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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1234416
審判番号 不服2009-25831  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2011-03-24 
事件の表示 特願2007- 32838「映像監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日出願公開、特開2008-195495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯本願発明
本願は、平成19年2月14日の出願であって、平成21年6月12日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し同年8月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月30日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年12月28日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし14に係る発明は、平成21年8月6日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「外部を見ることが可能なように窓が設けられた閉空間内で監視対象を監視する映像監視装置において、
前記窓が視野に入るように設置されたカメラと、
前記カメラと前記監視対象との間に設置した第一の偏光手段と、
前記窓に設置した第二の偏光手段と、
前記カメラで撮影した映像上で前記第二の偏光手段に対応する領域の平均輝度を算出するとともに、前記平均輝度が最小となるように前記第一の偏光手段の偏光方向を調整できるように支援する偏光調整支援手段とを備え、
前記カメラで撮影した映像上で前記第二の偏光手段に対応する領域は、前記カメラで撮影した映像上における一部分の領域であり、
前記偏光調整支援手段は、前記カメラで撮影した映像上で前記第二の偏光手段に対応する領域のうちのさらに一部分の位置を示すあらかじめ設定された輝度測定領域において輝度を測定し、前記平均輝度を算出することを特徴とする映像監視装置。」

3.原査定の拒絶理由に引用された引用文献
3-1.特開平9-219810号公報(以下、「引用文献1」という。)
3-1-1.引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は自動車等の移動体のキャビン内の撮影装置に関し、特に、キャビンのウインドウから入り込む外部からの光の影響を少なくする撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車等の移動体のキャビン内にカメラを設置して、キャビン内の状況を撮影し、得られた映像を通信手段を利用して外部に伝達したり、あるいは得られた映像情報によりキャビン内の状況や搭乗者の状態の把握に利用する場合がある。」(段落【0001】及び【0002】)
(b)「【0007】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、移動体のウインドウ及びカメラレンズのような撮像手段の受光部に偏光フィルタを配し、カメラに入り込む光量を制限して常に被写体を良好に撮影できるようにすることを目的とする。」(段落【0007】)
(c)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ウインドウにて囲われた移動体のキャビン内の所定方向を撮影する撮像手段と、前記撮像手段の映像信号を出力する映像信号発生手段とを備える移動体のキャビン内撮影装置において、前記撮像手段の受光部に第1の偏光フィルタを備えるとともに、前記ウインドウのうち、少なくとも前記撮像手段の撮影方向上にあるウインドウには、前記第1の偏光フィルタとは直交する方向の第2の偏光フィルタを設けたものである。
