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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1234780
審判番号 不服2008-9953  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-21 
確定日 2011-03-28 
事件の表示 特願2002-270323「多層配線基板」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-111544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年 9月17日の出願であって、平成20年 3月18日付けで拒絶査定され、これを不服として、平成20年 4月21日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、当審による平成22年 6月 2日付けの最初の拒絶理由が通知され、同年 7月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年 9月 6日付けで最後の拒絶理由が通知されたところ、同年11月 3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 平成22年11月 3日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年11月 3日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
[1]平成22年11月 3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、平成22年 7月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりに補正しようとする事項を含むものである。

<平成22年 7月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】 各々、互いに対向する第1および第2面、および、互いに対向する第3および第4面により規定される、第1および第3レベルの金属層を有し、
前記第1および第3レベルの金属層間に介在する第1絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第2、第3および第4面が前記第1絶縁層と接触し、前記第1面が前記第1絶縁層の表面と実質的に平坦な面を形成するように、前記第1レベルの金属層が前記第1絶縁層に部分的に埋め込まれ、前記第3レベルの金属層の前記第1面が前記第1絶縁層に接触し、前記第2ないし前記第4面が前記第1絶縁層に接触しないように前記第3レベルの金属層が前記第1絶縁層上に形成され、
前記第1レベルの金属層と前記第3レベルの金属層との間に配置され、前記第1絶縁層内に埋め込まれた第2レベルの金属層を有し、
前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出する第1開口を有する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部が表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッドとなり、
前記第1絶縁層に埋め込まれた前記第1レベルの金属層であって複数の前記第1金属パッドの間に位置する部分が接地導体層や電源層としての配線パターンとされ、
前記第3レベルの金属層の前記第2ないし第4面と前記第1絶縁層の一部を覆うように形成される第3絶縁層を有し、
前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を表面露出する第2開口を有し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部が、マザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドであること、
を特徴とする多層配線基板。」

<本件補正により補正しようとする特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】 各々、互いに対向する第1および第2面、および、互いに対向する第3および第4面により規定される、第1および第3レベルの金属層を有し、
前記第1および第3レベルの金属層間に介在する第1絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第2、第3および第4面が前記第1絶縁層と接触し、前記第1面が前記第1絶縁層の表面と実質的に平坦な面を形成するように、前記第1レベルの金属層が前記第1絶縁層に部分的に埋め込まれ、前記第3レベルの金属層の前記第1面が前記第1絶縁層に接触し、前記第2ないし前記第4面が前記第1絶縁層に接触しないように前記第3レベルの金属層が前記第1絶縁層上に形成され、
前記第1レベルの金属層と前記第3レベルの金属層との間に配置され、前記第1絶縁層内に埋め込まれた第2レベルの金属層を有し、
前記第1絶縁層上を含む前記平坦な面を覆うように形成され、その平坦な面の中に埋め込まれた前記第1レベルの金属層と前記第1絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆うとともに、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出して第1開口を形成する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、中央部として表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッドとなり、
前記第1絶縁層に埋め込まれた前記第1レベルの金属層であって複数の前記第1金属パッドの間に位置する部分が接地導体層や電源層としての配線パターンとされ、
前記第3レベルの金属層の前記第2ないし第4面と前記第1絶縁層の一部を覆うように形成される第3絶縁層を有し、
前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層と前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆うとともに、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を露出して第2開口を形成し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を中央部として表面露出したマザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドを形成するものであること、
を特徴とする多層配線基板。」(下線は、本件補正による補正箇所)

[2]補正の適否について
1.補正の目的
上記請求項1の補正は、本件補正前の平成22年 7月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の
1)第2絶縁層に関して、
「前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出する第1開口を有する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層」との記載を、
「前記第1絶縁層上を含む前記平坦な面を覆うように形成され、その平坦な面の中に埋め込まれた前記第1レベルの金属層と前記第1絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆うとともに、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出して第1開口を形成する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層」と、
2)第1金属パッドに関して、
「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部が表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッド」との記載を、
「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、中央部として表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッド」と、
3)第3絶縁層及び第2金属パッドに関し、
「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を表面露出する第2開口を有し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部が、マザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッド」との記載を
「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層と前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆うとともに、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を露出して第2開口を形成し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を中央部として表面露出したマザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドを形成するもの」と、
それぞれ、限定的な減縮を目的として補正しようとするものである。

