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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65F
管理番号 1234743
審判番号 不服2009-15084  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-19 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 特願2004-262527号「廃棄処理管理装置、廃棄処理管理方法および廃棄処理管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月23日出願公開、特開2006-76716号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年9月9日の出願であって、平成21年5月14日付けの補正却下の決定で、平成21年2月16日付けの手続補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月19日)、これに対し、同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成21年8月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月19日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「対象物の外観を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記対象物の外観が撮影された日時に関する情報を取得する撮影日時情報取得手段と、前記対象物に設けられたRFID(Radio Frequency ID)タグに記録された前記対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段と、前記撮影手段によって撮影された前記対象物の外観に関する画像情報と、前記撮影日時情報取得手段によって取得された日時に関する情報とを、前記対象物情報取得手段によって取得された情報に関連付けて記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする廃棄処理管理装置。」とあったものを「対象物の外観を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記対象物の外観が撮影された日時に関する情報を取得する撮影日時情報取得手段と、前記対象物に設けられたRFID(Radio Frequency ID)タグに記録された前記対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段と、前記撮影手段によって撮影された前記対象物の外観に関する画像情報と、前記撮影日時情報取得手段によって取得された日時に関する情報とを、前記対象物情報取得手段によって取得された情報に関連付けて記憶する記憶手段と、を備え、前記対象物が廃棄処理される処理場には、当該対象物を最終処分する最終処分処置と、当該最終処分装置の投入口まで当該対象物を順次搬送し、当該対象物を当該対象物の自重により当該投入口へ落下させる搬送装置とが設けられ、前記対象物情報取得手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物に関する情報を取得可能に設置され、前記撮影手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物を撮影可能に設置され、前記対象物情報取得手段による前記対象物に関する情報の取得および前記撮影手段による撮影は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物が前記投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれることを特徴とする廃棄処理管理装置。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、対象物情報取得手段および撮影手段について、「前記対象物が廃棄処理される処理場には、当該対象物を最終処分する最終処分処置と、当該最終処分装置の投入口まで当該対象物を順次搬送し、当該対象物を当該対象物の自重により当該投入口へ落下させる搬送装置とが設けられ、前記対象物情報取得手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物に関する情報を取得可能に設置され、前記撮影手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物を撮影可能に設置され、前記対象物情報取得手段による前記対象物に関する情報の取得および前記撮影手段による撮影は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物が前記投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれる」ことを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-29602号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、機密廃棄物の処理方法及び処理システムに係り、特に、機密廃棄物等の排出から運搬そして処理装置への投入に至る処理状況を正確に確認可能な機密廃棄物の処理方法及び処理システムに好適なものである。」(段落【0001】)
