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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1234635
審判番号 不服2007-19863  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-17 
確定日 2011-02-28 
事件の表示 平成9年特許願第504410号「非食品無生物表面用のクリーニング/消毒法、組成物および/または物品」拒絶査定不服審判事件〔平成9年1月16日国際公開、WO97/01621、平成11年7月27日国内公表、特表平11-508618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1996年5月24日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 1995年6月27日 米国(US)〕を国際出願日とする出願であって、平成9年12月24日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、平成13年4月9日付けで手続補正がなされ、平成15年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成16年2月4日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成16年8月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成17年2月8日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、平成19年3月30日付けで平成17年2月8日付けの手続補正の補正の却下が決定されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年8月15日付けで手続補正がなされ、その後、平成20年9月29日付けの審尋に対し、指定期間内に回答書の提出がなされなかったものである。

2.平成19年8月15日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月15日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成19年8月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について、平成19年8月15日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由において、審判請求人は、『なお、今回の補正は、補正却下を争わずに、平成16年2月4日付で補正された明細書に基づき補正したものであります。具体的には、平成16年2月4日付の補正後の請求項2?6と8?9を請求項1に加入し、pH範囲を平成16年2月4日付で補正された明細書の第6頁第19行、第8頁第5行等に基づき11.5?12.3とする補正および、明細書中の不明瞭とされた部分を明瞭とするための補正、(本願発明を、非食品無生物表面用の殺菌/消毒法に限定したことに伴い)食品表面に対する処理や、ロウの除去処理についての記載を明細書から削除する補正等ですので、今回の補正は適法な補正であると思料します。』との釈明をしているところ、本件補正は、平成16年2月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「1.非食品・食品接触無生物表面を、0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類またはそれらの混合物とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤を含み且つ11を超える塩基性pHを有するクリーニング水溶液と、1分を超える時間、接触させることを特徴とする、非食品・食品接触無生物表面上の微生物の量の減少法。」
を、
「【請求項1】
非食品・食品接触無生物表面を、0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類またはそれらの混合物とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤を含み且つ11.5?12.3の塩基性pHを有するクリーニング水溶液と、1分を超える時間、接触させることを特徴とする、非食品・食品接触無生物表面上の細菌の量の減少法であって、
前記クリーニング水溶液が、改善された触感を有し、且つ、
(a)オレイン酸カリウム0.75%?5%、
(b)オルトリン酸0.3?2重量%、
(c)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる有機ポリカルボン酸、
(d)分子量200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも0.05重量%、
(e)水を含む残部、
を含み、(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である、方法。」
に補正することを含むものである。

(2)補正の適否
ア.新規事項について
上記請求項1についての補正は、「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を、補正後の請求項1に組み入れる補正を含むものである。
この点に関して、平成20年3月4日付けの前置報告書においては、『ところで、外国語書面の翻訳文には、請求項8に「成分(a)がオレイン酸カリウムであり且つ(a):(b)の重量比が約1:2から約30:1の範囲内である、請求項6に記載の方法。」と記載され、請求項6に「前記クリーニング水溶液が、改善された触感を有し、且つ、(a)オレイン酸またはその塩少なくとも約0.75重量%、および(b)分子量約200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも約0.05重量%を含む」と記載されているように、「(a)オレイン酸カリウムと(b)分子量約200以上を有する水溶性ポリエチレングリコールの重量比が約1:2から約30:1の範囲内である」ことについては実質的に記載されているが、「(a)オレイン酸カリウムと(b)オルトリン酸の重量比が1:2から30:1の範囲内である」ことについては記載されていないし、また、自明でもない。』との報告がなされており、この点について、平成20年9月29日付けの審尋において、審判請求人の意見を事前に求めたところ、指定期間内に回答書の提出がなされなかったものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項として、当該「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を組み入れる補正が、『当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである』か否かについて、以下に検討する(参考判決:平18(行ケ)10563号)。
平成9年12月24日付けの特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付された外国語書面の翻訳文(同法第184条の4第1項の国際出願日における同法第184条の3第2項の国際特許出願の明細書の同法第184条の4第1項の翻訳文、及び国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文。以下、これらの翻訳文を「当初明細書」という。)の第28頁第12?20行には、
「6.前記クリーニング水溶液が、改善された触感を有し、且つ、
(a)オレイン酸またはその塩少なくとも約0.75重量%、および
(b)分子量約200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも約0.05重量%を含む、請求項4に記載の方法。…
8.成分(a)がオレイン酸カリウムであり且つ(a):(b)の重量比が約1:2から約30:1の範囲内である、請求項6に記載の方法。」との記載があり、当初明細書の第9頁第8?24行には、
「また、本発明は、
(a)C_(12)?C_(18)脂肪酸またはその塩少なくとも約0.1重量%、好ましくは約0.5?約8重量%、最も好ましくは約1?約5重量%、
(b)分子量約200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも約0.05重量%、好ましくは約0.1?約10重量%、最も好ましくは約0.25?約3.0重量%、
(c)中和オルトリン酸約0.1%?約5%、および
(d)水または水-エタノール流体担体
を含み、塩基性pHを有することを特徴とする果物および野菜をクリーニングするのに特に適している改善された触感を有する洗剤組成物を包含する。…
本発明の典型的な組成物は、成分(a)がオレイン酸カリウムであり且つ(a):(b)の重量比が約1:2から約30:1、好ましくは約1:1から約15:1の範囲内であるものである。」との記載がなされている。
しかして、これらの当初明細書に記載された「(a):(b)の重量比が約1:2から約30:1」という事項における「(b)」の意味するところは「(b)分子量約200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール」であるのに対して、補正後の請求項1に記載された「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項の「(b)」の意味するところは「(b)オルトリン酸」であることは、その文章の前後関係から明らかであるから、当初明細書の請求項8等に記載された「(a):(b)の重量比が約1:2から約30:1」という事項と、補正後の請求項1に記載された「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項については、全く別異のことを意味していると解さざるを得ない。
そして、当初明細書の第9頁第9?10行の「(a)C_(12)?C_(18)脂肪酸またはその塩…最も好ましくは約1?約5重量%」との記載、及び同頁第14行の「(c)中和オルトリン酸約0.1%?約5%」との記載を参酌し、なおかつ、(c)の百分率が重量%を意味しているものと仮定すれば、これらの記載から、「(a):(c)の重量比が1:5から50:1」という範囲を導き出し得るが、この「1:5から50:1」という範囲と、補正後の請求項1に記載された「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という範囲は、一部の範囲で重複しているものの、その上限及び下限の値において相互に整合性を欠いており、しかも、当初明細書の第9頁第16?17行の「果物および野菜をクリーニングするのに特に適している改善された触感を有する洗剤組成物」という形態における好適な範囲が開示されているにすぎないので、補正後の請求項1に記載された「非食品・食品接触無生物表面上の細菌の量の減少法」という形態における好適な範囲を直ちに意味しているとは解せない。
また、当初明細書の第22頁第1行?第26頁第21行に記載された例1?6の具体例についても、例1?5においては、「リン酸」1.00%に対して、「オレイン酸」を例1?2及び4において2.64%、例3において2.643%、例5において7.90%を配合したもののみが記載され、例6においては、「リン酸三カリウム(TKP)」48.8重量%に対して、「オレイン酸カリウム」36.7重量%を配合したもののみが記載されているにすぎないので、これら例1?6の具体例を参酌しても、補正後の請求項1に記載された「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を導き出し得ず、当該事項が、当業者にとって記載されているのと同然であると理解できる程度の常識的な事項に相当するものとも認められない。
したがって、上記請求項1についての補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものとはいえないので、特許法第184条の12第2項において読み替える同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

