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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B |
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管理番号 | 1234446 |
審判番号 | 不服2008-32189 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-19 |
確定日 | 2011-03-25 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第299239号「積層体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月12日出願公開、特開平10-119207〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年10月24日の出願であって、平成17年10月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年1月18日付けで拒絶理由が通知され、同年3月22日に意見書が提出され、平成20年5月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日に意見書が提出されたところ、同年11月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月19日に審判請求がされ、平成21年1月16日に審判請求書の手続補正書が提出され、平成22年7月8日付けで、当審において拒絶理由が通知され、同年9月10日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成17年12月19日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。また、該補正後の明細書を「本願明細書」という。)は、次のとおりのものである。 「基材フィルムの一方の面に、線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマー、又は、線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマ-と低密度ポリエチレンのブレンド物からなる支持層と、メタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した低密度ポリエチレンとオレフィン系エラストマー、又は、線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマーのブレンド物からなるヒートシール層とが順に積層されていることを特徴とする積層体。」 第3 当審で通知した拒絶理由 当審で通知した拒絶理由は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 第4 刊行物及び記載事項 当審で通知した拒絶理由において、刊行物1、2として挙げられた刊行物は以下のとおりであり、以下に示す事項が記載されている。 刊行物1:実願平1-86175号(実開平03-26537号)の マイクロフィルム 刊行物2:特開平6-270356号公報 1 刊行物1: (1a)「低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレンとを重量比で10:1?10:20で混合した樹脂よりなる中間層を介して直鎖低密度ポリエチレンよりなるシーラント層を基材に積層してなることを特徴とする包材。」(実用新案登録請求の範囲) (1b)「本考案は包材に関し、特に液体スープ等の如き液体食品の包装用として好適な包材に関する。」(1頁12?13行) (1c)「[実施例] 以下、本発明の一実施例を図面に基き説明する。 第1図に示すように本考案の包材1は、基材2の片面に必要に応じて設けたアンカーコート層3を介して中間層4、シーラント層5を順次積層した構成を有する。」(3頁9?14行) (1d)「本発明の包材1において中間層4は低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)とが重量比で10:1?10:20」(4頁9?12行) (1e)「シーラント層5を構成するLLDPE中には必要により、エチレンプロピレンゴム等のゴム類を添加して低温ヒートシール性、ホットタック性向上を図ることもできる。」