るサービスを提供するサービスセンタに設置されたサービスセンタ用コンピュータとを備え、前記サービスセンタが前記電気車の運行に係るサービスを提供する電気車サービス提供方法であって、 前記電気車が、前記電気車の運行に係る情報であるモニタデータを収集するステップと、 前記電気車が、収集した前記モニタデータを、前記サービスセンタ用コンピュータに送信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、前記電気車から前記モニタデータを受信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、受信した前記モニタデータに基づいて、前記電気車の故障を検出するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、故障を検出した場合、予め記憶された故障に関連する情報である故障情報に基づいて、故障内容を解析するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、解析された前記故障内容に対応する故障部品を判断するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、判断された前記故障部品と交換するための交換部品を、前記電気車の部品の在庫から検索するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、検索された前記交換部品の払い出しを、前記倉庫用コンピュータに要求するステップと、 前記倉庫用コンピュータが、前記サービスセンタ用コンピュータからの要求を受け付けるステップと を含むことを特徴とする電気車サービス提供方法。」 (2)本件補正前後の各請求項の対応関係について 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5に係る発明に対応する。 また、本件補正後の請求項2に係る発明は、本件補正前の請求項1を引用する請求項14に係る発明に対応する。 (3)本件補正の目的について したがって、本件補正の内容に鑑みると、本件補正により、本件補正前の請求項5及び請求項14以外の請求項は削除され、本件補正後の請求項1乃至2に係る発明は、平成19年 9月14日付け拒絶理由で示された事項について、明りょうでない記載の釈明を行ったものと認められる。 よって、平成20年11月13日付けでした手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第4号にそれぞれ掲げられた請求項の削除及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 3.本願を拒絶するべき理由 (1)本願の請求項1に係る発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成20年11月13日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項及び引用文献発明 (引用文献1の記載事項) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-76952号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (1a)「【0027】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明する。 【0028】図1は請求項1または請求項2あるいは請求項9に対応する実施形態を説明するための概略構成図である。図1は図8に示す従来からの運行管理システムに対して無線局アンテナ2a,2bと、これに接続される地上無線基地局1a,lbを追加したのもである。そしてそれぞれの無線局アンテナ2a,2bはCTC装置3a,3b等とともにループ状のネットワークLAN5に結合される。 【0029】更に、メンテナンス工場7をLAN5に接続、更にメンテナンス工場7は運転指令を含む運行管理システム6にダイレクトに送信ケーブル8で結合される。 【0030】一方列車には車内の状況デ一タを収集するモニタ装置(あるいは情報制御装置)に無線交信可能なな車上局装置10a,l0bを搭載する。 【0031】次に、以上のように構成された実施形態の作用効果について説明する。図1において線路11上を走行する列車9a及び9bは閉塞単位に在線位置を連動装置4a,4bによって把握され、これをCTC装置3a,3bを経由して運行管理システム6に伝えられ列車追跡及びダイヤ照合という基本機能を実現していく。 【0032】一方列車9a,9bには車上局装置10a,l0bがそれぞれ搭載されており列車の速度、走行積算距離(キロ程とよばれている)列車番号等の基本デ一タの他、車両情報制御装置が収集する列車走行時に動作する搭載機器の動作状況、モーター電流、ブレーキ圧力、電源装置の出力電圧、周波数などのアナログ値、また故障時のロガー機能など全てが送信可能である。 