【0009】また、請求項2の発明は、ウインドウにて囲われた自動車のキャビン内の搭乗者の表情を撮影するために所定方向に向けられて配置された撮像手段と、前記撮像手段の映像信号を出力する映像信号発生手段とを備える自動車のキャビン内撮影装置において、前記撮像手段の受光部に第1の偏光フィルタを備えるとともに、前記ウインドウのうち、少なくともフロントウインドウを除くウインドウのいずれかに、前記第1の偏光フィルタとは直交する方向の第2の偏光フィルタを設けたものである。
【0010】本願発明によれば、キャビン内の撮像手段による撮影方向上にあるウインドウから入射する太陽光はウインドウに取り付けられた第2の偏光フィルタにより所定の偏光面を持つ光となって撮像手段の受光部に到達する。撮像手段の受光部に設けられた第1の偏光フィルタは第2の偏光フィルタと偏光方向が直交しており、第2の偏光フィルタを通って受光部に到達した光は第1の偏光フィルタにより遮断される。これにより、ウインドウから入射する太陽光が撮像手段の受光部に直接入射することはなくなり、撮影における逆光現象は防止でき、常に適正な映像を得ることができる。
【0011】また、自動車のキャビン内の搭乗者の表情を撮影する場合、フロントウインドウ以外の撮像手段による撮影方向上にあるウインドウにのみ第2の偏光フィルタを取り付けることによりウインドウを通して撮像手段の受光部に直射光が入射することが防止でき、搭乗者の視界に影響を及ぼすことなく適正な画像を撮影することが可能となる。」(段落【0008】ないし【0011】)
(d)「【0013】図1は、移動体として自動車を例に本発明の撮影装置を説明するものであり、ウインドウ2を有する自動車1のキャビン内には撮影装置を形成するカメラ3、カメラユニット4及び映像蓄積装置5からなる撮影装置が設置されている。カメラ3はレンズや光電変換素子を有する撮像管からなり、カメラユニット4はカメラ5を駆動するための制御系やカメラによって得られた映像信号を増幅その他信号処理する回路を有する。5は映像蓄積装置で、キャビン内で撮影して得られた映像信号をメモリ若しくは記録媒体に一時的に蓄積あるいは記録する装置であり、更に伝送手段(図示せず)等に接続される。カメラ3の受光部3aとなるレンズ前面には第1の偏光フィルタである偏光フィルタ6が取り付けられている。
【0014】カメラ3はキャビン内の所定の座席に位置する被写体である搭乗者8の方向に向けられて設置されている。カメラ3の撮影方向上にある搭乗者8の後部の自動車1のウインドウ2には、第2の偏光フィルタである偏光フィルタ7が取り付けられている。
【0015】上記第1の偏光フィルタ6及び第2の偏光フィルタ7は、その偏光方向が互い90°となるようにして取り付けられる。次に、上記構成による撮影装置の作用原理を図2を参照して説明する。自動車1のキャビン内の被写体8は、自動車1の四方のウインドウから入射する太陽光線9の外部光により照明されてカメラ3により撮影される。カメラ3は、被写体8に向けられた(審決注:「被写体8に向けられて」の誤記と認める。)いるため被写体8の後方のウインドウ2を通して入射する太陽光線が直接カメラ3に入射することとなる。しかしながら、カメラ3の前面及びウインドウ2には、夫々、第1の偏光フィルタ6及び第2の偏光フィルタ7が取り付けられており、しかも、第1の偏光フィルタ6と第2の偏光フィルタ7とはその偏光方向が互いに直交する関係にあることから、ウインドウ3を通して入射して第2の偏光フィルタ7により一定方向の偏光面を持つ偏光とされた太陽光線7は、第1の偏光フィルタ6により遮断され、カメラ3に入射されない。したがって、カメラ3のレンズに入射する光は、フィルタ6透過しうる光、すなわち、撮影される光は、第2フィルタが取り付けられたウインドウ3以外の周囲のウインドウより入射して反射した光のみとなる。これによりカメラ3に直接入り込む光はカットされ、適正な映像が得られる。」(段落【0013】ないし【0015】)
(e)「【0016】上記実施形態によれば、ウインドウに配した偏光フィルタ7は室内に差し込む光を完全に遮断するわけでなく、被写体の反射光となる自動車室内の光量をある程度確保することができる。そのため、被写体の光量を確保するために特別な照明装置を必要としない。
【0017】また、車内のカメラの設置位置と撮影範囲を考慮することにより偏光フィルタを配するウインドウの位置を限定することにより、室内の光量の確保だけでなく、ドライバーの安全確保の妨げとならないようにすることが可能である。…(後略)…」(段落【0016】及び【0017】)
