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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1235195
審判番号 不服2009-16142  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-02 
確定日 2011-04-11 
事件の表示 特願2003-107170「反射屈折型の結像光学系、露光装置、および露光方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-317534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)4月11日の出願(特願2003-107170号)であって、平成21年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年5月19日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の結像光学系において、
前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記第1中間像からの光束に基づいて第2中間像を形成するための第2結像光学系と、少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記第2中間像からの光束に基づいて第3中間像を形成するための第3結像光学系と、前記第3中間像からの光束に基づいて最終像を前記第2面上に形成するための屈折型の第4結像光学系とを備え、
前記結像光学系は、前記第2面上において前記第4結像光学系の光軸を含まない所定形状の有効結像領域を有することを特徴とする結像光学系。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-372668号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は反射屈折光学系および該光学系を備えた露光装置に関し、特に半導体素子などをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に最適な高解像の反射屈折型の投影光学系に関する。」

「【0018】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明の第1発明では、少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第1面からの光に基づいて前記第1面の第1中間像を形成するための第1結像光学系と、
少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、前記第1結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の第2中間像を形成するための第2結像光学系と、
前記第2結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の最終像を第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系とを備えていることを特徴とする反射屈折光学系を提供する。」

「【0023】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の反射屈折光学系の基本的な構成を説明するための図である。図1では、本発明の反射屈折光学系が走査露光型の露光装置の投影光学系に適用されている。図1に示すように、本発明の反射屈折光学系は、第1面に配置された投影原版としてのレチクルRのパターンの第1中間像を形成する第1結像光学系G1を備えている。なお、第1結像光学系G1は、少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡、すなわち第1平面反射鏡M1および第2凹面反射鏡CM2を有する。第1結像光学系G1では、レチクルRからの光が第1平面反射鏡M1および第2凹面反射鏡CM2を介して第1中間像を形成する。
【0024】第1結像光学系G1を介した光は、第2結像光学系G2を介して、レチクルRのパターンの第2中間像を形成する。第2結像光学系G2は、少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡、すなわち第3凹面反射鏡CM3および第4平面反射鏡M4を有する。したがって、第2結像光学系G2では、第1結像光学系G1を介した光が第3凹面反射鏡CM3および第4平面反射鏡M4を介して第2中間像を形成する。
【0025】第2結像光学系G2を介した光は、反射鏡を含むことなく複数の屈折光学部材を有する屈折型の第3結像光学系G3を介して、レチクルRのパターンの最終像を第2面に配置された感光性基板としてのウェハW上に形成する。本発明の反射屈折光学系を投影光学系として搭載した露光装置では、レチクルRおよびウェハWを所定の方向(スキャン方向)に沿って移動させながら、矩形状の照明領域IRおよび実効露光領域ERに基づく走査露光を行う。
【0026】具体的な態様によれば、第1結像光学系G1の第1平面反射鏡M1を除くすべての光学部材および第2結像光学系G2の第4平面反射鏡M4を除くすべての光学部材は、直線状に延びた単一の第1光軸AX1に沿って配置されている。また、第3結像光学系G3のすべての光学部材は、第1光軸AX1と直交するように直線状に延びた単一の第2光軸AX2に沿って配置されている。第1平面反射鏡M1と第4平面反射鏡M4とを表裏面鏡として一体的に形成することもできる。第1平面反射鏡M1と第4平面反射鏡M4とを一体に作成すると、表裏面の精度が良く製造しやすい。また、第1平面反射鏡M1と第4平面反射鏡M4とを所定位置に配置する際には角度調整が必要であるが、一体に作成されていると、第1平面反射鏡M1が所定角度からマイナス方向に誤差を有して配置されても第4平面反射鏡M4が所定角度からプラス方向に誤差を打ち消すことになり、後述する第3結像光学系G3に所定角度で入射させることができる。」

「【0031】以上のように、本発明の反射屈折光学系では、第1結像光学系G1および第2結像光学系G2がともに少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第3結像光学系G3が屈折型の光学系を構成している。したがって、典型的な態様によれば、第1結像光学系G1および第2結像光学系G2は第1光軸AX1に沿って配置され、第3結像光学系G3は第1光軸AX1と直交する第2光軸AX2に沿って配置される。また、レチクルRおよびウェハWは、第2光軸AX2に沿って配置されることになる。
【0032】このように、本発明では、レチクルRおよびウェハWが配置される第2光軸AX2に沿って配置されるのは第3結像光学系G3だけであって、第1結像光学系G1および第2結像光学系G2は第2光軸AX2と直交する第1光軸AX1に沿って配置される。したがって、本発明では、レチクルRとウェハWとの間の距離すなわち物体面と像面との距離を小さく設定することができ、ひいては高性能で高精度な光学系を実現することができる。特に、第1光軸AX1と第2光軸AX2とを直交させることにより、光軸相互の調整作業が容易になり、高性能で高精度な光学系を実現することが容易になる。」