イ.目的要件について
次に、補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項として、当該「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を組み入れる補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項を目的とするものであるか否かについても、以下に検討する。
補正前の請求項4に係る発明は、「クリーニング水溶液が、オルトリン酸0.3?2重量%を含み且つ前記有機ポリカルボン酸がエチレンジアミン四酢酸であり、且つ前記クリーニング水溶液が11を超え12.5までのpHを有する、請求項3に記載の方法。」というものであり、補正前の請求項3に係る発明は、「前記クリーニング水溶液が(a)中性化されたオレイン酸0.05%?5%、を含む、請求項2に記載の方法。」というものであり、補正前の請求項2に係る発明は補正前の請求項1を引用する従属形式の発明であるところ、補正前の請求項4に係る発明は、補正前の請求項3の記載からみて、「中性化されたオレイン酸0.05%?5%」に対して、「オルトリン酸0.3?2重量%」を配合してなるものである。
そして、この場合の配合比は、中性化されたオレイン酸の百分率が重量%であると仮定した場合において、「(a)中性化されたオレイン酸:(b)オルトリン酸の重量比が1:4から約16.7:1」と換算されるから、当該「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項における重量比の範囲は、約16.7:1?30:1の範囲において範囲外となっている。なお、補正前の請求項1?12に係る発明において、オルトリン酸を、特許法第36条第5項の規定により「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」に含めていた発明は、補正前の請求項4及びその従属項に係る発明のみである。
そうしてみると、上記請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当せず、また、同1号に掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」、同3号に掲げる「誤記の訂正」ないし同4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものにも該当しない。
したがって、上記請求項1についての補正は、目的要件違反の補正を含むものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

ウ.独立特許要件について
(ア)はじめに
上記請求項1についての補正は、上記2.(2)イ.において検討したように、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないものである。
しかしながら、それとは別に、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)についても検討する。

(イ)サポート要件について
特許法第36条第6項第1号に規定する「サポート要件」の適否については、『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされているところ〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕、平成19年8月15日付け手続補正により全文補正された本願明細書の段落0001の「本発明は、非食品・無生物表面上の微生物の量の減少法(殺菌・消毒法)に関する。」との記載、及び補正後の請求項1に記載された発明が「非食品・食品接触無生物表面上の細菌の量の減少法」という事項を発明特定事項としていることから、補正後の請求項1に記載された発明の解決すべき課題には、少なくとも「細菌の量の減少」が含まれるものと認められる。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、当該「細菌の量の減少」という課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて以下に検討する。
まず、平成19年8月15日付けで手続補正された本願明細書の段落0056?0062に記載された「例1?6」の具体例は、何れも「アルコキシ化非イオン界面活性剤」に相当する成分を配合していない「塩基性液体組成物」に関するものであって、補正後の請求項1に記載された発明の具体例に相当しないから、補正後の請求項1に記載された発明が、本願所定の課題を解決できると認識できる程度の裏付けが、発明の詳細な説明に明確かつ十分に示されているとはいえない。
この点に関して、平成19年8月15日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由において、審判請求人は、『(4)特許法第36条第6項第1号違背との拒絶理由2について 原審審査官殿は、要約すると、本願請求項1に記載の「アルコキシ化非イオン界面活性剤」が実質的に本願明細書に記載されていないことを理由に本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に違背すると認定されています。本請求人は、こ「アルコキシ化非イオン界面活性剤」との文言は、明細書内に任意成分とはいえ記載されていたものであり、また、当業者の技術常識と本願明細書の記載をもってすれば、実施例に「アルコキシ化非イオン界面活性剤」を添加した場合の効果の把握も認識できるものと思料します。よって、特許法第36条第6項第1号違背との拒絶理由2は解消しているものと思料します。』と主張しているが、明細書内に任意成分として記載されていた「アルコキシ化非イオン界面活性剤」についての一般的な記載に基づいて、補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが本願所定の課題を解決できると認識することは、当業者の技術常識をもってしても困難であり、その記載や示唆がなくても本願所定の課題を解決できると認識できるような技術常識が存在していたとも認められない。
そして、平成19年8月15日付けで手続補正された本願明細書の段落0058の「例3…前記処方物は、各種の標準微生物を殺す能力について評価する。処方物のpHの微調整を抗菌試験直前に行って前記ニートpH値を与えた。処方物は、標準微生物を有効に殺し且つリン酸を含有する処方物は、特に低いpHで、より良い。微生物の制御に必要とされる時間の量は、通常のクリーニング操作によって通例与えられるであろうものより長い。」との記載における「リン酸を含有する処方物は、特に低いpHで、より良い。」との記載を参酌すると、当該「例3」の処方における「低いpH」は「10.5」であるから、補正後の請求項1に記載された発明の「11.5?12.3の塩基性pH」という数値範囲と矛盾する。また、同段落0058の「微生物の制御に必要とされる時間の量は、通常のクリーニング操作によって通例与えられるであろうものより長い。」との記載、及び同段落0046の「10分さえ必要とされることがある。」との記載からみて、例えば、1分1秒程度の短時間の接触によって、補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、本願所定の課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められず、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲にあるとも認められない。さらに、補正後の請求項1に記載された発明において「0.5?5%の…洗剤界面活性剤」を含むものは、「(a)オレイン酸カリウム0.75%?5%」という発明特定事項との整合性を欠いており、少なくとも0.5%以上0.75%未満の範囲の洗剤界面活性剤である場合のものについては、サポート要件を満たし得ないことは明らかである。
したがって、補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、本願所定の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではない。