【0033】これらのデ一タは地上の無線アンテナ2a,2bでキャッチされ地上無線基地局1a,lbを介しLAN回線5を通じてメンテナンス工場7に到達する。 【0034】このように無線による情報は基本的にメンテナンス工場7が収集する。」 (1b)「【0041】図2において、車両情報制御中央装置20a,20bが収集したデ一タを車上局装置10に伝達するものであり、この場合のデ一タの交信状況はつぎの通りである。 【0042】(1) 基本的には列車正常時は地上無線基地局1の要請で自動的にデ一タを送信する。この為、運転士の業務上の負担増加はない。」 (1c)「【0046】図3は請求項5または請求項6に対応する実施形態を説明するための図で、メンテナンス工場7内のコンピュータシステムの概略構成図である。ホストコンピュータ41内には、デ一タベ-ス用サーバ一50a,50bならびにデ一タ格納用大容量メモリ・デスク51a,51bが配設されている。この場合、サーバ一50a,50bとメモリ・デスク51a,51bはともに冗長系の構成にしてあり、基本的には列車からのデータを多量に蓄積し、サーバー50a,50bで編集するようになっている。 【0047】エキスパ一卜用コンピュータ42内には、人工知能(AI)プロセッサ用インターフェイス52を中心にして、マンマシンインターフェイス53と人工知能(AI)プロセッサ54及び通信用インターフェイス57が配設されている。 【0048】人工知能(AI)プロセッサ54内部は事故判定機能部55、事故復旧機能部56から構成されており、それぞれ事故判定の推論と復旧方法の推論を行うようなっている。 【0049】このマンマシンインターフェイス53は起動端末43の操作によってこの指令をインターフェイス52に伝えたり、人工知能プロセッサ54の推論結果を受けて通信用インターフェイス57を通じて専用通信線8を経由して運行管理システム6に伝え中継点となる。 【0050】また、シヨップ端末44a?44nは例えば各々のシヨップが必要とする検修履歴、故障履歴、編成履歴機器搭載履歴、検査周期情報、車両性能情報、検査状況、工場内設備管理等をホストコンピュータ41と交信して作成しようとするもので例えばイーサネット40等を相互通信を行うことが可能な構成にしてある。図3の構成において、通常の運用は列車から送信されくるデ一タをホストコンピュータ41が受信してデスク51a,51bに蓄える。このデ一タを編集してデ一タベ-ス用サーバ一50a,50bとしている。 【0051】ショップ端末44からホストコンピュータ41のデ一タベ-スを利用することが可能である。おおよそ次の様なデ一タを各ショップ端末44は必要としており、このデ一タで工場の運用を進めて行くわけである。 【0052】(1) 検修履歴 (2) 故障履歴 (3) 編成履歴 (4) 機器搭載履歴 (5) 検査周期情報 (6) 車両性能情報 (7) 検査状況 (8) 予知保全状況 (10)工場内設備管理 (11)図面検索 (12)検査支援情報(検査項目、検査内容、使用工具、使用部品) (13)統計情報 列車は運用中にトラブルに見舞われることがある。このような時は起動端末43で、マンマシンインターフェイス53を介して人工知能用プロセッサインターフェイス52をアクセスする。 【0053】このインターフェイス52はホストコンピェータ41のデ一タベ-ス用サーバー50のデ一タをセレクト収集する役目とAIプロセッサ54内の事故判定機能部55と事故復旧機能部56を動作させる。 【0054】これらの機能部は例えば図4に示す様な推論を行っていく。図4に専門家の診断手順と呼ばれるもので、問題解決の手順は次の3つのタスクでモデル化ができると言われている。(H2-3-13 第11回知識知能シンポジウム「 複合関係モデルに基づく診断知識の獲得」より) (1)仮説生成 手元にあるだけの情報を元にして仮説を幾つか立てて、仮説集合を作成する。 【0055】(2)仮説検証 仮説集合の個々の仮説に対してそれが正しいことを確かめるために必要な情報が手元に揃っているかを検討し、揃っていない情報の収集を行う。その結果で仮説の評価を行う。 【0056】(3)仮説修正 前の評価結果を元に仮説集合を修正する。そして、診断が最終原因レベルまで行われたかを判断する。 【0057】事故判定機能部55と事故復旧機能部56のいずれも上記の診断手順に従って推論を行う。必要なデ一タは本ストコンピュータ41のデ一タベ-ス用サーバ-50より得ることが可能である。 【0058】それでも不足ならば事故発生中の列車9より必要デ一タを収集する。列車が事故を発生した場合、メンテナンス工場7のエキスパ一トコンピュータ42は前述の事故判定推論と事故復旧推論を行う。 【0059】その結果は専用回線8を通して運行管理システム6側に伝えられ運転指令の指示として列車9側に伝えられる。 【0060】この事故判定推論と事故復旧推論は地上無線基地局1を通り、無線局アンテナ2を経由して列車車上局10に伝えられ、更に中央装置20aを通り表示装置34a、34bに結果が現れる。 