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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1234402 |
審判番号 | 不服2009-14172 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-07 |
確定日 | 2011-03-24 |
事件の表示 | 特願2003-423243「研磨パッド、研磨方法ならびに半導体デバイスの製造方法および半導体デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-183711〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は平成15年12月19日の出願であって、同21年5月28日付で拒絶査定されたものである。平成21年8月7日に拒絶査定の取消を求める本件審判が請求されるとともに、特許請求の範囲を補正対象とする手続補正がなされ、当審の平成22年6月21日付審尋に対して同年8月23日に回答書が提出された後、当審の平成22年10月19日付拒絶理由通知に対して同年12月27日に意見書と特許請求の範囲を補正対象とする手続補正書が提出された。 2.当審の拒絶理由通知の概要 平成22年10月19日付の当審の拒絶理由通知の概要は、 第1の理由として、特許請求の範囲の記載が不備であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、 第2の理由として、特許請求の範囲の請求項1ないし3及び5ないし8に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物である特開平10-249737号公報(以下、「刊行物1」という。)に記載された発明、特開2003-1558号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された事項、及び、従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、 というものである。 3.本件出願の発明 本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、明細書及び図面の記載を参照すると、平成22年12月27日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次の通りである。 「研磨面内に互いに平行であるほぼ直線の溝からなる複数の平行溝群を有する研磨パッドであって、前記溝が、同一溝内で異なる溝深度を有する異深度溝を含み、溝形成方法が、溝加工機を用いて機械切削する方法、金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、プレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法およびレーザー光による作製方法から成る群から選択され、研磨パッドがポリウレタンから形成されることを特徴とする複数の平行溝群を有するCMP用研磨パッド。」(以下、「本件発明」という。) 4.刊行物記載の発明または事項 4.1 刊行物1 a.(発明の詳細な説明、段落2) 「【0002】 【従来の技術】磁気記録媒体用基板(以下、基板と略称する)は、近年、情報記録容量の高密度化の要求にともない、その表面の平滑性を向上させることを要求されている。2.5,3.5インチなどの小型磁気記録媒体用基板の研磨には、生産性が高く、シリコンウェハのポリッシングに使われている両面ラッピング方式の研磨機が広く用いられている。この基板の表面を平滑にさせる研磨工程では、研磨用パッドが固定された2つの研磨工具をそれぞれ基板の両面に密着させるとともに、研磨用パッドと基板研磨面との間に研磨液を供給して回転、摺動することによって、基板の両面が同時に研磨される。」 b.(同、段落6,7) 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、磁気記録媒体用基板(基板)の研磨用パッドとして、不織布の繊維基材にポリウレタン樹脂を含浸させ、湿式凝固させて作製したパッドであって、この研磨用パッドは、JIS K6301で規定される硬度が75?85である(請求項1)。 【0007】また、この研磨用パッドに、10mm?30mmの任意の間隔で、1mm?3mmの任意の幅と、該研磨用パッドの厚さの5分の2以上5分の4以下の任意の深さの溝を入れるのが好ましい(請求項2)。さらに本発明は、この研磨用パッドを用いて、基板の平均表面粗さRa が13Å?40Åの範囲になるように研磨する方法である。」 c.