(ウ)進歩性について
A.引用文献及びその記載事項
(A)引用文献4
原査定で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第95/12326号パンフレット(以下、「引用文献4」という。)には、和訳にして、次の記載がある。

摘記A1:第8頁第35行?第9頁第12行
「ノニオン性界面活性剤 ノニオン性界面活性剤は、当該技術分野で周知の材料、例えばC_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物、グルコースのC_(10)?_(18)脂肪族アルコール付加物から選択するのが好ましい。…このような材料はPLURAFAC RA-20(BASF)として市販されている。…更に、窒素不含ノニオン性界面活性剤を選択することにより、希薄な界面活性剤組成物での微生物の成長の可能性を最小限にすることができると認められる。」

摘記A2:第10頁24?26行
「典型的な態様では、触感印象の改良された本発明の好ましい組成物は、オレイン酸塩:PEGの重量比を約1:2?約15:1、好ましくは約1:1?約10:1の範囲で含む。」

摘記A3:第11頁第20行?第12頁第23行
「金属イオン封鎖剤/ビルダー
有機ポリカルボン酸、またはその塩、例えばクエン酸は、本発明の酸性組成物では金属イオン封鎖剤/ビルダーとして用いられ、または本発明の塩基性組成物で用いられるクエン酸ナトリウムおよび/またはカリウムは標準的な商業製品である。…複雑なリン酸塩を用いることもできるが、一般的には法律上の観点から用いられない。
緩衝剤
毒物学上許容可能な酸性または塩基性緩衝剤を本発明の組成物に用いて、生成物のpHを酸または塩基範囲に保持することができる。…クエン酸は好ましい酸性pH緩衝剤であり、塩基性pH系では、クエン酸カリウムが粒状汚れの好ましい分散剤である。炭酸カリウムは、好都合で好ましい塩基性pH緩衝剤である。…
防腐剤
高または低pHの本発明の組成物を処方する方法は、細菌、カビ、または苔などの汚染物の生物学的成長を高pH(>9)または低pH(<5)のいずれでも減少させやすいことに基づいている。」

摘記A4:第14頁第23?25行
「驚くべきことには、本明細書に記載の組成物および方法、特にアルカリ性であるものは、効果的な消毒作用を提供することができる。」

摘記A5:第15頁第9?18行
「実施例II
濃縮した塩基性洗浄組成物は、下記の通りである。
成分 重量%
オレイン酸ナトリウム 3.0
クエン酸カリウム 1.5
炭酸カリウム 1.5
PLURAFAC RA-20 1.0
エタノール 2.0
水 残部
生成物pH11.5
実施例IIの組成物は、エタノールまたはエタノール/水にオレイン酸を加え、NaOHで中和した後、生成する溶液を残りの成分と共に水に溶解させることによって製造される。
使用においては、例えば実施例IIの組成物を水で2倍に希釈し、汚れのついた農産物、例えば林檎、ブドウ、桃、ジャガイモ、レタス、トマト、セロリなどの果物および野菜に噴霧し、必要に応じて軽く擦る。水道水で濯いだ後、果物および野菜を洗浄すると、使用準備ができる。」

摘記A6:請求項1(第17?18頁)
「酸性または塩基性pHのいずれかで果物および野菜を洗浄するための組成物において、
(a)エトキシル化アルコール界面活性剤約0.1重量%?約7.5重量%、
(b)オレイン酸約0.01重量%?約0.75重量%、
(c)有機ポリカルボン酸約0.1重量%?約7.5重量%、
(d)所望により、毒物学上許容可能な酸性緩衝剤、好ましくはクエン酸水素カリウム0.5重量%?約3.0重量%、
(e)所望により、毒物学上許容可能な防腐剤、および
(f)水性キャリヤーを含む残部
を含んでなり、
前記組成物のpHが約2.5?約5.5、好ましくは約3?約5の範囲にある、酸性pHで果物および野菜を洗浄するための組成物、および
塩基性pHで果物および野菜を洗浄するための組成物において、
(a)所望により、ノニオン性界面活性剤約0.1重量%?約4重量%、
(b)オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される一員、好ましくはオレイン酸塩、更に好ましくはオレイン酸カリウム約0.1重量%?約5重量%であり、前記オレイン酸塩は好ましくはポリ不飽和物約8重量%未満を含み、更に好ましくは2個を超える不飽和部位を有するポリ不飽和物約1重量%未満を含む、
(c)有機ポリカルボン酸塩洗浄力ビルダー約0.2重量%?約4重量%、
(d)所望により、毒物学上許容可能な酸性緩衝剤、好ましくは炭酸カリウム約0.5重量%?約1.5重量%、および
(e)水および水-エタノールから選択される水性キャリヤーを含む残部を含んでなり、
前記組成物のpHが9.5以上、好ましくは11もしくは以上、更に好ましくは11?11.9である組成物であり、前記組成物は好ましくは果物および野菜に対して改良された触感印象を有し、
(a)C_(12)?C_(18)脂肪酸、好ましくはオレイン酸またはその塩、好ましくはオレイン酸カリウムであって、(a)対(b)の範囲が1:2?15:1であるものを少なくとも約0.7重量%、
(b)分子量が約200もしくはそれ以上、好ましくは約400?約9500である水溶性のポリエチレングリコールを少なくとも約0.05重量%、
(c)水および水-エタノール流体キャリヤーを含んでなり、塩基性pHを有し、かつ好ましくは酸化防止剤および/またはグレープフルーツから誘導されるテルペン約0.001%?約0.05%を追加的に含み、好ましくは粘度が100センチポアズ未満、好ましくは50センチポアズ未満であることを特徴とする、組成物。」

