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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1234518
審判番号 不服2008-31906  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-17 
確定日 2011-03-30 
事件の表示 特願2002-560796「圧延用帯鋼の形状を調整するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 8日国際公開、WO02/60611、平成16年 7月 8日国内公表、特表2004-520169〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2002年1月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年2月1日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成15年7月31日付けで特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出されるとともに同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面、及び要約の翻訳文並びに同法第184条の8第1項に規定する補正書の翻訳文が提出され、平成19年6月14日付けで拒絶理由が通知され、同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年9月18日付けで拒絶査定がなされ、同年12月17日付けで同拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年12月22日付けで審判請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年12月13日付け手続補正書並びに平成15年7月31日付けで提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも1つのロールスタンド内で圧延される圧延用帯鋼の形状を制御するための方法において、圧延用帯鋼をロールスタンドまたは第1ロールスタンドに通す前に、圧延用帯綱が、帯綱の両側に配置されるU形囲いを通って帯綱の対向するエッジ領域上に案内され、圧延用帯鋼の両側の帯鋼エッジ領域がU形囲いの内部で液体窒素の働きによって強く冷却されることを特徴とする方法。」

第3 引用文献及び周知文献
1 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭60-170508号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「[産業上の利用分野]
本発明は圧延材幅端部のクラウンを制御し得るようにした圧延方法及びその装置に関するものである。」(第1ページ左下欄第14ないし17行)

(2)「[発明の目的]
本発明は、圧延機で圧延した後の圧延材両端にエッジドロップが生じたり、或いは圧延材両端に耳が生じたりするのを防止して圧延材幅端部の板クラウンを最適にし得るようにすることを目的としてなしたものである。」(第2ページ左上欄第6ないし11行)

(3)「[発明の構成]
本発明では、ロール端部にテーパーを有し且つ軸線方向へシフトし得るようにした圧延機において、圧延材幅端部を加熱若しくは冷却する装置を設け、圧延条件により前記幅端部を加熱若しくは冷却した後圧延を行うようにしている。従って、圧延材幅端部の板クラウンを最適な形状にすることが可能となる。」(第2ページ左上欄第12ないし19行)

(4)「本発明に使用する圧延機の基本的構成は第2図に示すものと略同じで、第4図に示す作業ロール1,2は適宜の手段でロール軸線方向へシフトし得るようになっており、・・・(中略)・・・スタンド入側にはサイドガイド11が配設されている・・・(中略)・・・サイドガイド本体15には、圧延材幅端部両側を加熱するための加熱装置16及び圧延材幅端部両側を冷却するための冷却装置17が設けてある。・・・(中略)・・・実際には加熱装置16、冷却装置17の何れも左右のサイドガイド本体15に設けられ、圧延材幅端部の両側を加熱若しくは冷却し得るようになっている。・・・(中略)・・・冷却装置17の冷却流体としては、油、水等が用いられる。」(第2ページ右上欄第3行ないし左下欄第9行)

また、以下の事項を認定することができる。
(5)上記(1)ないし(3)から、引用文献記載の方法は、圧延材の形状を制御するための方法であることを認定することができる。

上記(1)ないし(4)の記載事項、(5)の認定事項、及び図面の記載からみて、引用文献には次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「作業ロール1,2内で圧延される圧延材の形状を制御するための方法において、圧延材を作業ロール1,2に通す前に、圧延材の両側の圧延材幅端部が油、水等の冷却流体の働きによって冷却される方法。」

2 周知文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭55-86602号公報(以下、「周知文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「この発明は圧延後の冷延鋼帯に局部伸びをもたらすべき鋼帯の幅方向部分に、圧延機スタンドの入側で冷却媒体による冷却を施して該部分の変形抵抗を大きくすることによって、圧延後の局部伸びの発生ないしは残留を効果的に防止する調質圧延方法を提供しようとするものである。
このときの冷却の手段としては、ウエツトスキンパスでは、低温の調質液、ドライスキンパスでは脱湿空気,液体窒素等の流体を冷却媒体として用いる。」(第2ページ右上欄第6ないし15行)

3 周知文献2
本件出願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭56-74301号公報(以下、「周知文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「本発明の目的は、鋼帯圧延時におけるエツジ・ドロツプの発生傾向を効果的に、かつ低コストで防止させる手段を提供し、これによつて鋼帯の品質向上を図ることにある。
本発明の主眼は、・・・(中略)・・・エツジ部を局部的に冷却させる構成に特徴がある。」(第1ページ右下欄第7ないし17行)

4 周知文献3
本件出願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開平11-57839号公報(以下、「周知文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0007】
【課題を解決するための手段】・・・(中略)・・・
また、前記冷却工程において、鋼板端部の耳波状部に対し、鋼板の上下又はそのいずれか一方から耳波状の鋼板端部に向けて冷却水を噴射することにより、同耳波状部のみを冷却することを特徴とする。」(【0007】)

(2)「【0021】[第2実施例]図4は、第2実施例としての鋼板端部の冷却装置の説明図である。
【0022】この実施例では、鋼板端部へ向けて噴射した冷却水が、鋼板中央部方向へ流れ込まないようにスクレーパを配置した構成としたものである。
【0023】図4において、5は鋼板1を挟んで冷却室2の上部及び下部から垂直方向に設けられたスクレーパで、スプレーノズル3から鋼板1端部へ向けて噴射した冷却水が、鋼板1中央部方向へ流れ込まないようにスプレーノズル3に近接して装着され、鋼板1側の先端は、できるだけ隙間を小さくし冷却水の漏洩を少なくしている。その他の構成は、前記第1実施例の図1?2と略同一となっている。
【0024】このようにして本実施例では、図4で示すように、冷却室2の上部及び下部に配置されたスプレーノズル3から鋼板1端部へ向けて冷却水が噴射されると、噴射された冷却水の一部が鋼板1中央部方向へ流れ込もうとしても、スクレーパ5によって阻止されるので、噴射された冷却水が鋼板1端部方向へ有効に作用し、鋼板1端部に発生していた耳波量をさらに低減させることができる。その他の作用・効果は前記第1実施例の作用・効果と略同一である。」(【0021】ないし【0024】)