【0061】表示装置34a、34bには、 (1)事故の結論 「本列車はの○○装置が故障の可能性大です」 (2)復旧の方法 「あなたは◎◎を操作して下さい」 (3)復旧の結果 「結果的に△△になります」 と言うような表示が現れ事故に遭遇している運転士は(2)の操作を行う様に配慮してある。このような操作を3?4回繰り返すことにより列車の故障を回復できるようにしてある。 【0062】なお、このメンテナンス工場7のエキスパ一ト用コンピュータ42は事故に遭遇する度に過去の経験を蓄積し、事故判定、事故復旧推論の確率が高くなっていくことは勿論である。」 なお、引用文献1における漢字の「夕」なる記載は、カタカナの「タ」の明らかな誤記として、上記のとおり認定した。 上記全ての摘記事項によれば、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。 (ア)上記摘記事項(1c)の「【0046】図3は請求項5または請求項6に対応する実施形態を説明するための図で、メンテナンス工場7内のコンピュータシステムの概略構成図である。ホストコンピュータ41内には、デ一タベ-ス用サーバ一50a,50bならびにデ一タ格納用大容量メモリ・デスク51a,51bが配設されている。この場合、サーバ一50a,50bとメモリ・デスク51a,51bはともに冗長系の構成にしてあり、基本的には列車からのデータを多量に蓄積し、サーバー50a,50bで編集するようになっている。 【0047】エキスパ一卜用コンピュータ42内には、人工知能(AI)プロセッサ用インターフェイス52を中心にして、マンマシンインターフェイス53と人工知能(AI)プロセッサ54及び通信用インターフェイス57が配設されている。 【0048】人工知能(AI)プロセッサ54内部は事故判定機能部55、事故復旧機能部56から構成されており、それぞれ事故判定の推論と復旧方法の推論を行うようなっている。 ・・・(中略)・・・ 【0057】事故判定機能部55と事故復旧機能部56のいずれも上記の診断手順に従って推論を行う。必要なデ一タは本ストコンピュータ41のデ一タベ-ス用サーバ-50より得ることが可能である。 【0058】それでも不足ならば事故発生中の列車9より必要デ一タを収集する。列車が事故を発生した場合、メンテナンス工場7のエキスパ一トコンピュータ42は前述の事故判定推論と事故復旧推論を行う。 【0059】その結果は専用回線8を通して運行管理システム6側に伝えられ運転指令の指示として列車9側に伝えられる。 【0060】この事故判定推論と事故復旧推論は地上無線基地局1を通り、無線局アンテナ2を経由して列車車上局10に伝えられ、更に中央装置20aを通り表示装置34a、34bに結果が現れる。」の記載によれば、当該「メンテナンス工場」が、当該「メンテナンス工場」の「エキスパート用コンピュータ」から当該「列車側」に、当該「運転指令の指示」を「伝える」方法が開示されているものと解することができる。 したがって、上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「列車と、運転指令の指示を伝えるメンテナンス工場のエキスパートコンピュータとを備え、上記メンテナンス工場が運転指令の指示を伝える方法」が記載されているといえる。 (イ)上記摘記事項(1a)の「【0030】一方列車には車内の状況デ一タを収集するモニタ装置(あるいは情報制御装置)に無線交信可能なな車上局装置10a,l0bを搭載する。」の記載によれば、当該「列車」の「モニタ装置」は、当該「車内の状況データを収集する」ものと解することができる。 したがって、上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「前記列車のモニタ装置が、車内の状況データを収集するステップ」が記載されているといえる。 (ウ)上記摘記事項(1a)の「【0032】一方列車9a,9bには車上局装置10a,l0bがそれぞれ搭載されており列車の速度、走行積算距離(キロ程とよばれている)列車番号等の基本デ一タの他、車両情報制御装置が収集する列車走行時に動作する搭載機器の動作状況、モーター電流、ブレーキ圧力、電源装置の出力電圧、周波数などのアナログ値、また故障時のロガー機能など全てが送信可能である。 【0033】これらのデ一タは地上の無線アンテナ2a,2bでキャッチされ地上無線基地局1a,lbを介しLAN回線5を通じてメンテナンス工場7に到達する。」の記載によれば、当該「列車」の「車上局装置」は、上記(イ)の「車内の状況データ」である当該「列車の速度、走行積算距離(キロ程とよばれている)列車番号等の基本デ一タの他、車両情報制御装置が収集する列車走行時に動作する搭載機器の動作状況、モーター電流、ブレーキ圧力、電源装置の出力電圧、周波数などのアナログ値、また故障時のロガー機能など」を当該「メンテナンス工場」に送信するものと解することができる。 