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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1234744
審判番号 不服2009-16798  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-10 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 特願2003-184420「カードリーダのカード引抜き防止方法およびこれを利用したカードリーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月20日出願公開、特開2005- 18557〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成15年6月27日の出願であって、平成20年8月4日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成21年3月11日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年5月15日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月3日付けで、前記同年5月15日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月10日付けで審判請求がなされたものである。

そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記平成20年10月6日付けでなされた手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「カードリーダに挿入されたカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際の前記カードの引抜きを防止するカード引抜き防止方法において、前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行することを特徴とするカードリーダのカード引抜き防止方法。」


第2.引用文献
1.引用文献の記載事項
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-099953号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。)。
A.「【0005】そこで本発明は、シャッタが閉まらない場合にもカードの不正な取り出しを阻止できるカードリーダを提供することを目的とする。」

B.「【0029】また、カードリーダ1にはカード3の異常停止(詰まり)を検出する異常停止検出手段21が備えられている。かかる異常停止検出手段21として、例えば、カード搬送路20でのカード3の存在を検出する複数のカード検出センサ21を利用することができる。本実施形態では、第一のカード検出センサ21aをカッタ5の手前位置に、第二のカード検出センサ21bを第一のカード検出センサ21aよりカード搬送方向奥側でシャッタ4からカード3の長さの範囲内に、第三のカード検出センサ21cを第二のカード検出センサ21bよりカード搬送方向奥側でシャッタ4からカード3の長さ以上離れた位置に、各々配置する。
【0030】このようにカード検出センサ21が配置される場合、正常な場合であれば、カード3の搬送に伴って、カード検出センサ21a,21b,21cがカード3を順次検出する。しかし、第一のカード検出センサ21aがカード3を検出したが、その検出後から所定時間以上経過しても、第二のカード検出センサ21bではカード3を検出できない場合や、第一及び第二のカード検出センサ21a,21bがカード3を検出したが、その検出後から所定時間以上経過しても、第三のカード検出センサ21cではカード3を検出できない場合には、カード3が異常停止したと考えられる。したがって、カード検出センサ21a,21b,21cを使用してカード3の異常停止を検出することができる。なお、設置するカード検出センサ21の数や位置は上述のものに限定されるものではないことはもちろんである。
【0031】また、シャッタ4には、シャッタ4の開位置を検知する検知センサ22が接続されている。カード検出センサ21によりカード3の異常停止が検出されても、シャッタ4が閉じた状態であれば、カード3の詐取を意図する不正者はカード3を取り出せない。しかし、シャッタ4が開いている状態であれば、不正者がカード3を取り出すことが可能となる。そこで、カード検出センサ21によりカード3の異常停止が検出された場合であって、かつ検知センサ22によってシャッタ4が開いたままの状態であることが検知されたときに、不正行為等によりシャッタ4の開閉位置上でカード3が異常停止したと判断し、阻止機構6を作動させてカード3の不正な取り出しを阻止する。」

C.「【0032】以上のように構成された本実施形態のカードリーダ1によれば、次のようにしてカード3の不正詐取を防ぎ得る。
【0033】まず、カード3がカード挿入口2に挿入されると、シャッタ4が開かれ、搬送ローラ23が回転して図3に示すようにカード3がカードリーダ1内に取り込まれる。ここで、カード検出センサ21a,21b,21cが順次、カード搬送路20内にカード3が存在していることを検出した場合は搬送動作が正常であると判断するため阻止機構6は作動しない。そして、カード3が所定位置まで取り込まれるとシャッタ4が閉じられ、カード3に対して所定の処理が行われる。」