(B)引用文献3
原査定で引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許第4442125号明細書(以下、「引用文献3」という。)には、和訳にして、次の記載がある。

摘記B1:第10欄第45?49行
「好ましくは液化組成物は、4?6%のオレイン酸ナトリウム、1?5%のエタノール、pHを9.5?10.5に調整するのに十分な緩衝剤、及び残部の蒸留水を含む水溶液からなる。好ましくはリン酸緩衝剤が使用される。」

(C)周知例1
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特公平5-27680号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の記載がある。

摘記1a:第7欄第30行?第8欄第8行
『術語「ビルダー」は洗剤組成物中に該組成物の洗浄効果を増強するために存在する任意の非表面活性剤であるとして洗剤業界で時々膜然と使用されているものである。しかし、より普通には、術語「ビルダー」は第1に例えばキレート化、金属インオン封鎖、イオンの沈殿または吸着により、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの洗浄の際の逆効果を予防または改善するための手段として有用であり、また第2にアルカリ度及び緩衝剤の給源として有用である代表的なビルダー類に制限される。…該ビルダーは…オルトリン酸…を包含する。』

(D)周知例2
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-279787号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の記載がある。

摘記2a:段落0004
「本発明は、一般生菌はもちろん、従来は物理的あるいは化学的方法では殺菌が難しいとされていた耐熱性芽胞菌の洗浄除去力に優れ、かつ安全性の高い食品及び加工食品原料並びに食品製造設備、食器類などに好適に用いられる洗浄剤組成物を提供することを目的としてなされたものである。」

摘記2b:段落0015
「本発明組成物の水溶液pHは、(A)成分と(B)成分の比率によって一義的に定まるが、必要に応じてリン酸やその塩、有機カルボン酸やその塩などで調整してよい。」

摘記2c:段落0021
「実施例2…この洗浄剤組成物の0.3重量%水道水溶液90mlと大正金時豆10gを500ccの三角フラスコに入れ、25℃で5分間振とう洗浄した。以下、前記の実施例1と同様に処理して一般生菌及び耐熱性芽胞菌数を計測した結果、一般生菌、耐熱性芽胞菌ともに10^(1)以下であった。」

(E)周知例3
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-264097号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の記載がある。

摘記3a:請求項1
「非イオン系界面活性剤…を含むことを特徴とするアルカリ性殺菌洗浄剤。」

摘記3b:段落0027
実施例1の組成物
希釈倍数 2000 2500 3000 …
作用時間(分) 2.5 - + + …
5.0 - - + …
10.0 - - + …
15.0 - - - …
(+)生存 (-)死滅 」

B.刊行物Aに記載された発明
摘記A1の「ノニオン性界面活性剤…はPLURAFAC RA-20(BASF)として市販されている。」との記載、摘記A2の「典型的な態様では、触感印象の改良された本発明の好ましい組成物は、オレイン酸塩:PEGの重量比を約1:2?約15:1…の範囲で含む。」との記載、摘記A3の「金属イオン封鎖剤/ビルダー…複雑なリン酸塩を用いることもできる…炭酸カリウムは、好都合で好ましい塩基性pH緩衝剤である。…高または低pHの本発明の組成物を処方する方法は、細菌、カビ、または苔などの汚染物の生物学的成長を高pH(>9)または低pH(<5)のいずれでも減少させやすいことに基づいている。」との記載、摘記A4の「本明細書に記載の組成物および方法、特にアルカリ性であるものは、効果的な消毒作用を提供することができる。」との記載、摘記A5の「実施例II 濃縮した塩基性洗浄組成物は、下記の通りである。
成分 重量%
オレイン酸ナトリウム 3.0
クエン酸カリウム 1.5
炭酸カリウム 1.5
PLURAFAC RA-20 1.0
エタノール 2.0
水 残部
生成物pH11.5
実施例IIの組成物は、エタノールまたはエタノール/水にオレイン酸を加え、NaOHで中和した後、生成する溶液を残りの成分と共に水に溶解させることによって製造される。使用においては、例えば実施例IIの組成物を水で2倍に希釈し、汚れのついた農産物、例えば林檎、ブドウ、桃、ジャガイモ、レタス、トマト、セロリなどの果物および野菜に噴霧し、必要に応じて軽く擦る。水道水で濯いだ後、果物および野菜を洗浄すると、使用準備ができる。」との記載、及び摘記A6の「(b)オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される一員、好ましくはオレイン酸塩、更に好ましくはオレイン酸カリウム約0.1重量%?約5重量%…前記組成物のpHが…更に好ましくは11?11.9である組成物であり、…(b)分子量が約200もしくはそれ以上、好ましくは約400?約9500である水溶性のポリエチレングリコールを少なくとも約0.05重量%」との記載、並びに当該「実施例IIの組成物を水で2倍に希釈」した場合の組成比、及び「PEG」が「ポリエチレングリコール」と同義であることからみて、引用文献4には、
『林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどに、1.5重量%のオレイン酸塩(オレイン酸ナトリウム、更に好ましくはオレイン酸カリウム)、0.5重量%の「PLURAFAC RA-20」として市販されているノニオン性界面活性剤を含み、高pH(>9)の塩基性洗浄組成物(更に好ましくは11?11.9)を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ、細菌などの汚染物の生物学的成長を減少させやすいことに基づいている効果的な消毒作用を提供することができる組成物および方法であって、前記塩基性洗浄組成物が、触感印象の改良された組成物であり、
(a)オレイン酸塩(オレイン酸ナトリウム、更に好ましくはオレイン酸カリウム)を1.5重量%、
(b)緩衝剤として炭酸カリウム(金属イオン封鎖剤/ビルダーとして「複雑なリン酸塩」も使用できる。)を0.75重量%、
(c)クエン酸カリウムを0.75重量%、
(d)分子量が約200もしくはそれ以上である水溶性のポリエチレングリコールを少なくとも約0.05重量%、
(e)水及びエタノールからなる残部、
を含み、オレイン酸塩:PEG(ポリエチレングリコール)の重量比が約1:2?約15:1の範囲である、組成物および方法。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