また、上記摘記事項(1c)の「【0050】・・・(中略)・・・図3の構成において、通常の運用は列車から送信されくるデ一タをホストコンピュータ41が受信してデスク51a,51bに蓄える。このデ一タを編集してデ一タベ-ス用サーバ一50a,50bとしている。」の記載によれば、上記「車内の状況データ」は、上記「メンテナンス工場」の「ホストコンピュータ」に送信されるものと解することができる。 したがって、上記(イ)、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「前記列車の車上局装置が、車内の状況データを前記メンテナンス工場のホストコンピュータに送信するステップ」が記載されているといえる。 (エ)上記摘記事項(1c)の「【0050】・・・(中略)・・・図3の構成において、通常の運用は列車から送信されくるデ一タをホストコンピュータ41が受信してデスク51a,51bに蓄える。このデ一タを編集してデ一タベ-ス用サーバ一50a,50bとしている。」の記載によれば、上記(ウ)の「メンテナンス工場」の「ホストコンピュータ」は、上記(ウ)の「車内の状況データ」を「受信する」ものと解することができる。 したがって、上記(ウ)及び上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「前記メンテナンス工場のホストコンピュータが、前記車内の状況データを受信するステップ」が記載されているといえる。 (オ)上記摘記事項(1c)の「【0062】なお、このメンテナンス工場7のエキスパ一ト用コンピュータ42は事故に遭遇する度に過去の経験を蓄積し、事故判定、事故復旧推論の確率が高くなっていくことは勿論である。」の記載によれば、当該「メンテナンス工場」の「エキスパートコンピュータ」は、当該「事故に遭遇する度」に「蓄積し」た「過去の経験」に基づいて、当該「事故判定」と「事故復旧」の「推論」を行うものと解することができる。 したがって、上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「前記メンテナス工場のエキスパートコンピュータが、事故に遭遇する度に蓄積した過去の経験に基づいて、事故判定と事故復旧の推論を行うステップ」が記載されているといえる。 (カ)上記摘記事項(1c)の「【0057】事故判定機能部55と事故復旧機能部56のいずれも上記の診断手順に従って推論を行う。必要なデ一タは本ストコンピュータ41のデ一タベ-ス用サーバ-50より得ることが可能である。 【0058】それでも不足ならば事故発生中の列車9より必要デ一タを収集する。列車が事故を発生した場合、メンテナンス工場7のエキスパ一トコンピュータ42は前述の事故判定推論と事故復旧推論を行う。 【0059】その結果は専用回線8を通して運行管理システム6側に伝えられ運転指令の指示として列車9側に伝えられる。」の記載によれば、当該「メンテナス工場」の「エキスパートコンピュータ」は、当該「事故判定」と「事故復旧」を「推論」した「結果」に基づいて、当該「運転指令の指示」を、当該「列車側」に伝えるものと解することができる。 また、上記摘記事項(1c)の「【0061】表示装置34a、34bには、 (1)事故の結論 「本列車はの○○装置が故障の可能性大です」 (2)復旧の方法 「あなたは◎◎を操作して下さい」 (3)復旧の結果 「結果的に△△になります」 と言うような表示が現れ事故に遭遇している運転士は(2)の操作を行う様に配慮してある。このような操作を3?4回繰り返すことにより列車の故障を回復できるようにしてある。」の記載によれば、上記「運転指令の指示」は、上記「列車」の当該「運転士」に「操作」を示すために伝えるものと解することができる。 したがって、上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータが、事故判定と事故復旧を推論した結果に基づいて、前記列車の運転士に操作を示すための運転指令の指示を、列車側に伝えるステップ」が記載されているといえる。 (キ)上記摘記事項(1c)の「【0059】その結果は専用回線8を通して運行管理システム6側に伝えられ運転指令の指示として列車9側に伝えられる。 【0060】この事故判定推論と事故復旧推論は地上無線基地局1を通り、無線局アンテナ2を経由して列車車上局10に伝えられ、更に中央装置20aを通り表示装置34a、34bに結果が現れる。」の記載によれば、当該「列車」の「列車車上局」は、上記(カ)の「メンテナンス工場のエキスパートコンピュータ」から伝えられた「運転指令の指示」を受信するものと解することができる。 したがって、上記(カ)及び上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「前記列車の列車車上局が、前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータから伝えられた運転指令の指示を受信するステップ」が記載されているといえる。 (引用文献1発明) したがって、上記(ア)乃至上記(キ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。 「 列車と、運転指令の指示を伝えるメンテナンス工場のエキスパートコンピュータとを備え、上記メンテナンス工場が運転指令の指示を伝える方法であって、 前記列車のモニタ装置が、車内の状況データを収集するステップと、 前記列車の車上局装置が、車内の状況データを前記メンテナンス工場のホストコンピュータに送信するステップと、 前記メンテナンス工場のホストコンピュータが、前記車内の状況データを受信するステップと、 前記メンテナス工場のエキスパートコンピュータが、事故に遭遇する度に蓄積した過去の経験に基づいて、事故判定と事故復旧の推論を行うステップと、 前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータが、事故判定と事故復旧を推論した結果に基づいて、前記列車の運転士に操作を示すための運転指令の指示を、列車側に伝えるステップと、 前記列車の列車車上局が、前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータから伝えられた運転指令の指示を受信するステップとを 含むことを特徴とする方法。」 (3)本願発明と引用文献1発明との対比 本願発明と引用文献1発明とを対比する。 引用文献1発明の「列車」、「メンテナンス工場」、「車内の状況データ」、「運転士」及び「操作」との事項は、本願発明の「電気車」、「サービスセンタ」、「モニタデータ」、「乗務員」及び「処置」との事項にそれぞれ相当する。 また、引用文献1発明の「運転指令の指示を伝える」との事項は、電気車の運行の操作を行う乗務員に当該操作に係る情報を提供することといえるから、本願発明の「電気車の運行に係るサービスを提供する」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「メンテナンス工場のエキスパートコンピュータ」及び「メンテナンス工場のホストコンピュータ」との事項は、いずれもサービスセンタにて利用するコンピュータであるから、本願発明の「サービスセンタ用コンピュータ」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「事故に遭遇する度に蓄積した過去の経験」との事項は、トラブルに関する履歴情報といえるから、本願発明の「予め記憶された故障に関連する情報である故障情報」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「事故判定と事故復旧の推論を行う」との事項は、故障に係わる情報を分析することといえるから、本願発明の「故障内容を解析する」との事項に相当する。 してみると、引用文献1発明の「列車と、運転指令の指示を伝えるメンテナンス工場のエキスパートコンピュータとを備え、上記メンテナンス工場が運転指令の指示を伝える方法」との事項は、電気車にサービスを提供する方法といえるから、本願発明の「電気車と、前記電気車の運行に係るサービスを提供するサービスセンタに設置されたサービスセンタ用コンピュータとを備え、前記サービスセンタが前記電気車の運行に係るサービスを提供する電気車サービス提供方法」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「前記列車のモニタ装置が、車内の状況データを収集するステップ」との事項は、当該「モニタ装置」を備える電気車がモニタデータを収集するステップといえるから、本願発明の「前記電気車が、前記電気車の運行に係る情報であるモニタデータを収集するステップ」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「前記列車の車上局装置が、車内の状況データを前記メンテナンス工場のホストコンピュータに送信するステップ」との事項は、当該「車上局装置」を備える電気車がモニタデータを送信するステップといえるから、本願発明の「前記電気車が、収集した前記モニタデータを、前記サービスセンタ用コンピュータに送信するステップ」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「前記メンテナンス工場のホストコンピュータが、前記車内の状況データを受信するステップ」との事項は、本願発明の「前記サービスセンタ用コンピュータが、前記電気車から前記モニタデータを受信するステップ」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータが、推論された事故判定と事故復旧に基づいて、前記列車の運転士に操作を示すための運転指令の指示を、列車側に伝えるステップ」との事項は、当該「運転指令の指示」は乗務員に示す処置に係わる情報といえるから、本願発明の「前記サービスセンタ用コンピュータが、解析された前記故障内容に基づいて、前記電気車の乗務員に処置を指示するための指示情報を、前記電気車に送信するステップ」との事項に相当する。 