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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1234736
審判番号 不服2009-6889  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-02 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 特願2003-150298「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日出願公開、特開2004-350807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月28日の出願であって、平成21年2月24日付(発送日:3月3日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年4月30日付で手続補正がなされた。その後、当審において平成22年9月30日付けで平成21年4月30日付けの手続補正を却下すると共に、同日付けで拒絶理由を通知し、同年12月3日付けで手続補正がなされたものである。


2.本件発明
平成22年12月3日付け手続補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 遊技者による遊技操作に応じて抽選を行い、該抽選に当選すると遊技者に特典を付与し、前記抽選の当選確率を変更可能な遊技機であって、
スイッチと、
人の操作により前記スイッチがONされたか否かを示す操作信号を生成する操作信号生成部と、
前記操作信号生成部が生成した操作信号に基づいて前記抽選の当選確率を変更することが可能となる主制御基板と、
前記操作信号生成部から前記主制御基板まで、前記操作信号を送信する操作信号送信用信号線と、
を備え、
該操作信号送信用信号線を複数備え、
前記操作信号は前記スイッチがONされたか否かという1ビットの情報を示すものであり、1ビットにすれば足りるにもかかわらず、前記操作信号生成部は、前記操作信号を前記操作信号送信用信号線の本数分のビット数の情報として生成し、
前記操作信号送信用信号線は、1本で1ビット分の情報を送信可能なものであり、
前記遊技機は、前記複数の操作信号送信用信号線の1信号線につき操作信号の1ビットを送信することで、前記操作信号を前記主制御基板へ送信し、
前記主制御基板は、CPUを備え、
前記主制御基板上では、複数本の操作信号送信用信号線に異常検出回路が分岐して接続されており、
前記異常検出回路は、複数本の操作信号送信用信号線を通じて伝達される操作信号の各ビットの値の組み合わせに基づいて、前記操作信号送信用信号線に異常が発生しているか否かを示す異常判定用信号を、前記CPUに送信し、
前記CPUは、
前記操作信号を確認する毎に、前記異常判定用信号が比較的高い電圧レベルであるか比較的低い電圧レベルであるかにより前記操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段が異常があると判断すると、異常の発生を報知するための異常時処理を実行する異常時処理実行手段と、
を実現することを特徴とする、
遊技機。
【請求項2】 請求項1記載の遊技機であって、
前記操作信号送信用信号線は2本であって、
前記操作信号生成部は、各ビットが互いに異なる値の2ビット分の操作信号を生成し、
前記異常検出回路は2つのLEDを有しており、2つのLEDは2本の操作信号送信用信号線間にて互いに並列で、かつ正負の極が逆向きに接続されており、
前記2つのLEDは、前記操作信号送信用信号線に異常がある場合は共に発光せず、前記操作信号送信用信号線に異常が無い場合は、2つのLEDのうち少なくとも一方が発光し、
前記異常検出回路は前記2つのLEDの少なくとも一方が発光する光を検出する光検出器を有しており、
該光検出器は、光を検出したか否かを、比較的低い電圧レベルであるか比較的高い電圧レベルであるかにより示す異常判定用信号を、前記CPUに送信することを特徴とする、
遊技機。
【請求項3】 請求項1記載の遊技機であって、
前記異常時処理は、前記遊技機と接続されている外部のコンピュータにエラー信号を送信する処理を含むことを特徴とする、
遊技機。
【請求項4】 請求項1記載の遊技機であって、
前記操作信号送信用信号線は2本であって、
前記操作信号生成部は、前記スイッチが操作されると、2本の信号線が送信する各ビットの値を、現在の値と異なる値に切り換えることで操作信号を生成することを特徴とする、
遊技機。
【請求項5】 請求項1記載の遊技機であって、
前記操作信号送信用信号線は2本であって、
前記操作信号生成部は、前記スイッチが操作されると得られる接点信号を、互いに異なる値の2つの信号に変換することで、前記操作信号を生成することを特徴とする、
遊技機。」
と補正された。
(そして、上記請求項1に係る発明を、以下「本件発明」という。)