したがって、上記請求項1の補正に係る本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

2.独立特許要件
つぎに、上記補正による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるのか否か)について検討する。

1)刊行物及びその摘記事項
当審による平成22年 9月 6日付けの最後の拒絶理由通知書で引用された本願の出願日前に国内において頒布された下記ア)?カ)の各刊行物には、それぞれ図面と共に、下記の事項が記載されている。

ア.刊行物
ア)特開2000-323613号公報(以下、「刊行物1」という。)
(当審最初の拒絶理由の刊行物9、原審の拒絶理由の引例3)

下記のイ)?カ)の各刊行物は、周知技術の例示として引用された刊行物。
イ)特開2001-237338号公報(以下、「刊行物2」という。)
(当審最初の拒絶理由の刊行物6)
ウ)特開2001-217356号公報(以下、「刊行物3」という。)
(当審最初の拒絶理由の刊行物7、原審の拒絶査定の周知例)
エ)特開2000-312068号公報(以下、「刊行物4」という。)
(当審最初の拒絶理由の刊行物8)
オ)特開2002-223077号公報(以下、「刊行物5」という。)
カ)特開平7-226452号公報(以下、「刊行物6」という。)

イ.各刊行物の摘記事項
<刊行物1(特開2000-323613号公報)の摘記事項>
(刊1ア)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明に係る半導体装置用多層基板の一例を図1に示す。図1は、半導体装置用多層基板の部分断面図である。この図1に示す半導体装置用多層基板10は、導体配線12、12・・が・・・樹脂から成る絶縁層14、14・・を介して多層に配されて成る多層基板(以下、多層基板10と称することがある)である。かかる多層基板10の一面側は、搭載する半導体素子16の電極端子18を接続する半導体素子用パッド20a、20a・・が形成された半導体素子搭載面であり、多層基板10の他面側は、外部接続端子としてのはんだボール22、22・・を装着する外部接続端子用パッド24、24・・が形成された外部接続端子装着面である。この多層基板10の半導体素子搭載面及び外部接続端子装着面には、半導体素子用パッド20a及び外部接続端子用パッド24を除き、ソルダレジスト26、26によって覆われている。」

(刊1イ)「【0020】この様に、図5に示す様に、図4に示す多層基板10aの銅板40及びシードレイヤ42を除去した後、半導体素子用パッド20a及び外部接続端子用パッド24を除き半導体素子搭載面及び外部接続端子装着面に、ソルダレジスト26、26を塗布することによって、図1に示す多層基板10を得ることができる。銅板40及びシードレイヤ42を除去した、半導体素子用パッド20aの表面を含む絶縁層14の表面を極めて平坦面に形成でき、半導体素子16の電極端子18と半導体素子用パッド20aとを確実に当接させることができる。・・・」

(刊1ウ)図1には、半導体装置用多層基板の一例を示す部分断面図が示されており、
(a)半導体素子16を搭載する側の最外側の絶縁層14の表面と半導体素子用パッド20aの上面とが面一の平坦面となるように半導体素子用パッド20aが最外側の絶縁層14に埋め込まれており、ソルダレジスト26が最外側の絶縁層14の全面に、各半導体素子用パッド20aの周囲外縁を覆うように開口を設けて形成されていること、
(b)半導体素子16を搭載する側とは反対側の最外側の絶縁層14の表面上に、外部接続端子用パッド24が配置されると共に、ソルダレジスト26が最外側の絶縁層14の全面に、外部接続端子用パッド24の周囲外縁を覆うように開口を設けて形成されていること、
(c)半導体素子用パッド20aと外部接続端子用パッド24とが配置された絶縁層の内部には、導体配線12が形成されていること、
(d)ソルダレジスト26の開口に露出した半導体素子用パッド20aの部分と、半導体素子16の電極端子18とが、接続されること、
(e)ソルダレジスト26の開口に露出した外部接続端子用パッド24の部分と、外部接続端子22とが、接続されること、
が、それぞれ看取できる。