(f)「【0027】図8は、運転席に座る運転者の顔を撮影することを目的としてなされるもので、カメラの取り付け位置は、図8(a)に示すように、車内前部上方のルームミラー16付近としている。ルームミラー16は前方上部の車幅の中心に近い位置にあり、この位置からカメラ4が運転者の顔を中心に撮影するようにするとき、その撮影範囲は、図8(b)に示すように、運転者の座席18及び運転者側のフロントドアウインドウ14の一部を望む比較的狭い範囲となる。そして、カメラ3は、やや下向きとなって運転者の顔方向に向けられ、また、カメラ3と被写体8及び座席18とが比較的近接しているため、カメラ3のレンズ部に入り込む外部光は、車両の天井及び座席18によって遮られることとなる。したがって、この場合、車両のウインドウには、運転者側のフロントドアウインドウ14のみに偏光フィルタ7を取り付けることにより、カメラ4に直接入り込む外部光を遮ることができる。
【0028】車内にカメラを設置して運転者の顔を撮影する場合として、先に述べたように、運転者の状態をモニターする場合があるが、撮影装置を本実施例のように構成することにより、外部光に乱されない良好な画像を得ることができ、これにより運転者の状態を常に適正に把握することが可能となる。」(段落【0027】及び【0028】)
(g)「【0032】また、ウインドウに偏光フィルタを取り付ける方法については、ウインドウに偏光フィルムを貼着する方法、ウインドウに偏光板を取り付ける方法その他ウインドウ自体を偏光板あるいは偏光ガラスとする方法等適宜の方法で実施できる。以上、本発明の撮影装置につき移動体として自動車を例に説明したが、本発明はこれに限ることなく、航空機や船舶その他種々の移動体に適用できることはいうまでもない。」(段落【0032】)
(h)「【0033】
【発明の効果】上述のように、本願発明によれば、車両等ウインドウを有する移動体内に設置されたTVカメラ等の撮像手段に対して入射される太陽光の直射光は、カメラ受光部と移動体のウインドウに配される第1、第2の偏光フィルタによりカットされるので、太陽光の方向によっては画像センサに対して逆光となって適正な画像が得られなくなるといったことがなくなり、撮像手段によって得られる画像を有効に利用することができる。
【0034】また、ウインドウに設ける第2の偏光フィルタは、キャビン内のサンシェードの機能も兼ねることができる。また、請求項2記載の発明によれば、自動車の搭乗者の表情を撮影する場合に、第2の偏光フィルタをリアウインドウに設けることにより、フロントウインドウの視界に影響を与えることなく逆光現象を避けることができる。」(段落【0033】及び【0034】)

3-1-2.引用文献1に記載された発明
上記3-1-1.及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
「外部を見ることが可能なようにウインドウ2が設けられた自動車1等の移動体のキャビン内で被写体8を撮影するキャビン内撮影装置において、
前記ウインドウ2が視野に入るように設置されたカメラ3と、
前記カメラ3と前記キャビンとの間に設置した第1偏光フィルタ6と、
前記ウインドウ2に設置した第2偏光フィルタ7とを備え、
前記第1偏光フィルタ6と前記第2偏光フィルタ7は、前記ウインドウ2に設置した前記第2偏光フィルタ7を通って前記キャビン内のカメラ3に対して差し込む光を前記第1偏光フィルタ6により遮断するように、それらの偏光方向が互に直交するように設置されてなるキャビン内撮影装置。」

3-2.特開2006-208714号公報(以下、「引用文献2」という。)
3-2-1.引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、複数のレンズを有するレンズブロックと、上記レンズブロックからの入射光が結像される撮像素子と、上記撮像素子より手前の光路上に配設される偏向フィルタと、上記偏光フィルタを回転させる回転手段と、上記撮像素子で撮像した画像データの輝度信号が小さくなるように上記回転手段を制御する偏光制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像素子で撮像した画像データの輝度信号が小さくなるように回転手段を制御するので、例えば、ショーウィンドウや水面、ガラス張りの額等の反射光を自動的に除去又は低減することができる。」(段落【0007】及び【0008】)
(b)「【0010】
