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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1234762
審判番号 不服2010-5664  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-15 
確定日 2011-03-31 
事件の表示 特願2006-125634「内燃機関の吸気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-297952〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成18年4月28日の出願であって、平成21年9月10日付けで拒絶理由が通知され、平成21年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成22年10月18日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成22年12月20日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成22年3月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)平成22年3月15日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年11月16日付けの手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の以下の(a)に示す請求項1ないし4を、(b)に示す請求項1ないし4に補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
内燃機関の燃焼室に吸入空気を導入する内燃機関の吸気装置であって、
内燃機関のシリンダヘッドに取付けられるインテークマニホールドと、
前記インテークマニホールドの内側に嵌入される嵌入部材とを備え、
前記嵌入部材は、
吸気通路を形成する筒状の本体と、
前記本体上に設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁と、
前記隔壁により区画された複数の前記吸気通路の少なくとも一部の通路断面積を縮小可能な吸気制御弁とを含む、内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記内燃機関は複数の気筒を有し、
前記嵌入部材は、前記内燃機関の各気筒ごとに分割して形成される、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記嵌入部材における前記本体と前記隔壁とが一体成形により形成される、請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記嵌入部材における前記吸気制御弁の回転駆動用のシャフトをさらに備え、
前記内燃機関は複数の気筒を有し、
前記シャフトは、前記内燃機関の複数の気筒における前記吸気制御弁を連動して回転駆動するように設けられる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
内燃機関の燃焼室に吸入空気を導入する内燃機関の吸気装置であって、
内燃機関のシリンダヘッドに取付けられるインテークマニホールドと、
前記インテークマニホールドの内側に嵌入される嵌入部材とを備え、
前記嵌入部材は、
吸気通路を形成する筒状の本体と、
前記シリンダヘッド内に達するように前記本体上に設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁と、
前記隔壁により区画された複数の前記吸気通路の少なくとも一部の通路断面積を縮小可能な吸気制御弁とを含む、内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記内燃機関は複数の気筒を有し、
前記嵌入部材は、前記内燃機関の各気筒ごとに分割して形成される、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記嵌入部材における前記本体と前記隔壁とが一体成形により形成される、請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記嵌入部材における前記吸気制御弁の回転駆動用のシャフトをさらに備え、
前記内燃機関は複数の気筒を有し、
前記シャフトは、前記内燃機関の複数の気筒における前記吸気制御弁を連動して回転駆動するように設けられる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置。」(なお、下線部は当審で付したものであり、補正箇所を示す。)

(2)本件補正の目的
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記本体上に設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁」を、本件補正後の請求項1における「前記シリンダヘッド内に達するように前記本体上に設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁」と限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.本件補正の適否についての判断
本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1.特開2004-124836号公報(以下、「引用文献」という。)
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。)