(刊1エ)図4及び図5には、上記(刊1イ)の説明を参酌すれば、図4及び図5(a)に示す多層基板10aの銅板40及びシードレイヤ42を除去し、その後、ソルダーレジストを塗布する工程において、当該除去された面は、図5(c)において、絶縁層14の表面と半導体素子用パッド20aの表面とが面一の平坦面となっていることが看取できる。

<刊行物2(特開2001-237338号公報)の摘記事項>
(刊2ア)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プリント基板の中のフリップチップボールグリッドアレイ(FC BGA)基板に関する。・・・半導体接続用端子部(バンプパッド)のソルダーレジストパターンの形成で、高い位置合わせ精度が要求されている・・・具体的には、光硬化性樹脂を印刷して、ソルダーレジストパターンを露光・現像して開口したバンプパッドを形成する或いは熱硬化性樹脂を印刷法により塗布して熱硬化させて開口したバンプパッドを形成している・・・」

(刊2イ)「【0005】本発明は、基板表面に形成されたソルダーレジスト皮膜にレーザを照射してバンプパッド部を開口し、半田接続用表面処理をしたフリップチップボールグリッドアレイ(FC BGA)基板である。本発明は、バンプパッド部は、バンプパッド銅パターン径が80?200μm、ソルダーレジスト開口径が50?100μmであることを特徴とするフリップチップボールグリッドアレイ基板である。・・・」

(刊2ウ)「【0009】本発明に使用出来る光硬化性あるいは熱硬化性ソルダーレジストは、液状レジスト・・・、ドライフイルム状レジスト・・・が用いられる。ソルダーレジストをFC BGA基板の全面に塗布して、所定の方法で半硬化あるいは硬化してソルダーレジスト皮膜を形成する。その皮膜の厚みは、20?100μmの厚みにすると好ましい。・・・」

(刊2エ)図2の(A),図3?図6には、ソルダーレジスト皮膜において、バンプパッドよりも小径で、バンプパッドの外縁を覆うように、バンプパッドの上に開口されたソルダーレジストの穴が、形成されていることが看取できる。

<刊行物3(特開2001-217356号公報)の摘記事項>
(刊3ア)「【0004】また、電子部品を接続するためのはんだ付け作業の際には、不必要な箇所へはんだが流れ、短絡、断線等が起こるのを防止するためのソルダーレジストを、あらかじめ塗布してお<ことも不可欠である。・・・」

(刊3イ)「【0035】上記積層・加熱プレスにより形成された多層回路基板の、最も外側の回路基板の表面を覆うソルダーレジスト層は、主として熱硬化性樹脂や感光性樹脂から形成され、その回路基板上のビアホール位置に対応した個所に形成した開口から露出する導体回路(導体パッド)上に設ける導電性バンプは、たとえば、Sn/AgやSn/Pbのような導電性ペースト材料を印刷によって導体パッド上に設け、その後、リフロー処理することによって形成される。」

(刊3ウ)「【0066】(C)ソルダーレジスト層の形成
図7に示すように、最も外側の回路基板50および54の表面にソルダーレジスト層83をそれぞれ形成する。この場合、回路基板50および54の外表面全体にソルダーレジスト組成物を塗布し、その塗膜を乾燥した後、この塗膜に、開口部を描画したフォトマスクフィルムを載置して露光、現像処理することにより、導体回路50および54のうち、ビアホール直上のはんだパッド部分を露出させた開口を形成する。」

(刊3エ)図7には、多層回路基板の一実施形態が示され、最外層の導体パッドの外縁を覆うように開口部を設けたソルダーレジスト層83が看取できる。

<刊行物4(特開2000-312068号公報)の摘記事項>
(刊4ア)「【0005】また、配線基板の表面や裏面に形成される配線回路層を外部から保護するために、一般に、配線基板の表面および/または裏面には、ソルダーレジストと呼ばれる保護層が被着形成される。」

(刊4イ)「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、熱硬化性有機樹脂を含有する絶縁基板の表面および/または裏面に、少なくとも他の電気回路と接続される複数の接続パッドが被着形成されてなるとともに、該接続パッド以外の絶縁基板の表面に熱硬化性樹脂を含む保護層が被着形成されてなる配線基板・・・」