b)「【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる従来の特別管理廃棄物の収集廃棄処理方法は、運搬以降の処理を運搬者及び処理者に委託した場合に、運搬後のバーコードラベルの読取りデータ及び判定結果を排出者に通知する方法、あるいは排出者が所有する端末機から直接確認することができる方法にはなっていないと共に、運搬以降の処理状況を処理終了後に確認できるのはバーコードラベルの読取りデータ及びそのデータを比較した判定結果データのみであるため、排出者が正確な処理状況を確認することが難しいという課題がある。
本発明の目的は、排出者が運搬者または処理者の処理状況を正確にかつ迅速に確認することができる機密廃棄物の処理方法及び処理システムを提供することにある。」(段落【0003】、【0004】)
c)「【発明の実施の形態】以下、本発明に係る廃棄物の処理システム及び処理方法を図1から図5を用いて説明する。
まず、本発明の一実施例の機密廃棄物の処理システム及び処理方法を図1から図3を用いて説明する。図1は本発明の一実施例の機密廃棄物の処理システムの構成図、図2は図1の機密廃棄物の処理システムの排出場所に係る具体的構成及び処理方法の説明図、図3は図1の機密廃棄物の処理システムの処理場に係る具体的構成及び処理方法の説明図である。
図1に示すように、機密廃棄物の処理システムは、機密廃棄物の処理サービス会社が経営する管理センタの管理センタサーバ3に、携帯電話回線、電話回線、インターネット網及び通信衛星回線等の通信回線1を介して、機密廃棄物を排出する排出者が所有する排出者端末4と、機密廃棄物を排出場所から処理場に運搬する運搬者が所有する運搬者端末2と、処理場が所有する処理場端末(この実施例では処理場第1端末61及び処理場第2端末64)とが接続されて構成される。この接続は、排出者端末4、運搬者端末2、処理場第1端末61及び処理場第2端末64が管理センタサーバ3に登録申請して承認が得られた場合に、接続可能となるように設定されている。従って、排出者、運搬者及び処理者は、通信回線1を介してパソコン等の端末を運搬者端末2に接続することで、簡単にこの機密廃棄物の処理システムに参加することができる。なお、図1において、排出者、運搬者及び処理者を一人で代表させて表示してあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらがそれぞれ複数であっても良い。
ここで、機密廃棄物の処理システムにおける機密廃棄物11が処理される概要を説明すると、機密廃棄物11は、図2に示すように排出時に識別ラベルの一例であるバーコードラベル12が張付・封印された後に(予めバーコードラベル12が張付、封印されている場合には、排出場所で運搬者端末2のバーコード読取装置26により個別にバーコード読取りが行われた後に)、運搬車両5に積み込まれて封印具52で運搬車両5の荷物収納室51が封印され、この状態で処理場に運搬され、処理場で図3に示すように運搬車両5の封印具52を開封し、扉等を開けて取出された時にその積み降し場所で運搬者端末2のバーコード読取装置26により個別にバーコード読取りが行われた後に、それから投入作業場所まで運ばれ、ここでも運搬者端末2のバーコード読取装置26によりバーコード読取りが行われてから、処理装置8に投入される。
・・・
上述したように、機密廃棄物の処理システムを構成する排出者端末4、運搬者端末2、処理場第1端末61及び処理場第2端末64は、通信回線1を介して管理センタサーバ3と送受信できるようになっている。」(段落【0013】?【0019】)
d)「次に、機密廃棄物の処理システムの機密書類排出場所に係る具体的構成を図2を用いて説明する。
図2において、運搬者端末2は、ハンディタイプのパソコンなどで構成され、入力装置21、制御装置22、表示装置23、記憶装置24、携帯電話25、バーコード読取装置26、プリンタ27、バーコードラベラー28、及び監視カメラ29を有する。入力装置21は、キーボード等よりなる文字入力部を有し、この入力結果を制御装置22に入力するように接続される。」(段落【0022】、【0023】)
e)「機密廃棄物11は、ダンボール箱等の中に機密書類等が収納され、上面のみに開閉部分を有し、この開閉部分にまたがってバーコードラベル12が貼着されて封印されることにより構成される。
バーコードラベル12は、排出者、排出場所、ラベル出力日、運搬者、及び識別番号を表面に表示したバーコードを有し、裏面に接着材が塗布されて機密廃棄物11に貼付けることによりバーコードラベル12自身を破断しない限り機密廃棄物11を開封できないようになっており、機密廃棄物11に対する封印機能を有する。このバーコードは識別データAとなるものである。
・・・
次に、機密廃棄物の処理システムの廃棄物処理場に係る具体的構成を図3を用いて説明する。
処理場第1端末61は、制御装置62と第1監視カメラ63を備えている。この処理場第1端末61は、制御装置62に接続される入力装置、表示装置、記憶装置及びプリンタを備えているが、図3では省略してある。また、第1監視カメラ63は、処理場の積み降ろし場所の近くの所定位置に固定的に配置されている。
処理場第2端末64は、制御装置65と第2監視カメラ66を備えている。この処理場第2端末64は、制御装置65に接続される入力装置、表示装置、記憶装置及びプリンタを備えているが、図3では省略してある。また、第2監視カメラ66は、処理場の投入作業場所の近くの所定位置に固定的に配置されている。
処理装置8は、溶解槽等より構成され、機密廃棄物11をリサイクルできるように溶解するものである。」(段落【0026】?【0033】)
f)「さらに、運搬者は、第1監視カメラ63の撮影のもとに、機密廃棄物11を積み降し場所から投入作業場所まで移動し、第1監視カメラ63の撮影と重複して第2監視カメラ66の撮影を開始し(ステップ142)、この撮影した映像データFを連続的に処理場第2端末64から管理センタサーバ3に送信開始する(ステップ143)。この第2監視カメラ66の撮影は、投入作業場所に運ばれるところから投入処理されるところまでの全ての機密廃棄物11の処理状況が常に撮影されるように行なわれるものである。