図1に示すように、本発明を適用したディジタルスチルカメラ1は、複数のレンズ群を鏡筒内に配設したレンズユニット11と、レンズユニット11で集光された光を光電変換する撮像素子12と、撮像素子12からの撮像信号を信号処理する撮像信号処理部13と、撮像信号処理部13からの出力を画像処理する画像処理部14と、全体の動作を制御する制御部15とを備える。
【0011】
レンズユニット11は、鏡筒11a内に、ズームレンズ、フォーカスレンズ等の複数のレンズ11bが光軸を一致させて配設されている。ここで、フォーカスレンズ11cは、複数のギヤや駆動モータで構成されたフォーカス制御部11dによって光軸方向に変位される。そして、レンズユニット11は、入射した撮像対象となる被写体像光を撮像素子12の受光面上に結像させる。
【0012】
撮像素子12は、C-MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子12は、受光面にマトリクス状に配置された単位画素を有しており、各単位画素が照射された光を光電変換する。撮像素子3は、マトリクス状に配置された単位画素をスキャンして電気信号を読み出すことにより、撮像信号を出力する。撮像素子3により読み出された撮像信号は、撮像信号処理部13に供給される。
【0013】
撮像信号処理部13は、撮像素子3から出力された撮像信号に対してクランプや増幅処理等のアナログ処理を行い、A/D変換を行ってディジタル化し、輝度信号と赤、青の色差信号を画像データとして、画像処理部14に出力する。
【0014】
画像処理部14は、ディジタルスチルカメラ1に内蔵された内部メモリ16やディジタルスチルカメラ1に対して着脱可能な外部メモリ17に画像データを保存するために、所定のファイル形式に画像データを変換する。例えば、画像処理部14は、画像データを、JPEG、TIF等の形式に変換する。
【0015】
制御部15は、ディジタルスチルカメラ1の全体の動作を制御する制御プログラムが格納されたROMやプログラムに基づいて演算する演算部等を有しており、ユーザの操作に応じて全体を制御する。
【0016】
内部メモリ16は、例えば半導体メモリであり、撮像した画像データが保存される。また、外部メモリ17は、ディジタルスチルカメラ1に対して着脱可能なメモリカード、ディスクカートリッジ、光ディスク等であり、撮像した画像データが保存される。」(段落【0010】ないし【0016】)
(c)「【0019】
ところで、ディジタルスチルカメラ1のレンズユニット11を構成する鏡筒11a内には、偏光フィルタ21が配設されている。この偏光フィルタ21は、図2に示すように、光の表面反射を除去又は低減するものであり、自然光Nを透過し、ショーウィンドウや水面、ガラス張りの額等の反射光Rを除去又は低減する。具体的に、図3に示すように、偏光フィルタ21は、反射光の振動方向に対して偏光フィルタ21を180°回転する間に、透過率の極小値と極大値、すなわち輝度信号の最大値と最小値をとる。
【0020】
以上のような偏光フィルタ21の駆動機構22は、偏光フィルタ21が取り付けられる取付板23を有する。この取付板23には、回転板24を介して偏光フィルタ21が取り付けられている。この回転体24は、駆動モータを駆動源とする回転部25により回転され、回転板24に取り付けられた偏光フィルタ21を鏡筒11a内において回転する。図4(B)に示すように、偏光フィルタ21は、その偏光方向と反射光の振動の向きとが同じとき、反射光をそのまま透過し、図4(C)に示すように、その偏光方向と反射光の振動の向きとが直交するとき、反射光を遮断する。撮像素子12は、図4(C)に示すように、反射光が遮断されたとき、反射光の影響を受けない被写体像を取り込むことができる。回転部25は、反射光を除去又は低減できるように、偏光フィルタ21が鏡筒11a内にあるとき、偏光フィルタ21を回転し、反射光の透過の度合いを調整する。」(段落【0019】及び【0020】)
(d)「【0022】
以上のように、偏光フィルタ21の駆動機構22は、鏡筒11a内の偏光フィルタ21を回転させる回転部25と偏光フィルタ21を鏡筒11a内に出没させる移動部26とを備えており、これら回転部25と移動部26とは、偏光制御部27により制御される。この偏光制御部27は、偏光フィルタ21を使用するショーウィンドウモードがユーザにより選択されたとき、移動部26を駆動し、取付板23に取り付けられた偏光フィルタ21を鏡筒11a内に進入させ、偏光フィルタ21を使用するショーウィンドウモードが解除されたとき、鏡筒11a内から偏光フィルタ21を待避させるように移動部26を駆動する。