(刊4ウ)「【0017】また、絶縁基板1の裏面には、マザーボードなどの外部回路と接続するための複数の接続パッド6が形成されており、半導体素子2と接続される接続パッド3と配線回路層4やビアホール導体5を通じて電気的に接続されている。そして、絶縁基板1表面および裏面の接続パッド3、6を除く表面には、熱硬化性樹脂を含む保護層7が被着形成されている。・・・」

<刊行物5(特開2002-223077号公報)の摘記事項>
(刊5ア)「【0053】図6(a)において、電源配線は外部電極61からビアホール62を通じて電源層63に接続され、ビアホール64を通じて電源層65に接続されるとともに、ビアホール66を通じて半導体素子接続用電極67に接続されている。また、接地配線は外部電極68からビアホール69を通じて接地層70に接続され、ビアホール71を通じて接地層72に接続されるとともに、ビアホール73を通じて半導体素子接続用電極74に接続されている。・・・
・・・
【0055】図7において、接地配線は外部電極88からビアホール89を通じて接地層90に接続され、ビアホール91を通じて接地層92に接続されるとともに、ビアホール93を通じて半導体素子接続用電極94に接続されている。また、電源配線は外部電極81からビアホール82を通じて電源層83に接続され、ビアホール84を通じて電源層85に接続されるとともに、ビアホール86を通じて半導体素子接続用電極87に接続されている。・・・」

(刊5イ)「【0087】本発明の多層配線基板においては、同様の配線構造をさらに多層に積層して多層配線基板を構成してもよい。
【0088】また、信号配線の構造は、信号配線に隣接して電源層もしくは接地層を形成したコプレーナ構造であってもよく、多層配線基板に要求される仕様等に応じて適宜選択して用いることができる。


<刊行物6(特開平7-226452号公報)の摘記事項>
(刊6ア)「【0008】一般に信号線路の特性インピーダンスは、信号配線と直流的あるいは交流的な接地配線との間の距離およびその間の絶縁体の誘電率およびパターン形状によってきまる。本発明ではこの接地配線(換言すれば直流的な接地層または電源層、あるいは両者からなるインピーダンス制御層)を、半導体素子の接続用パッドしか存在せずスペースが広く空いている表面配線層に着目し、ここに配置するようにした。インピーダンス制御層は表面配線層のほぼ全面に分布しているので、特性インピーダンスを均一化する事ができる。さらにこのインピーダンス制御層の形状を要求仕様に応じ変化させている。」

(刊6イ)「【0019】次に本発明の第2の実施例を図5を参照して説明する。・・・平滑化されたその表面に第1信号層22が形成されており、・・・表面配線層25が形成されている。表面配線層25は半導体素子を搭載するためのダイパッド26とボンディングパッド27とインピーダンス制御層としての接地層28とから構成されている。この場合電源配線は独立層としては存在せず第1信号層22もしくは第2信号層24の中に共存している。・・・
【0020】またベース基板自体が電源層や接地層を内蔵する厚膜系の同時焼成セラミック多層基板である場合は、この電源層よりヴィアホールを介して電源の供給を受けるようにしてもよい。・・・」


2)当審の判断
ア.刊行物1に記載された発明
上記刊行物1の摘記事項(刊1ア)?(刊1エ)を総合勘案すれば、刊行物1には、下記の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「半導体素子用パッドおよび外部接続端子用パッドを有し、
前記半導体素子用パッドおよび外部接続端子用パッドの間に介在する絶縁層を有し、
前記半導体素子用パッドは、半導体素子を搭載する側の最外側の絶縁層の表面と半導体素子用パッドの表面とが面一の平坦面となるように、前記最外側の絶縁層に埋め込まれており、
前記外部接続端子用パッドは、半導体素子を搭載する側とは反対側の外部接続端子装着面としての最外側の絶縁層の表面上に形成され、
半導体素子用パッドと外部接続端子用パッドとが配置された絶縁層の内部には、導体配線が形成され、
半導体素子用パッドを除き、半導体素子搭載面である平坦面を覆っているソルダレジストを有し、前記ソルダレジストは、各半導体素子用パッドの周囲外縁を覆うように開口を設けており、
ソルダレジストの前記開口に露出した部分の前記半導体素子用パッドは、複数形成され、各露出した部分は、半導体素子の電極端子と接続される部分であり、
外部接続端子用パッドを除いて、外部接続端子装着面を覆っているソルダレジストを有し、
前記ソルダレジストは、外部接続端子用パッドの周囲外縁を覆うように設けられた開口を有しており、
ソルダレジストの前記開口に露出した外部接続端子用パッドの部分は、複数形成され、各露出した部分は外部接続端子と接続する部分である、
多層基板。」