3.引用文献に記載された事項
(1)当審が通知した拒絶の理由において引用文献1として引用した特願2002-203939号(特開2004-41479号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項4】
複数種類の絵柄が施された複数のリールと、
前記リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記リールにそれぞれ対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
予め定められた入賞役の内部当選の当否を抽選により判定する抽選手段と、
を有し、遊技台内部に、
所定の操作を行うための操作部と、
前記操作部の設定状態を判断する判断手段と、
を備えた遊技台において、
前記操作部が、
少なくとも2つの信号を出力可能であり、前記判断手段が、該少なくとも2つの出力信号に基づいて前記操作部の設定状態を判断することを特徴とする遊技台。
【請求項5】
前記操作部が、
一定の遊技回数後に得られる、遊技媒体の総投入数に対する遊技媒体の総払出数の割合を調整する設定値の変更操作を許可または不許可に設定するための設定値変更許可スイッチであることを特徴とする請求項4に記載の遊技台。
【請求項6】
前記操作部が、前記2つの信号のうちの一方をハイレベルに、他方をローレベルに設定するか、又はそれと反対に設定する2つの接点を有し、該2つの接点を、前記操作部の操作内容に応じて選択的に接続可能とし、前記判断手段が、前記2つの信号に基づいて前記操作部の設定状態を判断することを特徴とする請求項4又は5に記載の遊技台。」
(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスロットマシンでは、上述したように電源装置に様々なスイッチ類が集中していることや、電源装置が前面扉近傍に設けられているという理由から、不正行為の対象となり易いという不都合があった。例えば、前面扉を僅かに開けてその隙間から異物等を差し込み、電源装置のショート(電源のオン/オフ)と、キースイッチのオン/オフを同時に行って、設定値を不正に変更する等の不正行為が容易であるという問題があった。
【0007】
また、電源装置の内部に改造基板を隠して不正に設定値を変更するといった悪質な行為もしばしば報告されている。すなわち、電源装置が前面扉近傍に設けられているのでかかる不正行為が容易であった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、大掛かりな装置を設けることなく不正行為に対する安全性を高めた遊技台を提供することを目的とする。」
(ウ)「【0037】
図2(a)に示すように、リール110乃至112を搭載したリールユニット280は、筐体102内の中央付近において水平に配設された固定台281に固定されている。この固定台281には、スイッチボックス270も固定されている。スイッチボックス270には、設定値変更許可スイッチ326と電源スイッチ271が設けられている。スイッチボックス270の各スイッチが操作し易いように、スイッチボックス270は、前面扉101に近い位置に設けられており、少なくとも、電源装置230よりも手前の位置に設けるのが好ましい。設定値変更許可スイッチ326は、いわゆるキースイッチであり、キー孔に所定のキーを挿入して、時計回りに90度回転させるとオン状態となり、キーを戻して初期状態にするとオフ状態になる。電源スイッチ271は、つまみを上に向けると、オン状態になり、つまみを戻すとオフ状態になる。スイッチボックス270は、背面のみが配線引き出し用に開口した金属製のボックスである。
【0038】
主制御基板200は、スロットマシン100の主制御を司る電子回路を搭載した制御基板である。主制御基板200は、筐体102内部の背面上部に取り付けられている。副制御基板210は、スロットマシン100の演出機能を司る電子回路を搭載した制御基板である。副制御基板210は、筐体102内部の側面上部に取り付けられている。端子板220は、主制御基板200や副制御基板210に電気的に接続され、スロットマシン100内で生成した各種信号をスロットマシン100の外部へ送信するためのインターフェース基板である。」
(エ)「【0046】
[制御部]
次に、図7及び図8を参照してスロットマシン100の制御部の構成について説明する。図7は、主制御部300及び副制御部400の構成図、図8は、液晶表示制御部500の構成図である。本実施形態における制御部は、全体を制御する主制御部300と、遊技を盛り上げるための演出に関する制御等を遂行する副制御部400とから主として構成され、更に副制御部400はインターフェイスを介してLCD170を制御する液晶表示制御部500と接続されている。本実施形態では、主制御部300を主制御基板200で構成し、副制御部400を副制御基板210で構成し、液晶表示制御部500を液晶制御基板(図示省略)で構成した。制御部の構成は、これに限定されることはなく、例えば、主制御部300と副制御部400を一体化した基板を採用してもよい。
【0047】
[主制御部300]
マイクロプロセッサ(以下、MainCPUと称す)310は、スロットマシン100における制御の中枢となるものであり、バス370を介して、周辺部との間で制御信号やデータの受渡しが行われる。
【0048】
乱数発生器311は、内部抽選等に用いられる乱数を発生するもので、複数のカウンタ、クロック発振器、分周器及びラッチ回路等で構成される。乱数発生器311が発生した乱数値は、バス370を介して、RAM313の乱数記憶領域に記憶され、必要に応じてMainCPU310へ送られる。
【0049】
MainCPU310には、入力インターフェース360およびバス370を介して、メダル投入口134より投入されたメダルを検知するメダルセンサ320、スタートレバー135の操作を検知するスタートレバーセンサ321、ストップボタン136乃至138のいずれかが押された場合、どのストップボタンが押されたかを検知するストップボタンセンサ322、メダル投入ボタン130乃至132のいずれかが押下された場合、どのメダル投入ボタンが押されたかを検知するメダル投入ボタンセンサ323、及び精算ボタン133の押下に伴なって動作する精算ボタンスイッチ324が接続されている。また、さらに、MainCPU310には、入力インターフェース360およびバス370を介して、前述したリセットスイッチ325、設定値変更許可スイッチ326、設定値変更スイッチ327、打ち止め有り無し切替スイッチ328、自動精算有り無し切替スイッチ329も接続されている。」
(オ)「【0063】
[遊技の基本的制御]
図9(a)は、本実施形態のスロットマシン100における電源投入処理を示すフローチャートである。この電源投入処理は、MainCPU310が実行する処理であり、電源スイッチ271がオンされたことを契機に開始される。
【0064】
ステップS101では、設定値変更許可スイッチ326がオンに設定されているか否かを判断し、設定値変更許可スイッチ326がオンに設定されている場合には、ステップS102に進み、オンに設定されていない場合には、図9(b)に示す遊技開始処理に移行する。
【0065】
ステップS102では、RAM313に格納されている現在の設定値を取得すると共に、設定値表示器341に、取得した設定値を表示する。
【0066】
ステップS103では、設定値変更スイッチ327が押下されたか否かを判断し、設定値変更スイッチ327が押下された場合にはステップS104に進み、押下されていない場合には、以下の処理が行われることなくステップS105に進む。
【0067】
ステップS104では、設定値をインクリメントする。本実施の形態において、設定値は「1」?「6」の範囲で変更可能であり、例えば、現在の設定値が「6」のときに設定値変更スイッチ327が押下された場合は、設定値を「1」に戻す処理を行う。また、現在の設定値が「3」のときに設定値変更スイッチ327が押下されると、設定値は「4」となる。このように、設定値変更スイッチ327が1回押下される毎に設定値は「+1」ずつ増加するようになっている。
【0068】
ここで設定値とは、所定の遊技回数(例:2万回)を経たのちの、遊技媒体の総投入枚数に対する遊技媒体の総払出枚数の割合を調整する値である。この設定値には、設定値毎に入賞役の抽選データテーブルが存在し、各抽選データテーブルには、入賞役の内部抽選時に取得される乱数値の範囲がいくつかの領域に分割されて設定されている。すなわち、乱数値のとりうる範囲に対する各領域の範囲の大きさが、各入賞役の内部当選の確率となる。例えば、設定値「1」では、BBの当選確率が「1/400」に設定され、設定値「6」では「1/240」に設定されることとなり、設定値の数字が大きくなれば内部当選確率が高くなるように設定されている。ステップS104で、新たな設定値が設定されると、ステップS105に進む。」
(カ)「【0071】
図9(b)は、本実施形態のスロットマシン100における遊技の基本的制御を示すフローチャートである。遊技の基本的制御は、MainCPU310が中心になって行い、電源切断等を検知しないかぎり、本ルーチンを繰り返し実行する。
【0072】
ステップS201では、メダル投入処理として、メダルの投入数に応じた入賞ラインランプの点灯等を行う。本実施形態においてメダルの投入(遊技媒体の投入)とは、ベットボタンによる投入とメダル投入口からの投入のいずれも含む意味である。
【0073】
ステップS202では、遊技のスタート操作に関する処理を行う。スタートレバー135が操作された場合、投入されたメダル枚数を確定して、有効な入賞ライン114を確定する。
【0074】
ステップS203では、乱数発生器311で発生させた乱数を取得する。
【0075】
ステップS204では、ROM312に格納されている抽選データテーブルと、ステップS203で取得した乱数値を用いて、入賞役の内部当選の当否を定める内部抽選を行う。なお、抽選データテーブルには、あらかじめBB、RB、小役等の抽選確率に応じたデータが格納されている。
【0076】
ステップS205では、ステップS203で取得した乱数値を用いて、リール停止制御テーブルを選択し、全リール110乃至112の回転を開始させる。
【0077】
ステップS206では、ストップボタン136乃至138の受け付けが可能になり、いずれかのストップボタンが押されると、押されたストップボタンに対応するリールを、ステップS205で選択したリール停止制御テーブルに基づいて停止させる。
【0078】
ステップS207では、入賞判定を行う。ここでは、有効化された入賞ライン114上に、入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する。例えば、有効化された入賞ライン114上に、例えば「ベル-ベル-ベル」が揃っていたならばベル入賞と判定する。また、例えば「青7-青7-青7」が揃っていたならばBB入賞と判定する。
【0079】
ステップS208では、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す。
【0080】
ステップS209では、遊技状態を制御する。例えば、BB入賞時には、次の遊技からBBゲームが開始されるように準備をし、BB終了時には、次の遊技から通常の遊技が開始されるように準備する。」
(キ)「【0102】
[第3実施形態]
つぎに、本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、図13に示すように、設定値変更許可スイッチ(キースイッチ)700を2接点構造にすると共にキースイッチ700から2本の信号線、本実施形態においては信号線A701及び信号線B702を引き出し、この2本の信号線の両方の状態をMainCPU310で判断して、キースイッチのオン/オフ状態を検出するという特徴を有している。従来の設定値変更許可スイッチ、例えば上述した設定値変更スイッチ326の構造は、本実施形態と異なり、信号線は1本だけであるのが一般的であった。
【0103】
キースイッチ700の外観は、図2を用いて説明した通りであり、専用のキーをキー孔に挿入・回転させることで、接点を切り替えることが可能にしている。
【0104】
図13において、挿入したキーを時計回りに90°回転させると(オン操作すると)、端子a、cが導通し、キーを初期位置に戻すと(オフ操作すると)、端子b、cが導通する。信号線A701、信号線B702は、電源に接続され、かつ、MainCPU310のIOポートに接続されている。
【0105】
すなわち、キースイッチ700をオン操作すると、信号線A701がローレベルに設定され、且つ信号線B702がハイレベルに設定される。一方、キースイッチをオフ操作すると、信号線A701がハイレベルに設定され、且つ信号線B702がローレベルに設定される。
【0106】
続いて、図14を用いて、設定値変更許可スイッチ(キースイッチ)700の設定内容の判定処理について説明する。この判定処理は、設定値変更許可スイッチ700の設定内容を判定する処理(図9のステップS101、ステップS108)で実行される。なお、ここでは、MainCPU310においてbit0(ビット0)?bit7(ビット7)の8ビットのIOポートを想定し、信号線A701とbit0を対応させ、信号線B702とbit1とを対応させている。また、各信号線のハイレベルを「1」、ロ?レベルを「0」として扱う。
【0107】
ステップS401において、IOポートの状態を取得した後、ステップS402では、IOポートのビット0に「1」がセットされているか否かを判断し、ビット0が「1」の場合にはステップS403に進む。
【0108】
ステップS403では、IOポートのビット1に「1」がセットされているか否かを判断し、ビット1が「1」の場合にはステップS404に進み、エラーフラグをセットし、ビット1が「1」でない場合にはステップS405に進み、スイッチのオフ状態を示すオフフラグをセットする。
【0109】
一方、上述したように、ステップS402でビット0が「1」にセットされていない場合にステップS406に進み、IOポートのビット1が「1」にセットされているか否かを判断する。ビット1が「1」の場合にはステップS407に進み、スイッチのオン状態を示すオンフラグをセットし、そうでない場合にはステップS408に進み、エラーフラグをセットする。
【0110】
ステップS404?ステップS408においていずれかのフラグをセットした後、ステップS409では、エラーフラグがセットされているか否かを判断する。エラーフラグがセットされている場合にはステップS410に進み、エラーフラグがセットされていなければ、以下に述べるステップS410を行うことなく本ルーチンを終了する。
【0111】
ステップS410ではエラー出力を実行する。エラー出力として、例えば、副制御部にエラーコマンドを送信して、スピーカ462からエラー音を発生させたり、上部ランプ150を点滅させる等してもよい。
【0112】
ステップS411では、エラー出力後にエラーが、例えばリセットボタンの押下によって解除されたか否かを判定し、エラー解除された場合は、本ルーチンを終了する。
【0113】
従来では、信号線が一本しかなかったため、この信号線に導電性の異物を接触させて電圧を降下させるだけで、キースイッチのオン状態(信号線のローレベル状態)が発生してしまい、不正行為が容易であるという問題があった。
【0114】
しかしながら、本実施形態によれば、図13に示すように、信号線A701を異物等で電圧を降下させても(ローレベルに設定しても)、信号線B702がローレベルに設定されているため、図14のステップS408のエラー処理が実行される。すなわち、信号線A701はローレベルに設定されることはないので、不正行為によりローレベルに設定されると、判断手段であるMainCPU310により異常と検知され、誤作動を生じさせないものである。
【0115】
一方、信号線B702に異物を接触させることによって電圧の降下を狙っても、最初からローレベルに設定されているため、状態は変化せず誤作動が生じない。
【0116】
このように、本実施形態によれば、設定値変更許可スイッチ700を2接点構造にすると共に、このスイッチ700から2本の信号線を引き出すことによって、不正行為による誤動作を確実に防止可能となるため、遊技台の安全性が著しく向上する。
【0117】
なお、本実施形態では、スイッチ700からの引き出し線を2本としたが、複数本で有れば何本でも可能である。また、かかる構造の適用例として設定値変更許可スイッチ700を用いたが、これ以外のスイッチ類にも適用可能である。」

