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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B30B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B
管理番号 1234757
審判番号 不服2009-25988  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 平成11年特許願第 25543号「発塵防止機構を備えた電動プレス」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月15日出願公開、特開2000-225498〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成11年2月2日の特許出願であって、同20年4月28日付けで第1回目の拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同20年6月30日に意見書と共に明細書について第1回目の手続補正書が提出され、同20年7月23日付けで最後の拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同20年9月26日に意見書と共に明細書について第2回目の手続補正書が提出されたが、同21年9月16日付けで上記第2回目の手続補正書でした補正は却下されると共に上記最後の拒絶の理由によって拒絶をすべき旨の査定がされ、同21年12月28日に本件審判の請求がされると共に明細書について第3回目の手続補正書が提出されたものである。


第2 平成21年12月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年12月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
平成21年12月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をすると共にそれに関連して発明の詳細な説明の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部が収納された内部と外部を機密に仕切るケーシングと、該ケーシングの内部と外部とを連通し、且つケーシング内部の塵,埃をケーシング外部に吸引する接続口部とからなり、該接続口部にケーシング内部に開口して塵、埃を吸入する吸引口を設けたことを特徴とする発塵防止機構を備えた電動プレス。」
(2)補正後
「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を電動プレス内に収納して内部と外部を気密に仕切る電動プレスの外形部分であるケーシングと、該ケーシングの内部と外部とを連通し、且つケーシング内部の塵,埃をケーシング外部に吸引する接続口部とからなり、該接続口部にケーシング内部に開口して塵、埃を吸入する吸引口を設けたことを特徴とする発塵防止機構を備えた電動プレス。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、ケーシングについて、発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を「電動プレス内に収納して」と特定し、また、ケーシングを「電動プレスの外形部分である」と特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書(以下「補正明細書」という。)及び願書に添付した図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「発塵防止機構を備えた電動プレス」であると認める。
(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭64-38215号公報(以下「引用刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。
ア 引用刊行物記載の事項
引用刊行物には以下の事項が記載されている。
(ア)第1頁左欄第11行?同頁右欄第1行
「産業上の利用分野
この発明は、精密成形用の射出成形機や精密プレス機等の精密加工用産業機械における塵埃飛散防止装置に関する。
従来の技術
精密加工は、一般にクリーンルームのように高いクリーン度を有する室内で行なわれているが、このような加工を行う精密射出成形機や精密プレス機からは、動力伝達ベルトの摩耗粉やオイルミストのような塵埃が発生するので、この塵埃を処理する必要がある。」
(イ)第2頁左上欄第7行?同頁右下欄第9行
「第1図は、本発明の実施例を示す図であり、符号1はクリーンルームであって、クリーンルーム1内には、産業機械の一例として、樹脂レンズ、光デスク基板などを成形する精密射出成形機2が設置されている。射出成形機2は型締めユニット3と射出ユニット4を備え、射出ユニット4は、エキストルーダーベース5上に載置され、型締め部3に対して前後移動可能とされている。