(同、段落12,13) 「【0012】更に、本発明の研磨パッドに10mm以上30mm以下の間隔で、幅1mm以上3mm以下、かつ研磨用パッドの厚さの5分の2以上5分の4以下の深さの溝を入れ、この研磨用パッドが固定された研磨工具を用いると、研磨液が研磨パッド用の中心部にまで流れ込んで、研磨用パッド全体に行き渡り、基板の中心部まで研磨液が入り込み、溝なしのものに比べ、基板の表面を均一に研磨できた。 【0013】図1?3は、研磨用パッド1に入れられた溝2の状態を示す平面図である。図1に示す様に、溝2が互いに直交している場合、図2に示す様に溝2が平行な場合、図3に示す様に、溝2がある一定の角度を持って交差している場合が例として挙げられる。本発明の研磨方法を実現するためには、市販の両面研磨機が用いられた。図4は、基板を両面研磨する状態を示す模式図である。両面研磨機の鋳鉄製の上の定盤に固定された研磨用パッド3と、下の定盤に固定された研磨用パッド4との間に、基板1を密着させ適当な圧力をかけるとともに、研磨用パッド3及び4と基板1との間にそれぞれ研磨剤5を含んだ研磨液を供給して、回転、摺動させることによって、研磨が行われる。このとき、研磨用パッド3及び4として、不織布の繊維基材にポリウレタン樹脂を含浸させ、湿式凝固させてJIS K6301で規定される硬さ試験(A形)で硬度82を有するものが上下の定盤に貼り付けられる。」 摘記事項c.の【0013】における、「図1に示す様に、溝2が互いに直交している場合」と「図3に示す様に、溝2がある一定の角度を持って交差している場合」が、「互いに平行であるほぼ直線の溝からなる複数の平行溝群を有する」場合に該当することは、容易に理解されるから、以上を、技術常識を考慮しつつ、本件出願の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。 「研磨面内に互いに平行であるほぼ直線の溝からなる複数の平行溝群を有し、不織布の繊維基材にポリウレタン樹脂を含浸させて形成される、研磨用パッド。」(以下「刊行物1記載の発明」という。) 4.2 刊行物2 a.(発明の詳細な説明、段落4) 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、加工面に溝が形成された定盤を使用する場合、ラップ加工中にスラリーが溝から定盤の外に排出されるので、定盤上に存在するスラリーの量を一定に保つために、溝から排出される分のスラリーを定盤上に供給する必要があり、溝から排出されるスラリーの量が多い場合には、スラリーの供給量を多くする必要がある。」 b.(同、段落7,8) 「【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ラップ用定盤の加工面の溝の一部について深さを浅くすることにより、溝から排出されるスラリーの量を低減させ、または定盤上のスラリーの滞留時間を増大させ、少量のスラリー供給量で被加工物に傷を発生させることなくラップ加工を行うことができ、また、浅くした部分以外の溝について深さを深くしても、被加工物に傷を発生させることなくラップ加工できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明によるラップ用定盤は、被加工物をラップ加工するラップ装置に使用され且つ加工面の全面にわたって所定の間隔で一定の深さの溝が形成されたラップ用定盤において、一部の領域の溝の深さが他の領域の溝の深さの2/3以下、好ましくは1/3以下になるように溝を埋めることにより、この一部の領域の溝の少なくとも底部側の部分を塞ぐことを特徴とする。このラップ用定盤において、溝が埋められる一部の領域は、ラップ用定盤の外周付近および内周付近の少なくとも一方であるのが好ましい。また、一部の領域の溝を樹脂などの封止材料で埋めることにより一部の領域の溝の深さを浅くするのが好ましい。」 以上を、技術常識を考慮しつつ、本件出願の記載に沿って整理すると、刊行物2には次の事項が記載されていると認められる。 「ラップ加工面の全面にわたって一定の深さの溝を有するラップ用定盤において、ラップ用定盤の外周付近および内周付近の溝を埋めて浅くすることにより、被加工物に傷を発生させずにスラリー消費量を少なくすること。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。) 5.対比 本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「研磨用パッド」が「研磨パッド」とも呼ぶことができるものであることは明白であるから、両者は次の諸点で一致及び相違すると認められる。 <一致点> 「研磨面内に互いに平行であるほぼ直線の溝からなる複数の平行溝群を有する研磨パッド。」である点。 <相違点1> 研磨パッドは、前者では「CMP用研磨パッド」であるのに対し、後者ではこのような特定がない点。 <相違点2> 研磨面内の溝は、前者では同一溝内で異なる溝深度を有する異深度溝を含むのに対し、後者ではこのような特定がない点。 <相違点3> 研磨パッドは、前者ではポリウレタンから形成されるのに対し、後者では不織布の繊維基材にポリウレタン樹脂を含浸させて形成される点。 <相違点4> 溝形成方法は、前者では溝加工機を用いて機械切削する方法、金型に樹脂を流しこみ、硬化させることにより作製する方法、プレス板で樹脂をプレスし作製する方法、フォトリソグラフィを用いて作製する方法、印刷手法を用いて作製する方法およびレーザー光による作製方法から成る群から選択されるのに対し、後者ではこのような特定がない点。 6.当審の判断 続いて、上記の各相違点について検討する。 6.1 <相違点1>について 刊行物1には、「両面研磨機の鋳鉄製の上の定盤に固定された研磨用パッド3と、下の定盤に固定された研磨用パッド4との間に、基板1を密着させ適当な圧力をかけるとともに、研磨用パッド3及び4と基板1との間にそれぞれ研磨剤5を含んだ研磨液を供給して、回転、摺動させることによって、研磨が行われる。」(摘記c.段落【0013】参照)との記載がある。この研磨手法がCMP用の研磨手法と基本的に同一であることは、当業者にとって明白である。また、刊行物1記載の発明は、研磨液が溝を通って研磨パッド用の中心部にまで流れ込んで、研磨用パッド全体に行き渡り、基板の中心部まで研磨液が入り込むことによって、基板の表面を均一に研磨することを課題にしており(摘記c.段落【0012】参照)、この課題はCMP研磨にも共通するものである。 したがって、刊行物1記載の発明の研磨パッドをCMP研磨に用いることは、当業者が容易に想到し得る。 6.2 <相違点2>について 刊行物2には、ラップ加工面の全面にわたって溝を有するラップ用定盤において、外周及び内周付近の溝を浅くすることが記載されているが、少なくとも一部の溝がラップ定盤の外周部から内周部または中間部を通って再び外周部に至るように配置されることは自明であり、このような溝は同一溝内で異なる溝深度を有する異深度溝となることは当業者が容易に理解し得るところである。 刊行物2記載の事項は刊行物1記載の発明と同様、研磨液を供給しながら研磨する技術に関するから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して、研磨パッドの溝が、同一溝内で異なる溝深度を有する異深度溝を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得る。 6.3 <相違点3>について 刊行物1記載の発明のように、定盤に固定された研磨パッドと基板との間に研磨材を含む研磨液を供給して回転、摺動させる研磨技術において、研磨パッドをポリウレタンから形成することは、従来周知の技術であり、刊行物1記載の発明の研磨パッドをポリウレタンから形成することを阻害する要因も認められない。 したがって、刊行物1記載の発明において研磨パッドをポリウレタンから形成されたものとすることは、当業者が容易に想到し得る。 6.4 <相違点4>について 溝加工機を用いた機械切削による溝形成方法、金型に樹脂を流しこんで硬化させることによる溝形成方法、プレス板で樹脂をプレスすることによる溝形成方法、フォトリソグラフィを用いた溝形成方法、印刷手法を用いた溝形成方法、あるいはレーザー光による溝形成方法は、いずれもポリウレタンを含む樹脂材料の加工方法として従来周知のものであるから、研磨パッドに溝を作製する方法として採用することに、当業者にとって格別の創意は要しない。 6.5 まとめ 本件発明には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術事項に基づいて普通に予測される格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本件発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、依然として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願の請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 . |
審理終結日 | 2011-01-18 |
結審通知日 | 2011-01-25 |
審決日 | 2011-02-07 |
出願番号 | 特願2003-423243(P2003-423243) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横山 幸弘、高山 芳之 |
特許庁審判長 |
豊原 邦雄 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 遠藤 秀明 |
発明の名称 | 研磨パッド、研磨方法ならびに半導体デバイスの製造方法および半導体デバイス |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 後藤 裕子 |
代理人 | 山本 宗雄 |
代理人 | 田中 光雄 |