イ.対比・判断
本願補正発明と刊行物発明とを対比すると、
(ア)刊行物発明の「半導体素子用パッド」および「外部接続端子用パッド」は、共に、断面矩形であるから、各々、互いに対向する第1および第2面、および、互いに対向する第3および第4面を有していることは明らかである。
したがって、刊行物発明の「半導体素子用パッド」および「外部接続端子用パッド」は、それぞれ、本願補正発明の「第1レベルの金属層」および「第3レベルの金属層」に相当する。
(イ)上記(ア)から、刊行物発明の「半導体素子用パッドおよび外部接続端子用パッドの間に介在する絶縁層」は、本願補正発明の「第1絶縁層」に相当する。
(ウ)したがって、刊行物発明の「前記半導体素子用パッドは、半導体素子を搭載する側の最外側の絶縁層の表面と半導体素子用パッドの表面とが面一の平坦面となるように、前記最外側の絶縁層に埋め込まれており、」は、本願補正発明の「前記第1レベルの金属層の前記第2、第3および第4面が前記第1絶縁層と接触し、前記第1面が前記第1絶縁層の表面と実質的に平坦な面を形成するように、前記第1レベルの金属層が前記第1絶縁層に部分的に埋め込まれ、」に、
また、刊行物発明の「前記外部接続端子用パッドは、半導体素子を搭載する側とは反対側の最外側の絶縁層の表面上に形成され、」は、本願補正発明の「前記第3レベルの金属層の前記第1面が前記第1絶縁層に接触し、前記第2ないし前記第4面が前記第1絶縁層に接触しないように前記第3レベルの金属層が前記第1絶縁層上に形成され、」に、
それぞれ相当する。
(エ)また、刊行物発明の「 半導体素子用パッドと外部接続端子用パッドとが配置された絶縁層の内部には、導体配線が形成され、」は、本願補正発明の「前記第1レベルの金属層と前記第3レベルの金属層との間に配置され、前記第1絶縁層内に埋め込まれた第2レベルの金属層を有し、」に相当する。
(オ)刊行物発明の「ソルダーレジスト」からなる層と、本願補正発明の「熱硬化性樹脂」からなる層は、共に、絶縁層という点で同一であるから、刊行物発明の「半導体素子用パッドを除き、半導体素子搭載面である平坦面を覆っているソルダレジストであって、前記ソルダレジストは、各半導体素子用パッドの周囲外縁を覆うように開口を設けており、」は、本願補正発明の「前記第1絶縁層上を含む前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆うとともに、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出して第1開口を形成する第2絶縁層」に相当する。
(カ)刊行物発明において、ソルダレジストの前記開口に露出した部分の前記半導体素子用パッドは、半導体素子を搭載するパッドであるから、刊行物発明の「ソルダレジストの前記開口に露出した部分の前記半導体素子用パッドは、複数形成され、各露出した部分は、半導体素子の電極端子と接続される部分であり、」は、本願補正発明の「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、表面露出した、電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッド」に相当する。
(キ)刊行物発明の「外部接続端子用パッド」は、外部接続端子装着面としての最外側の絶縁層の表面上に形成され、「外部接続端子装着面」には、外部接続端子用パッドを除き、ソルダレジストによって覆われているのであるから、刊行物発明の「外部接続端子用パッドを除いて、外部接続端子装着面を覆っているソルダレジスト」は、本願補正発明の「前記第3レベルの金属層の前記第2ないし第4面と前記第1絶縁層の一部を覆うように形成される第3絶縁層」に相当する。
(ク)刊行物発明の「前記ソルダレジストは、外部接続端子用パッドの周囲
外縁を覆うように設けられた開口を有しており、」は、本願補正発明の「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆うとともに、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を露出して第2開口を形成し、」に相当する。
(ケ)刊行物発明の「外部接続端子」は、他の製品に搭載する為のものであり、本願補正発明の「マザーボードや他の配線基板」も、他の製品であるから、刊行物発明の「ソルダレジストの前記開口に露出した外部接続端子用パッドの部分は、複数形成され、各露出した部分は外部接続端子と接続する部分である、」は、本願補正発明の「前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を表面露出した、他の製品に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドを形成するものである」に相当し、
(コ)刊行物発明の「多層基板」は、本願補正発明の「多層配線基板」に相当する。