D.[【0034】一方、カード検出センサ21によりカード3の異常停止が検出され、しかも検知センサ22によってシャッタ4が開いたままの状態(搬送不能状態)であることが検知された場合には、阻止機構6を作動させて、カード3の不正な取り出しを阻止する。なお、この場合において、カード搬送方向奥側の図示しない保留ボックスなどを備えていればカード回収という手段が採択し得るが、カード搬送が不可能であればソレノイド7をオンにして阻止機構6を作動させればよい。また、この時点でカード3の抜き取りをカード検出センサ21や図示しないモータのエンコーダで検出した後、ソレノイド8をオンとするようにしてもよい。
【0035】阻止機構6のソレノイド7に通電するとオン状態となってプランジャ8が引かれ、係止部材9が揺動してロック位置9aから解除位置9bに移動する。これにより、係止部14と被係止部30の係合が外れる。この結果、付勢部材15により蓄えられた付勢力が解放されて、案内溝18,19に案内されるカッタ5を退避位置5aからスライド移動させる。このとき、カッタ5の切刃5cはカード3のカード面(側面)に接触する程度の力で当接するのみで、傷を付ける程の押圧力は与えない。このため、電気的ノイズなどでソレノイド7が誤動作した場合でも、カード3に大きなダメージを与えない。
【0036】ただし、この状態で不正者がカード3を故意に引き抜くと、カード3の側面と切刃5cとの摩擦により、切刃支持レバー5dがガイドピン27を中心としてカード挿入口2側(図2において下側)に揺動する。そうすると、カッタ5の切刃5cはカード3側に接近し、かつフレーム29の規制部29aで押し出されてカード側面に食い込み、カード3の移動を阻止するのでカード3をそれ以上引き出すことを不可能とする。また、カード3に食い込んだ切刃5aによってカード3のデータを部分的であっても壊滅的に破壊するようにすれば、不正者がカード3を手に入れても不正に使用されることを防ぐことができる。」

2.引用発明の認定
a.Aの「本発明は、シャッタが閉まらない場合にもカードの不正な取り出しを阻止できるカードリーダを提供することを目的とする。」、Cの「以上のように構成された本実施形態のカードリーダ1によれば、次のようにしてカード3の不正詐取を防ぎ得る。」から、引用文献には、カードの不正取り出し阻止方法が記載されている。
そして、Cの「カード3がカード挿入口2に挿入されると、シャッタ4が開かれ、搬送ローラ23が回転して図3に示すようにカード3がカードリーダ1内に取り込まれる。ここで、カード検出センサ21a,21b,21cが順次、カード搬送路20内にカード3が存在していることを検出した場合は搬送動作が正常であると判断するため阻止機構6は作動しない。そして、カード3が所定位置まで取り込まれるとシャッタ4が閉じられ、カード3に対して所定の処理が行われる。」、Dの「一方、カード検出センサ21によりカード3の異常停止が検出され、しかも検知センサ22によってシャッタ4が開いたままの状態(搬送不能状態)であることが検知された場合には、阻止機構6を作動させて、カード3の不正な取り出しを阻止する。」から、「カード3の不正な取り出しを阻止する」動作は、「カード3の異常停止が検出され」かつ「シャッタ4が開いたままの状態」に行われるから、「カード3がカード挿入口2に挿入され」てから、「搬送動作が正常」で「カード3が所定位置まで取り込まれるとシャッタ4が閉じられ、カード3に対して所定の処理が行われる」までの期間に行われることは、明らかである。したがって、引用文献には、カードリーダのカード挿入口から挿入されたカードが搬送ローラにより搬送されて前記カードに対して所定の処理が行われる際に、前記カードの不正な取り出しを阻止すること、が記載されている。
以上から、引用文献には、
カードリーダのカード挿入口から挿入されたカードが搬送ローラにより搬送されて前記カードに対して所定の処理が行われる際に、前記カードの不正な取り出しを阻止するカードの不正取り出し阻止方法、
が記載されている。

b.Dの「カード検出センサ21によりカード3の異常停止が検出され、しかも検知センサ22によってシャッタ4が開いたままの状態(搬送不能状態)であることが検知された場合には、阻止機構6を作動させて、カード3の不正な取り出しを阻止する。」から、「カード3の不正な取り出し」がなされることは、「カード検出センサ21」及び「検知センサ22」により検出していると解される。
そして、Bの「カードリーダ1にはカード3の異常停止(詰まり)を検出する異常停止検出手段21が備えられている。かかる異常停止検出手段21として、例えば、カード搬送路20でのカード3の存在を検出する複数のカード検出センサ21を利用する」、「シャッタ4には、シャッタ4の開位置を検知する検知センサ22が接続されている。」から、前記「カード検出センサ21」及び「検知センサ22」は「カードリーダ」に設けられたものである。
したがって、引用文献には、
カードリーダに設けられたカード検出センサ及び検知センサで、カードの不正な取り出しがなされることを検出する、
ことが記載されている。