C.対比
補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどに…塩基性洗浄組成物…を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ…方法」において、当該「塩基性洗浄組成物」が噴霧により接触するのは、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等の表面であることは明らかであり、また、作業者の指先や作業に使用する容器にも接触するものと解されるところ、ここで、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等(さらには、作業者の指先や作業に使用する容器等の表面)は、通常の場合において「食品として使用しない」のが普通であり、そして、平成19年8月15日付けで手続補正された本願明細書の段落0050の「非食品(即ち、食品として使用しない表面、食品と接触しないものさえ)」との記載からみて、引用発明の「林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなど」等は、通常の場合に「食品として使用しない」のが普通である果皮等の表面を有しているという点において、補正発明の「非食品…表面」に相当し、
引用発明の「オレイン酸塩(オレイン酸ナトリウム、更に好ましくはオレイン酸カリウム)」は、ナトリウムないしカリウムによって中性化された不飽和脂肪酸類であるから、補正発明の「中性化された不飽和脂肪酸類」に相当し、
引用発明の「PLURAFAC RA-20」は、摘記A1の「ノニオン性界面活性剤は…C_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物…このような材料はPLURAFAC RA-20(BASF)として市販されている。」との記載、及び平成19年8月15日付けで手続補正された本願明細書の段落0026の「非イオン界面活性剤は、…プルラファック(PLURAFAC)RA-20(BASF)として入手できる。」との記載からみて、当該「PLURAFAC RA-20」ないし引用文献4の「C_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物」の「ノニオン性界面活性剤」は、補正発明の「アルコキシ化非イオン界面活性剤」に相当し、
ここで、補正後の請求項1に記載された「0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類またはそれらの混合物とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤」という発明特定事項について、平成19年8月15日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由の『(6)特許法第36条第6項第2号違背との拒絶理由4について 原審審査官殿ご指摘の請求項1に記載の「5%」との文言に関する拒絶理由4につきましては、オレイン酸カリウムが5%に限りなく近い量、アルコキシ化非イオン界面活性剤が0%に限りなく近い量、含むと理解することは可能であり、そのように理解すれば、特許請求の範囲の記載が明確な記載であると言いうるものであります。』との主張からみて、当該発明特定事項の「0.5?5%」は「洗剤界面活性剤」の配合量を意味するものと解されるので、引用発明の『1.5重量%のオレイン酸塩(オレイン酸ナトリウム、更に好ましくはオレイン酸カリウム)、0.5重量%の「PLURAFAC RA-20」として市販されているノニオン性界面活性剤』は、補正発明の「0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤」に相当し、
引用発明の「高pH(>9)の塩基性洗浄組成物(更に好ましくは11?11.9)」は、補正発明の「11.5?12.3の塩基性pHを有するクリーニング水溶液」とpH11.5?11.9の範囲で重複し、
引用発明の「塩基性洗浄組成物…を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程においては、当該「塩基性洗浄組成物」が、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等(さらには、作業者の指先など)と一定の時間、接触していることを意味するから、引用発明の「噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程は、補正発明の「接触させる」に相当し、
引用発明の「細菌などの汚染物の生物学的成長を減少させやすいことに基づいている効果的な消毒作用を提供することができる組成物および方法」は、補正発明の「細菌の量の減少法」に相当し、
引用発明の「塩基性洗浄組成物が、触感印象の改良された組成物」は、補正発明の「クリーニング水溶液が、改善された触感を有し」に相当し、
引用発明の「(a)オレイン酸塩(オレイン酸ナトリウム、更に好ましくはオレイン酸カリウム)を1.5重量%」は、補正発明の「(a)オレイン酸カリウム0.75%?5%」に相当し、
引用発明の「(c)クエン酸カリウムを0.75重量%」は、摘記A3の「有機ポリカルボン酸、またはその塩、例えばクエン酸」との記載からみて、引用文献4においては必ずしも「塩」に限られない「有機ポリカルボン酸、またはその塩」の例として用いられているものであるから、補正発明の「(c)クエン酸…からなる群から選ばれる有機ポリカルボン酸」に相当し、
引用発明の「(d)分子量が約200もしくはそれ以上である水溶性のポリエチレングリコールを少なくとも約0.05重量%」は、補正発明の「(d)分子量200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも0.05重量%」に相当し、
引用発明の「(e)水及びエタノールからなる残部」は、当該「残部」に水が含まれていることから、補正発明の「水を含む残部」に相当する。