【0023】
また、この偏光制御部27は、撮像信号処理部13で生成された輝度信号を用いて反射光の光量を検出し、偏光フィルタ21の回転量を調整する。例えば、偏光制御部27では、偏光フィルタ21を回転し、偏光フィルタ21の回転角に応じた輝度信号を検出し、輝度信号の最も小さい回転角で偏光フィルタ21を停止するようにする。」(段落【0022】及び【0023】)
(e)「【0025】
ステップS1において、制御部15は、操作部18を構成する偏光制御釦が押されたかどうかを判断し、偏光制御釦が押されたとき、通常撮影モードから偏光フィルタ21を用いて撮影するショーウィンドウモードに切り換える。なお、このショーウィンドウモードへの切り換えは、操作部18を構成するダイヤルや表示部19をタッチパネルで構成し、この表示操作されたメニュー操作で行ってもよい。
【0026】
ステップS2において、制御部15は、偏光制御部27を介して移動部26を駆動し、取付板23に取り付けられている偏光フィルタ21を鏡筒11a内に進入させる。これにより、ディジタルスチルカメラ1は、いつでも偏光フィルタ21を用いて撮影を行う待機状態となる。なお、偏光フィルタ21は、手動で光路上に挿入するようにしても良い。
【0027】
ステップS3において、制御部15は、操作部18を構成するシャッタ釦が半押しされたかを判断し、半押しされたとき、ステップS4に進む。シャッタ釦が半押しされると、ステップS4において、制御部15からのコマンドに応じて、偏光制御部27は、回転部25を駆動し、取付板23の回転板24を回転し、偏光フィルタ21を回転する。このとき、偏光制御部27は、偏光フィルタ21の回転角に対応させて、そのときの撮像信号処理部13で生成された輝度信号を検出する。例えば、偏光制御部27は、所定角度ずつ偏光フィルタ21を回転し、その回転角のときの輝度信号を検出する。
【0028】
なお、この偏光フィルタ21の回転時においては、絞りを固定するようにしても良い。また、偏光フィルタ21は、一方向だけに回転するものであっても良いが、輝度信号の極小値を最短で検出することができるように、両方向に回転しても良い。
【0029】
ステップS5において、制御部15は、偏光フィルタ21を所定量回転したかどうかを判断する。具体的に、偏光フィルタ21は、少なくとも180°回転される。これは、図3に示したように、偏光フィルタ21を少なくとも180°回転させれば、透過率、すなわち輝度信号の最大値と最小値を検出することができるからである。また、偏光フィルタ21を両方向に回転させる場合、ステップS4及びステップS5において、図3に示したように、透過率が最小となる角度が180°の範囲で一点となることから、透過率が減少する方向に偏光フィルタ21を回転させることによって、偏光フィルタ21を180°回転させることなく輝度信号が最小となる回転角を求めるようにしても良い。
【0030】
ステップS6において、制御部15は、ステップS4、ステップS5で検出した中で最も輝度信号が小さいときの偏光フィルタ21の回転角をメモリに格納し、メモリに格納した回転角で偏光フィルタ21の回転を停止する。または、ステップS4において、最も輝度信号が小さいときの輝度信号値と偏光フィルタ21の回転角をメモリに格納し、ステップS6において、偏光フィルタ21をその回転角に停止させる。
【0031】
ステップS7において、制御部15は、偏光フィルタ21の回転調整が完了した状態で、フォーカス制御部11dを介して、フォーカスレンズ11cを駆動変位してフォーカス制御を行う。この後、制御部15は、ステップS8において、操作部18を構成するシャッタ釦が最後まで押されたとき、そのときの画像データを撮像し、内部メモリ16及び/又は外部メモリ17に保存する。」(段落【0025】ないし【0031】)
(f)「【0033】
次に、本発明の他の例として、自動的に、光路上に偏光フィルタ21を挿入し、偏光フィルタ21の回転角を調整して被写体像を撮像する一連の手順について、図6を参照して説明する。すなわち、ここで説明する処理は、ショーウィンドウモードを選択するまでもなく通常撮影モードにおいて、被写体像を撮像する一連の操作の中でディジタルスチルカメラ1が偏光フィルタ21の必要性の有無を判断し、偏光フィルタ21が必要なとき、最適な回転角に偏光フィルタ21を調整するものである。」(段落【0033】)