また、引用文献1発明の「前記列車の列車車上局が、前記メンテナンス工場のエキスパートコンピュータから伝えられた運転指令の指示を受信するステップ」との事項は、当該「列車車上局」を備える電気車が指示情報を受信するステップといえるから、本願発明の「前記電気車が、前記サービスセンタ用コンピュータから送信された前記指示情報を受信するステップ」との事項に相当する。 そして、本願発明の「前記サービスセンタ用コンピュータが、故障を検出した場合、予め記憶された故障に関連する情報である故障情報に基づいて、故障内容を解析するステップ」との事項と、引用文献1発明の「前記メンテナス工場のエキスパートコンピュータが、事故に遭遇する度に蓄積した過去の経験に基づいて、事故判定と事故復旧の推論を行うステップ」との事項は、後記の点で相違するものの、ともに「前記サービスセンタ用コンピュータが、予め記憶された故障に関連する情報である故障情報に基づいて、故障内容を解析するステップ」という点で共通する。 したがって、両者は、 (一致点) 「 電気車と、前記電気車の運行に係るサービスを提供するサービスセンタに設置されたサービスセンタ用コンピュータとを備え、前記サービスセンタが前記電気車の運行に係るサービスを提供する電気車サービス提供方法であって、 前記電気車が、前記電気車の運行に係る情報であるモニタデータを収集するステップと、 前記電気車が、収集した前記モニタデータを、前記サービスセンタ用コンピュータに送信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、前記電気車から前記モニタデータを受信するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、予め記憶された故障に関連する情報である故障情報に基づいて、故障内容を解析するステップと、 前記サービスセンタ用コンピュータが、解析された前記故障内容に基づいて、前記電気車の乗務員に処置を指示するための指示情報を、前記電気車に送信するステップと、 前記電気車が、前記サービスセンタ用コンピュータから送信された前記指示情報を受信するステップと を含むことを特徴とする電気車サービス提供方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では、サービスセンタ用コンピュータが、受信したモニタデータに基づいて、電気車の故障を検出するステップを含み、故障を検出した場合、故障内容を解析するのに対し、 引用文献1発明では、サービスセンタ用コンピュータが、モニタデータを受信するものの、当該モニタデータに基づいて電気車の故障の検出をも行うものなのか不明であり、また、故障内容を解析するものの、上記の場合になされていない点。 (4)相違点についての判断 (相違点1について) 例えば、特開平10-24784号公報(段落【0014】等参照。)にみられるように、コンピュータがモニタデータを用いて故障検出することは、周知技術である。 してみると、引用文献1発明において、サービスセンタ用コンピュータが、モニターデータを受信し、故障内容を解析するのであれば、上記周知技術を適用し、サービスセンタ用コンピュータが、受信したモニタデータに基づいて、電気車の故障を検出するステップを含み、故障を検出した場合、故障内容を解析するよう構成することは、当業者であれば適宜になし得るものである。 したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用文献1発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用文献1発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)結論 よって、本願発明は、引用文献1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 4.むすび 上記のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-21 |
結審通知日 | 2011-01-25 |
審決日 | 2011-02-10 |
出願番号 | 特願2001-132953(P2001-132953) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 貝塚 涼 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
田代 吉成 須田 勝巳 |
発明の名称 | 電気車に対するサービスの提供をビジネスとする方法 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 中村 誠 |