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダに吸気ポートが接続され、かつこの吸気ポートの下流側の先端を吸気弁が開閉する内燃機関の吸気装置において、
上記吸気ポートをその断面で2つの領域に区画するように、吸気ポートの長手方向に沿って設けられた隔壁と、
この隔壁の上流端に近接して位置し、かつ上記隔壁により区画された一方の流路を開閉する吸気制御弁と、
上記隔壁により区画された2つの流路を上記吸気制御弁に近い位置で互いに連通させる連通路と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(b)「【0013】
図1および図2は、この発明を筒内直接噴射式火花点火内燃機関の吸気装置に適用した第1実施例を示しており、これは、ガス流動としてタンブルの強化を図った例である。シリンダブロック1に円筒状のシリンダ2が複数形成されているとともに、その頂部を覆うシリンダヘッド3に、ペントルーフ型の燃焼室4が凹設されている。この燃焼室4の2つの傾斜面にそれぞれ開口するように、吸気ポート5および排気ポート6が形成されており、吸気ポート5の先端を吸気弁7が開閉し、かつ排気ポート6の先端を排気弁8が開閉している。ここで、吸気ポート5は、先端部が二股状に分岐しており、各気筒に一対設けられた吸気弁7がそれぞれの先端を開閉している。同様に、排気弁8も各気筒に一対設けられている。そして、これらの4つの弁に囲まれた燃焼室4中心部に、点火栓9が配置されている。なお、シリンダ2内に配置されたピストン10は、本発明の要部ではないので、頂面が平坦な単純形状として図示してあるが、必要に応じて成層燃焼等に適した所望の形状に構成される場合もある。
【0014】
そして、図1に示すように、本実施例では、吸気ポート5をその断面で上下2つの領域に区画するように、吸気ポート5の長手方向に沿った隔壁11が設けられている。この隔壁11は、シリンダヘッド3を鋳造する際に別体の金属板を鋳込むことによって構成されており、その下流端11aができるだけ下流側つまり吸気弁7に近い位置となるように配置されている。ここで、図示例では、この隔壁11が存在する長手方向の部分で吸気ポート5がほぼ直線状をなし、これに対応して隔壁11もほぼ直線状をなしているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、吸気ポート5が湾曲している場合には、これに沿うように湾曲した隔壁11が設けられる。
【0015】
なお、当業者には明らかなように、(中略)「吸気ポート」という用語も、必ずしもシリンダヘッド3内部の部分のみを意味するのではなく、態様によっては、その上流側の一部が、シリンダヘッド3外部の他の部材、例えば吸気マニホルドの一部として構成される場合も含む。つまりシリンダヘッド3とは別の吸気マニホルド等から構成される部分を含めて「吸気ポート」と呼ぶものとする。
【0016】
上記の隔壁11が存在する部分では、吸気ポート5内が、上側の通路状部分つまり第1流路5Aと下側の通路状部分つまり第2流路5Bとに分割される。そして、下側の第2流路5Bを入口側つまり上流端で遮蔽するように、各気筒毎に吸気制御弁21が設けられている。この吸気制御弁21は、隔壁11の延長線上、特に、隔壁11の上流端11bの上流側に隣接して回転軸21aが位置し、かつこの回転軸21aに、板状をなす弁体21bの一端が支持されている。上記回転軸21aは、図示せぬアクチュエータに連係しており、タンブルを強化すべき運転条件では、弁体21bが図示の姿勢のような閉位置に制御され、第2流路5Bを遮蔽する。このとき、吸気制御弁21上流側から流れてきた吸気流を上側の第1流路5Aへ案内する方向に弁体21bが僅かに傾斜している。また吸気量が大となる運転条件、例えば高速高負荷域では、吸気ポート5の長手方向に沿った開位置に制御され、第2流路5Bを開放する。この開位置では、上記弁体21bが隔壁1の上流端11b近傍部分と直線状に連続するような姿勢となり、吸気流と平行となるため、通路抵抗が最小となる。
【0017】
また、上記隔壁11の上流端11b近傍に、第1流路5Aと第2流路5Bとを互いに連通させる連通路12が開口形成されている。この連通路12は、図2に示すように、気筒列方向(吸気ポート5の長手方向と直交する方向)に沿って細長いスリット状に開口している。」(段落【0013】ないし【0017】)

(c)「【0018】
次に上記実施例の構成における作用について説明する。吸気行程において、吸気弁7が開き、かつピストン10が下降すると、吸気は、吸気弁7周囲の間隙を通して、シリンダ2内に流入する。このとき、吸気制御弁21が開位置にあれば、第1流路5Aおよび第2流路5Bの双方を通して吸気が流れ、吸気弁7の周囲の各部からほぼ均等に吸気が流れ込むので、シリンダ2内に発生するガス流動は比較的弱い。
【0019】
これに対し、吸気制御弁21が図示のような閉位置に制御されると、下側の第2流路5Bが遮蔽され、上側の第1流路5Aのみを通して吸気がシリンダ2側へ流れることになる。特に、吸気ポート5の上側の内壁面5a(以下、上側内壁面5aと記す)に沿って吸気流が偏在し、吸気ポート5の下側の内壁面5b(以下、下側内壁面5bと記す)に沿う流れは非常に少ない。そのため、吸気弁7の周囲について見たときに、吸気弁7の下側つまりシリンダ2外周に近い側の間隙20aでは、吸気の流量が少ないとともに、流速も低く、また吸気弁7の上側つまり点火栓9に近い側の間隙20bでは、吸気の流量が多いとともに、流速も高くなる。この結果、シリンダ2内には、矢印で示すように、吸気弁7側から排気弁8側を経てピストン10頂面へと向かうタンブル(いわゆる順タンブル)が生じる。そして、本実施例では、吸気制御弁21が図示のように閉位置にあると、この部分が絞り部となって吸気流が第1流路5Aのみを流れるように絞られるので、第1流路5Aにおいて、隔壁11の上流端11bよりも僅かに下流側で、局部的な圧力低下が生じ、符号13として示す低圧領域が発生する。上記連通路12は、この低圧領域13に開口しているので、第2流路5Bの下流側の開口端14との間で圧力差が生じる。そのため、上記開口端14が吸気取り入れ口となり、上記圧力差によって、上記開口端14から吸気が取り込まれるとともに、吸気ポート5の上流側へ向かって逆に流れ、かつ連通路12から第1流路5Aへと合流する。つまり、第1流路5A通過後に吸気ポート5の下側の領域へと拡がろうとした吸気が第2流路5Bを通して上流側へ還流し、上側の第1流路5Aへと戻されることになる。そのため、吸気弁7の下側の間隙20aを通る吸気流がより少なくなると同時に、上側の間隙20bを通る吸気流がより多くなり、シリンダ2内のタンブルがより強く得られる。特に、下側の間隙20aを通る吸気流は、シリンダ2内のタンブルを弱めるように作用するのであるが、上記実施例では、上側の間隙20bを通る流れによりタンブルが強められるのみならず、このタンブルを弱めるように作用する下側の間隙20aを通る流れが抑制されることから、非常に効果的にタンブルが強化される。
【0020】
なお、上記実施例では、吸気ポート5を隔壁11により上下に分割してタンブル(縦渦)の強化を図っているが、隔壁11を配置する方向を適宜に設定することにより、スワール(横渦)の強化や、スワールとタンブルとを合成した方向の旋回流の強化を図ることも可能である。」(段落【0018】ないし【0020】)

