ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1234735 |
審判番号 | 不服2009-5944 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-03-19 |
確定日 | 2011-03-31 |
事件の表示 | 特願2002-348610「SOIウエーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 2日出願公開、特開2004-186226〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成14年11月29日の出願であって、平成21年2月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年3月19日に審判が請求されるとともに、同年4月14日に手続補正(この補正は、実質的に補正前の請求項1?3、5?10を削除する補正であり、適法になされたものである。)が提出され、その後、平成22年11月2日付けで審尋がされ、同年12月21日に回答書が提出されたものである。 2 本願発明の認定 本願の請求項1?3に係る発明のうち、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項2】 原料ウエーハとなる2枚のウエーハのうち、少なくとも一方のウエーハに絶縁層を形成すると共に、該ウエーハの上面から水素イオンまたは希ガスイオンを注入し、該ウエーハ内部に微小気泡層を形成させた後、該イオンを注入した方の面を、絶縁層を介して他方のウエーハと密着させ、その後熱処理を加えて微小気泡層を劈開面として一方のウエーハを薄膜状に分離し、さらに熱処理を加えて、強固に結合することによって製造するSOIウエーハの製造方法において、前記原料ウエーハとしてウエーハ外周部形状が外周5mmの位置でスロープが0.002%以下であるウエーハを用いることを特徴とするSOIウエーハの製造方法。」 3 引用例の記載と引用発明 (1)引用例とその記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-345435号公報(以下「引用例」という。)には、「シリコンウェーハ及び貼り合わせウェーハの製造方法、並びにその貼り合わせウェーハ」(発明の名称)について、図3とともに、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。 ア 発明の属する技術分野等 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンウェーハ及び貼り合わせSOI(silicon on insulator)ウェーハやダイレクトボンドウェーハの貼り合わせウェーハの製造方法に関し、特にウェーハの外周部に生ずる研磨ダレを低減したシリコンウェーハ、及び外周除去領域がないか低減した貼り合わせSOIウェーハ及びダイレクトボンドウェーハ並びにそれらの製造方法に関する。」 「【0008】一方、近年の半導体デバイスの高集積化、高速度化に伴い、SOI層の厚さは更なる薄膜化と膜厚均一性の向上が要求されており、具体的には0.1±0.01μm程度の膜厚及び膜厚均一性が必要とされている。このような膜厚及び膜厚均一性をもつ薄膜SOIウェーハを貼り合わせウェーハで実現するためには従来の研削・研磨での減厚加工では不可能であるため、新たな薄膜化技術として、特開平5-211128号公報に開示されているイオン注入剥離法と呼ばれる方法(スマートカット(登録商標)とも呼ばれる。)が開発された。 【0009】このイオン注入剥離法は、二枚のシリコンウェーハのうち少なくとも一方に酸化膜を形成するとともに、一方のシリコンウェーハ(以下、ボンドウェーハと言うこともある。)の上面から水素イオンまたは希ガスイオンを注入し、該シリコンウェーハ内部に微小気泡層(封入層)を形成させた後、該イオン注入面を酸化膜を介して他方のウェーハ(以下、ベースウェーハということもある。)と密着させ、その後熱処理(剥離熱処理)を加えて微小気泡層を劈開面(剥離面)として一方のウェーハを薄膜状に剥離し、さらに熱処理(結合熱処理)を加えて強固に結合してSOIウェーハとする技術である。尚、この方法は、酸化膜を介さずに直接シリコンウェーハ同士を結合することもできるし、シリコンウェーハ同士を結合する場合だけでなく、シリコンウェーハにイオン注入して、ベースウェーハとして石英、炭化珪素、アルミナ等の熱膨張係数の異なる絶縁性ウェーハと結合する場合にも用いられる。