この精密射出成形機2は電動式であり、型締めユニット3は、型締用タイミングベルト6、ボールスクリュー10、トグル機構24などを有し、型締用サーボモータ25で駆動される型締機構とエジェクタ用タイミングベルト7を備えてエジェクト用サーボモータ26で駆動されるエジェクト機構および型厚調整用サーボモータ27で駆動される型圧調整機構を備え、射出ユニット4は、射出用タイミングベルト8や射出用ボールスクリュー28などを備えた図示していないサーボモータで駆動される射出機構、計量用Vベルト9を備えた図示していないサーボモータで駆動される計量機構を備える。
型締ユニット3、射出ユニット4における前記の各機構は可動部を有するものであって、特に、ベルトとベルトプーリの接触面からベルトの摩耗粉が、また、ボールスクリューやトグルリンクの連結部あるいは各軸支部の回転面や摺動面からオイルミストが発生する。
符号11,12は型締ユニット3と射出ユニット4部分をユニット毎に覆ったカバーである。
型締ユニット3のカバー11は後面に射出シリンダー15の先端が挿通する貫通孔29が設けられ、また、射出ユニット4のカバー12には上面にホッパー13の下部を挿通する挿通孔14が、前面には射出ユニット4の射出シリンダー15が貫通する貫通孔16が設けられている。そして、カバー11,12の上面または側面には各々開口部30,17が形成されている。符号18は室外に開口されるダクトであり、長手方向の途中に複数の吸引口19が形成されている。カバー11,12の開口部30,17とダクト18の吸引口19間には、蛇腹ホースのような可撓性チューブ20の端部がそれぞれ装着され、カバー11,12の内部は、ダクト18とこの可撓性チューブ20が形成する排気路31に連通されている。可撓性チューブ20の端部とカバー11,12の開口部17,30との接続はネジ止め、クランプ、あるいは単なる差し込みによって達成される。符号21は予備の可撓性チューブである。
ダクト18の開口部付近にはファン、ブロアー等の排気装置22が設けられており排気装置22の室内側にはフィルター23が取り付けられている。
排気装置22を作動し、カバー11,12の内部を負圧にして射出成形機を駆動する。カバー11,12内の型締ユニット3、射出ユニット4から発生した塵埃はカバー11,12内の空気と共に可撓性チューブ20、ダクト18を経由してクリーンルーム1の外へ排除される。排出される空気内の塵埃はクリーンルーム1外へ出る前にフィルター23によって取り除かれるので、クレーンルーム1の外部が排出された塵埃によって汚染されることはなく、クリーンルーム1の外も所定のクリーン度を保つことができる。」
(ウ)第3頁左欄第6?11行
「発明の効果
カバー内の空気を排気装置によって吸気するので、産業機械の各ユニットから発生する塵埃はそれぞれのカバー内部の容積が小さいこともあって速やかに室外へ排除され、製品及びクリーンルーム内を汚染することがない。」
イ 引用刊行物記載の発明
引用刊行物記載の事項を補正発明に照らして整理すると引用刊行物には以下の発明が記載されていると認める。
「駆動源となるサーボモータ、駆動力を伝達するベルトとベルトプーリ及びボールスクリュー等からなる射出成形機2の型締ユニット3と射出ユニット4部分をユニット毎に覆ったカバー11,12と、該カバー11,12の内部と外部とを連通し、且つカバー11,12内部の塵埃をカバー外部に吸引する排気路31に連なる開口部17,30とからなる塵埃飛散防止装置を備えた射出成形機。」
(3)対比
補正発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
引用刊行物記載の発明の「駆動源となるサーボモータ、駆動力を伝達するベルトとベルトプーリ」は、補正発明の「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部」に相当することが明らかである。
また、引用刊行物記載の発明の「ボールスクリュー等」は、「発塵性を有する出力部」であるという限りで、補正発明の「プレス構造部」と共通している。したがって、引用刊行物記載の発明の「駆動源となるサーボモータ、駆動力を伝達するベルトとベルトプーリ及びボールスクリュー等からなる射出成形機2の型締ユニット3と射出ユニット4部分をユニット毎に覆ったカバー11,12」は、「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及び出力部を収納して内部と外部を仕切る包囲体」であるという限りで、補正発明の「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を電動プレス内に収納して内部と外部を気密に仕切る電動プレスの外形部分であるケーシング」と共通している。
そして、引用刊行物記載の発明における「カバー11,12の内部と外部とを連通し、且つカバー11,12内部の塵埃をカバー外部に吸引する排気路31に連なる開口部17,30」は、「包囲体の内部と外部とを連通し、且つ包囲体内部の塵埃を包囲体外部に吸引する接続口部」であるという限りで、補正発明の「ケーシングの内部と外部とを連通し、且つケーシング内部の塵、埃をケーシング外部に吸引する接続口部」と共通している。
さらに、引用刊行物記載の発明は「塵埃飛散防止装置を備えた射出成形機」として表現されているが、上記(2)のア(ア)に摘記したように引用刊行物には、「塵埃飛散防止装置」、すなわち、「発塵防止機構」を備える必要がある産業機械として射出成形機のほかに精密プレス機が挙げられていることからも窺うことができるように、引用刊行物記載の発明と補正発明とは「発塵防止機構を備えた産業機械」として共通して表現することができるものである。