(d)「【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る吸気装置の第1実施例を示す断面図。
【図2】この第1実施例の吸気装置を上方から見た平面図。
【図3】第2実施例を示す断面図。
【図4】この第2実施例の吸気装置を上方から見た平面図。
【図5】この第2実施例の吸気装置における吸気の流れを示す説明図。
【図6】比較例の吸気装置における吸気の流れを示す説明図。
【図7】吸気弁の周囲を通る吸気流の分布を実施例と比較例とで対比して示す特性図。
【図8】シリンダ内のタンブル比を実施例と比較例とで対比して示す特性図。
【図9】バルブリフトに伴うタンブル比の特性を実施例と比較例とで対比して示す特性図。
【図10】タンブルの強さと吸入空気量との関係を示す特性図。
【図11】第3実施例を示す断面図。
【図12】第4実施例を示す断面図。
【符号の説明】
5…吸気ポート
7…吸気弁
11…隔壁
12…連通路
13…低圧領域
21…吸気制御弁」(【図面の簡単な説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(d)及び図面の記載から分かること

(ア)上記(1)(a)ないし(d)及び図面の記載から、引用文献には、内燃機関の燃焼室4に吸気流を導入する内燃機関の吸気装置が記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(b)及び図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関の吸気装置において、吸気ポート5は、その上流側の一部が吸気マニホルドの一部として構成されるものであることが分かる。

(ウ)上記(1)(b)及び図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関の吸気装置において、隔壁11は、吸気ポート5の長手方向に沿って設けられ、隔壁11は少なくとも一部がシリンダヘッド3内に設けられていることが分かる。

(エ)上記(1)(a)ないし(d)及び図面の記載から、引用文献に記載された内燃機関の吸気装置は、内燃機関のシリンダヘッド3に接続される吸気マニホルドと、その上流側の一部が吸気マニホルドの一部として構成される吸気ポート5とを備え、前記吸気ポート5は、吸気流の流路を形成する上側内壁面5a及び下側内壁面5bと、シリンダヘッド3に設けられ、第1流路5Aと第2流路5Bを区画する隔壁11と、前記隔壁により区画された第1流路5Aと第2流路5Bのうちの少なくとも第2流路5Bを遮蔽可能な吸気制御弁21とを含むものであることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されているといえる。

「内燃機関の燃焼室4に吸気流を導入する内燃機関の吸気装置であって、
内燃機関のシリンダヘッド3に接続される吸気マニホルドと、
吸気マニホルドの一部として構成される吸気ポート5とを備え、
前記吸気ポート5は、
吸気流の流路を形成する上側内壁面5a及び下側内壁面5bと、
少なくとも一部がシリンダヘッド3内に設けられ、第1流路5Aと第2流路5Bを区画する隔壁11と、
前記隔壁により区画された第1流路5Aと第2流路5Bのうちの少なくとも第2流路5Bを遮蔽可能な吸気制御弁21とを含む、内燃機関の吸気装置。」