尚、最近では水素イオンを励起してプラズマ状態でイオン注入を行い、特別な熱処理を加えることなく室温で剥離を行うSOIウェーハの製造方法も知られている。」 イ 発明の実施の形態 「【0023】<実施態様3>この実施態様3は、イオン注入剥離法でSOI層の減厚加工を行う貼り合わせSOIウェーハの製造工程を図3(j)?(o)に基づき説明する。先ず、貼り合わせに使用する2枚のシリコンウェーハを用意するが、その2枚のシリコンウェーハ1、2は<実施態様2>と同一の方法で、図1(a)?(d)及び図2(f)の工程を経て2枚のウェーハを準備する。次に工程(j)で、酸化膜3を形成したボンドウェーハ1の一方の面(ベースウェーハ2と結合する面)の上面から酸化膜を通して水素イオンまたは希ガスイオンのうち少なくとも一方(ここでは水素イオン)を注入し、シリコンウェーハ内部にイオンの平均進入深さにおいて表面に平行な微小気泡層(封入層)4を形成させる。イオンの注入線量は5×10^(16)atoms/cm^(2)以上とすることが好ましい。尚、ボンドウェーハ1へのイオン注入は、酸化膜を形成したボンドウェーハに対して行う形態に限られるものではなく、工程(d)を完了したウェーハにイオン注入してもよいものである。その場合は、ベースウェーハ2におけるボンドウェーハ1との密着面に予め酸化膜を形成するようにする。 【0024】次に、工程(k)は、イオン注入したボンドウェーハ1をそのイオン注入面側(表面側1a)を、他方のウェーハ2(ベースウェーハ)の表面側2aに重ね合わせて密着させる工程であり、常温の清浄な雰囲気下で2枚のウェーハの表面同士を接触させることにより、接着剤等を用いることなくウェーハ同士が接着する。 【0025】工程(l)は、イオン注入により形成された封入層を境界として剥離することによって、剥離ウェーハ(図示省略)とSOIウェーハ5(SOI層6+埋め込み酸化膜3’+ベースウェーハ2)に分離する剥離熱処理工程であり、不活性ガス雰囲気または酸化性ガス雰囲気下で400?600℃程度の温度で熱処理を加えれば、結晶の再配列と気泡の凝集とによって剥離ウェーハとSOIウェーハ5に分離されると同時に、室温での密着面もある程度は強固に結合がなされる。 【0026】SOIウェーハ5をデバイス作製工程で使用するためには、工程(l)の剥離熱処理による結合力では十分でないので、工程(m)の結合熱処理として高温の熱処理を施し、結合強度を十分に高める。この熱処理は、例えば不活性ガス雰囲気または酸化性ガス雰囲気下、1000℃以上の温度で処理するのが好ましく、より好ましくは1100℃以上が好適である。また、ランプ加熱装置のような急速加熱・急速冷却装置を用いれば、1000℃?1350℃の温度で1?300秒程度の短時間で十分な結合強度が得られる。又、工程(m)の結合熱処理として工程(l)の剥離熱処理を兼ねて行う場合には工程(l)を省略することもできる。 【0027】そして、工程(n)は、SOIウェーハ5における表面側(SOI層6側)の外周縁部を面取りする面取り加工工程で、実施態様2と同様にSOI層6の外周縁部及びベースウェーハ2の表面側2aの外周縁部の研磨ダレ部分(ボンドウェーハとの未結合部分)を除去する面取り幅X3(X3>X1、好ましくはX3≧X2)となるように面取り加工する。尚、SOI層は、厚くても1μm程度であるため、面取り幅にはほとんど影響しない。 【0028】工程(o)は、必要に応じてSOI層の表面である劈開面(剥裏面)に存在するイオン注入によるダメージ層や表面粗さを除去する鏡面研磨工程である。この工程としては、タッチポリッシュと呼ばれる研磨代の極めて少ない研磨(5?数百nm程度の研磨代)を行う。以上の工程により、外周除去領域のない貼り合わせSOIウェーハを作製することができた。」 (2)引用発明 上記ア及びイによれば、引用例には、次の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「引用発明」という。)。 「2枚のウェーハを準備し、ボンドウェーハ1に酸化膜3を形成し、上面から酸化膜を通して水素イオンまたは希ガスイオンを注入し、シリコンウェーハ内部に微小気泡層4を形成させた後、イオン注入面を、他方のウェーハ2に密着させ、その後、熱処理を加えて該微小気泡層4を境界として、剥離ウェーハとSOIウェーハ5に分離し、さらに、高温の熱処理を施し、結合強度を十分に高めることによって製造するSOIウェーハの製造方法。」 