c.Dの「阻止機構6を作動させて、カード3の不正な取り出しを阻止する。」及び「阻止機構6のソレノイド7に通電するとオン状態となってプランジャ8が引かれ、係止部材9が揺動してロック位置9aから解除位置9bに移動する。これにより、係止部14と被係止部30の係合が外れる。この結果、付勢部材15により蓄えられた付勢力が解放されて、案内溝18,19に案内されるカッタ5を退避位置5aからスライド移動させる。このとき、カッタ5の切刃5cはカード3のカード面(側面)に接触する程度の力で当接する」及び「この状態で不正者がカード3を故意に引き抜くと……カッタ5の切刃5cは……カード側面に食い込み、カード3の移動を阻止するのでカード3をそれ以上引き出すことを不可能とする。」から、引用文献には、
ソレノイドに通電してカッタの切刃をカードの側面に当接させることで、前記カードの移動を阻止する、
ことが記載されている。

以上、a?cから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「カードリーダのカード挿入口から挿入されたカードが搬送ローラにより搬送されて前記カードに対して所定の処理が行われる際に、前記カードの不正な取り出しを阻止するカードの不正取り出し阻止方法において、
前記カードリーダに設けられたカード検出センサ及び検知センサで、前記カードの不正な取り出しがなされることを検出して、
ソレノイドに通電してカッタの切刃を前記カードの側面に当接させることで、前記カードの移動を阻止する、
ことを特徴とするカードの不正取り出し阻止方法。」


第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「カードリーダのカード挿入口から挿入されたカードが搬送ローラにより搬送されて前記カードに対して所定の処理が行われる際」は、本願発明の「カードリーダに挿入されたカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際」に相当する。
引用発明の「前記カードの不正な取り出しを阻止する」は、本願発明の「前記カードの引抜きを防止する」に相当する。

引用発明の「前記カードリーダに設けられたカード検出センサ及び検知センサ」は、本願発明の「前記カードリーダに設けられた検出器」に相当する。
そして、引用発明の「前記カードの不正な取り出しがなされることを検出」することは、本願発明の「前記カードの引抜き動作を検出」することに相当する。

引用発明の「前記カードの移動を阻止する」ことと、本願発明の「前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する」こととは、カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する点で一致する。
そして、引用発明の「カードの不正取り出し阻止方法」と、本願発明の「カードリーダのカード引抜き防止方法」とは、カードリーダのカード引抜き防止方法である点で一致している。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
カードリーダに挿入されたカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際の前記カードの引抜きを防止するカード引抜き防止方法において、前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行することを特徴とするカードリーダのカード引抜き防止方法。

(相違点)
「カードの引抜きを防止する引抜き防止動作」を、本願発明は「前記カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させること」で「実行する」のに対して、引用発明は「ソレノイドに通電してカッタの切刃を前記カードの側面に当接させること」で実行する点


第4.判断
上記の相違点について検討する。

平成21年3月11日付けの最後の拒絶理由通知に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-288478号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審において付したものである。)。

ア.「【0005】光センサ60および磁気センサ61を通過した紙幣70は、例えば、図8に示す位置でその搬送が停止されて一時保留(エスクロ)される。…(中略)紙幣70が一時保留されている状態で、ユーザが購入する商品の選択(自動販売機の場合)等を行うと、図示しない制御部は紙幣70を収金して蓄積する収金処理を開始し、これに基づいて図示しない搬送モータが正転して紙幣70を搬送してスタッカ53に蓄積する。」

イ.「【0010】図10は、異常状態の検知例を示した図である。図10(a)は紙幣の逆流検知例を示しており、紙幣70が一時保留された後、蓄積される過程で本来紙幣を検知するはずのない光センサ60が紙幣を検知したことにより、紙幣70に対する不正な引き抜きが行われたものとして搬送モータを停止して、引き抜きに対する処理が行われる。」