以上(ア)ないし(キ)の記載、および図面を総合すると、引用文献1には、
「A.複数種類の絵柄が施された複数のリールと、
前記リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、
前記リールにそれぞれ対応して設けられ、前記リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、
予め定められた入賞役の内部当選の当否を抽選により判定する抽選手段と、
を有した遊技台である。
B.(以下、図7参照)遊技台には、各入賞役の内部当選の確率を設定する設定値変更スイッチ327と前記設定値変更スイッチによる設定値の変更を有効化する設定値変更許可スイッチ326が備えられており、当該設定値変更スイッチおよび設定値変更許可スイッチの操作信号は、信号線を介して主制御部300(主制御基板200)に設けられたMainCPU310に伝送される。
C.人の操作により設定値変更許可スイッチ326が操作されると、当該操作信号は前記信号線およびインタフェイスを介してCPUで取得され、当該設定値変更許可スイッチの操作信号に基づいて、設定値変更スイッチの操作に基づく設定値の変更が可能となる。
D.(以下、図13参照)設定値変更許可スイッチ326の一実施例であるキースイッチ700(設定変更許可スイッチ)は、アース電位cおよび2つの接点a,bのいずれかと接続可能であり、当該2つの接点それぞれに接続される2本の信号線701,702にはそれぞれ抵抗を介して電源(Vcc)から電圧が加えられており、2本の信号線の電位はキースイッチの操作により、一方の信号線の電位がVccの時は他方の信号線が0、または一方の信号線の電位が0の時は他方の信号線がVccなるようにされている。
E.キースイッチによる設定値の変更を許可するか許可しないかの操作信号は、2本の信号線それぞれにおいてVcc電位であるハイレベルおよび0電位であるローレベル状態となる2種の二値情報に変換され、IOポートを介してMainCPU310へ伝送される。
F.MainCPU310では、図9および図14に記載されたようなフローに沿って両信号線の信号レベルを判定し、信号レベルがハイレベルおよびローレベル、あるいはローレベルおよびハイレベルの組み合わせであるときに、キースイッチによる設定値変更を許可するか否かを判断し、両信号線の信号レベルが共にローレベルあるいはハイレベルであるときに異常と判断してエラー音を発生させたりランプを点滅させる等のエラー処理を行う。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(上記発明を、以下、「先願発明」という。)