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、 ア 引用発明の「2枚のウェーハ」、「ボンドウェーハ1」、「酸化膜3」及び「イオン注入面」は、それぞれ、本願発明の「原料ウエーハとなる2枚のウエーハ」、「一方のウエーハ」、「絶縁層」及び「イオンを注入した方の面」に相当する。 イ 引用発明において、「ボンドウェーハ1に酸化膜3を形成」した後に、「他方のウェーハ2に密着」していることから、引用発明においても、密着に際して、「酸化膜3」を介していることは明らかである。 したがって、上記アを勘案すると、引用発明の「イオン注入面を、他方のウェーハ2に密着」は、本願発明の「イオンを注入した方の面を、絶縁層を介して他方のウエーハと密着」に相当する。 ウ 引用発明において、「剥離ウェーハ」は、「ボンドウェーハ1」の一部であって、「微小気泡層4を境界」として、分離されたものであるから、引用発明の「剥離ウェーハ」は、「ボンドウェーハ1」より薄い薄膜状であって、「微小気泡層4」が分離の際に劈開面となることは、当業者にとって明らかである。 したがって、上記アを勘案すると、引用発明の「熱処理を加えて該微小気泡層4を境界として、剥離ウェーハとSOIウェーハ5に分離」は、本願発明の「熱処理を加えて微小気泡層を劈開面として一方のウエーハを薄膜状に分離」に相当する。 エ 引用発明において、密着させた2枚のウエーハの「結合強度を十分に高めること」は、密着させた2枚のウエーハを強固に結合することともいえるから、引用発明の「高温の熱処理を施し、結合強度を十分に高める」ことは、本願発明の「熱処理を加えて、強固に結合する」ことに相当する。 (2)したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。 〈一致点〉 「原料ウエーハとなる2枚のウエーハのうち、少なくとも一方のウエーハに絶縁層を形成すると共に、該ウエーハの上面から水素イオンまたは希ガスイオンを注入し、該ウエーハ内部に微小気泡層を形成させた後、該イオンを注入した方の面を、絶縁層を介して他方のウエーハと密着させ、その後熱処理を加えて微小気泡層を劈開面として一方のウエーハを薄膜状に分離し、さらに熱処理を加えて、強固に結合することによって製造するSOIウエーハの製造方法。」 〈相違点〉 本願発明では、原料ウエーハとして、「ウエーハ外周部形状が外周5mmの位置でスロープが0.002%以下であるウエーハを用いる」のに対し、引用発明では、ウエーハ外周部形状についての教示がない点 5 相違点についての検討 (1)本願明細書の発明の詳細な説明には、「外周5mmの位置でスロープが0.002%以下」に関連して、次の記載がある。 ・「・・・形状プロファイルを一旦微分し、そのスロープ(傾き)の大きさから判断しても良い。・・・」(段落【0051】) ・「・・・形状プロファイルについて、任意の間隔で差分を取り、その中点にデータをプロットすることで微分プロファイルを作成する。この間隔は500μm?1mm間隔程度で処理すると好ましい。」(段落【0052】)・「本実験例では、特にウエーハ外周5mmの位置(中心から145mm)でのスロープの値とボイドの発生率を確認した。この関係をプロットすると図11のような結果が得られた。500μmあたりの形状変化が0.01μm程度(又は1mmあたりの形状変化が0.02μm程度、スロープで0.002%)であれば、ボイドの発生が著しく低減でき、これ以上であるとボイドの発生が増えた。・・・」(段落【0074】) 以上の記載によれば、「外周5mmの位置でスロープ」は、外周5mmの位置における形状変化の微分値であることから、「外周5mmの位置でスロープが0.002%以下」との数値限定は、外周5mmの位置での任意の間隔、例えば「1mmあたり」で差分をとり、その形状変化が「0.02μm以下」の場合に相当するものと認められる。 (2)ここで、貼り合わせ半導体ウエーハを製造する技術分野において、貼り合わせ面の凹凸に起因するボイドの発生を防止するという課題があり、その課題解決のために、任意の位置において、1mmあたりの形状変化が0.02μm以下の、ウエーハ外周部形状が平坦なウエーハを用いることは、例えば、以下の周知例1(被測定領域1mm□?5mm□の範囲において、15nm以下=0.015μm以下)及び周知例2(一辺の長さ1mmで130Å以下=0.013μm以下)にも記載されているように、本願出願前の周知技術である。そして、上記(1)を参酌すると、この周知技術は、「スロープが0.002%以下」の技術に相当することが分かる。 (3)また、引用発明のSOIウエーハの製造方法は、周知例1、2と同様に、貼り合わせ半導体ウエーハを製造する技術分野に属することから、引用発明においても、ボイドの発生を防止するという、周知例1、2と共通する課題を有していることは、当業者に自明である。 (4)そして、SOIウエーハの周縁部は面取りがされるから、ウエーハの形状変化を適切に評価するためには、外周付近を避ける必要があることも、当業者が容易に認識し得ることである。 (5)したがって、引用発明のSOIウエーハの製造方法において、ボイドの発生を防止するために、上記周知技術を採用し、「任意の位置」を外周5mmの位置として選択し、そこでのスロープが0.002%以下とする平坦なウエーハを用いることは、当業者が容易になし得たものである。 (周知例1:特開平9-232197号公報、原査定の拒絶の理由で引用) 上記周知例1には、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、第1の半導体ウエーハと第2の半導体ウエーハを鏡面研磨した後に、前記鏡面研磨した面を直接又は誘電体層を介在させて貼り合わせ接着する貼り合わせ半導体ウエーハの製造方法に関する。」 「【0006】前記特開平2-126625号公報記載の貼り合わせ半導体ウエーハは、貼り合わせる2枚のウエーハの表面粗さを、中心線平均粗さで0.5nm以下になるように鏡面研磨し、前記鏡面研磨された2枚の半導体ウエーハを用いて接合する方法が開示されている。 【0007】このような従来の製造方法によれば、ウエーハの反りやうねり等の形状の影響を受けることがなく、双方のウエーハの貼り合わせ面にボイド(気泡)の発生を生じない貼り合わせ半導体ウエーハを提供することが可能とされている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ウエーハ表面にはうねり等によって凸凹形状が形成されている場合が多くあり、2枚のウエーハを接着する際に、ウエーハ表面に存在する前記凹形状部分における接着速度は、ウエーハ表面の平坦部分よりも接着速度が遅くなる。このため、ウエーハ表面上で凹形状部分以外の平坦部分の方が凹形状部分よりも速く接着してしまい、凹形状部分に残された空気の逃げ道がなくなりボイドが発生する問題があった。」 「【0012】 【課題を解決するための手段】本発明は、第1の半導体ウエーハと第2の半導体ウエーハを接着することにより形成される貼り合わせ半導体ウエーハの製造方法において、前記第1の半導体ウエーハ及び第2の半導体ウエーハは主面が鏡面研磨されるとともに、この研磨された第1の半導体ウエーハ及び第2の半導体ウエーハの主面上の任意の位置における被測定領域が、1mm□?5mm□の範囲において、表面の凹形状が、P-V(山-谷)値で15nm以下であるものを用いて貼り合わせ半導体ウエーハを形成する構成の貼り合わせ半導体ウエーハの製造方法である。 【0013】このように、半導体ウエーハの主面に存在している凹形状の大きさが、ウエーハ主面上の任意位置における被測定領域1mm□?5mm□の範囲において、P-V値で15nm以下である半導体ウエーハが選定されて、前記選定された2枚の半導体ウエーハの主面同士が接着するため、貼り合わせ面間に空気等の気泡(ボイド)が残存せずに双方のウエーハを接着することを可能とし、ボイドフリーの高品位な貼り合わせ半導体ウエーハの製造することができる。」 (周知例2:特開平1-103826号公報) 上記周知例2には、次の記載がある。 「(産業上の利用分野) 本発明は、接着半導体基板の製造方法に関するもので、詳しくは、シリコン基板とシリコン基板どうし、あるいはSi、GaAs、その他の半導体材料基板の同種又は異種の基板を直接に接着する半導体基板の製造に適用される。」(1頁左下欄16行?右下欄1行) 「(課題を解決するための手段) 本発明の接着半導体基板の製造方法は、シリコン基板、ゲルマニウム基板、あるいはGaAs、Ga P、InPなど化合物半導体基板を含めて、半導体素子基板として使用される同種又は異種の第1及び第2半導体材料基板の鏡面どうしを密着させ、しかる後所定温度で所定時間、所定の雰囲気中で熱処理を加えることにより該鏡面を接着させるにあたり、該第1及び第2半導体材料基板の鏡面における表面粗さが、上記鏡面上の所定部分に設定した基準面の一辺の長さ1mmで測定した最大高さRmax(JIS B 0601)であらわして130Å以下であるとともに、該熱処理温度が200℃以上かつ半導体基板の融点未満であることを特徴とする。