そうすると、両者は、
「各々、互いに対向する第1および第2面、および、互いに対向する第3および第4面により規定される、第1および第3レベルの金属層を有し、
前記第1および第3レベルの金属層間に介在する第1絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第2、第3および第4面が前記第1絶縁層と接触し、前記第1面が前記第1絶縁層の表面と実質的に平坦な面を形成するように、前記第1レベルの金属層が前記第1絶縁層に部分的に埋め込まれ、前記第3レベルの金属層の前記第1面が前記第1絶縁層に接触し、前記第2ないし前記第4面が前記第1絶縁層に接触しないように前記第3レベルの金属層が前記第1絶縁層上に形成され、
前記第1レベルの金属層と前記第3レベルの金属層との間に配置され、前記第1絶縁層内に埋め込まれた第2レベルの金属層を有し、
前記第1絶縁層上を含む前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆うとともに、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出して第1開口を形成する第2絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、表面露出した、電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッドとなり、
前記第3レベルの金属層の前記第2ないし第4面と前記第1絶縁層の一部を覆うように形成される第3絶縁層を有し、
前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆うとともに、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を露出して第2開口を形成し、
前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を表面露出した、他の製品に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドを形成するものである、
多層配線基板。」
の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1
第2絶縁層として、本願補正発明が、「熱硬化性樹脂」であるのに対して、刊行物発明のソルダーレジストが「熱硬化性樹脂」か否か不明である点。

相違点2
第2絶縁層が、本願補正発明では、「平坦な面の中に埋め込まれた前記第1レベルの金属層と前記第1絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆」っており、「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、中央部として表面露出」しているのに対して、刊行物発明では、そのような機能及び構造が特定されていない点。

相違点3
本願補正発明では、「第1絶縁層に埋め込まれた前記第1レベルの金属層であって複数の前記第1金属パッドの間に位置する部分が接地導体層や電源層としての配線パターン」を有しているのに対して、刊行物発明ではそのような配線パターンについて記載されていない点。

相違点4
本願補正発明では、「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層と前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆」っており、「前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を中央部として表面露出」しているのに対して、刊行物発明では、そのような機能及び構造が特定されていない点。

相違点5
他の製品について、本願補正発明では、「マザーボードや他の配線基板」であるが、刊行物発明ではそのような特定がなされていない点。

そこで、上記各相違点について、以下検討する。

相違点1について
多層配線基板の表面のランド・パッド等の周囲を保護するため或いは電子部品を接続するためのはんだ付け作業において不必要なはんだ流れ、短絡、断線等を防止するために、ソルダーレジスト等の保護膜を設け、当該保護膜として、熱硬化性の樹脂を用いることは、刊行物2?4に記載されているように周知の技術手段であり、刊行物発明においても、多層基板表面の半導体素子用パッド及び外部接続端子用パッドを保護或いは電子部品搭載時の短絡、断線等を防止しようとして、各パッドの周囲外縁を覆っているソルダーレジストを熱硬化性樹脂とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものであり、これを否定しうる要因も見受けられない。