(2)また、当審が通知した拒絶の理由において引用文献2として引用した特開2000-325549号公報には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【0052】図2に示す本体46の内部には、各リール23L、23Cおよび23Rを回転駆動させる、可変表示装置の一例となるリールユニット60(以下、可変表示装置60ともいう)と、メダルを処理するためのホッパーユニット66と、電源ボックス65とが示されている。なお、本体46の内側で背面板の上部(リールユニット60の上部を覆う上部リール支持板97と本体46の天板との間)には、遊技制御手段の一例となる制御基板が取付けられている。」
(イ)「【0072】賭数が設定された場合にはスタートランプ部16が点灯する。これにより、スタートレバー33を操作可能であるスタート状態になった旨が遊技者に報知される。スタートランプ部16が点灯している状態でスタートレバー33を操作すれば、各リール23L、23Cおよび23Rが一斉に回転(可変表示ともいう。以下同じ。)し始める。各リール23L、23Cおよび23Rには、複数種類の図柄が描かれており、リールの回転に伴って透視窓43に現れる図柄の種類が次々と変動し、複数種類の図柄が可変表示される。
【0073】透視窓43からは、リール間塞ぎ部材51によって仕切られた3つのリール23L、23Cおよび23Rの一部分が視認される

(中略)

【0075】可変表示の開始から所定時間が経過すれば、各ストップボタン29L、29Cおよび29Rに設けられたランプが点灯する。これにより、各ストップボタン29L、29Cおよび29Rの押圧操作が有効な操作有効状態になったことが遊技者に報知される。各ストップボタン29L、29Cおよび29Rは、各リール23L、23Cおよび23Rに対応して設けられており、遊技者は自らの操作によって各リール23L、23Cおよび23Rを停止させる順序とそのタイミングとを変更できる。遊技者がストップボタン29L、29Cおよび29Rのうち、いずれかを押圧操作すれば、対応するストップボタンに設けられたランプが消灯する。その後、操作されたストップボタンに対応するリールの回転が停止する。」
(ウ)「【0081】図3は、スロットマシン1に用いられている制御回路を示すブロック図である。制御回路は、制御中枢としての制御部(マイクロコンピュータを含む)260を含む。
【0082】遊技状態を制御する遊技制御手段の一例となる制御部260は、ビッグボーナス入賞またはレギュラーボーナス入賞を発生させることが可能なゲームにするか否かを事前に決定するとともに、可変表示装置60(図1、図2参照)の可変表示結果に応じて、ビッグボーナス入賞またはレギュラーボーナス入賞を発生させる。

(中略)

【0083】制御部260は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には、制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU251と、CPU251の動作プログラムを格納するROM252と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM254とが含まれている。さらに、制御部260は、CPU251と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート249と、電源投入時等にCPU251にリセットパルスを与える初期リセット回路255と、CPU251にCPUを動作させるためのクロック信号を与えるクロック発生回路256と、クロック発生回路256からのクロック信号を分周して割込パルスを発生し定期的にCPU251に与えるパルス分周回路(割込パルス発生回路)257と、CPU251からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路258と、効果音信号を発生するためのサウンドジェネレータ250と、サウンドジェネレータ250で発生された効果音信号を増幅するためのアンプ248とを含む。
【0084】制御部260はさらに、各種スイッチからの信号をI/Oポート249に与えるためのスイッチ・センサ回路242と、I/Oポート249を介してCPU251から与えられるモータ駆動信号に応答して左、中、右リール駆動モータ212L、C、Rおよびメダル払い出しモータ214を駆動するためのモータ回路243および244と、同じくCPU251により制御されて流路切換ソレノイド215を駆動するためのソレノイド回路245と、各種表示器を制御するLED回路246と、各種ランプを制御するためのランプ回路247と、RAM254のためのバックアップ電源とを含む。こうした各種機器や制御回路には、後述する機器および回路を含め、電源回路259から所定の直流電流が供給される。また、RAM254にはバックアップ電源253から記憶保持のための電流が供給されるように構成されており、停電時により電源回路259からの電流の供給が行なわれなくなっても、確率設定値や遊技状態を所定期間、記憶しておくことができるように構成されている。
【0085】CPU251はパルス分周回路257から定期的に与えられる割込パルスに従って、割込制御ルーチンの動作を開始する。また、アドレスデコード回路258はCPU251からのアドレスデータをデコードし、ROM252、RAM254、I/Oポート249、サウンドジェネレータ250にそれぞれチップセレクト信号を与える。
【0086】この実施形態では、ROM252は、その内容の書替え、すなわち、必要が生じた場合にはその中に格納されたCPU251のためのプログラムを変更することができるように、プログラマブルROMが用いられている。そして、CPU251は、ROM252内に格納されたプログラムに従って、かつ、以下に述べる各制御信号の入力に応答して、前述したリールを駆動するためのリール駆動モータや各種表示ランプ等に対し制御信号を与える。」
(エ)「【0087】遊技場の管理者等によって確率設定スイッチ201が操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力される。
【0088】所定のキーによりキースイッチ202がキー操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力される。このキースイッチにより、ゲームモードと確率設定モードの切換えが行なわれ、確率設定モードになっている場合に限り、確率設定スイッチ201の入力が受付けられる。リセットスイッチ203が所定のキーにより操作された場合にはその操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力される。」
また、図3にはスロットマシンに用いられている制御回路を示すブロック図が、そして図2にはスロットマシンの内部斜視図が示されている。

以上(ア)ないし(エ)の記載、および図面を総合すると、引用文献2には、
「A.本体46の内側で背面板の上部(リールユニット60の上部を覆う上部リール支持板97と本体46の天板との間)に、遊技制御手段の一例となる制御基板が取付けられている。
B.制御基板に設けられた制御部260は遊技制御手段の一例であって、CPU251と、CPU251の動作プログラムを格納するROM252と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM254と、CPU251と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート249を含み、各種スイッチあるいはセンサからの信号をスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に与えるものであり、CPU251は、ROM252内に格納されたプログラムに従って、かつ、各制御信号の入力に応答して、前述したリールを駆動するためのリール駆動モータや各種表示ランプ等に対し制御信号を与える。また、制御部260は、ビッグボーナス入賞またはレギュラーボーナス入賞を発生させることが可能なゲームにするか否かを事前に決定する。
C.複数種類の図柄が描かれた、3つのリール23L、23Cおよび23Rを有しており、スタートレバー33を操作すれば、各リール23L、23Cおよび23Rが一斉に回転(可変表示ともいう。以下同じ。)し始め、各ストップボタン29L、29Cおよび29Rは、各リール23L、23Cおよび23Rに対応して設けられており、遊技者がストップボタン29L、29Cおよび29Rのうち、いずれかを押圧操作すれば、操作されたストップボタンに対応するリールの回転が停止する。
D.管理者等によって前記各種スイッチに含まれる確率設定スイッチが操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力され、また、キースイッチ202がキー操作された場合には、その操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力され、入力された操作信号に基づいてCPUによる処理により、ゲームモードと確率設定モードの切換えが行なわれ、そして、確率設定モードになっている場合に限り、確率設定スイッチ201の入力がその操作信号がスイッチ・センサ回路242を介してI/Oポート249に入力されることによって受付けられる。
E.スロットマシン。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明1」という。)