「【図1】(反射屈折光学系の基本的な構成を説明するための図)



「【図3】(ウェハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と基準光軸との位置関係を示す図)



2 引用例1に記載された発明の認定
【図1】及び【図3】から、ウエハ上において第3結像光学系の光軸上を含まない領域にレチクルRのパターンの最終像を形成していることが明らかであるから、上記記載(図面の記載も含む)から、引用例1には、
「第1面に配置された投影原型としてのレチクルRのパターンの最終像を第2面に配置された感光性基板としてのウェハW上に形成する反射屈折光学系において、
少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第1面からの光に基づいて前記第1面の第1中間像を形成するための第1結像光学系と、
少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、前記第1結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の第2中間像を形成するための第2結像光学系と、
前記第2結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の最終像を第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系とを備えており、
反射屈折光学系は、第2面に配置されたウエハ上において第3結像光学系の光軸上を含まない領域にレチクルRのパターンの最終像を形成している反射屈折光学系。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-151397号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「第3 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断」の「4 相違点についての検討・判断」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0023】次に、本発明の投影光学系の第1実施形態について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の投影光学系PLの第1実施形態に係る概略構成図である。
【0024】図2に示すように、投影光学系PLは、第1面に配置されたレチクルRのパターンの第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系G1と、凹面反射鏡CMと2つの負レンズ3とから構成されて第1中間像の像である第2中間像(第1中間像のほぼ等倍像であってレチクルパターンの2次像)を形成するための第2結像光学系G2と、第2中間像からの光に基づいて第2面に配置されたウエハW上にレチクルパターンの最終像(レチクルパターンの縮小像)を形成するための屈折型の第3結像光学系G3とを備えている。
【0025】第1結像光学系G1と第2結像光学系G2との間の光路中において第1中間像の形成位置の近傍には、第1結像光学系G1からの光を第2結像光学系G2に向かって90°だけ偏向するための光路折り曲げ用の反射面(第1光路折り曲げ鏡)1が配置されている。また、第2結像光学系G2と第3結像光学系G3との間の光路中において第2中間像の形成位置の近傍には、第2結像光学系G2からの光を第3結像光学系G3に向かって90°だけ偏向するための反射面(第2光路折り曲げ鏡)2が配置されている。第1中間像および第2中間像は、第1光路折り曲げ鏡1と第2結像光学系G2との間の光路中および第2結像光学系G2と第2光路折り曲げ鏡2との間の光路中にそれぞれ形成される。
【0026】ここで、第1光路折り曲げ鏡1の反射面と第2光路折り曲げ鏡2の反射面とは、空間的に重複しないように位置決めされている。第3結像光学系G3は、第2中間像からの光束に基づいて、レチクルRのパターンの縮小像(第2中間像の像であって反射屈折光学系の最終像)を、第2面に配置された感光性基板としてのウエハW上に形成する。
【0027】第1結像光学系G1は直線状に延びた光軸AX1を有し、第3結像光学系G3は直線状に延びた光軸AX3を有し、光軸AX1と光軸AX3とは共通の単一光軸である基準光軸AXと一致するように設定されている。なお、基準光軸AXは、重力方向(すなわち鉛直方向)に沿って位置決めされている。その結果、レチクルRおよびウエハWは、重力方向と直交する面すなわち水平面に沿って互いに平行に配置されている。加えて、第1結像光学系G1を構成するすべてのレンズおよび第3結像光学系G3を構成するすべてのレンズも、基準光軸AX上において水平面に沿って配置されている。
【0028】一方、第2結像光学系G2も直線状に延びた光軸AX2を有し、この光軸AX2は基準光軸AXと直交するように設定されている。さらに、第1光路折り曲げ鏡1および第2光路折り曲げ鏡2はともに平面状の反射面を有し、2つの反射面を有する1つの光学部材(1つの光路折り曲げ鏡FM)として一体的に構成されている。この2つの反射面の交線(厳密にはその仮想延長面の交線)が第1結像光学系G1のAX1、第2結像光学系G2のAX2、および第3結像光学系G3のAX3と一点で交わるように設定されている。なお、第1光路折り曲げ鏡1および第2光路折り曲げ鏡2がともに表面反射鏡として構成されている。」