相違点2及び4について
金属パッド層と絶縁体層との界面に集中する応力を緩和する点について、本願の明細書【0010】には、
「・・・第一金属パッド層6’と絶縁体層10との界面に外力に対する応力が集中しやすく、・・・絶縁体層10に属する第一レジスト層5をビルドアップ層の第一主表面PF側の最表層として形成するとともに、第一レジスト層5の直下に位置する第一配線層を構成する第一金属パッド層6の第一レジスト層5側の主表面は、第一レジスト層5に被覆される被覆領域と、該被覆領域を除く領域が表面露出した形の露出領域とからなる。その結果、外力に対する応力が第一金属パッド層6と絶縁体層10(第一レジスト層5も含む)との界面に集中することを緩和できる。ひいては、第一金属パッド層6と絶縁体層10との界面でのハガレ等の欠陥発生を効果的に抑制することが可能である。・・・」
と説明されている。
そして、本願明細書全体の記載において、応力緩和について、レジスト層の厚み、被覆領域の大きさ等他の因子との関係について何ら説明されていないことから、上記明細書【0010】の記載は、「金属パッド層の主表面が、レジスト層に被覆される被覆領域と、該被覆領域を除く領域が表面露出した形の露出領域とからなるように、金属パッドの主表面上にレジスト層を形成」しさえすれば、「外力に対する応力が金属パッド層と絶縁体層との界面に集中することを緩和できる」と解される。

また、第1開口及び第2開口が「第1レベルの金属層の第1面の前記一部を、中央部として表面露出」或いは「第3レベルの金属層の第2面の前記一部を、中央部として表面露出」していることについては、平成22年11月 3日付けの意見書において、その補正の根拠を「図1,2に図示される内容に基づくもの」(「図1,2」は、「図1,3」の誤記と思われるので、以下、「図1,2(図1,3)」と記載する。)である旨説明しているのみである。
そして、本願の明細書全体を通じて、金属パッドの開口を、「中央部として表面露出」させる点については、応力緩和との関係等その作用・目的のみならず、その「中央部としての露出」との構造自体についても何らの説明されておらず、単に図面に、そのような構造と思われるものが図示されているのみである。

一方、刊行物1においても、図1、図12、図16等多層基板の全体図においては、いずれも、明細書中に特段の説明はないものの、半導体素子用パッド及び外部接続端子用パッドの周囲外縁を覆うようにその内側、即ち本願明細書の図1,2(図1,3)における中央部に相当する部位、を露出してソルダーレジストを覆っているものであり、また、刊行物2の図2(A)、図3?図6、刊行物3の図7等、多層基板表面に形成したパッド等は、その保護等のために、熱硬化性樹脂等でパッドの周囲外縁を覆うように、その内側、即ち本願明細書の図1,2(図1,3)における中央部に相当する部位を露出して覆うこと自体は周知の事項であるから、上記本願明細書の説明のように、「金属パッド層の主表面が、レジスト層に被覆される被覆領域と、該被覆領域を除く領域が表面露出した形の露出領域とからなるように、金属パッドの主表面上にレジスト層を形成」しさえすれば、「外力に対する応力が金属パッド層と絶縁体層との界面に集中することを緩和できる」のであるから、刊行物発明の各パッドとソルダーレジストの被覆(開口)関係、或いは、少なくとも刊行物発明に周知の被覆関係を採用することで、本願明細書に言う「外力に対する応力が金属パッド層と絶縁体層との界面に集中することを緩和」しているものである。
したがって、相違点2及び4にかかる構成は、刊行物1発明においても既に有しているか、或いは刊行物2,3記載の周知の技術を採用することで、当業者が容易に想到し得たものである。

相違点3について
「前記第1絶縁層に埋め込まれた前記第1レベルの金属層であって複数の前記第1金属パッドの間に位置する部分が接地導体層や電源層としての配線パターン」についてみると、最外側の絶縁層に埋め込まれ、その上をソルダーレジスト等の保護層等に覆われた配線パターンが設けられることは、刊行物2(図2、図3等)、刊行物4(図1等)に図示されているように周知の技術であり、また、信号線の周囲に接地導体線或いは電源線を配置することも刊行物5(【0088】及び図6,7等)、刊行物6(図5および【0019】等)に記載されているように周知の技術手段であるから、同一の多層基板の技術分野に属する、刊行物発明においても、絶縁層で覆われた接地導体層や電源層としての配線パターンを設けることは、必要に応じて適宜なし得た設計的事項にすぎない。