管理センタは、この映像データFを受信して記憶装置34に記憶して行くと共に(ステップ144)、この映像データFを管理センタサーバ3から排出者端末4に送信開始する(ステップ145)。排出者は、この映像データFを排出者端末4に受信してその記憶装置に記憶して行く(ステップ146)。この第2監視カメラ66の撮影は、機密廃棄物11の移動状況、機密廃棄物11の開封状況、機密廃棄物11から機密文書を取出して処理装置8に投入する状況を全て連続的に行なうものである。第2監視カメラ66の撮影が開始されて重複撮影時間が経過した後に、第1監視カメラ63の撮影を終了し(ステップ147)、映像データEの管理センタサーバ3への送信を終了する(ステップ148)。これにより、管理センタは、映像データEの受信を終了し、排出者端末4への送信を終了し(ステップ149)し、さらに、排出者は、映像データEの受信を終了する(ステップ150)。
次いで、運搬者は、第2監視カメラ66の撮影のもとに、投入作業場所で、それぞれの機密廃棄物11に貼着されたバーコードラベル12を個別にバーコード読取装置26で読取り、その読取った識別データDを記憶装置24に記憶する(ステップ152)。識別データDが読取られると、記憶装置24に記憶されている識別データA、B、Cと比較する一次判定を行ない、この一次判定結果データQを記憶装置24に記憶する(ステップ153)。この一次判定は、識別データDが識別データA、B、Cに一致するか否かで行なわれる。この一次判定が行なわれると、その判定結果データQを表示装置23に表示し(ステップ154)、データD、Qを携帯電話25で位置時間情報を付けて管理センタサーバ3に送信する(ステップ155)。この判定結果データQは、識別データDが識別データA、B、Cに一致したか否か、不一致の対象物、一致の対象物等である。そして、処理者は、この判定結果を確認した後に、第2監視カメラ66の撮影のもとに、機密廃棄物11のバーコードラベル12を開封し、機密廃棄物11から機密文書を取出して処理装置8に投入するものである。
このように、識別データDの読取りが行われると、識別データDの一次判定が運搬者端末2で自動的に行なわれるので、運搬者及び処理者は廃棄すべき機密廃棄物11の確認をバーコード読取り時に容易に行なうことができる。しかも、運搬者は、運搬者端末2だけで一次判定することができ、その結果に基づいて次の処理に移ることができるので、迅速な処理を行なうことができる。
管理センタは、データD、Qを受信して記憶装置34に記憶した後(ステップ161)、受信データDの二次判定を行ない、この二次判定結果データRを記憶装置34に記憶する(ステップ162)。この識別データDに関する二次判定は、識別データDが記憶装置34に記憶されている識別データA、B、Cに一致するか否かで行われる。この二次判定が行なわれると、その判定結果データRを表示装置33に表示し(ステップ163)、管理センタサーバ3から排出者端末4にデータD、Q、Rを映像データFに関連付けて送信する(ステップ164)。排出者は、このデータD、Q、Rを排出者端末4に受信してその記憶装置に記憶して行くと共に(ステップ165)、映像データFと封印具に関するデータH、MOとバーコードラベルに関するデータD、Q、Rと排出場所に関するデータA、B、G?Lとを関連付けて排出者端末4の表示装置に表示する(ステップ166)。なお、映像データEとFが重複する部分は、表示装置の画面を分割して同時に表示する。」(段落【0052】?【0056】)
g)「【発明の効果】本発明によれば、排出者が運搬者または処理者の処理状況を正確にかつ迅速に確認することができる機密廃棄物の処理方法及び処理システムを提供することができる。」(段落【0065】)

上記a?gの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「機密廃棄物11の処理状況を撮影する第2監視カメラ66と、
識別データDを位置時間情報を付けて管理センタサーバ3に送信する運搬者端末2と、
機密廃棄物11を構成する機密書類が収納された箱に貼着された識別データDを有するバーコードラベル12を個別に読取る、運搬者端末2のバーコード読取装置26と、
受信した映像データFを位置時間情報の付いた識別データDと関連付け記憶する管理センタサーバ3の記憶手段34を備え、
廃棄物処理場には、
溶解槽等により構成され、機密廃棄物11を構成する箱から機密文書を取出してリサイクルできるように溶解する処理装置8を備え、
機密廃棄物11は投入処理され、
バーコード読取装置26は、投入作業場所でバーコードラベル12を個別に読取ることができ、機密廃棄物11は、読取りが行われてから処理装置8に投入され、
第2監視カメラ66は、廃棄物処理場の投入作業場所の近くの所定位置に固定的に配置され、第2監視カメラ66の撮影は、投入作業場所に運ばれるところから投入処理されるところまでの全ての機密廃棄物11の処理状況を常に撮影する、
機密廃棄物の処理システム。」

3.対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「機密廃棄物11」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「対象物」に相当し、以下同様に、
「第2監視カメラ66」は「撮影手段」に、
「識別データDを位置時間情報を付けて管理センタサーバ3に送信する運搬者端末2」は、運搬者端末2が、識別データDに付加する位置時間情報を得る機能を有するといえるから、「撮影手段によって対象物の外観が撮影された日時に関する情報を取得する撮影日時情報取得手段」に、
「受信した映像データFを位置時間情報の付いた識別データDと関連付け記憶する管理センタサーバ3の記憶手段34」は「撮影手段によって撮影された対象物の外観に関する画像情報と、撮影日時情報取得手段によって取得された日時に関する情報とを、対象物情報取得手段によって取得された情報に関連付けて記憶する記憶手段」に、
「廃棄物処理場」は「対象物が廃棄処理される処理場」に、
