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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1235262
審判番号 不服2009-18978  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-06 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2004- 44058「床材」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-232828〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年2月20日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年1月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
少なくともポリオレフィン系樹脂とロジン類の金属塩が含まれる熱可塑性樹脂と平均粒径が10?150μmである木質系充填剤とからなる、発泡倍率が2倍を越える木質樹脂発泡形成体と、該木質樹脂発泡成形体の表面に、前記熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シートを積層してなる床材であって、
前記ロジン類の金属塩が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1?20重量部配合されてなり、
前記木質系充填剤が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して30?150重量部配合されてなることを特徴とする床材。」(以下、「本願発明」という。)

2 刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開2002-120347号公報
刊行物2:特開平7-330967号公報
刊行物3:特開2002-294080号公報

当審の拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】熱可塑性樹脂と木質系充填剤を含有し、且つ発泡している木質樹脂発泡成形体の表面に、前記木質樹脂発泡成形体に含有される熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シートが積層されてなることを特徴とする化粧材。
・・・
【請求項3】前記木質系充填剤の平均粒径が1?200μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材。
【請求項4】前記木質系充填剤を含有する部分における前記木質系充填剤の配合比率が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して10?500重量部であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の化粧材。
【請求項5】前記木質樹脂発泡成形体は、発泡している部分を一部に有するか、もしくは全体が発泡していることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の化粧材。
【請求項6】前記木質樹脂発泡成形体の発泡倍率が1.1?10.0倍であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の化粧材。
【請求項7】前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の化粧材。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、床材、壁材、天井材等の建築内装材、建具、家電品の表面材等に用いられる化粧材に関するものである。」
(1c)「【0018】
【発明の実施の態様】本発明の化粧材は、図1に示す様に、熱可塑性樹脂3と木質系充填剤4を含有し、且つ発泡(内部に気泡5が存在)している木質樹脂発泡成形体2の表面に、前記木質樹脂発泡成形体2に含有される熱可塑性樹脂3と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シート1が積層されてなることを特徴とする化粧材である。」
(1d)「【0021】なお、木質樹脂発泡成形体2の発泡には上記の他、断熱性が高まることにより冷たい感触や結露などが防止されることや、適度の弾性(クッション性)が付与されることにより衝突時の安全性や床材としての歩行感などが向上すること、軽量化により施工性や経済性が向上することなどの利点もある。」
(1e)「【0023】本発明において使用する木質系充填剤4の素材としては、基本的には天然の木材を主原料として製造された粉状、粒状ないし短繊維状の充填剤であれば特に制限されるものではなく・・・一般的には、木材をカッターミルなどによって破断し・・・粉砕して微粉状にしたもの(木粉)などを好適に用いることができる。
【0024】なお、木質系充填剤4の配合量を熱可塑性樹脂100重量部に対して100重量部を超えるような高配合とする場合にあっては、特に樹脂中の分散性が重要であり、その観点から、比較的繊毛の少ない粒状の木質系充填剤4を使用することが好ましい。・・・
【0025】木質系充填剤4の平均粒径は特に制限されるものではないが、一般的には1?200μm、より好ましくは5?100μmであることが望ましい。平均粒径が1μm未満のものは取り扱いが困難である上に、特に木質系充填剤4の配合量が多い場合には、樹脂中への分散状態が悪いと機械強度の低下の原因となる場合がある。また一方、200μmより大きいと、成形品の均質性、平面性、機械的強度が低下する原因となりやすいからである。」
(1f)「【0026】木質系充填剤4の配合量については、本発明において特に制限されるものではないが、一般的には熱可塑性樹脂3の100重量部に対して10重量部から500重量部程度の範囲内で適宜選択が可能であるが、最適な配合量は化粧材の用途により異なるので、用途に合わせて適宜設計することが望ましい。
【0027】具体的には、例えば熱可塑性樹脂3としてポリオレフィン系樹脂を使用した場合、平板状に圧縮成形法等によって成形したのち、切削加工やVカット加工などを行う用途については、切削性等の後加工性に優れたものを得るために、木質系充填剤4の配合量は、熱可塑性樹脂3の100重量部に対して50?500重量部、より好ましくは100?500重量部とすることが望ましい。これに対し、例えば異形押出法や射出成形法などによって成形される用途については、成形性や均質性を高めるために、木質系充填剤4は熱可塑性樹脂3の100重量部に対して10?200重量部、より好ましくは15?150重量部とすることが望ましい。」
(1g)「【0028】本発明において木質樹脂発泡成形体2に使用する熱可塑性樹脂3としては、例えばポリオレフィン系樹脂、・・・等、従来公知の各種の熱可塑性樹脂から適宜選択が可能であるが、・・・ポリオレフィン系樹脂を使用することが最も望ましい。」
(1h)「【0034】木質樹脂発泡成形体2の発泡倍率は、低過ぎると発泡による各種効果に乏しく、一方逆に高過ぎても、機械的強度が低下して化粧材に掛かる荷重や応力に耐えられなくなったり、表面強度が低下する結果化粧シートとの接着力が低下したりする場合があるので、用途にもよるが一般に概ね1.1?10.0倍、より好ましくは1.3?8.0倍の範囲内とすることが望ましい。」
(1i)「【0063】<実施例1>電子線架橋により長鎖分岐を持つ高溶融張力ポリプロピレン樹脂70重量部、マレイン酸変性したホモポリプロピレン樹脂30重量部、及び木材をカッターミルで破断し、これをボールミルにより粉砕して微粉状にした平均粒径20μmの木質系充填剤400重量部を2軸押出混練機によって混合、ペレット化して、木質樹脂組成物を作成した。この木質樹脂組成物をブタンガスによる物理発泡法にて4倍に発泡させつつ・・・直方体形状に成形し、さらに表面にコロナ放電処理をしてバージン品のポリオレフィン系木質樹脂発泡成形体を作成した。
【0064】一方、ランダムポリプロピレン樹脂に酸化鉄、酸化チタン等の顔料を配合して製膜した厚さ100μmの着色ポリプロピレン樹脂シートにウレタン系インキで木目印刷を施し、該印刷面にエクストルージョンラミネート法にてホモポリプロピレン樹脂を100μmの厚みでエンボス同時ラミネートし、その裏面にプライマーコート、表面にトップコートを施してポリオレフィン系樹脂製の化粧シートを作製した。
【0065】しかる後、前記ポリオレフィン系木質樹脂発泡成形体の表面にラッピング加工法にて前記ポリオレフィン系樹脂製化粧シートを貼り合わせて、バージン品の本発明の化粧材を作成した。」

