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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1235190 |
審判番号 | 不服2009-138 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-05 |
確定日 | 2011-04-11 |
事件の表示 | 特願2000-589005号「改良加熱用の電磁気照射チャンバー」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月22日国際公開、WO00/36879、平成14年10月 2日国内公表、特表2002-532864号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成10年12月16日を国際出願日とする出願であって、平成20年10月2日に拒絶査定がなされ、これに対して平成21年1月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成21年1月9日に手続補正がなされたものである。 第2.平成21年1月9日受付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年1月9日受付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「2個の実質的に平行な面と、2個の実質的に平行な面に対して垂直な楕円形端部を有し、内部キャビティを形成するカーブした外部導電性面、 電磁界を内部キャビティに運ぶため楕円形端部に向かい合う第1開口と、 内部キャビティの焦点領域に電磁界を方向づけるカーブした外部導電性面、そして、内部キャビティの焦点領域と一列に並ぶ、カーブした外部導電性面側を介する第2開口を具備する、 物質加熱用電磁照射チャンバー。」と補正された。 上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「外部導電性面」に対して、「カーブした」ものであることを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び、解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載内容 刊行物:特開平2-265149号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物(以下「引用刊行物」という。)には、「マイクロ波加熱装置」に関して以下の記載がある。 ア.「矩形導波管の一端が短絡器にて閉鎖され、該導波管内に発生した定在波の中央部最大電場強度部に被処理物が置かれて加熱処理されるマイクロ波加熱装置において、上記短絡器は、その短絡面が中央突出部から両側に対称に凹曲面をなす導体からなることを特徴とするマイクロ波加熱装置。」(特許請求の範囲) イ.「[発明の構成] (課題を解決するための手段) この発明は、導波管の一端を閉鎖する短絡器が導体からなり、その短絡面は中央突出部から両側に対称に凹曲面をなしているマイクロ波加熱装置である。 (作用) この発明によれば、被処理物の位置に短絡器による反射波を集中することが出来、その結果、被処理物の位置の電場強度をより一層高めることが出来る。従って、加熱効率が向上する。」(公報第2頁左上欄第10?20行の記載)(下線部は当審にて加入。以下同様。) ウ.「(実施例) 以下、図面を参照して、この発明の一実施例を詳細に説明する。 この発明によるマイクロ波加熱装置は、第1図及び第2図に示すように構成され、導波管11の一端の図示しないマイクロ波発振器側11aとは反対側11bが短絡器14にて電気的に閉鎖されている。この短絡器14は導体からなっているが、図から明らかなように、その短絡面15は中央突出部16aから両側の電界面壁13の方に互いに対称に凹曲面16bで形成されている。この凹曲面16bは好ましくは放物面であり、磁界面壁12に垂直な面になっている。 更に、この短絡器14には支持棒17が取付けられ、この支持棒17を駆動して、短絡器14を矢印F方向に導波管11内で移動出来るように構成されている。つまり、短絡器14は導波管11の長手方向に移動可能になっている。 尚、符号18は被処理物であり、導波管11内に発生した定在波の最大電場強度部となる中央に置かれて加熱処理される。そのため、導波管11の相対向する幅広面即ち、電界面壁13の中央に、それぞれ透孔19が設けられ、細長物の被処理物18を幅広面中央に挿入或いは搬送出来るようになっている。」(公報第2頁右上欄第1行?左下欄第5行の記載) エ.「そこで、この発明のように2つの平面波を、2つの放物面を形成した短絡面3を用いることにより、はぼ中央の被処理物の位置に大部分を集中することが出来る。そのため、僅かな損失を伴うが、従来例よりは格段に高効率である。このに部分に被処理物を置いているので、マイクロ波のほぼ全部が、少なくとも1回は被処理物に入射することとなり、効率の向上が期待出来る。 尚、高周波電界の方向は導波管の幅広面に対して垂直であり、従って被処理物と平行な方向であり、均一加熱作用がある。 又、上記実施例と同様の考え方で、他モード及び或る特定の場所に電場を集中せしめたり、希望の電場分布を作ることが可能である(例えば、TE_(20)モードを用いる、曲面を球面とするなど)。 更に、誘電体損失係数の大きな被処理物を加熱処理する場合、マイクロ波発振器に近い側が加熱処理され易い傾向にあったが、これも回避可能である。」(公報第2頁右下欄第1?19行) オ.「[発明の効果] この発明によれば、短絡器は、その短絡面か中央突出部から両側に対称な凹曲面をなす導体からなっているので、被処理物の位置に短絡器による反射波を集中出来て、電場強度をより一層高めることが出来る。従って、加熱効率の向上を図ることが出来る。」(公報第3頁左上欄第3?9行の記載) カ.第1図、第2図には、2個の平行な磁界面壁12及び、それらに対して垂直な、導波管11の端部に設けられた短絡器14における凹曲面16bが示されている。 また、第1図には、磁界面壁12に透孔19が設けられていること、そして、被処理物18と透孔19がほぼ同じ位置にあること、さらに、導波管11の内部と短絡器14により内部空間が形成されていることが示されている。 以上の記載ア.?キ.及び、カ.における第1図、第2図に示された事項を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「2個の平行な磁界面壁12と、2個の平行な磁界面壁12に対して垂直な、導波管11端部に設けられた、導体からなる短絡器14における放物面からなる凹曲面16bを有し、内部空間を形成する導波管11及び、導体からなる短絡器14における放物面からなる凹曲面16b、マイクロ波を内部空間に運ぶため放物面からなる凹曲面16bに向かい合う導波管11の一端のマイクロ波発振器側11aと、内部空間のほぼ中央の被処理物18の位置に、マイクロ波の反射波を集中するための導体からなる短絡器14、そして、該マイクロ波の反射波が集中する位置における磁気面壁12に透孔19を備えたマイクロ波加熱装置。」 