(5頁1?5行) (1f)「実施例1 ・・・中間層を形成した後、・・・シーラント層を形成して包材とした。この包材により袋を作成し、この袋内に液体スープを包装したが、袋内の内圧によってシール部分が剥離して破袋することがなく、充分な耐圧強度を有していた。」(5頁13行?6頁11行) (1g)「本考案の包材よりなる包装体はシール強度が高く、液体スープ等の液体製品を包装した場合にも、包装された製品の圧力によってシール部が剥離する虞れがない優れた耐圧強度を有する。」(7頁4?7行) 2 刊行物2: (2a) 「外層が2軸延伸されたポリオレフィン樹脂からなり、中間層が柔軟性ポリオレフィン樹脂層からなり、内層が耐熱性ポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする多層フィルム。」(特許請求の範囲の請求項1) (2b)「*中間層としては、高い柔軟性と透明性を兼ね備えたポリオレフィン樹脂の層を配する。該ポリオレフィンとしては、密度0.920g/cm^(3) 以下、好ましくは密度0.905g/cm^(3) 以下の直鎖状エチレン・α-オレフィン共重合体(LLDPE)が用いられ、特にエチレン・α-オレフィン系エラストマー又はそれを配合した樹脂組成物を用いるのがより好適である。いずれの場合も、柔軟性ポリオレフィン樹脂層の厚みは全体の60?85%とするのがよい。」(段落【0007】) (2c)「本発明による多層フィルム及び容器は、 *高圧蒸気滅菌や熱水滅菌などの高温滅菌に耐え得る *フィルム全体の厚みを薄くすることができる *引っ張り強度が優れ高速で製袋が可能である *ブロッキングを起こしにくい *高温で短時間でヒートシールができ、シール性も良好である *すぐれた柔軟性や透明性を維持できる などの利点を有し、輸液バッグ、血液バッグなどの医療用容器として好ましく用いることができる。」(段落【0014】) 第5 当審の判断 1 引用発明 刊行物1には、「低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレンとを重量比で10:1?10:20で混合した樹脂よりなる中間層を介して直鎖低密度ポリエチレンよりなるシーラント層を基材に積層してなることを特徴とする包材。」(摘示(1a))について記載されるところ、該包材は、より具体的には「基材2の片面に必要に応じて設けたアンカーコート層3を介して中間層4、シーラント層5を順次積層した構成を有する」ものであり(摘示(1c))、「シーラント層5を構成するLLDPE中には必要により、エチレンプロピレンゴム等のゴム類を添加して低温ヒートシール性、ホットタック性向上を図ることもできる」(摘示(1e))ものであって、ここで、「LLDPE」とは「直鎖低密度ポリエチレン」のことである(摘示(1d))。 そうしてみると、刊行物1には、 「基材の片面に、低密度ポリエチレンと直鎖低密度ポリエチレンとを重量比で10:1?10:20で混合した樹脂よりなる中間層を介して、直鎖低密度ポリエチレンにエチレンプロピレンゴム等のゴム類を添加したシーラント層を基材に積層してなる包材」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 2 対比 (1)本願発明と引用発明のポリエチレンに関する用語の整理 本願発明と引用発明とを対比するにあたり、両者ともに、ポリエチレンについて同じような語が使われているので、ここで、用語を整理する。 ア 「ポリエチレン」に関し、本願発明においては、「線状ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」、「メタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した低密度ポリエチレン」の3種類の用語が使われ、また、引用発明においては、「直鎖低密度ポリエチレン」、「低密度ポリエチレン」の2種類の用語が使われている。 イ 本願発明の「線状ポリエチレン」は、本願明細書の段落【0002】に、「チーグラー・ナッター系マルチサイト触媒を用いて重合した線状ポリエチレン(以下LLDPEと記載する。)」と記載されているから、略号で表すと「LLDPE」であり、本願明細書の段落【0025】の記号に従えば、「LL」である。 また、本願発明の「低密度ポリエチレン」は、本願明細書の段落【0003】に、「従来のチーグラー・ナッター触媒を用いた低密度ポリエチレン(以下LDPEと記載する。)」と記載されているから、略号で表すと「LDPE」であり、本願明細書の段落【0025】の記号に従えば、「LD」である。 