したがって、補正発明と引用刊行物記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及び出力部を収納して内部と外部を仕切る包囲体と、該包囲体の内部と外部とを連通し、且つ包囲体の内部の塵埃を包囲体外部に吸引する接続口部とからなる発塵防止機構を備えた産業機械。」
そして、補正発明と引用刊行物記載の発明とは、以下の2点で相違している。
ア <相違点1>
補正発明は、発塵防止機構を備えた産業機械が、電動プレスであって、出力部がプレス構造部であり、包囲体が、発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を電動プレス内に収納して内部と外部を気密に仕切る電動プレスの外形部分であるケーシングであるのに対して、引用刊行物記載の発明は、発塵防止機構を備えた産業機械が、射出成形機であって、出力部がボールスクリュー等であり、包囲体が、発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びボールスクリュー等からなる射出成形機の型締ユニットと射出ユニット部分をユニット毎に覆ったカバーである点。
イ <相違点2>
補正発明では、接続口部にケーシング内部に開口して塵埃を吸入する吸引口を設けたのに対して、引用刊行物記載の発明では、接続口部である開口部のほかに別途上記のような吸引口を設けていない点。
(4)相違点の検討
ア <相違点1>について
駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を電動プレス内に収納して内部と外部を仕切る電動プレスの外形部分であるケーシングを備えた電動プレスは、例えば、当審審尋で示した《前置報告書の内容》に挙げられている特開平9-308997号公報の【図7】に示されているように従来周知である。
ところで、上記(2)ア(ア)で摘記したように、引用刊行物には発塵防止機構を備える必要がある産業機械として射出成形機のほかに精密プレス機が挙げられており、発塵機構を備える産業機械として、引用刊行物記載の発明の射出成形機に代えて上記従来周知の電動プレスを選択することは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到する事項である。
そして、上記従来周知の電動プレスを選択した場合には、発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を外部と気密に仕切る必要があるところ、当該電動プレスは、上記各部を電動プレス内に収納して内部と外部を仕切る電動プレスの外形部分であるケーシングを備えていることからみて、電動プレス全体を外から覆うカバーを設けることによって外部と気密に仕切るのではなく、上記ケーシングだけによって内部と外部を気密に仕切るように構成することは、上記選択に当たって適宜なし得る単なる設計的な改変事項にすぎない。
イ <相違点2>について
引用刊行物記載の発明の接続口部である開口部は、それだけで包囲体の内部と外部とを連通し、且つ包囲体内部の塵埃を包囲体外部に吸引するものであることからみて、接続口部のほかに包囲体内部に開口して塵埃を吸入する吸引口を別途設ける必要性は見当たらず、接続口部にこのような吸引口を設けるか否かは単なる設計的事項である。
ウ 補正発明の効果について
補正発明によってもたらされる効果も、引用刊行物記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
エ したがって、補正発明は、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成20年6月30日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「発塵防止機構を備えた電動プレス」である。

2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。

3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、ケーシングについて、発塵性を有する駆動部、駆動伝達部及びプレス構造部を「電動プレス内に収納して」内部と外部を気密に仕切る「電動プレスの外形部分である」という事項を削除したものである。
そうすると、本件出願の発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記第2の2(4)エで示したとおり、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願平11-25543
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B30B)
P 1 8・ 575- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高山 芳之横山 幸弘  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
遠藤 秀明
発明の名称 発塵防止機構を備えた電動プレス  
代理人 岩堀 邦男  

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