「【図2】(投影光学系の構成図)



第3 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 対比
ここで、本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「第1面に配置された投影原型としてのレチクルRのパターンの最終像を第2面に配置された感光性基板としてのウェハW上に形成する反射屈折光学系」が、本願発明の「第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の結像光学系」に相当する。

次に、「結像光学系」の数え方(順序)について、便宜上、後側から数えることとし、また、本願発明の「第1結像光学系」及び「第2結像光学系」を合わせて1つの結像光学系として数えることとすると、引用発明の「第1結像光学系」と本願発明の「第1結像光学系」及び「第2結像光学系」は「最後から3番目の結像光学系」(以下「後3結像光学系」という。)である点で一致し、引用発明の「第2結像光学系」と本願発明の「第3結像光学系」は「最後から2番目の結像光学系」(以下「後2結像光学系」という。)である点で一致し、引用発明の「第3結像光学系」と本願発明の「第4結像光学系」は「最後の結像光学系」(以下「最後結像光学系」という。)である点で一致する。
同様に、「中間像」の数え方(順序)についても、便宜上、後側から数えることとすると、本願発明の「第1中間像」は「最後から3番目の中間像」(以下「後3中間像」という。)となり、引用発明の「第1中間像」と本願発明の「第2中間像」は「最後から2番目の中間像」(以下「後2中間像」という。)である点で一致し、引用発明の「第2中間像」と本願発明の「第3中間像」は「最後の中間像」(以下「最後中間像」という。)である点で一致する。

すると、引用発明の「少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第1面からの光に基づいて前記第1面の第1中間像を形成するための第1結像光学系」と、本願発明の「前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系」及び「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記第1中間像からの光束に基づいて第2中間像を形成するための第2結像光学系」とは、「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み第1面からの光束に基づいて後2中間像を形成するための後3結像光学系」である点で一致する。

また、引用発明の「少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、前記第1結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の第2中間像を形成するための第2結像光学系」と本願発明の「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記第2中間像からの光束に基づいて第3中間像を形成するための第3結像光学系」とは、「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記後2中間像からの光束に基づいて最後中間像を形成するための後2結像光学系」である点で一致する。

また、引用発明の「前記第2結像光学系を介した光に基づいて前記第1面の最終像を第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系」と本願発明の「前記第3中間像からの光束に基づいて最終像を前記第2面上に形成するための屈折型の第4結像光学系」とは、「前記最後中間像からの光束に基づいて最終像を前記第2面上に形成するための屈折型の最後結像光学系」である点で一致する。

引用発明の「反射屈折光学系は、第2面に配置されたウエハ上において第3結像光学系の光軸上を含まない領域にレチクルRのパターンの最終像を形成している」ことと、本願発明の「前記結像光学系は、前記第2面上において前記第4結像光学系の光軸を含まない所定形状の有効結像領域を有する」こととは、「前記結像光学系は、前記第2面上において前記最後結像光学系の光軸を含まない所定形状の有効結像領域を有する」点で一致する。

2 本願発明と引用発明の一致点及び相違点
したがって、本願発明と引用発明は、
「第1面の像を第2面上に形成する反射屈折型の結像光学系において、
少なくとも1つの凹面反射鏡を含み第1面からの光束に基づいて後2中間像を形成するための後3結像光学系と、少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記後2中間像からの光束に基づいて最後中間像を形成するための後2結像光学系と、前記最後中間像からの光束に基づいて最終像を前記第2面上に形成するための屈折型の最後結像光学系とを備え、
前記結像光学系は、前記第2面上において前記最後結像光学系の光軸を含まない所定形状の有効結像領域を有する結像光学系。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

<本願発明と引用発明の相違点>
「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み第1面からの光束に基づいて後2中間像を形成するための後3結像光学系」が、本願発明は、「前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系」及び「少なくとも1つの凹面反射鏡を含み前記第1中間像からの光束に基づいて第2中間像を形成するための第2結像光学系」からなるのに対し、引用発明は「少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第1面からの光に基づいて前記第1面の第1中間像を形成するための第1結像光学系」である点。