ウ.「【0033】第2の判定値を決定すると、制御部10は駆動回路19を動作させてシャッタモータ20を動作させ図示しないシャッタを開き、駆動回路16を動作させて紙幣搬送モータ17を駆動し、挿入された紙幣の搬送を開始する(ステップ107)。紙幣の搬送が開始されると、制御部10は光センサ12の出力と第2の判定値に基づいて検知される紙幣の通過を待って(ステップ108でNO)、紙幣の通過が検知されると(ステップ108でYES)、駆動回路16を介し紙幣搬送モータ17を停止させ紙幣の搬送を停止し、駆動回路19を介しシャッタモータ20を動作させシャッタを閉じる(ステップ109)。
【0034】この搬送が停止した状態は、紙幣を一時保留(エスクロ)している状態であり、この状態で挿入された紙幣の真偽が判定される(ステップ110)。真偽の判定は、ステップ107乃至109に示した紙幣搬送時の光センサ12と磁気センサ13の出力に基づいて行われ、紙幣が偽券であると判定されると(ステップ110でNO)、後述する偽券返却処理が行われる(ステップ111)。
【0035】一方、紙幣が真券であると判定されると、制御部10はユーザ操作に基づく収金指令若しくは返金指令が発せられるのを待つが(ステップ112、114、116の各ステップでNO)、この間に光センサ12の出力と第2の判定値に基づいて紙幣の逆流が検知されると(ステップ112でYES)、紙幣の不正な引き抜きが行われたとして、引抜検知処理である異常停止が行われる(ステップ113)。なお、ここでは引抜検知処理として異常停止を行っているが、他に
1)シャッタモータ20を再作動させてシャッタを閉じる方向に再駆動する
2)一時保留された紙幣を強制的に蓄積(収金)する3)一時保留された紙幣の相当額を投入金額から強制的に減額する
4)一定時間の間紙幣の受入れを強制的に禁止する
等の処理を行ってもよい。」

ア?ウにおいて、ウの「一時保留された紙幣を強制的に蓄積(収金)する」ことで実行される「引抜検知処理」とは、イの「紙幣70を収金して蓄積する収金処理を開始し、これに基づいて図示しない搬送モータが正転して紙幣70を搬送してスタッカ53に蓄積する」との記載から、紙幣が挿入される方向に搬送されるように搬送モータを回転させることでなされるものと認められる。
してみれば、前記特開平11-288478号公報には、
挿入された紙幣に対して装置内で所定の処理が行われるに際に、前記装置内に設けられたセンサで紙幣の不正な引き抜きが行われることを検知すると、前記紙幣を搬送するための搬送モータを前記紙幣が前記挿入される方向に搬送されるように回転させることで、前記紙幣の不正な引き抜きを防止する技術(以下、「公知技術」という。)、
が記載されている。

さて、引用発明の「カードリーダ」も、前記公知技術の「装置」も、その内部に挿入された価値情報を有する紙葉に対して「所定の処理」を行うものであり、技術分野が共通する。そして、いずれも、その内部に挿入された紙葉に対して「所定の処理」が行われる際の該紙葉の不正な引き抜きを防止しようとすることを課題としており、同様の課題を有している。
また、引用発明は、「カードの不正な取り出しを阻止する」という課題を達成するために「ソレノイドに通電してカッタの切刃を前記カードの側面に当接させる」ものである。すなわち、「カードの不正な取り出しを阻止する」ために、引用発明は「ソレノイド」という駆動手段を用いている。
しかし、引用発明は「カード」の「搬送」に「搬送ローラ」を用いるところ、引用文献の段落【0034】の「この時点でカード3の抜き取りをカード検出センサ21や図示しないモータのエンコーダで検出した後、ソレノイド8をオンとするようにしてもよい。」との記載から、前記「搬送ローラ」の駆動に、引用発明はモータを用いていることは自明である。
したがって、引用発明を実施するためには、「ソレノイド」とモータという、少なくとも2つの駆動手段を必要とするものである。

ところで、その内部に挿入された価値情報を有する紙葉に対して「所定の処理」を行う装置を製造するに当たり、必要な部品点数を少しでも少なくしようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。特に、前記装置の駆動手段は、必要とする消費電力が大きく、そのサイズも大きいことは自明な事項であるから、該駆動手段の部品点数を減らそうとすることは、当業者であれば当然に想起すると認められる。
そして、公知技術は、前記紙葉である「紙幣」の「搬送」と、前記「紙幣の不正な引き抜きを防止する」動作の実行とに、共通の「搬送モータ」を用いている。
してみれば、引用発明において、「カードの不正な取り出し」の「阻止」を、「ソレノイドに通電してカッタの切刃を前記カードの側面に当接させること」で実行することに代えて、前記公知技術のように、前記「カード」を搬送するためのモータを「カード」が挿入される方向に搬送されるように回転させて前記「カード」を「搬送」する「搬送ローラを挿入方向に回転させること」で実行することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