さらに、本願発明の「メタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した低密度ポリエチレン」は、本願明細書の段落【0025】の記号に従えば、「S1」または「S2」であるので、以下、「S」とし、本願発明の「オレフィン系エラストマー」は、本願明細書の段落【0025】の記号に従えば「OE」である。 ウ 引用発明においては、摘示(1d)に示したように、「直鎖低密度ポリエチレン」は「LLDPE」であり、「低密度ポリエチレン」は「LDPE」であるところ、当業界において、略号「LLDPE」も「LDPE」も、普通に使用されるものであり、その略号の意味するところは当業者に周知であって、同じ略号で表されれば同じもの、といえるから、引用発明の「直鎖低密度ポリエチレン」は「LL」、「低密度ポリエチレン」は「LD」であるといえる。 (2)本願発明と引用発明の書き換え そこで、本願発明と引用発明とを、(1)に示した記号を使って書き換えると、以下のようになる。 本願発明 「基材フィルムの一方の面に、LLとOE、又は、LLとOEとLDのブレンド物からなる支持層と、SとOE、又は、LLとOEのブレンド物からなるヒートシール層とが順に積層されていることを特徴とする積層体。」 引用発明 「基材の片面に、LDとLLとを重量比で10:1?10:20で混合した樹脂よりなる中間層を介して、LLにエチレンプロピレンゴム等のゴム類を添加したシーラント層を基材に積層してなる包材」 (3)対比 そこで両者を対比する。 引用発明の「包材」は、基材、中間層、シーラント層からなり、「基材2の片面に必要に応じて設けたアンカーコート層3を介して中間層4、シーラント層5を順次積層した構成」(摘示(1c))なのであるから、積層体であり、本願発明の「積層体」は、基材フィルム、支持層、ヒートシール層からなる積層体であるところ、引用発明の「シーラント層」は、ヒートシールするための層であり(摘示(1e))、引用発明の中間層も本願発明の支持層も、LLとLDのブレンド物を用いるものを含み、引用発明の「基材」は本願発明の「基材フィルム」に相当するといえる。 そうすると、引用発明の「基材」、「中間層」、「シーラント層」は、本願発明の「基材フィルム」、「支持層」、「ヒートシール層」にそれぞれ相当し、引用発明の「包材」は、本願発明の「積層体」に相当する。 また、本願発明の「OE」は、本願明細書に「本発明に使用するオレフィン系エラストマーは、・・・。具体的には、エチレン・プロピレン系共重合体や、プロピレン・1ーブテン系共重合体がある。」(段落【0012】)と記載されていることからすると、引用発明の「エチレンプロピレンゴム等のゴム類」とその範囲が重なるから、引用発明の「エチレンプロピレンゴム等のゴム類」は、本願発明の「OE」に相当する。 以上のことからすると、両者は、 「基材フィルムの一方の面に、LLとLDのブレンド物を用いる支持層と、LLとOEのブレンド物からなるヒートシール層とが順に積層されていることを特徴とする積層体。」 である点で一致し、 (i)「LLとLDのブレンド物」が、本願発明においては、量割合について特定されていないのに対し、引用発明においては、「LDとLLとを重量比で10:1?10:20で混合した」ものである点、 (ii)「ブレンド物を用いる支持層」が、本願発明においては、さらに「OEが含まれている」ものであるのに対し、引用発明においては、「OEが含まれている」ものではない点、 で、相違する。 なお、本願発明は、支持層として、「LLとOE」の場合と「LLとOEとLD」の場合とがあり、ヒートシール層として、「SとOE」の場合と「LLとOE」の場合とがあるが、上記対比は、支持層が「LLとOEとLD」であって、ヒートシール層が「LLとOE」である積層体について、引用発明と対比したものである。 3 判断 (1)相違点(i)について 本願明細書の段落【0027】?【0028】の【表1】?【表2】には、具体的に実施例が記載されており、「LL」欄が「LL」の配合量、「LD」欄が「LD」の配合量であるところ、実施例6においては、LL:LDが40:40であり、実施例8においては、LL:LDが30:50であって、引用発明との間に差異はない。 これらの実施例において、この配合比が重量比であるとの記載はされていないが、本願明細書の段落【0025】に、「LL:チーグラー・ナッター系触媒を用いて重合したエチレン・1オクテン系のLLDPE(出光石油化学(株)製、密度0.923、・・・ LD:LDPE(三井石油化学工業(株)製)密度0.915/cm^(3) ・・・」とその密度が記載されており、上記実施例において、仮に体積比で40:40あるいは30:50とされていたとしても、その重量比は、やはり引用発明の範囲内といえる。 したがって、相違点(i)は、実質的に相違していない。 (2)相違点(ii)について 引用発明は、「液体スープ等の如き液体食品の包装用として好適な包材」(摘示(1b))であって、液体スープ等の如き液体食品を包装するにあたり、その包材に柔軟性が求められることも、柔軟性を得るためにゴム等のエラストマーを材料中に含ませることも、当業者の技術常識といえる。 ところで、刊行物2には、「外層が2軸延伸されたポリオレフィン樹脂からなり、中間層が柔軟性ポリオレフィン樹脂層からなり、内層が耐熱性ポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする多層フィルム。」(摘示(2a))が記載され、これは、輸液バッグや血液バッグなどに用いるものである(摘示(2c))ところ、その中間層について、「高い柔軟性と透明性を兼ね備えたポリオレフィン樹脂の層を配する。該ポリオレフィンとしては、密度0.920g/cm^(3) 以下、好ましくは密度0.905g/cm^(3) 以下の直鎖状エチレン・α-オレフィン共重合体(LLDPE)が用いられ、特にエチレン・α-オレフィン系エラストマー又はそれを配合した樹脂組成物を用いるのがより好適である。」(摘示(2b))と記載されている。 これを詳細にみるに、高い柔軟性を得るには、(1)LLDPEが用いられること、(2)特にエチレン・α-オレフィン系エラストマーを用いるのが好適であること、また、(3)特にそれを配合した樹脂組成物、すなわち、エチレン・α-オレフィン系エラストマーを配合した樹脂組成物を用いるのが好適であること、が記載されており、エチレン・α-オレフィン系エラストマーはオレフィン系エラストマーであるから、刊行物2には、3層を含む積層体の中間の層にオレフィン系エラストマーを含ませて、輸液バッグや血液バッグのような液体に用いられる、柔軟性のある積層体とすることが記載されている。 そうしてみると、液体スープ等の液体食品の包材とするのに、3層を含む積層体の中間の層にオレフィン系エラストマーであるOEを含ませて柔軟性のある積層体とすること、すなわち、引用発明において、「ブレンド物を用いる支持層」を、「OEが含まれている」ものとすることは、当業者にとって容易である。 (3)本願発明の効果について 本願発明の効果は、本願明細書の段落【0032】に記載されているように、「薄膜の低温ヒートシール性及び耐圧強度に優れたCoEx層をもつ積層体を製造する」というものであるといえる。 しかしながら、引用発明においても、(1e)に摘示したように、「シーラント層5を構成するLLDPE中に」「エチレンプロピレンゴム等のゴム類」、すなわち、OEを添加して「低温ヒートシール性」の高いものとしており、さらには、引用発明においてもすでに、「シール強度が高く、液体スープ等の液体製品を包装した場合にも、包装された製品の圧力によってシール部が剥離する虞れがない優れた耐圧強度を有する」ものである(摘示(1g))。 そうしてみると、引用発明は、本願発明に比して、支持層にOEが加えられていないにもかかわらず、本願発明と同様の効果を奏しているといえる。 また、支持層におけるOEの有無とそれに基づく効果の差異について、さらに検討する。 本願明細書に記載された実施例1?実施例14の試料についてみるに(段落【0027】?【0028】)、実施例8は、支持層として、OEとLLとLDが含まれ、一方、実施例11は、支持層として、LLとLDが含まれているから、これらの例は、OEの有無の点で大きく異なるといえる。 しかしながら、本願明細書の段落【0031】の【表4】に示された「耐圧強度及び最低ヒートシール温度」をみると、実施例8と11は、ほぼ同じ耐圧強度及びヒートシール温度を有しているのであるから、本願発明について、支持層にOEが含まれていることによって、耐圧強度、最低ヒートシール温度に格別の効果が生じるのである、とすることはできない。 そうしてみると、支持層にOEを含まない引用発明に比して、支持層にOEを含む本願発明の効果を格別なものであるとすることはできない。 以上のことから、本願発明の効果は、刊行物1に記載されたものから当業者が予測し得る程度のものといわざるを得ない。 4 請求人の主張について 請求人は、平成22年9月10日付けの意見書において、「【本願発明が特許されるべき理由】1.(4).(ハ)-2.」において、引用文献1(刊行物1に同じ)との差異について、主として次の(1)?(3)の主張をしている。 (1)引用文献1に記載の発明は、上記のような技術的思想に係るものであることから、本願の請求項1-3に係る発明の『(A)?(M)』からなる構成要件、特に、『(B)』、『(C)』からなる構成要件、すなわち、 『(B).