そうしてみると、両者は、
『非食品表面を、0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤を含み且つ11.5?11.9の塩基性pHを有するクリーニング水溶液と、接触させる、非食品表面上の細菌の量の減少法であって、
前記クリーニング水溶液が、改善された触感を有し、且つ、
(a)オレイン酸カリウム0.75%?5%、
(c)クエン酸からなる群から選ばれる有機ポリカルボン酸、
(d)分子量200以上を有する水溶性ポリエチレングリコール少なくとも0.05重量%、
(e)水を含む残部、
を含む、方法。』である点において一致し、
第一に、(b)のリン酸系の化合物として、補正発明においては、「(b)オルトリン酸0.3?2重量%」を含み、かつ、「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」のに対して、引用発明においては、『金属イオン封鎖剤/ビルダーとして「複雑なリン酸塩」も使用できる。』との記載があるものの、具体的に「オルトリン酸」を所定の量で配合することについて記載がない点、及び、
第二に、接触させる時間が、補正発明においては「1分を超える時間」であるとされているのに対して、引用発明においては具体的な時間について記載がない点、
の2つの点においてのみ相違する。

D.判断
(A)第一の相違点
上記相違点のうち「オルトリン酸」を所定の量で配合する点について検討する。
摘記B1の「好ましくはリン酸緩衝剤が使用される。」との記載、摘記1aの『術語「ビルダー」は第1に例えばキレート化、金属インオン封鎖、イオンの沈殿または吸着により、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの洗浄の際の逆効果を予防または改善するための手段として有用であり、また第2にアルカリ度及び緩衝剤の給源として有用である代表的なビルダー類に制限される。…該ビルダーは…オルトリン酸…を包含する。』との記載、及び摘記2bの「水溶液pHは…必要に応じてリン酸やその塩…で調整してよい。」との記載にもあるように、化学式が「H_(3)PO_(4)」のリン酸(慣用名:オルトリン酸)を緩衝剤ないしビルダーとして用いることは普通に知られているから、引用発明の0.75重量%の割合で使用されている「炭酸カリウム」の緩衝剤ないし「複雑なリン酸塩」の金属イオン封鎖剤/ビルダーに代えて、緩衝剤ないしビルダーとして周知慣用の「オルトリン酸塩」を採用することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内であり、その場合の配合量の最適化も、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。
そして、平成19年8月15日付けで手続補正された明細書の段落0029の記載においては、当初明細書の「リン酸は、リンゴからの例えばロウの除去を改善するために極めて望ましい成分である。…その理由は、組成物をロウのある表面上で直接適用することによってフル濃度で使用する時に、結果が改善されるからである。」との記載部分が、「リン酸は、望ましい成分である。…その理由は、組成物を直接適用することによってフル濃度で使用する時に、結果が改善されるからである。」との記載に補正されているが、当該補正後の記載を参酌しても、オルトリン酸を配合した点に格別の技術上の意義は見い出せない。また、平成19年8月15日付けで手続補正された明細書の段落0056?0062の例1?6の具体例を参酌しても、例1のA、例3のA?B、例4のB、及び例6の具体例においては「オルトリン酸」が配合されておらず、オルトリン酸を配合することによって格別予想外の顕著な効果が得られることが、比較実験データによって明確かつ十分に裏付けがなされているものではなく、オルトリン酸の配合に伴う効果が当業者にとって格別予想外の顕著なものであるとも認められない。

(B)第二の相違点
次に、上記相違点のうち「1分を超える時間」で接触させる点について検討する。
摘記2cの「実施例2…25℃で5分間振とう洗浄した。」との記載や、摘記3bの希釈倍数が2500の組成物において5.0分以上、希釈倍数が3000の組成物において15.0分以上の作用時間で菌が死滅する旨の記載からみて、組成物と対象物との接触時間を長くすればするほど、殺菌/消毒の作用が一層に発揮されるようになることは、普通に知られているから、引用発明の「噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程における組成物と対象物との接触時間を「1分を超える時間」で接触させるようにすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内であり、接触時間の最適化に伴う効果が当業者にとって格別予想外の顕著なものであるとも認められない。

(C)非食品の範囲の解釈について
ここで、仮にブドウや桃の果皮などの対象物について、これらを食するのが普通の食習慣であると仮定した場合には、組成物の適用対象物が、補正発明においては「非食品・食品接触無生物表面」であるのに対して、引用発明においては「林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなど」である点においても、両者に相違点が認められることとなるが、例えば、摘記2aの「本発明は、一般生菌はもちろん…耐熱性芽胞菌の洗浄除去力に優れ、かつ安全性の高い食品及び加工食品原料並びに食品製造設備、食器類などに好適に用いられる洗浄剤組成物を提供することを目的としてなされたものである。」との記載からみて、菌類の洗浄除去力に優れた洗浄剤組成物を、食品のみならず、加工食品原料、食品製造設備、食器類などにおいても共用することは、周知慣用ないし常套のことと認められるから、引用発明の適用対象物の範囲を、加工食品原料、食品製造設備、食器類などの非食品の表面にまで拡張してみることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内であり、その作用効果について格別予想外の点は認められない。

(D)仮に手続補正に誤記ないし錯誤があると仮定した場合について
ここで、仮に手続補正に誤記ないし錯誤があり、補正後の請求項1における「(a):(b)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を組み入れる補正が、「(a):(d)の重量比が1:2から30:1の範囲内である」という事項を組み入れる補正を意図していたものと仮定とした場合について検討する。
引用発明の「オレイン酸塩:PEG(ポリエチレングリコール)の重量比が約1:2?約15:1の範囲」は、当該仮定した場合における補正発明の「(a):(d)の重量比」の範囲内であるから、仮に手続補正に誤記ないし錯誤があると仮定しても、補正発明と引用発明との対比において、新たな相違点が生じるものではない。