よって、相違点は格別のものではない。
また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明及び公知技術に基づいて当業者であれば予測可能なものにすぎず、格別のものとは認められない。


第5.審判請求人の主張
1.意見書の主張
審判請求人は、平成20年10月6日付けの意見書の「(4)引用文献と本発明の対比」の「(I)請求項1について」の項において、「(B)相違点」として、
「請求項1記載の発明は、検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることでカードの引き抜きに対して抵抗を大きくして不正者によるカードの引き抜きを困難にする点で全く構成を異にしています。つまり、請求項1記載の発明は、カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることでカードの引き抜きに対して抵抗を大きくしていることからカードに損傷を全く与えることなく不正者によるカードの引き抜きを阻止する点で、カードに損傷を与えることで不正者によるカードの引き抜きを阻止する引用文献1並びに2記載の発明とは技術的思想を異にしています。」、
と主張している。

しかしながら、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する」と記載されている。
そして、前記「第4.判断」の項で述べた通り、引用発明において、前記「前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する」ことは、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
なお、公知技術によれば、「紙幣」に損傷を全く与えることなく不正者による前記「紙幣」の引き抜きを阻止することができることは、明らかである。

一方、前記「請求項1記載の発明は、検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることでカードの引き抜きに対して抵抗を大きくして不正者によるカードの引き抜きを困難にする点で全く構成を異に」するという主張における、「カードの引き抜きに対して抵抗を大きく」することは、本願の特許請求の範囲の請求項1には記載されていない。
ここで、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、
段落【0031】に、「搬送モータ8を励磁してブレーキを掛けるか、あるいはカード4が奥側に入る方向に搬送モータ8を回転させる(ステップ10(S10))。これにより、カード4の引抜きに対して抵抗が大きくなるので、引き抜くことが困難になる。」との記載があるとともに、
段落【0019】には、「本発明に係るカードリーダ……は、カード挿入口2からカード搬送路3を搬送されて装置本体内に挿入されたカード4に対して情報の読み書きを行うものである。」と、
段落【0020】には、「搬送路3の最奥部にはストッパ20が設けられている。これにより、カード4がそれ以上奥に行かないように規制している。」と、そして、
段落【0023】には、「上述したカードリーダ1のカード引抜き防止方法は、カードリーダ1に挿入されたカード4に対してカードリーダ1内で所定の処理が行われる際のカード4の引抜きを防止するものである。」と、
それぞれ、記載されている。

以上の記載において、「カードリーダ1に挿入されたカード4に対してカードリーダ1内で所定の処理が行われる際」が、「カード4」が「ストッパ20」に当接して「カード4がそれ以上奥に行かないように規制」された後であれば、前記「カード4の引抜きに対して抵抗が大きく」なるためには、「カード4の引抜き」動作を検知して「カード4が奥側に入る方向に搬送モータ8を回転させ」ることで、「ストッパ20」により「カード4がそれ以上奥に行かないように規制」された後も当該「カード4」を「奥側に入る方向」に付勢する力を搬送ローラ8により与え続ける必要があることは、上記の記載を技術常識を加味して解すれば明らかである。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項1には、前述の通り「カードの引き抜きに対して抵抗を大きく」することが記載されていないばかりでなく、ストッパで前記「カード」がそれ以上奥に行かないように規制した後も当該「カード」を「挿入方向」に付勢する力を「搬送ローラ」により与え続けることも、記載されていない。
したがって、上記主張は本願の特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、そして、本願発明が前記「カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることでカードの引き抜きに対して抵抗を大きくしていることからカードに損傷を全く与えることなく不正者によるカードの引き抜きを阻止する」という作用効果を奏するとは認められない。