(3)また、当審が通知した拒絶の理由において引用文献3として引用した特開平7-221679号公報には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】電線による信号伝送は、簡単な電気工事で電線を敷設することができるが、外来ノイズに影響を受けやすい欠点がある。そこで、外来ノイズの影響を最小限に抑える方法として、図1のような差動信号伝送方式がある。送信器1と受信器2との間には2本1組の電線3,4が接続される。送信器1には入力されたデジタルパルス信号Aから位相が反転した2つのデジタルパルス信号B_(1) ,B_(2) を生成し、2本の電線3,4に夫々供給するドライバ5が設けられている。また、受信器2には2本の電線3,4で送られた2つのデジタルパルス信号B_(1) ,B_(2) を差動出力して出力信号Cを得るレシーバ6が設けられている。そして、レシーバ6の2つの入力端の間には、電線3,4間の分布定数によるデジタルパルスの反射を防ぐための終端抵抗7が接続されている。図2は入力信号A、伝送される2つの差動信号B_(1) ,B_(2) および出力信号Cを示す。差動信号伝送ラインである2本の電線3,4に対し、外来ノイズNはコモンモードで侵入するが、一種の差動増幅器であるレシーバ6でノイズNはキャンセルされるため、レシーバ6から入力信号Aと同一波形の出力信号Cが得られる。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】第1の発明は一方向の差動信号伝送システムに関するものであり、送信器と受信器との間に2本1組の伝送ラインが接続され、送信器には位相が反転した2つの信号を2本の伝送ラインに夫々供給するドライバが設けられ、受信器には2本の伝送ラインから送られた2つの信号を差動出力するレシーバが設けられ、このレシーバの2つの入力端の間に終端抵抗が接続される。上記伝送ラインの片方にフォトカプラの発光ダイオードが接続され、この発光ダイオードと並列に逆向きのバイパス用ダイオードが接続され、フォトカプラにより断線が検出される。 第2の発明は双方向の差動信号伝送システムに関するものであり、第1の送受信器と第2の送受信器との間に2本1組の第1伝送ラインと2本1組の第2伝送ラインとが接続される。第1の送受信器には位相が反転した2つの信号を第1伝送ラインに夫々に供給する第1ドライバと、第2伝送ラインから送られた2つの信号を差動出力する第1レシーバと、第1レシーバの2つの入力端の間に接続された終端抵抗とが設けられる。第2の送受信器には位相が反転した2つの信号を第2伝送ラインに夫々供給する第2ドライバと、第1伝送ラインから送られた2つの信号を差動出力する第2レシーバと、第2レシーバの2つの入力端の間に接続された終端抵抗とが設けられる。第1伝送ラインの片方に第1フォトカプラの発光ダイオードが接続され、この発光ダイオードと並列に逆向きの第1バイパス用ダイオードが接続される。そして、第2伝送ラインの片方にも第2フォトカプラの発光ダイオードが接続され、この発光ダイオードと並列に逆向きの第2バイパス用ダイオードが接続される。第1,第2フォトカプラにより、第1伝送ラインと第2伝送ラインの断線が検出される。
【0006】
【作用】第1の発明において、2本の伝送ラインが共に断線していない場合には、一方の伝送ラインから終端抵抗を経て他方の伝送ラインへ電流が流れる。いずれかの伝送ラインにはフォトカプラの発光ダイオードが接続されているので、この発光ダイオードを流れる電流のため発光し、フォトカプラの受光素子が動作する。これにより、断線していないことを確認できる。一方、伝送ラインのいずれかが断線すると、電流が一方の伝送ラインから終端抵抗を経て他方の伝送ラインへ流れないため、フォトカプラが動作しない。そのため、断線したことを容易に検出できる。フォトカプラは断線検出回路と伝送ラインとを電気的に分離できるので、ノイズによる断線検出回路の誤動作を防止できる。なお、バイパス用ダイオードを並列に接続したのは、伝送ラインに逆方向に流れる電流を通すためである。第2の発明は、双方向通信を行うため2本1組の伝送ラインを第1送受信器と第2送受信器との間に2系統設けたものである。この場合、第1伝送ラインと第2伝送ラインの双方に第1発明と同様のフォトカプラおよびバイパス用ダイオードを接続することにより、断線検出を行う。なお、断線検出装置を構成するフォトカプラおよびバイパス用ダイオードの接続位置は送信器側または受信器側の何れでもよい。ただ、無人の機器(受信器)に信号を送信して遠隔操作する場合には、送信器側に設ける方が望ましい。フォトカプラを受信器側に設けると、フォトカプラの検出信号を送信器側へ送るための長い伝送ラインを別に設ける必要があるからである。」
(ウ)「【0011】図4は本発明にかかる差動信号伝送システムの他の例を示す。20は第1送受信器、21は第2送受信器であり、両者の間には長い第1ケーブル22と第2ケーブル23とが接続されている。各ケーブル22,23はそれぞれ2本の電線22a,22bおよび23a,23bで構成されている。この場合には、第1,第2ケーブル22,23を介して双方向に通信できるので、第1,第2送受信器20,21としてはコントローラと遠隔操作機器との組み合わせに限らず、コンピュータとコンピュータとの組み合わせなど、如何なる組み合わせでもよい。
【0012】第1送受信器20には第1ドライバ24と第1レシーバ25とが設けられている。第1ドライバ24は、入力されたデジタルパルス信号Dから位相が反転した2つのデジタルパルス信号E_(1) ,E_(2) を生成し、2本の送信用電線22a,22bに夫々供給する。第1レシーバ25は、2本の受信用電線23a,23bから送られた2つのデジタルパルス信号H_(1) ,H_(2) を差動出力して出力信号Iを得る。第2送受信器21には第2ドライバ26と第2レシーバ27とが設けられている。第2ドライバ26は入力されたデジタルパルス信号Gから位相が反転した2つのデジタルパルス信号H_(1) ,H_(2) を生成し、2本の受信用電線23a,23bに夫々供給するものであり、第2レシーバ27は2本の送信用電線22a,22bから送られた2つのデジタルパルス信号E_(1 ),E_(2) を差動出力して出力信号Fを得るものである。なお、第1レシーバ25および第2レシーバ27の入力端の間には夫々終端抵抗28,29が接続されている。
【0013】第1送受信器20側には、第1ケーブル22の片側の電線(例えば22a)にフォトカプラ30の発光ダイオード30aが接続され、この発光ダイオード30aと並列にバイパス用ダイオード31が接続されている。一方、第2ケーブル23の片側の電線(例えば23b)にもフォトカプラ32の発光ダイオード32aが接続され、この発光ダイオード32aと並列にバイパス用ダイオード33が接続されている。フォトカプラ30,32の受光素子30b,32bは夫々断線検出回路34,35に接続されている。
【0014】上記伝送システムの動作は図3の実施例と同様であり、入力信号D,Gは信号Aと、信号E_(1) ,E_(2) およびH_(1) ,H_(2) は信号B_(1) ,B_(2) と、出力信号F,Iは信号Cと夫々対応するため、説明を省略する。この場合も、ケーブル22,23のいずれかの電線が断線した場合には、フォトカプラ30,32が動作しなくなるので、断線検出回路34,35で簡単に断線を検出できる。」