3.発明の対比 本願補正発明と、引用発明とを対比すると、引用発明における「2個の平行な磁界面壁12」は、本願補正発明の「2個の実質的に平行な面」に、 そして、引用発明における「内部空間を形成する導波管11及び、導体からなる短絡器14における放物面からなる凹曲面16b」につき、導波管11は、技術常識から導電性のものであり、かつ、導体からなる短絡器14が放物面からなる凹曲面16bを備えるものであるから、本願補正発明の「内部キャビティを形成するカーブした外部導電性面」に相当する。 さらに、引用発明における「マイクロ波」は、本願補正発明の「電磁界」に、引用発明における「導波管11の一端のマイクロ波発振器側11a」は、マイクロ波を内部空間に導入するために端部である放物面からなる凹曲面16bと向かい合うように設けられたものであるから、本願補正発明の「第1開口」に、引用発明における「内部空間のほぼ中央の被処理物18の位置に、マイクロ波の反射波を集中するための導体からなる短絡器14」は、マイクロ波の反射波が集中するということは、焦点領域を形成することに他ならないから、本願補正発明における「内部キャビティの焦点領域に電磁界を方向づけるカーブした外部導電性面」に、引用発明における「マイクロ波の反射波が集中する位置における磁気面壁12に透孔19」を設けたことは、本願補正発明の「内部キャビティの焦点領域と一列に並ぶ、カーブした外部導電性面側を介する第2開口」を設けたことにそれぞれ相当する。 そして、引用発明における「導波管11端部に設けられた、導体からなる短絡器14における放物面からなる凹曲面16b」と、本願補正発明における「楕円形端部」とは、「凹曲面を備えた端部」である点において共通する。 また、引用発明においては、内部空間内において被処理物18をマイクロ波により加熱するものであるから、引用発明も本願補正発明と同様に、「物質加熱用電磁照射チャンバ-」であるといえる。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「2個の実質的に平行な面と、2個の実質的に平行な面に対して垂直な凹曲面を備えた端部を有し、内部キャビティを形成するカーブした外部導電性面、電磁界を内部キャビティに運ぶため凹曲面を備えた端部に向かい合う第1開口と、内部キャビティの焦点領域に電磁界を方向づけるカーブした外部導電性面、そして、内部キャビティの焦点領域と一列に並ぶ、カーブした外部導電性面側を介する第2開口を具備する、物質加熱用電磁照射チャンバー。」 [相違点] 凹曲面を備えた端部につき、本願補正発明においては、凹曲面が楕円形のものからなるのに対し、引用発明においては、凹曲面が放物面から形成されたものである点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 電磁波を集束するための凹曲面を形成するにあたって、凹曲面を楕円形状とすることは、本願出願前において周知(例えば、特開昭52-92940号公報,第2図における反射面13,公報第1頁右欄第1?2行,第1頁右欄17行?第2頁左上欄第1行の記載 / 特開平6-87663号公報,図2(b)における楕円反射筒21,段落【0014】?【0015】の記載参照。以下「周知の技術事項」という。)であるから、引用発明における凹曲面を備えた端部を、加熱に用いる電磁波の種類や、所望の電磁波の分布形態などに応じて、放物面からなるものに代えて、楕円形状を有するものを選択することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明により得られる効果も、引用発明及び、周知の技術事項に基づいて、当業者であれば予測できた範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができない。 5.結び 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本件補正は上述のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年3月6日受付けの手続補正により補正された以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という。) 「2個の実質的に平行な面と、2個の実質的に平行な面に対して垂直な 楕円形端部を有し、内部キャビティを形成する外部導電性面、 電磁界を内部キャビティに運ぶため楕円形端部に向かい合う第1開口と、 内部キャビティの焦点領域に電磁界を方向づける外部導電性面、そして、 内部キャビティの焦点領域と一列に並ぶ、外部導電性面側を介する第2開口を具備する、 物質加熱用電磁照射チャンバー。」 2.引用刊行物とその記載内容 引用刊行物は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。 3.発明の対比・判断 本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「第2.1.」に記載した限定を省いたものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用発明及び、周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、当業者が引用発明及び、周知の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。 4.結び 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び、周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-16 |
結審通知日 | 2010-11-19 |
審決日 | 2010-11-30 |
出願番号 | 特願2000-589005(P2000-589005) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 結城 健太郎 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
松下 聡 青木 良憲 |
発明の名称 | 改良加熱用の電磁気照射チャンバー |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 岩本 行夫 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 吉田 裕 |