「溶解槽等により構成され、機密廃棄物11を構成する箱から機密文書を取出してリサイクルできるように溶解する処理装置8」は「対象物を最終処分する最終処分処置」に、
「機密廃棄物の処理システム」は「廃棄処理管理装置」に、
それぞれ相当する。

そして、刊行物に記載された発明の「機密廃棄物11を構成する機密書類が収納された箱に貼着された識別データDを有するバーコードラベル12を個別に読取る、運搬者端末2のバーコード読取装置26」と本件補正発明の「対象物に設けられたRFIDタグに記録された対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段」とは、「記録された対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段」である点で共通し、以下同様に、
「機密廃棄物11は投入処理され」ることと「最終処分装置の投入口まで当該対象物を順次搬送し、当該対象物を当該対象物の自重により当該投入口へ落下させる搬送装置」とは、「対象物を投入処理する手段」である点で、
「バーコード読取装置26は、投入作業場所でバーコードラベル12を個別に読取ることができ、機密廃棄物11は、読取りが行われてから処理装置8に投入され」ることと「対象物情報取得手段は、搬送装置によって搬送される対象物に関する情報を取得可能に設置され、」「対象物情報取得手段による対象物に関する情報の取得」「は、搬送装置によって搬送される対象物が投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれる」こととは、「対象物情報取得手段は、対象物に関する情報を取得可能とされ、対象物情報取得手段による対象物に関する情報の取得は、対象物が投入される前におこなわれる」ことで、
「第2監視カメラ66は、廃棄物処理場の投入作業場所の近くの所定位置に固定的に配置され、第2監視カメラ66の撮影は、投入作業場所に運ばれるところから投入処理されるところまでの全ての機密廃棄物11の処理状況を常に撮影する」ことと「撮影手段は、搬送装置によって搬送される対象物を撮影可能に設置され、」「撮影手段による撮影は、搬送装置によって搬送される対象物が投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれる」こととは、「撮影手段は、対象物を撮影可能に設置され、撮影手段による撮影は、対象物が投入される前におこなわれる」ことで、
それぞれ共通する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「対象物の外観を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記対象物の外観が撮影された日時に関する情報を取得する撮影日時情報取得手段と、記録された前記対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段と、前記撮影手段によって撮影された前記対象物の外観に関する画像情報と、前記撮影日時情報取得手段によって取得された日時に関する情報とを、前記対象物情報取得手段によって取得された情報に関連付けて記憶する記憶手段と、を備え、前記対象物が廃棄処理される処理場には、当該対象物を最終処分する最終処分処置と対象物を投入処理する手段とが設けられ、前記対象物情報取得手段は、当該対象物に関する情報を取得可能とされ、前記撮影手段は、当該対象物を撮影可能に設置され、前記対象物情報取得手段による前記対象物に関する情報の取得および前記撮影手段による撮影は、当該対象物が投入される前におこなわれる廃棄処理管理装置。」

[相違点1]
対象物について、本件補正発明では、処理対象物に直接RFIDタグが設けられているのに対して、刊行物に記載された発明では、機密廃棄物11を構成する機密書類が収納された箱にバーコードラベル12が貼着されている点。

[相違点2]
対象物情報取得手段および撮影手段が、本件補正発明では、最終処分装置の投入口まで対象物を順次搬送し、対象物を対象物の自重により投入口へ落下させる搬送装置が設けられ、対象物情報取得手段は、搬送装置によって搬送される対象物に関する情報を取得可能に設置され、撮影手段は、搬送装置によって搬送される対象物を撮影可能に設置され、対象物情報取得手段による前記対象物に関する情報の取得および撮影手段による撮影は、搬送装置によって搬送される対象物が投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれるのに対して、刊行物に記載された発明では、バーコード読取装置26は、投入作業場所でバーコードラベル12を個別に読み取ることができ、機密廃棄物11は、読取りが行われてから処理装置8に投入され、第2監視カメラ66は、廃棄物処理場の投入作業場所の近くの所定位置に固定的に配置され、第2監視カメラ66の撮影は、投入作業場所に運ばれるところから投入処理されるところまでの全ての機密廃棄物11の処理状況を常に撮影する点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1について検討する。
廃棄物を処理する技術分野において、処理対象物を収納する容器にRFIDタグを設けることは、本願出願前に周知の技術事項(特開2002-274648号公報の段落【0024】や、特開2002-80104号公報の段落【0007】や、特開2001-19107号公報の段落【0027】を参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。
また、医療用廃棄物を処理する技術分野において、医療用廃棄物を容器に収納したまま焼却処理等の廃棄物処理を行うことも、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、上記特開2002-80104号公報の段落【0010】や、特開平4-105651号公報の第2ページ左下欄第3行?同第11行や、特開平3-272764号公報の第4ページ右上欄第2行?同第14行を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