以上(ア)ないし(ウ)の記載、及び図面を総合すると、引用文献3には、
「A.ノイズの影響を最小限に抑える伝送方式であって、送信器1と受信器2との間には2本1組の電線3,4が接続され、一本の電線へは設定したレベルである信号をそのまま送信し、もう一方の電線へは信号を反転したレベルの信号を送信する、ノイズの影響を最小限に抑えることができる差動信号伝送方式。(図1参照)
B.他の例として、入力信号G(ローレベルおよびハイレベル信号)が送信側の第2ドライバ26に入力されると、第2ドライバ26は2本の信号線(23a,23b)にそれぞれハイレベルとローレベル(信号Gがハイレベルのとき23a,23bはそれぞれローレベルとハイレベル、信号Gがローレベルのとき23a,23bはそれぞれハイレベルとローレベル)の信号を出力し、受信側の第1レシーバ25において前記2本の信号線が終端抵抗28を介して接続され、一方の信号線23bがハイレベルで他方の信号線23aがローレベルのときハイレベルの信号Iが出力され、一方の信号線23bがローレベルで他方の信号線23aがハイレベルのときローレベルの信号Iが出力される作動信号伝送装置であって、信号線の片方にフォトダイオード32aが設けられ、信号線のいずれかが断線すると電流が一方の信号線から終端抵抗28を経て他方の信号線に流れないため、フォトカプラ32が動作せず、断線が検出できる装置。」
(図4、上側回路参照)
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明2」という。)

(4)さらに、当審が通知した拒絶の理由において引用文献4として引用した特開2000-3630号公報(以下、「周知文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
【従来の技術】従来からマイコンを用いたスイッチ入力回路には各種のものが実用化されているが、その中でも中立位置を備えた二接点スイッチを用いたものが電子機器の動作制御に多く用いられており、このようなスイッチ入力回路を図6の回路図を用いて説明する。
【0003】同図において、1は電子機器を制御するマイコン、2はマイコン1に配された第一の入出力ポートで、2Aは第一の入出力ポート2の出力バッファ、2Bは出力バッファ2Aの出力制御信号、2Cは出力バッファ2Aへ供給される出力信号、2Dは第一の入出力ポート2の入力バッファ、2Eは入力バッファ2Dを介した入力信号である。

中略

【0008】そして、二接点スイッチ6の共通端子6Cが中立位置6Nの時は、第1端子6Aおよび第二端子6Bの両方が開放となるので、Vccラインに接続されたプルアップ抵抗4および5によって入力信号2Eおよび3Eの両方がVccレベルとなり、共通端子6Cが第二端子6Bに接続された時は、第二の入出力ポート3に接続された第二端子6BがGNDラインに接続されるので、入力信号3EがGNDレベルとなり、第一の入出力ポート2に接続された第一端子6Aが開放となるので、入力信号2EがVccラインに接続されたプルアップ抵抗4によってVccレベルとなり、このような二接点スイッチ6の接続状態による二つの入力信号2E,3Eの組合せの違いによって、二接点スイッチ6の接続状態を判別して、電子機器の動作制御を行うものであった。」

上記(ア)の記載、及び図面を総合すると、周知文献1には、
「A.マイコンを用いたスイッチ入力回路において、二接点スイッチ6は、2本の信号線を有し、該2本の信号線の接続を切り替え、該2本の信号線をそれぞれVccとGNDに設定することによって設定を行い、マイコンはそれぞれの信号線の電圧を判別することによって二接点スイッチ6の接続状態を判別する。」
という周知技術が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「周知技術1」という。)

(5)さらにまた、当審が通知した拒絶の理由において引用文献5として引用した特開2001-23069号公報(以下、「周知文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】また、本発明の緊急通報システム端末装置は、前記制御部が、前記断線による開放状態、スイッチが押下されていない通常状態、スイッチが押下されている動作状態、ショートによる断線状態を示す信号を、前記2本の信号線の“H”信号と“L”信号を用いて4通りの信号により、識別することを特徴とした構成を有している。この構成により、“H”“L”のディジタル信号を用いるため、緊急通報発信釦の4ステータスを正確に把握することができることとなる。
(イ)「【0026】(実施の形態4)図4は緊急通報発信釦3と制御部12の詳細を示す別の回路図である。本実施の形態4が実施の形態2と異なる点は、信号線Bを、緊急通報発信釦3側で車両のボディーGNDに接続していること、および信号線Bを緊急通報システム端末装置l側で第4の抵抗R4によりプルアツプしている点であり、それ以外の構成は、実施の形態2と同様である。
【0027】 緊急通報発信釦3のボディーGNDの電位をV_(GND) とし、制御部12において、緊急通報発信釦3のステータスの認識を、導線Aと導線Bの差分で判別するとすると、導線Aが断線した場合、マイコンである制御部12のADコンバータ121の電位検出部は、抵抗R1を介してプルアップされている状態に移行するため、電圧V-V_(GND) を検出する。スイッチ31が押下されていない通常状態の場合、制御部12の電位検出部は、電圧{(R2+R3)/(R1+R2+R3)}V?V_(GND) を検出する。スイッチ3lが押下された動作状態の場合、制御部12は、電圧{R1/(R1+R3)}V-V_(GND) を検出する。導線Aがショートによる短絡状態の場合、制御部12は0Vを検出する。導線Bがショートによる短絡状態の場合、制御部l2は基準GNDと同一の電位に移行するため、正常状態を維持する。さらに導線Bの電位を単独で監視することにより、断線による開放状態に移行した場合、導線B側の電位はVになるため、開放状態に移行したことを認識することが可能になる。」

上記(ア)、(イ)の記載、及び図面を総合すると、周知文献2には、
「A.2つの状態を選択するスイッチから2本の信号線によって、スイッチの状態を示す信号を送るに際して、“H”信号と“L”信号を用いて4通りの信号を送り、スイッチの2つの状態を送るほか、異常を示す2つの状態を示す信号を送信する。
B.送信された信号は、その電位がマイコンである制御部の電位検出部で検出され、電位の組合せに基づいて信号線の状態が判断できる。」
という周知技術が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「周知技術2」という。)