第4 対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比する。

引用文献記載の発明における「作業ロール1,2」は、その機能、構成、又は技術的意義からみて、本願発明における「少なくとも1つのロールスタンド」及び「ロールスタンドまたは第1ロールスタンド」に相当する。
また、引用文献記載の発明における「圧延材」は本願発明における「圧延用帯鋼」と「圧延材」である限りで一致する。
さらに、本願発明における「帯鋼エッジ領域」が「帯鋼」の幅端部を指すことは明らかであるから、引用文献記載の発明における「圧延材幅端部」は本願発明における「帯鋼エッジ領域」と「圧延材幅端部」である限りで一致する。
さらにまた、「液体窒素」は「冷却流体」の一種であるから、引用文献記載の発明における「油、水等の冷却流体の働きによって冷却される」は本願発明における「液体窒素の働きによって強く冷却される」と「冷却流体の働きによって冷却される」である限りで一致する。
したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、以下の点で一致する。

「少なくとも1つのロールスタンド内で圧延される圧延材の形状を制御するための方法において、圧延材をロールスタンドまたは第1ロールスタンドに通す前に、圧延材の両側の圧延材幅端部が冷却流体の働きによって冷却される方法。」

そして、以下の2点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、「圧延材」が「圧延用帯鋼」であり、「圧延材」である「圧延用帯綱」が、「帯綱の両側に配置されるU形囲いを通って帯綱の対向するエッジ領域上に案内され、圧延用帯鋼の両側の帯鋼エッジ領域がU形囲いの内部」で「冷却される」ものであるのに対し、
引用文献記載の発明では、「圧延材」が「圧延用帯鋼」であるか不明であり、「圧延材」の両側の圧延材幅端部が冷却されるものであるものの、「圧延材」は、「圧延材の両側に配置されるU形囲いを通って圧延材の対向するエッジ領域上に案内され、U形囲いの内部」で「冷却される」ものではない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「冷却流体の働きによって冷却される」に関して、
本願発明では、「冷却流体」が「液体窒素」であり、「冷却される」が「強く冷却される」であるのに対し、
引用文献記載の発明では、「冷却流体」は「油、水等の冷却流体」であり、「冷却される」は「強く冷却される」ものであるか不明な点(以下、「相違点2」という。)。

第5 当審の判断
そこで、上記相違点1及び2について、以下に検討する。

1 相違点1について
周知文献1及び2に記載されているように、「圧延材」として「圧延用帯鋼」は周知(以下、「周知技術1」という。)である。
また、平成20年12月22日付け手続補正書の「このU形囲いの存在により、帯鋼のエッジ領域への冷却が非常に集中的に行われるからであります。すなわち、冷却手段がU形囲いによって帯鋼端縁に直接向けられ、しかも、帯鋼端縁にしか向けられないからであります。」という記載からみて、本願発明において、「圧延用帯綱」が、「帯綱の両側に配置されるU形囲いを通って帯綱の対向するエッジ領域上に案内され、圧延用帯鋼の両側の帯鋼エッジ領域がU形囲いの内部で冷却される」ようにされていることの機能は、冷却媒体である液体窒素が、帯鋼端縁に直接向けられ、しかも、帯鋼端縁にしか向けられないようにすることといえる。
一方、帯鋼を、帯鋼周囲を囲う部材に通し、該囲う部材の内部で帯鋼エッジ領域に冷却媒体を吹き付けることによって、上記と同様の機能が果たされることは、周知文献3に記載されているように周知(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、帯鋼周囲を囲う部材の形状をどのようにするかは、上記機能を損なわない範囲で当業者が適宜決めるべき設計的事項にすぎず、帯鋼周囲を囲う部材の形状を帯鋼の端部を囲むU形とすることに格別困難性はない。
したがって、引用文献記載の発明において、周知技術1及び2を適用し、「圧延材」を「圧延用帯鋼」とし、「圧延用帯綱」が、「帯綱の両側に配置されるU形囲いを通って圧延材の対向するエッジ領域上に案内され、U形囲いの内部」で「冷却される」ようにすることによって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到したことである。

2 相違点2について
周知文献1に記載されているように、「冷却流体」として「液体窒素」は周知である(以下、「周知技術3」という。)。また、「冷却流体」として「液体窒素」を使用すれば「強く冷却される」ことは当業者であれば容易に予測できることである。
したがって、引用文献記載の発明において、周知技術3を適用し、「冷却流体」を「液体窒素」とし、「冷却される」を「強く冷却される」とすることによって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到したことである。

3 本願発明の効果について
そして、本願発明を全体としてみても、本願発明のようにしたことにより奏するとされる効果は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3からみて格別のものともいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-02 
結審通知日 2010-11-05 
審決日 2010-11-16 
出願番号 特願2002-560796(P2002-560796)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小谷内 章  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 加藤 友也
田村 耕作
発明の名称 圧延用帯鋼の形状を調整するための方法  
代理人 吉田 尚美  
代理人 深川 英里  
代理人 奥山 尚一  
代理人 岡本 正之  
代理人 中村 綾子  
代理人 河村 英文  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 森本 聡二  
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