なお、前記「カードリーダ1に挿入されたカード4に対してカードリーダ1内で所定の処理が行われる際」が、「カード4」が「ストッパ20」に当接するまでの「カード4が奥側に入る方向に搬送」中であれば、もともと当該「カード4」は「奥側に入る方向」に付勢する力を搬送ローラ8により与えられているから、「カード4の引抜きに対して抵抗が大きくなる」のは当然である。
すなわち、「カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることでカードの引き抜きに対して抵抗を大きくしている」という作用効果は、カード搬送機構を有するカードリーダであれば必ず有する作用効果である。

以上から、上記主張は当を得ておらず、これを採用することはできない。

2.審判請求書の主張
審判請求人は、平成21年9月10日付けの審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の項において、
「本件出願は平成21年5月15日付け手続補正書による補正前の請求項1記載の発明ではシャッタの動作構成が技術的に正確に特定されず不明瞭であるために引用文献記載の技術との対比が適当に行われず結果として拒絶されたものであると理解されます。したがって、前記補正は、明瞭でない記載の釈明であって拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものでありますので、改正前特許法第17条の2第4項の規定の要件を充足するものであって適法であります。」、
と主張している。

上記主張に基づき、平成21年6月3日付けでなされた、平成21年5月15日付けでした手続補正の却下の決定の適否について検討する。

(1)平成21年5月15日付けでした手続補正
平成21年5月15日付けでした手続補正は、平成20年10月6日付けでした手続補正により補正された特許請求の範囲の記載、
「 【請求項1】 カードリーダに挿入されたカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際の前記カードの引抜きを防止するカード引抜き防止方法において、前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行することを特徴とするカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項2】 カードリーダに挿入されたカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際の前記カードの引抜きを防止するカード引抜き防止方法において、前記カードリーダに設けられた検出器で前記カードの引抜き動作を検出して、前記カードを搬送する搬送ローラを駆動する搬送モータに励磁ブレーキをかけることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行することを特徴とするカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項3】 前記引抜き防止動作の前に、前記カードリーダのカード挿入口側に設けられたシャッタを閉じることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項4】 前記検出器は、前記カードを搬送する搬送ローラと連動するロータリエンコーダであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項5】 前記検出器は、前記カードの端面を検知するカード検知センサであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項6】 前記カードはICカードであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項7】 請求項1から6までのいずれか記載のカードリーダのカード引抜き防止方法を利用することを特徴とするカードリーダ。」(以下、この特許請求の範囲の各請求項を「補正前の請求項」という。)を、

「 【請求項1】 カードリーダに挿入されたICカードに対して前記カードリーダ内で所定の処理が行われる際の前記ICカードの引抜きを防止するカード引抜き防止方法において、前記カードリーダには少なくとも前記ICカードを搬送する搬送ローラと連動する位置検出器又は前記ICカードの端面を検出する検出器が設けられ、前記カードリーダ内に挿入された前記ICカードが前記所定の処理が行われる際に停止した状態では前記カードリーダのカード挿入口側に設けられたシャッタが開いており、前記位置検出器又は検出器で前記ICカードの引抜き動作を検出したときに駆動源としてのソレノイドを吸引して前記シャッタを閉じることで前記ICカードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行することを特徴とするカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項2】 前記検出器で前記ICカードの引抜き動作を検出したときに前記ICカードを搬送する前記搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記ICカードの引抜きを防止する引抜き防止動作も実行することを特徴とする請求項1記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項3】 前記検出器で前記ICカードの引抜き動作を検出したときに前記ICカードを搬送する前記搬送ローラを駆動する搬送モータに励磁ブレーキをかけることで前記ICカードの引抜きを防止する引抜き防止動作も実行することを特徴とする請求項1記載のカードリーダのカード引抜き防止方法。
【請求項4】 請求項1から3までのいずれか一つに記載のカードリーダのカード引抜き防止方法を利用することを特徴とするカードリーダ。」(以下、この特許請求の範囲の各請求項を「補正後の請求項」という。)に、
補正するものである。