(g)「【0038】
…(中略)… 所定時間偏光フィルタ21を回転し、所定時間内において輝度信号の最小値を検出し、その最小値の回転角で偏光フィルタの回転を停止するようにしても良い。これにより、所定時間内における反射成分を考慮して偏光フィルタ21を最適な回転角にすることができる。…(後略)… 」(段落【0038】)

3-2-2.引用文献2に記載された発明
上記3-2-1.及び図面の記載を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
「偏光手段を回転可能に備えたカメラ等の撮像装置において、
前記偏光手段を介して撮像した撮像素子の画像データの輝度値が最小となるように偏光手段を回転させ、ショーウィンドウや水面、ガラス張りの額等の反射光を除去し低減するようにした撮像装置。」

4.当審の判断
(1)本願発明と引用文献1に記載された発明との対比
本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比するに、引用文献1に記載された発明における「ウインドウ2」、「自動車1等の移動体のキャビン」、「カメラ3」、「第1偏光フィルタ6」、及び「第2偏光フィルタ7」は、それらの形状、構造及び機能からみて、それぞれ本願発明における「窓」、「閉空間」、「カメラ」、「第一の偏光手段」、及び「第二の偏光手段」に相当する。
そして、引用文献1に記載された発明における「被写体8を撮影する」は、「対象を撮影する」という限りにおいて、本願発明における「監視対象を監視する」に相当する。したがって、引用文献1に記載された発明における「キャビン内撮影装置」は、「撮影装置」という限りにおいて、本願発明における「映像監視装置」に相当する。
なお、引用文献1に記載された発明において、「カメラ3で撮影した映像上で第2偏光フィルタ7に対応する領域」は、「カメラ3で撮影した映像上における一部分の領域である」ことは明らかである。

したがって、本願発明と引用文献1に記載された発明は、
「外部を見ることが可能なように窓が設けられた閉空間内で対象を撮影する撮影装置において、
前記窓が視野に入るように設置されたカメラと、
前記カメラと前記対象との間に設置した第一の偏光手段と、
前記窓に設置した第二の偏光手段とを備え、
前記カメラで撮影した映像上で前記第二の偏光手段に対応する領域は、前記カメラで撮影した映像上における一部分の領域である撮影装置。」
の点で一致し、次の(ア)及び(イ)の点で相違する。
(ア)本願発明は「閉空間内で監視対象を監視する」「映像監視装置」であるのに対して、引用文献1に記載された発明は「キャビン内の状況や搭乗者の状態を把握あるいはモニターする」「キャビン内撮影装置」である点(以下、「相違点1」という。)。
(イ)本願発明においては、「カメラで撮影した映像上で第二の偏光手段に対応する領域の平均輝度を算出するとともに、平均輝度が最小となるように第一の偏光手段の偏光方向を調整できるように支援する偏光調整支援手段」を備え、この偏光調整支援手段による平均輝度の算出に関しては、「カメラで撮影した映像上で第二の偏光手段に対応する領域のうちのさらに一部分の位置を示すあらかじめ設定された輝度測定領域において輝度を測定して、平均輝度を算出している」のに対し、引用文献1に記載された発明においては、第1偏光フィルタ6と第2偏光フィルタ7はそれらの偏光方向が直交するように設置されているにすぎず、(第2偏光フィルタ7に対応する領域の平均輝度が最小となるように第1偏光フィルタの偏光方向を調整するための)本願発明における「偏光調整支援手段」に相当するもの及び(第2偏光フィルタ7に対応する領域の平均輝度を算出するための)輝度測定領域等に関してはなんら特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

(2)相違点1及び2についての検討
(ア)相違点1について
「外部を見ることが可能なように窓が設けられた閉空間内で監視対象を監視する映像監視装置」は、本願の出願前に従来から周知の技術である(以下、「周知技術1」という。必要があれば、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-324726号公報を参照のこと。)。