4.拒絶の理由1について
(1)対比
先願発明と本件発明を対比する。
a.先願発明の前記A.の構成(以下、アルファベットのみを示す。)からみて、先願発明と本件発明は、「遊技者による遊技操作に応じて抽選を行い、該抽選に当選すると遊技者に特典を付与する遊技機」である点で一致する。
b.先願発明のB.およびC.からみて、先願発明の「設定値変更許可スイッチ326(キースイッチ700)」、「主制御基板200」、「MainCPU310」、「信号線」は、それぞれ本件発明の「スイッチ」、「主制御基板」、「CPU」、「操作信号送信用信号線」に相当する。
したがって、先願発明と本件発明は「前記抽選の当選確率を変更可能な遊技機であって、スイッチと、人の操作により前記スイッチがONされたか否かを示す操作信号を生成する操作信号生成部と、前記操作信号生成部が生成した操作信号に基づいて前記抽選の当選確率を変更することが可能となる主制御基板と、前記操作信号生成部から前記主制御基板まで、前記操作信号を送信する操作信号送信用信号線と、を備え」た点で一致する。
c.先願発明のB.D.およびE.からみて、先願発明と本件発明は「該操作信号送信用信号線を複数備え、前記操作信号は前記スイッチがONされたか否かという1ビットの情報を示すものであり、1ビットにすれば足りるにもかかわらず、前記操作信号生成部は、前記操作信号を前記操作信号送信用信号線の本数分のビット数の情報として生成し、前記操作信号送信用信号線は、1本で1ビット分の情報を送信可能なものであり、前記遊技機は、前記複数の操作信号送信用信号線の1信号線につき操作信号の1ビットを送信することで、前記操作信号を前記主制御基板へ送信し、前記主制御基板は、CPUを備え」た点で一致する。
d.本件発明は、操作信号を確認する毎に、操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断する判断手段を含んでいるが、この「操作信号を確認する毎」とは、実質的には本願第6図に記載された判定処理(2)のフロー図に示されたような手順を実行する毎という意味であると解されるところ、先願発明のF.にあるように、先願発明における信号線に異常があるか否か判断する手順である図9および図14に記載されたフロー図(図14のフローは図9のフロー図中のステップS101、S108で実行されることが段落【0106】に記載されている。)からみれば、本件発明と同様に、操作信号を確認する毎に操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断していることは明らかであるから、先願発明と本件発明は「前記CPUは、前記操作信号を確認する毎に、前記操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段が異常があると判断すると、異常の発生を報知するための異常時処理を実行する異常時処理実行手段と、を実現する」点で一致する。

e.一方、先願発明は、キースイッチの操作に基づく2本の信号線からの2つの電圧レベルを主制御基板で受けた後、その2つの信号をCPUに送信し、CPUが当該2つの信号レベルの組合せを判断して異常判定を行うものであるのに対し、本件発明は、「前記主制御基板上では、複数本の操作信号送信用信号線に異常検出回路が分岐して接続されており、前記異常検出回路は、複数本の操作信号送信用信号線を通じて伝達される操作信号の各ビットの値の組み合わせに基づいて、前記操作信号送信用信号線に異常が発生しているか否かを示す異常判定用信号を、前記CPUに送信し、前記CPUは、前記異常判定用信号が比較的高い電圧レベルであるか比較的低い電圧レベルであるかにより前記操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断する」、すなわち、本件発明は、スイッチの操作に基づく2本の信号線(操作信号送信用信号線)から2つの信号を分岐させ、当該2つの信号レベルの組合せを異常検出回路で判定し、その結果の信号をCPUに送信して、CPUではその信号で異常を判断する点で、両者に相違が認められる。

(2)判断
上記e.でいうところの相違点は、要するに、2つの信号の組合せ異常をCPUに判定させるか、あるいは、CPUの前段に異常検出回路を設けて、異常検出回路に2つの信号の組合せ異常を判定させるかという相違であるといえるが、この種の伝送方式(一般に差動伝送方式といわれる)において、受信側で2本の信号線から信号を分岐させ、当該2つの信号レベルの組合せを異常検出回路で判定して結果のみを出力するものは、例えば、特開平4-37231号公報(特に、第1図参照)にあるように周知であるから、先願発明のように、CPU自体に2つの信号の組合せを判断させることに換えて、CPUの前段に設けた異常検出回路に2つの信号の組合せを判断させ、CPUはその結果のみ利用するようにすることは、設計変更の域を出るものでなく、上記相違点は実質的な相違と認めることができない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2002-203939号(特開2004-41479号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


3.拒絶の理由2について
事案に鑑み、念のため拒絶の理由2についても判断を示す。
(1)対比
引用発明1と本件発明を対比する。
a.引用発明1の前記B.およびC.の構成(以下、アルファベットのみ示す。)からみれば、引用発明1が「遊技者による遊技操作に応じて抽選を行い、該抽選に当選すると遊技者に特典を付与し、前記抽選の当選確率を変更可能な遊技機」であることは明らかである。
b.引用発明1のD.からみれば、引用発明1の「キースイッチ202」は本件発明の「スイッチ」に対応し、引用発明1においてキースイッチ202を操作すると、キースイッチの操作信号が生成されて当該操作信号は信号線を介して制御基板上の制御部260に送信され、その信号に基づいて確率設定スイッチ201の入力が受け付けられるようになるものであるから、引用発明1が「スイッチと、人の操作により前記スイッチがONされたか否かを示す操作信号を生成する操作信号生成部と、前記操作信号生成部が生成した操作信号に基づいて前記抽選の当選確率を変更することが可能となる主制御基板と、前記操作信号生成部から前記主制御基板まで、前記操作信号を送信する操作信号送信用信号線と、を備え」ていることも明らかである。
そして、引用発明1の制御基板はCPUを備えている。

以上のことから、引用発明1と本件発明は、
<一致点>
「遊技者による遊技操作に応じて抽選を行い、該抽選に当選すると遊技者に特典を付与し、前記抽選の当選確率を変更可能な遊技機であって、
スイッチと、
人の操作により前記スイッチがONされたか否かを示す操作信号を生成する操作信号生成部と、
前記操作信号生成部が生成した操作信号に基づいて前記抽選の当選確率を変更することが可能となる主制御基板と、
前記操作信号生成部から前記主制御基板まで、前記操作信号を送信する操作信号送信用信号線と、
を備え、
前記主制御基板は、CPUを備えた、遊技機。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明は、「操作信号送信用信号線を複数備え、前記操作信号は前記スイッチがONされたか否かという1ビットの情報を示すものであり、1ビットにすれば足りるにもかかわらず、前記操作信号生成部は、前記操作信号を前記操作信号送信用信号線の本数分のビット数の情報として生成し、前記操作信号送信用信号線は、1本で1ビット分の情報を送信可能なものであり、前記遊技機は、前記複数の操作信号送信用信号線の1信号線につき操作信号の1ビットを送信することで、前記操作信号を前記主制御基板へ送信」するものであるのに対し、
引用発明1は、キースイッチ(本件発明のスイッチに対応するもの)から操作信号を制御部に送信するための信号線の数、その伝送方式等が不明であり、上記構成を備えていない点。
<相違点2>
本件発明は、「前記主制御基板上では、複数本の操作信号送信用信号線に異常検出回路が分岐して接続されており、前記異常検出回路は、複数本の操作信号送信用信号線を通じて伝達される操作信号の各ビットの値の組み合わせに基づいて、前記操作信号送信用信号線に異常が発生しているか否かを示す異常判定用信号を、前記CPUに送信」するものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点。
<相違点3>
本件発明は、「前記CPUは、前記操作信号を確認する毎に、前記異常判定用信号が比較的高い電圧レベルであるか比較的低い電圧レベルであるかにより前記操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段が異常があると判断すると、異常の発生を報知するための異常時処理を実行する異常時処理実行手段と、を実現」するものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点