線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマー、又は、線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマーと低密度ポリエチレンのブレンド物からなる支持層』 『(C).メタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した低密度ポリエチレンとオレフィン系エラストマー、又は、線状ポリエチレンとオレフィン系エラストマーのブレンド物からなるヒートシール層』 からなる構成要件について、更に詳述すると、本願の請求項1-3に係る発明の、特に、『(B).・・・支持層』と『(C).・・・ヒートシール層』とを構成するに際し、 『(B).・・・オレフィン系エラストマー・・・のブレンド物・・・』 『(C).・・・オレフィン系エラストマー・・・のブレンド物・・・』、すなわち、両層を構成するに際し、その両者の層を、『オレフィン系エラストマー』を添加した『ブレンド物』を使用して構成することからなる構成要件について全く何ら記載/示唆していないものである。 (2)なお、引用文献1に記載の発明は、『シ-ラント層』について、 『直鎖低密度ポリエチレンにエチレン-プロピレンゴム等のゴム類を添加したシ-ラント層』 で構成するという技術的事項が記載されているが、これは、『シ-ラント層』のみを構成するに際し、『・・・エチレン-プロピレンゴム等のゴム類を添加した・・・』 という技術的事項に係るものであり、本願の請求項1-3に係る発明のように、 『(B).・・・支持層』と『(C).・・・ヒートシール層』とを構成するに際し、 『(B).・・・オレフィン系エラストマー・・・のブレンド物・・・』 『(C).・・・オレフィン系エラストマー・・・のブレンド物・・・』、すなわち、両層を構成するに際し、その両者の層を、『オレフィン系エラストマー』を添加した『ブレンド物』を使用して構成することからなる構成要件とはその技術的事項を全く別異にするものである。 (3)更に、引用文献1に記載の発明は、『シ-ラント層』について、 『直鎖低密度ポリエチレン』 を必須成分とするのに対し、本願の請求項1-3に係る発明は、 『(C).メタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した低密度ポリエチレン・・・、又は、線状ポリエチレン・・・』 を必須成分とするものであり、この点においても、本願の請求項1-3に係る発明と引用文献1に記載の発明とは全く相違するものである。 これらの主張を検討する。 引用発明は、上記1に示したとおりであるところ、引用発明の「エチレンプロピレンゴム等のゴム類」が、OEに相当するものであることは、上記2(3)に示したとおりであり、本願発明と引用発明との相違点は、上記2(3)に示した(i)、(ii)であって、ヒートシール層にOEが含まれている点は、相違点とはならない。 そうすると、「その両者の層を、『オレフィン系エラストマー』を添加した『ブレンド物』を使用して構成することからなる構成要件について全く何ら記載/示唆していない」という上記(1)の主張も、「その両者の層を、『オレフィン系エラストマー』を添加した『ブレンド物』を使用して構成することからなる構成要件とはその技術的事項を全く別異にするものである」という上記(2)の主張も、当を得ておらず、しかも、引用発明の「シーラント層」は、上記1に示したように、「直鎖低密度ポリエチレンにエチレンプロピレンゴム等のゴム類を添加したシーラント層」であるから、「引用文献1に記載の発明は、『シ-ラント層』について、『直鎖低密度ポリエチレン』を必須成分とするのに対し」という前提に立つ上記(3)の主張も、採用できない。 したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。 5 まとめ 本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余のことを検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-20 |
結審通知日 | 2011-01-25 |
審決日 | 2011-02-07 |
出願番号 | 特願平8-299239 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸 進 |
特許庁審判長 |
西川 和子 |
特許庁審判官 |
小出 直也 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 積層体及びその製造方法 |
代理人 | 金山 聡 |