そして、引用文献1に記載された発明において、周知技術1を適用することにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明しうる程度のものである。
(イ)相違点2について
まず、カメラ等の撮像装置において、その光軸上に2つの偏光手段を配設し、一方の偏光手段を他方の偏光手段に対して回転可能に設定し、一方の偏光手段を回転させてそれらの偏光方向を調整することにより、2つの偏光手段を介してカメラ等の撮影装置に入ってくる光量を調整または減少させ、あるいは、撮影対象物の輝度を調整しうるように構成することは、本願の出願前に従来から周知の技術(以下、「周知技術2」という。必要ならば、例えば、特開昭63-197177号公報(第1頁左下欄5ないし15行の「特許請求の範囲」、第2頁右上欄4行ないし同頁左下欄2行及び第1図参照)及び特開2001-160919号公報(段落【0008】及び【0009】、段落【0021】並びに図1参照)を参照のこと。)である。
したがって、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用し、その適用に際して、周知技術2を考慮することにより、映像監視装置におけるカメラ等の第一の偏光手段を第二の偏光手段に対して回転可能に設定し、第二の偏光手段を通ってカメラ等に対して差し込む外光を第一の偏光手段により遮断するように、カメラで撮影した映像上における第二の偏光手段に対応する領域の輝度が最小となるように第一の偏光手段を回転させてその偏光方向を調整できるように構成し、映像監視装置の設置に際しての第一及び第二の偏光手段の調整を支援する手段とすることは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明しうる程度のものである。
また、偏光調整支援手段における平均輝度を算出するための輝度測定領域について検討するに、カメラ等の撮像装置において、カメラに入る光量あるいは撮影対象物等の輝度を制御するために光量や輝度を測定する際に、その光量や輝度を測定する測定対象領域を撮影映像あるいは撮影対象物の全部とするような構成、また、光量や輝度を測定する測定対象領域を撮影映像あるいは撮影対象物における適宜設定しうる所望の一部分とする構成は、いずれも、本願の出願前に従来から周知の技術(以下、「周知技術3」という。必要ならば、例えば、特開平10-145668号公報(段落【0008】及び【0009】、段落【0024】ないし【0026】等の記載参照)及び特開昭58-153465号公報(第1頁左下欄18行ないし同頁右下欄4行、第2頁左上欄10行ないし同頁右上欄9行及び第3頁右下欄2ないし5行参照)を参照のこと。)である。そして、測定対象領域を撮影映像あるいは撮影対象物の全体とするか、撮影映像あるいは撮影対象物における適宜設定しうる所望の一部分とするかは、当業者が必要に応じて適宜選定しうる程度の技術事項である。してみると、偏光調整支援手段におけるカメラで撮影した映像上で第二の偏光手段に対応する領域の平均輝度を算出するための輝度測定領域を、映像上での第二の偏光手段に対応する領域全体とすることなく、映像上での第二の偏光手段に対応する領域のうちのさらに一部分の位置を示すあらかじめ設定された領域として、その領域において輝度を測定して平均輝度を算出するように構成することは、当業者が適宜設定しうる程度のものである。
したがって、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用し、その適用に際して、周知技術2及び3を考慮することにより、前記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に想到し発明しうる程度のものである。

しかも、本願発明は、全体構成でみても、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-21 
結審通知日 2011-01-25 
審決日 2011-02-07 
出願番号 特願2007-32838(P2007-32838)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
河端 賢
発明の名称 映像監視装置  
代理人 井上 学  
代理人 井上 学  

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