(2)平成21年5月15日付けでした手続補正の適否
補正後の請求項1には、「引抜き防止動作を実行する」ための機構として「シャッタ」が記載されているだけであって、補正前の請求項1ないし請求項2における前記「引抜き防止動作を実行する」ための機構である「搬送ローラ」や「搬送モータ」や、これに相当する機構は何ら記載されていない。
一方、補正前の請求項1ないし請求項2には、前記「シャッタ」の機構や、これに相当する機構は何ら記載されていない。
なお、補正前の請求項3には、前記「シャッタ」が記載されている。しかし、同項には「前記引抜き防止動作の前に、前記カードリーダのカード挿入口側に設けられたシャッタを閉じることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダのカード引抜き防止方法」と記載され、同項に係る発明は、前記「搬送ローラ」や「搬送モータ」を用いて「引抜き防止動作を実行する」前に「シャッタを閉じる」手順を有することが必須である。
すなわち、補正後の請求項1、及び、前記補正後の請求項1を引用する補正後の請求項2?4は、対応する補正前の請求項を有していないから、前記補正後の請求項1は、平成21年5月15日付けでした手続補正によって、特許請求の範囲に新たに追加された請求項である。

したがって、平成21年5月15日付けでした特許請求の範囲の手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項における、第1号の「請求項の削除」にも、第2号の「特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」にも、第3号の「誤記の訂正」にも、該当しないことは明らかである。

そして、審判請求人は、平成21年5月15日付けでした特許請求の範囲の手続補正は、「本件出願は平成21年5月15日付け手続補正書による補正前の請求項1記載の発明ではシャッタの動作構成が技術的に正確に特定されず不明瞭である」ことを釈明したものであり、前記特許法第17条の2第4項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当する、と主張する。
しかしながら、補正前の請求項1には「シャッタ」の動作構成に関する記載が一切なく、同項に係る発明は、そもそも「シャッタの動作構成」が「特定され」得ないものであるから、前記「シャッタの動作構成が技術的に正確に特定されず不明瞭である」ことを釈明したとの主張は当を得ていない。

ところで、「明りょうでない記載」とは、文理上は、それ自体意味の明らかでない記載など、記載上の不備を生じている記載をいう。よって、特許請求の範囲についての「明りょうでない記載の釈明」とは、請求項の記載そのものが文理上意味が不明りょうである、請求項自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている、又は、請求項自体の記載は明りょうであるが請求項に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明りょうである等の不明りょうさを正して、「その記載本来の意味内容」を明らかにすることである。
しかしながら、補正前の各請求項の記載自体は明確である。
また、補正前の請求項1に係る発明は、その請求項1の記載から、「カードを搬送する搬送ローラを挿入方向に回転させることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する」ことが技術的に明確に把握することができ、補正前の請求項1に係る発明は明確である。
そして、補正前の請求項2に係る発明は、その請求項2の記載から、「カードを搬送する搬送ローラを駆動する搬送モータに励磁ブレーキをかけることで前記カードの引抜きを防止する引抜き防止動作を実行する」ことが技術的に明確に把握することができ、補正前の請求項2に係る発明は明確である。
したがって、補正前の請求項1及び請求項2に係る発明は、もともと、明りょうであった。

さらに、補正後の請求項1についてした補正は、先に述べたように、特許請求の範囲に新たに請求項を追加する補正であるから、発明特定事項を変更して、審査・審理の対象を大きく変更する補正である。

このように、「シャッタの動作構成が技術的に正確に特定されず不明瞭である」ことを釈明した補正であるとは認められない補正であって、もともと明りょうであった補正前の各請求項を補正する補正であるだけでなく、特許請求の範囲に新たに請求項を追加することで、発明特定事項を変更して審査・審理の対象を大きく変更する補正が、前記特許法第17条の2第4項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当するとは認められない。

以上の通り、平成21年5月15日付けでした特許請求の範囲についてする手続補正は、「請求項の削除」にも、「特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」にも、「誤記の訂正」にも、「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」にも該当しない。
したがって、平成21年5月15日付けでした手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、平成21年6月3日付けでなされた、平成21年5月15日付けでした手続補正の却下の決定に誤りはないから、審判請求人の前記主張は当を得ておらず、これを採用することはできない。


第6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献及び公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2011-01-27 
結審通知日 2011-02-02 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2003-184420(P2003-184420)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 田中 秀人
山崎 達也
発明の名称 カードリーダのカード引抜き防止方法およびこれを利用したカードリーダ  
代理人 村瀬 一美  

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