(2)判断
<相違点1>について
引用発明1は、キースイッチが操作されたとき、当該操作に基づく信号が信号線を介してI/Oポートに入力され、当該信号に基づいてCPUによる処理によりゲームモードと確率設定モードが切換えられ、確率設定モードになっている場合のみ、確率設定スイッチの入力が受付けられるものである。
つまり、引用発明1において、キースイッチからI/Oポートに信号を伝送する信号線の本数や、キースイッチが操作されたとき信号線にどのような信号が出力されるのか等は不明であるが、キースイッチが操作されたときにI/Oポートに出力される信号には、少なくとも、確率設定スイッチの入力が受け付けられないゲームモードにするための第1の信号と、確率設定スイッチの入力が受け付けられる確率設定モードにするための第2の信号が存在し、そしてキースイッチの操作によって、信号線に当該第1の信号あるいは第2の信号を出力するようになっていることは明らかである。
ところで、引用発明1において、確率設定スイッチの入力を受け付けることを表す第1の信号と受け付けないことを表す第2の信号は、1ビットの信号、すなわちハイレベル信号とローレベル信号で表現でき、当該1ビットの信号が1本の信号線で伝送できることは自明であるので、引用発明1においてはキースイッチからの信号は、1本の信号線で1ビットの信号を伝送する伝送方式(これは一般的なものである)であると予測できるが、1本の信号線で1ビットの信号を伝送する伝送方式は、信号線にノイズが混入しやすく、また断線や短絡等の異常に対処し難いという問題点があることはよく知られたところである。
また、遊技機の技術分野において、信号線にノイズを混入させたり、信号線を切断・短絡させたりするような不正が行われていることは知られており、このような不正に対処すべきこともまた知られたことである。
以上のことを鑑みれば、遊技機の技術分野における信号の伝送において、各種ノイズ、信号線の切断・短絡等に対処できる適当な信号伝送方式の採用を試みることは普通に考えることである。
一方、各種ノイズ、信号線の切断・短絡等に対処できる信号伝送方式として、1ビットの信号の伝送に2本の信号線を使用し、1ビット信号を位相が反対になる2種類の1ビットの信号(一方がハイレベル信号の場合、他方がローレベル信号となる信号)に変換して各信号をそれぞれの信号線で伝送する方式は、引用発明2にあるように知られた技術である。
(引用発明2のほか、例えば、特開平4-37231号公報にも記載されている。)
してみると、引用発明1のキースイッチ(本件発明の「スイッチ」に対応する。)と制御部との間の信号伝送に、引用発明2にあるような信号伝送方式を適用し、「該操作信号送信用信号線を複数備え、前記操作信号は前記スイッチがONされたか否かという1ビットの情報を示すものであり、1ビットにすれば足りるにもかかわらず、前記操作信号生成部は、前記操作信号を前記操作信号送信用信号線の本数分のビット数の情報として生成し、前記操作信号送信用信号線は、1本で1ビット分の情報を送信可能なものであり、前記遊技機は、前記複数の操作信号送信用信号線の1信号線につき操作信号の1ビットを送信することで、前記操作信号を前記主制御基板へ送信」するものとすることは当業者が容易に想到し得たと認められる。

<相違点2>および<相違点3>について
相違点2と相違点3は互いに関連するので、両者を併せて検討する。
引用発明2は、信号線の片方にフォトダイオードが設けられ、信号線のいずれかが断線すると、終端抵抗間に電位差が生じず、電流が一方の信号線から終端抵抗28を経て他方の信号線に流れずフォトカプラ32が動作しないため、断線が検出できるものであるが、図4から明らかなように、2本の信号線がそれぞれハイレベルとローレベルになるときのみ第1レシーバ25から出力が得られ、そして、2本の信号線がいずれもハイレベルになるか、あるいはいずれもローレベルとなるときは、信号線間に電位差が生じないのであるから第1レシーバ25から出力が得られないだけでなく、終端抵抗28を経て信号線に電流が流れないためフォトカプラも動作しない。
つまり引用発明2は、2本の信号線がいずれもハイレベル、あるいはいずれもローレベルとなるときを異常状態として確認できるものである。
そして、そもそも引用発明2のように2本の信号線によって逆位相の信号を伝送する差動伝送方式では、両信号線の電位の位相(レベル)が逆であるときのみ正常な伝送とすることを前提としていることは明らかであり、それ以外の場合、つまり両信号線の電位が同位相(ハイレベルとハイレベル、ローレベルとローレベル)の場合は異常状態であることは自明な事項であって、両信号線の電位が同位相であるという異常を、引用発明2ではフォトカプラの動作によって(両信号線の電位が同位相である場合フォトカプラが動作しないことを利用して)検出しているものと理解できる。
また、差動伝送方式において、受信側で2本の信号線から信号を分岐させ、当該2つの信号レベルの組合せを異常検出回路で判定してその結果をハイレベルあるいはローレベル(比較的高い電圧レベルか比較的低い電圧レベル)で出力するものは、先に示した特開平4-37231号公報にあるように周知な技術であり、かつ、2本の信号線の電位の組合せに基づいてCPUが異常を判定することも周知技術1,2にあるように周知である。
さらに、この種遊技機では、機器に異常が検出されると異常の発生を報知することは常套手段である。
以上のことを勘案すると、引用発明1において、「前記主制御基板上では、複数本の操作信号送信用信号線に異常検出回路が分岐して接続されており、前記異常検出回路は、複数本の操作信号送信用信号線を通じて伝達される操作信号の各ビットの値の組み合わせに基づいて、前記操作信号送信用信号線に異常が発生しているか否かを示す異常判定用信号を、前記CPUに送信」すること、および、「CPUは、前記異常判定用信号が比較的高い電圧レベルであるか比較的低い電圧レベルであるかにより前記操作信号送信用信号線に異常があるか否かを判断し、前記判断手段が異常があると判断すると、異常の発生を報知するための異常時処理を実行する」ことは、引用発明2および周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたといわざるを得ない。
ところで、引用発明1のように、複数のスイッチやセンサ(引用文献2の図3、確率設定スイッチ201ないしリール位置センサ212等参照)からの信号をCPUで処理する場合、CPUは前記複数のスイッチ・センサからの各信号を個別に処理していることは自明であるが、当該スイッチ・センサからの各信号を処理する際、その信号が存在しているとか変化した等の条件を満たした場合にのみ、続けて一連の処理(信号取込みや信号のエラーチェック等)を行うことはごく普通の処理方式である。
つまり、スイッチが操作された信号あるいはセンサが動作した信号が無いとか変化していないといった場合、CPUは当該スイッチ・センサに関する処理を終了し、当該信号が存在するとか変化したことを確認すると信号の取込みや信号のチェックを行う(実際はプログラム上で行われている)ことは普通に行われている信号処理にすぎない。
してみると、CPUに、「操作信号を確認する毎」に異常があるか否かの判断(処理)を行わせることは適宜なし得る設計事項と認められる。
その他、本件発明の作用効果を検討しても、本件発明に格別の点は認められない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1、引用発明2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.まとめ
本件発明は、先願発明1と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、また、引用発明1、引用発明2および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2003-150298(P2003-150298)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 16- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 小原 博生
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 小泉 真紀  

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