したがって、刊行物に記載された発明の処理対象物の機密廃棄物11に、上記周知の技術事項1、2を適用して、機密廃棄物11をRFIDタグが直接設けられた容器毎に廃棄処理の可能な処理対象物に置き換えることは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について検討する。
対象物監視機能を有する廃棄処理管理装置の技術分野において、最終処分装置の投入口まで対象物を順次搬送し、対象物を対象物の自重により投入口へ落下させる搬送装置を設け、搬送装置によって搬送される対象物を撮影手段により監視することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平7-40273号公報の段落【0007】?【0009】、【図3】や、特開平10-202571号公報の段落【0009】、【0015】?【0017】、【図2】を参照のこと。以下「周知の技術事項3」という。)。
そして、刊行物に記載された発明に、上記周知の技術事項3を適用して、最終処分装置の投入口まで対象物を順次搬送し、対象物を対象物の自重により投入口へ落下させる搬送装置を設け、搬送装置によって搬送される対象物を撮影可能に第2監視カメラ66を設置することは、当業者が容易になし得たものである。そして、その際に、刊行物に記載された発明では、第2監視カメラ66による撮影は、対象物が投入作業場所に運ばれるところから投入処理されるところまでの全ての処理状況を常に撮影するものであるところ、第2監視カメラ66により撮影を、搬送装置によって搬送される対象物が投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなうことも当業者が必要に応じてなし得たものである。
また、刊行物に記載された発明におけるバーコード読取装置26についても、上記周知の技術事項2に倣って、搬送装置によって搬送される対象物に関する情報を取得可能にバーコード読取装置26を設置することは、当業者が容易になし得たものである。そして、その際に、刊行物に記載された発明では、バーコード読取装置26による読取りは、対象物が処理装置8に投入される前に読取られるところ、バーコード読取装置26による情報の取得を、搬送装置によって搬送される対象物が投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなうことも当業者が必要に応じてなし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年8月19日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年11月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「対象物の外観を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって前記対象物の外観が撮影された日時に関する情報を取得する撮影日時情報取得手段と、前記対象物に設けられたRFID(Radio Frequency ID)タグに記録された前記対象物に関する情報を取得する対象物情報取得手段と、前記撮影手段によって撮影された前記対象物の外観に関する画像情報と、前記撮影日時情報取得手段によって取得された日時に関する情報とを、前記対象物情報取得手段によって取得された情報に関連付けて記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする廃棄処理管理装置。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2.2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.」において検討した本件補正発明において、対象物情報取得手段および撮影手段について、「前記対象物が廃棄処理される処理場には、当該対象物を最終処分する最終処分処置と、当該最終処分装置の投入口まで当該対象物を順次搬送し、当該対象物を当該対象物の自重により当該投入口へ落下させる搬送装置とが設けられ、前記対象物情報取得手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物に関する情報を取得可能に設置され、前記撮影手段は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物を撮影可能に設置され、前記対象物情報取得手段による前記対象物に関する情報の取得および前記撮影手段による撮影は、前記搬送装置によって搬送される当該対象物が前記投入口へ落下する直前の位置に達した場合におこなわれる」との限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明および及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-26 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2004-262527(P2004-262527)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65F)
P 1 8・ 121- Z (B65F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘中川 隆司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 稲垣 浩司
長崎 洋一
発明の名称 廃棄処理管理装置、廃棄処理管理方法および廃棄処理管理プログラム  
代理人 酒井 昭徳  

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