相違点5について
半導体素子を搭載した多層基板を他の製品に搭載する場合、他の製品として、マザーボード或いは配線基板等はよく知られたものであり、本願補正発明において、マザーボード或いは配線基板への搭載のための格別な構成も見受けられない。

そして、本願補正発明において、上記相違点に係る構成による相乗的な格別顕著な作用・効果も見いだせない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?6に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.まとめ
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年11月 3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?請求項3に係る発明は、平成22年 7月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 各々、互いに対向する第1および第2面、および、互いに対向する第3および第4面により規定される、第1および第3レベルの金属層を有し、
前記第1および第3レベルの金属層間に介在する第1絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第2、第3および第4面が前記第1絶縁層と接触し、前記第1面が前記第1絶縁層の表面と実質的に平坦な面を形成するように、前記第1レベルの金属層が前記第1絶縁層に部分的に埋め込まれ、前記第3レベルの金属層の前記第1面が前記第1絶縁層に接触し、前記第2ないし前記第4面が前記第1絶縁層に接触しないように前記第3レベルの金属層が前記第1絶縁層上に形成され、
前記第1レベルの金属層と前記第3レベルの金属層との間に配置され、前記第1絶縁層内に埋め込まれた第2レベルの金属層を有し、
前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出する第1開口を有する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層を有し、
前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部が表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッドとなり、
前記第1絶縁層に埋め込まれた前記第1レベルの金属層であって複数の前記第1金属パッドの間に位置する部分が接地導体層や電源層としての配線パターンとされ、
前記第3レベルの金属層の前記第2ないし第4面と前記第1絶縁層の一部を覆うように形成される第3絶縁層を有し、
前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を表面露出する第2開口を有し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部が、マザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドであること、
を特徴とする多層配線基板。」

2.引用刊行物及びその摘記事項
当審による平成22年 6月 1日付けの最初の拒絶理由通知書に引用された本願の出願前に頒布された刊行物及びその摘記事項は、上記「第2 [2]2.1)刊行物及びその摘記事項」及び同「2.2)当審の判断」に記載されたとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2.[2]2.2)当審の判断」で検討した本願補正発明において、
1)第2絶縁層に関する、
「前記第1絶縁層上を含む前記平坦な面を覆うように形成され、その平坦な面の中に埋め込まれた前記第1レベルの金属層と前記第1絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第1レベルの金属層の前記第1面の外縁部を覆うとともに、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出して第1開口を形成する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層」との構成において、下線部の限定事項を省いて、
「前記平坦な面を覆うように形成され、前記第1レベルの金属層の前記第1面の一部を露出する第1開口を有する熱硬化性樹脂からなる第2絶縁層」とし、
2)第1金属パッドに関する、
「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部を、中央部として表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッド」との構成において、下線部の限定事項を省いて、
「前記第1レベルの金属層の前記第1面の前記一部が表面露出した電子部品を搭載するための搭載部となす複数の第1金属パッド」とし、
3)第3絶縁層及び第2金属パッドに関する、
「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層と前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層との界面に集中する応力を緩和するように前記第3レベルの金属層の前記第2面の外縁部を覆うとともに、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を露出して第2開口を形成し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部を中央部として表面露出したマザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッドを形成するもの」との構成において、下線部の限定事項を省いて、
「前記第3絶縁層は、前記第3レベルの金属層の前記第2面の一部を表面露出する第2開口を有し、前記第3レベルの金属層の前記第2面の前記一部が、マザーボードや他の配線基板に搭載するための搭載部となす複数の第2金属パッド」とし、
それぞれの各限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の特定発明事項を全て含み、さらに他の構成要件である上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 [2]2.2)イ.対比・判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?6に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明についても、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?6に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?6に記載された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2及び請求項3に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-28 
結審通知日 2011-01-31 
審決日 2011-02-14 
出願番号 特願2002-270323(P2002-270323)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子菅野 智子  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 加藤 浩一
鈴木 正紀
発明の名称 多層配線基板  
代理人 菅原 正倫  
代理人 菅原 正倫  

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