E.小括
以上のとおりであるから、補正発明は、引用文献4に記載された発明(並びに引用文献3及び周知例1?3に記載された技術常識)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)まとめ
以上総括するに、本件補正は、新規事項追加禁止違反があるという点において特許法第184条の12第2項において読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正は、目的要件違反があるという点において平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないことは、上記2.(2)ウ.に示したとおりである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成19年8月15日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成13年4月9日付け及び平成16年2月4日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、平成16年8月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由2?5によって、拒絶をすべきものである。」というものである。
そして、理由2として、「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」という理由が示され、当該「下記の点」として、『補正後の明細書の第18?22頁に具体的に記載されている「例1?6」の「塩基性液体組成物」(「クリーニング水溶液」に該当する)にも、「中性化された不飽和脂肪酸類」に該当する成分である「オレイン酸」(KOHと併用されたもの)は含まれているが、「アルコキシ化非イオン界面活性剤」に該当する成分は全く含まれておらず、結局、本願発明の方法で用いられる、「中性化された不飽和脂肪酸類またはそれらの混合物」と「アルコキシ化非イオン界面活性剤」とを組み合わせた上記「クリーニング水溶液」は、実体としても明細書に全く記載されていないものである。』という点が指摘されており、
理由5として、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」という理由が示され、『引用文献4には、その適用対象が果物や野菜等であること以外は、本願請求項1?3,5?12に規定する条件を全て満たすクリーニング水溶液が記載されており、これを硬質表面等の洗浄にも適用することは、当業者ならば容易に想到し得ることであるといえる(洗浄の結果、洗浄対象物の表面上の微生物の量は減少するものと認められる)。…そして、上記「理由2?3」の備考欄でも指摘したように、本願明細書には、本願請求項1?12に記載の方法で用いられるクリーニング水溶液について、形式的にも実体的にも何ら記載されておらず、中性化された不飽和脂肪酸類とアルコキシ化非イオン界面活性剤とを組み合わせたクリーニング水溶液を、非食品・食品接触無生物表面に適用することの技術的意義を全く把握することができないため、本願請求項1?12に記載の方法が、従来技術からは予測できないような格別の効果を奏したものと認めることもできない。』という点が指摘され、当該「引用文献4」として、前記2.(2)ウ.(ウ)A.(A)で示したとおりの「国際公開第95/12326号パンフレット」が引用されている。

(3)理由2について
特許法第36条第6項第1号に規定する「サポート要件」の適否については、『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされているところ〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕、平成16年2月4日付けの手続補正により全文補正された本願明細書(平成16年2月4日付けの手続補正書の第1頁第5行)の「本発明は、非食品・食品接触無生物表面上の微生物の量の減少法に関する。」との記載、及び本願請求項1に記載された発明が「非食品・食品接触無生物表面上の微生物の量の減少法」という事項を発明特定事項としていることから、補正後の請求項1に記載された発明の解決すべき課題には、少なくとも「微生物の量の減少」が含まれるものと認められる。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、当該「微生物の量の減少」という課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて以下に検討する。
まず、平成16年2月4日付けで手続補正された本願明細書(平成16年2月4日付けの手続補正書の第18頁第24行?第22頁第20行)に記載された「例1?6」の具体例は、何れも「アルコキシ化非イオン界面活性剤」に相当する成分を配合していない「塩基性液体組成物」に関するものであって、本願請求項1に記載された発明の具体例に相当せず、しかも、例1及び2の具体例は、ロウ除去率の利益について示した具体例にすぎないものであり、例3?4の具体例は標準微生物を殺す能力ないし消毒上の利益を与えることについて示した具体例であり、例5?6の具体例は、低活性液体ないし液体形として使用できることについて示した具体例にすぎないものであるところ、「微生物の量の減少」に関連する例3?4の具体例においても、その「微生物の量の減少」について具体的な実験データが示されているものではなく、例3のB及びD、並びに例4のBの具体的な処方におけるpHの範囲は、本願請求項1に記載された発明の「11を超える塩基性pH」という発明特定事項も満たさないものである。
また、例3においては「特に低いpHで、より良い。」との説示があるところ、例3における「低いpH」の具体的な処方であるB及びDのもののpHは「10.5」であることから、本願請求項1に記載された「11を超える塩基性pH」という事項を発明を特定するために必要な事項としている発明の内容と、発明の詳細な説明における記載から認識される技術的な内容とは、相互に著しく矛盾していて、合理的な認識をすることができない。
してみると、本願請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることもできない。
そして、平成16年2月4日付けで手続補正された本願明細書(平成16年2月4日付けの手続補正書の第21頁第2?3行)の「微生物の制御に必要とされる時間の量は、通常のクリーニング操作によって通例与えられるであろうものより長い。」との記載、及び同明細書(平成16年2月4日付けの手続補正書の第16頁第25行)の「10分さえ必要とされることがある。」との記載からみて、例えば、1分1秒程度の短時間の接触によって、本願請求項1に記載されている事項により特定されるクリーニング水溶液の全て(特に配合成分の濃度が希薄なもの。)が、本願所定の課題を解決できると認識できる範囲にあるとは認められない。
したがって、本願請求項1に記載されている事項により特定されるもの全てが、本願所定の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではない。

(4)理由5について
ア.引用文献及びその記載事項
原査定で引用された「引用文献4」及びその記載事項については、前記2.(2)ウ.(ウ)A.(A)で示した引用文献4(国際公開第95/12326号パンフレット)及びその記載事項に同じである。

イ.引用文献4に記載された発明
摘記A1の「ノニオン性界面活性剤は、…例えばC_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物…が好ましい。」との記載、摘記A3の「高または低pHの本発明の組成物を処方する方法は、細菌、カビ、または苔などの汚染物の生物学的成長を高pH(>9)または低pH(<5)のいずれでも減少させやすいことに基づいている。」との記載、摘記A4の「本明細書に記載の組成物および方法、特にアルカリ性であるものは、効果的な消毒作用を提供することができる。」との記載、摘記A5の「使用においては、例えば実施例IIの組成物を水で2倍に希釈し、汚れのついた農産物、例えば林檎、ブドウ、桃、ジャガイモ、レタス、トマト、セロリなどの果物および野菜に噴霧し、必要に応じて軽く擦る。水道水で濯いだ後、果物および野菜を洗浄すると、使用準備ができる。」との記載、及び摘記A6の「(a)所望により、ノニオン性界面活性剤約0.1重量%?約4重量%、(b)…更に好ましくはオレイン酸カリウム約0.1重量%?約5重量%…前記組成物のpHが…更に好ましくは11?11.9である組成物」との記載からみて、引用文献4には、
『林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどに、約0.1重量%?約5重量%のオレイン酸カリウム、約0.1重量%?約4重量%のC_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物のノニオン性界面活性剤を含み、高pH(>9)の塩基性洗浄組成物(更に好ましくは11?11.9)を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ、細菌などの汚染物の生物学的成長を減少させやすいことに基づいている効果的な消毒作用を提供することができる組成物および方法。』についての発明(以下、「文献4記載発明」という。)が記載されている。