3 相違点についての検討・判断
(1)次に、上記相違点について検討する。
引用例2には、第1面(レチクル)の像を第2面(ウエハ)上に形成する反射屈折型の結像光学系であって、レチクルR(第1面)とウエハW(第2面)が平行でレチクルR(第1面)及びウエハW(第2面)に垂直な方向と直交する方向に光を導いて反射結像光学系G2で中間結像させる結像光学系において、反射結像光学系G2の前に屈折型の結像光学系G1によって中間像を形成する結像光学系が記載されている。
結像光学系の収差の補正等の光学性能の向上の手法として、既存の結像光学系に対してレンズの枚数を増やし設計の自由度を高めて収差をさらに補正する等、光学性能をさらに向上させようと試みることは通常行われていることであるから、引用発明においても、レンズの枚数をより増すように設計することができるように、「少なくとも1つの凹面反射鏡と少なくとも1つの平面反射鏡とを有し、第1面からの光に基づいて前記第1面の第1中間像を形成するための第1結像光学系」に換えて、引用例2に記載されている「反射結像光学系G2」及び「反射結像光学系G2の前に屈折型の結像光学系によって中間像を形成する結像光学系G1」の構造を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

なお、この点、請求人は、審判請求書において、
「引用例1の公報の段落[0032]には、「このように、本発明では、レチクルRおよびウェハWが配置される第2光軸AX2に沿って配置されるのは第3結像光学系G3だけであって、第1結像光学系G1および第2結像光学系G2は第2光軸AX2と直交する第1光軸AX1に沿って配置される。したがって、本発明では、レチクルRとウェハWとの間の距離すなわち物体面と像面との距離を小さく設定することができ、ひいては高性能で高精度な光学系を実現することができる。特に、第1光軸AX1と第2光軸AX2とを直交させることにより、光軸相互の調整作業が容易になり、高性能で高精度な光学系を実現することが容易になる。」と記載されている。
上述の段落[0032]の記載によれば、引用例1の発明では、物体面と像面との距離を小さく設定することにより高性能で高精度な光学系を実現するという引用例1の目的を達成するために、レチクルおよびウェハが配置される光軸AX2に沿って1つの結像光学系(第3結像光学系G3)のみを配置している。したがって、第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系を引用例1の光学系に追加することは、引用例1の目的に反することである。すなわち、上述の段落[0032]の記載は、引用例1の光学系において第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系を追加するという技術的着想を阻害している。このように、引用例1が第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系の追加を自ら阻害している以上、『引用例1に記載の結像光学系において、上記引用例2又は3に記載の第1結像光学系を備える構成とすること』は、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 」
と主張する。
しかしながら、まず、第1に、引用例1において「物体面と像面との距離を小さく設定する」ことを実現することができたのは、「第1結像光学系G1および第2結像光学系G2は第2光軸AX2と直交する第1光軸AX1に沿って配置される」という構成を採用したことによるものであり、「レチクルRおよびウェハWが配置される第2光軸AX2に沿って配置されるのは第3結像光学系G3だけ」となったのは、上記の構成を採用した結果生じたことであるといえる。すなわち、「レチクルRおよびウェハWが配置される第2光軸AX2に沿って配置されるのは第3結像光学系G3だけ」という構成は、「物体面と像面との距離を小さく設定する」ための手段(必須の構成)ではないといえるから、引用例1に記載された発明において、第2光軸AX2に沿って他の結像光学系を配置することが引用発明を阻害するとまではいえない。
第2に、「物体面と像面との距離を小さく設定する」という装置の小型化は常に追求される課題である一方で、要請される性能等に応じて装置の構成要素を増やすことも必要に応じて行われることである。どちらを優先させるかは、装置の目的やユーザの要請に応じて適宜選択し得ることであるから、引用発明においても、小型化という特性を犠牲にしても、他の要請に応じて構成要素を増やす(追加する)ことは想定し得ることである。すなわち、引用発明が小型化を目的としているとしても、新たな結像光学系を取り入れることが阻害要因であるとまではいえない。
したがって、上記の請求人の主張は、採用することができない。

(2)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 結言
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-16 
出願番号 特願2003-107170(P2003-107170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 岡田 吉美
森林 克郎
発明の名称 反射屈折型の結像光学系、露光装置、および露光方法  
代理人 山口 孝雄  

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