2-2.本願補正発明と引用文献に記載された発明との対比
本願補正発明と引用文献に記載された発明とを対比するに、引用文献に記載された発明における「内燃機関」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「燃焼室4」は「燃焼室」に、「吸気流」は「吸入空気」に、「シリンダヘッド3」は「シリンダヘッド」に、「吸気マニホルド」は「インテークマニホールド」に、「接続される」は「取付けられる」に、「吸気流の流路」は「吸気通路」に、「上側内壁面5a及び下側内壁面5b」は「筒状の本体」に、「第1流路5Aと第2流路5B」は「複数の吸気通路」に、「隔壁11」は「隔壁」に、それぞれ相当する。
また、引用文献に記載された発明における「少なくとも第2流路5B」は、第1流路5Aと第2流路5Bの合計断面積のうちの少なくとも一部の断面積を有するものであるから、その技術的意義からみて、本願補正発明における「少なくとも一部の通路断面積」に相当し、該第2流路5Bを遮蔽することは、第1流路5Aと第2流路5Bのうちの少なくとも一部の流路の断面積を縮小することになるから、引用文献に記載された発明における「少なくとも第2流路5Bを遮蔽可能な」は、本願補正発明における「少なくとも一部の通路断面積を縮小可能な」に相当する。
また、引用文献に記載された発明における「吸気マニホルドの一部として構成される吸気ポート5」は、「吸気マニホルド(本願補正発明におけるインテークマニホールド)内部の部分」という限りにおいて、本願補正発明における「嵌入部材」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用文献に記載された発明は、
「内燃機関の燃焼室に吸入空気を導入する内燃機関の吸気装置であって、
内燃機関のシリンダヘッドに取付けられるインテークマニホールドと、
インテークマニホールド内部の部分とを備え、
前記インテークマニホールド内部の部分は、
吸気通路を形成する筒状の本体と、
シリンダヘッド内に達するように設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁と、
前記隔壁により区画された複数の前記吸気通路の少なくとも一部の通路断面積を縮小可能な吸気制御弁とを含む、内燃機関の吸気装置。」
である点で一致し、次の(a)の点で相違する。

(a)本願補正発明においては、「インテークマニホールドの内側に嵌入される嵌入部材とを備え、前記嵌入部材は、吸気通路を形成する筒状の本体と、前記シリンダヘッド内に達するように前記本体上に設けられ、複数の吸気通路を区画する隔壁と、前記隔壁により区画された複数の前記吸気通路の少なくとも一部の通路断面積を縮小可能な吸気制御弁とを含む」のに対し、引用文献に記載された発明においては、インテークマニホールドの内側に「隔壁」と「吸気制御弁」とを設けているものの、「隔壁」と「吸気制御弁」とを含む「嵌入部材」が設けられているかどうか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

2-3.相違点についての検討
(a)相違点について
内燃機関の吸気装置において、吸気通路内に、吸気制御弁等を含む嵌入部材を設けることは、周知の技術手段(以下、「周知技術1」という。例えば、平成21年12月7日付け拒絶査定において慣用手段であることを示す例として提示された特開平5-321675号公報の図3に係る従来例のリード弁組立体31、特開平6-299919号公報の図1及び2のケーシング9を有する調節部材、特開平4-342824号公報の図1のリードバルブ組立体2、特開平4-342825号公報の図1ないし4のリードバルブ組立体3、特許第2697448号公報の図1ないし5のリードバルブ組立体1、特開平9-203356号公報の図4ないし6のリードバルブ装置10、等の記載を参照。)にすぎない。
また、内燃機関の吸気装置において、インテークマニホールドの内側にある隔壁がシリンダヘッド内に達するようにした構造は、当業者が適宜なし得る設計的事項というべきものであり、また、周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平10-121991号公報の段落【0018】及び図13の隔壁3a、特開平10-274045号公報の図2の副吸気管8、特開2001-173499号公報の図2の板20、特開2003-269220号公報の図4、5及び16の仕切り板15、特開平11-218030号公報の図1の隔壁19、特開平6-299919号公報の段落【0011】及び【0012】及び図1の制限壁4、等の記載を参照。)でもある。
してみれば、引用文献に記載された発明において、上記周知技術1及び周知技術2を適用して、吸気制御弁等を含む嵌入部材を設けるとともに、隔壁をシリンダヘッド内に達するように嵌入部材の筒状の本体上に設けることにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

また、本願補正発明は、全体としてみても、引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

以上のように、本願補正発明は、引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.まとめ
よって、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年3月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]の1.(1)(a)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開2004-124836号公報)の記載事項及び引用文献に記載された発明は、前記第2.の[理由]2.2-1.の(1)ないし(3)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の[理由]1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.2-1.ないし2-4.に記載したとおり、引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2から想定される以上の格別の作用効果を奏するものではない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-28 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2006-125634(P2006-125634)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 西山 真二
金澤 俊郎
発明の名称 内燃機関の吸気装置  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 堀井 豊  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  

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