ウ.対比
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と文献4記載発明とを対比する。
文献4記載発明の「林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどに…塩基性洗浄組成物…を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ…方法」において、当該「塩基性洗浄組成物」が噴霧により接触するのは、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等の表面であることは明らかであり、また、作業者の指先や作業に使用する容器にも接触するものと解されるところ、ここで、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等(さらには、作業者の指先や作業に使用する容器等の表面)は、通常の場合において「食品として使用しない」のが普通であり、そして、平成16年2月4日付けで手続補正された本願明細書(平成16年2月4日付け手続補正書の第17頁第17?18行)の「非食品(即ち、食品として使用しない表面、食品と接触しないものさえ)」との記載からみて、文献4記載発明の「林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなど」等は、通常の場合に「食品として使用しない」のが普通である果皮等の表面を包含しているという点において、本願発明の「非食品…表面」に相当し、
文献4記載発明の「約0.1重量%?約5重量%のオレイン酸カリウム」は、カリウムによって中性化された不飽和脂肪酸類であるから、本願発明の「中性化された不飽和脂肪酸類」に相当し、
文献4記載発明の「約0.1重量%?約4重量%のC_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物のノニオン性界面活性剤」は、脂肪族アルコールの付加によってアルコキシ化されていることが明らかであるから、本願発明の「アルコキシ化非イオン界面活性剤」に相当し、
ここで、本願請求項1に記載された「0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類またはそれらの混合物とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤」という発明特定事項について、平成19年8月15日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由の『(6)特許法第36条第6項第2号違背との拒絶理由4について 原審審査官殿ご指摘の請求項1に記載の「5%」との文言に関する拒絶理由4につきましては、オレイン酸カリウムが5%に限りなく近い量、アルコキシ化非イオン界面活性剤が0%に限りなく近い量、含むと理解することは可能であり、そのように理解すれば、特許請求の範囲の記載が明確な記載であると言いうるものであります。』との主張からみて、当該発明特定事項の「0.5?5%」は「洗剤界面活性剤」の配合量を意味するものと解され、文献4記載発明の「約0.1重量%?約5重量%のオレイン酸カリウム、約0.1重量%?約4重量%のC_(10)?_(18)脂肪族アルコールまたは酸のアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物のノニオン性界面活性剤」は、当該「オレイン酸カリウム」と「ノニオン性界面活性剤」の合計量の数値範囲が「約0.2重量%?約9重量%」となることから、本願発明の「0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤」と重複し、
文献4記載発明の「高pH(>9)の塩基性洗浄組成物(更に好ましくは11?11.9)」は、本願発明の「11を超える塩基性pHを有するクリーニング水溶液」とpHが11を超え11.9以下の範囲で重複し、
文献4記載発明の「塩基性洗浄組成物…を噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程においては、当該「塩基性洗浄組成物」が、林檎、ブドウ、桃、ジャガイモなどの果皮等(さらには、作業者の指先など)と一定の時間、接触していることを意味するから、文献4記載発明の「噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程は、本願発明の「接触させる」に相当し、
文献4記載発明の「細菌などの汚染物の生物学的成長を減少させやすいことに基づいている効果的な消毒作用を提供することができる組成物および方法」は、本願発明の「微生物の量の減少法」に相当する。

してみると、両者は、
『非食品表面を、0.5?5%の中性化された不飽和脂肪酸類とアルコキシ化非イオン界面活性剤である洗剤界面活性剤を含み且つ11を超え11.9以下の塩基性pHを有するクリーニング水溶液と、接触させる、非食品表面上の微生物の量の減少法。』である点において一致し、
接触させる時間が、本願発明においては「1分を超える時間」であるとされているのに対して、文献4記載発明においては具体的な時間について記載がない点においてのみ相違する。

エ.判断
上記相違点について検討するに、組成物と対象物との接触時間を長くすればするほど、殺菌/消毒の作用が一層に発揮されるようになることは、普通に知られているから、文献4記載発明の「噴霧し、軽く擦った後、水道水で濯ぐ」までの工程における組成物と対象物との接触時間を「1分を超える時間」で接触させるようにすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内である。
そして、接触時間の最適化に伴う効果が当業者にとって格別予想外の顕著なものであるとも認められず、本願発明の効果が実施例レベルでの比較実験データによって裏付けられているものでもないから、本願発明に当業者にとって格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。

オ.まとめ
したがって、本願発明は、引用文献4に記載された発明(及び当業者にとっての技術常識)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

(5)むすび
以上総括するに、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではなく、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、原査定の理由2の拒絶の理由を解消し得ない。
また、本願発明は、引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、原査定の理由5の拒絶の理由を解消し得ない。
そうしてみると、その余の理由及びその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-05 
結審通知日 2010-10-08 
審決日 2010-10-19 
出願番号 特願平9-504410
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C11D)
P 1 8・ 575- Z (C11D)
P 1 8・ 537- Z (C11D)
P 1 8・ 561- Z (C11D)
P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 穴吹 智子中島 庸子井上 典之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 井上 千弥子
木村 敏康
発明の名称 非食品無生物表面用のクリーニング/消毒法、組成物および/または物品  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  
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