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄4行) 「(実施例) 次に実施例1および2により本発明を具体的に説明する。 実施例 1 直径100mm、比抵抗20?30Ω・cmのN型シリコンウエハで、従来から使用されている平坦度(TTV)5μm以下で表面粗さが30?280Åの範囲に分布する500枚以上を用意した。 表面粗さの測定方法は、(株)東京精密製の非接触表面粗さ形状測定機Surfcom920A(スポット径1.6μm)を用い、倍率1,000,000倍、測定距離1mmで最大高さをウエハ上5点で測定し、その平均をそのウエハの表面粗さとした。 そして測定した500枚以上のなかから、表面粗さ130Å以下の500枚を1ロットとして選別し、そのロット内のウエハを2枚1組に密着させて250枚の接着ウエハとし、その後1100℃(シリコンウエハの融点は約1400℃である)で2時間、N_(2)ガス中で接着熱処理を行った。 なお、熱処理を利用した半導体ウェハの接着技術は、米国特許第4,871,846号明細書、米国特許第4,700,466号明細書に詳細に開示されている。 一方、比較例として、選別しないで表面粗さ30?280Åの範囲に分布する別のウエハ500枚をとり、実施例1と同様の方法で比較例の接着ウエハ250枚を製作した。 実施例1と比較例の接着ウェハの赤外線透過映像法検査によるボイドの内容を第4図に示す。 すなわち、比較例のボイド全体には、同心円状の干渉縞によって示されるダストに起因するボイドと、月や火星の海のような暗い部分によって示される凹凸に起因するボイドとが含まれるが、実施例1のボイドには、比較例とほぼ同量のダストに起因するボイドがあるだけで、凹凸に起因するボイドは皆無であった。 第6A図は実施例1の代表的なサンプルAを赤外線透過法により観察した状態を示す。 サンプルAの所定の3点(A,B,C)における表面粗さの実測結果(一部分)はそれぞれ第6B図、第6C図、第6D図に示され、A、B、Cにおける表面粗さの値はそれぞれ92Å,124Å,106Åである。 第6A図の実施例ウエハは全面にわたりボイドが観察されないことを示している。 なお、第6A図に示すサンプルAの周囲の狭いリング状縁取りは、例えば直径100mmの半導体ウエハに対して幅2mm程度はどうしても生じてしまう未接着領域であるが、実際には接着半導体基板の加工工程において除去される部分である。 この部分は、いわゆるウエハの面だれにより生ずるもので、本願発明が注目している表面粗さ等には関係ない。 第7A図は、比較例の代表的なサンプルBを赤外線透過法により観察した状態を示す。 サンプルBの3点(A,B,C)における表面粗さの実測結果(一部分)はそれぞれ第7B図、第7C図、第7D図に示され、A,B,Cにおける表面粗さの値はそれぞれ286Å,124Å,146Åであって、130Å以下と130Åを超えたところの双方を含む。」(3頁左下欄5行?4頁右上欄2行) 「[発明の効果] 本発明の接着半導体基板の製造方法によれば、接着前の半導体材料基板の表面粗さを130Å以下としたことにより、基板表面の凹凸による未接着部分を完全に防ぐことができ、その結果、接着半導体基板の基板割れ、破壊などの不良は激減することになった。」(4頁左下欄19行?右下欄5行) 6 小括 以上検討したとおり、本願発明と引用発明との相違点は、周知技術を勘案することにより、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明は、引用発明に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 7 結言 以上のとおり、本願発明は、引用発明に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-02 |
結審通知日 | 2011-02-03 |
審決日 | 2011-02-17 |
出願番号 | 特願2002-348610(P2002-348610) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 571- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 綿引 隆 |
特許庁審判長 |
相田 義明 |
特許庁審判官 |
松田 成正 小野田 誠 |
発明の名称 | SOIウエーハの製造方法 |
代理人 | 石原 詔二 |
代理人 | 石原 進介 |