上記の記載事項によれば、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「ポリオレフィン系樹脂が含まれる熱可塑性樹脂と平均粒径が1?200μmである木質系充填剤とからなる、発泡倍率が1.1?10.0倍の木質樹脂発泡成形体の表面に、前記熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シートが積層されてなる床材等に用いられる化粧材であって、
前記木質系充填剤が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して10?500重量部配合されてなる、床材等に用いられる化粧材。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

同じく、上記刊行物2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】ポリオレフィン100重量部と、
ロジン類の金属塩を主成分として含有する結晶核剤0.001?5重量部とからなることを特徴とするポリオレフィン組成物。
【請求項2】 前記ロジン類が、天然ロジン、変性ロジンおよびこれらの精製物からなる群より選ばれる少なくとも一種のロジン類である請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】 前記金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属塩である請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物。」
(2b)「【0025】本発明のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン100重量部とロジン類の金属塩を主成分として含有する結晶核剤0.001?5重量部、好ましくはポリオレフィン100重量部とロジン類の金属塩を主成分として含有する結晶核剤0.05?2重量部とから形成されている。前記のような組成のポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンが本来有する優れた特性を有し、かつ、結晶化速度が速い。このようなポリオレフィン組成物は、剛性、耐熱剛性などの機械的特性および/または透明性、表面平滑性などの光学的特性に優れた成形体を製造することができ、しかも経済的にも有利である。」
(2c)段落【0064】【表3】の実施例5?7、段落【0071】【表4】の実施例15?17には、ポリオレフィン組成物に、結晶核剤としてロジンMg塩又はNa塩を0.9重量部配合したことが記載されている。

同じく、上記刊行物3には、次の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】 (A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)植物性繊維5?150重量部、(C)ロジン系樹脂1?40重量部および(D)植物性油0?40重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】 (A)熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂および塩素系樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。」
(3b)「【0003】・・・、近年、木材の大量伐採などによる森林開発が地球環境に悪影響を及ぼしていることから、省資源、リサイクル、木材消費の低減などの要求が高まっている。このような社会的要望に応ずるべく、木材加工時に大量に排出される木片や木粉、更には古紙や古雑誌から生ずるパルプ等の植物性繊維を有効利用し、これら植物性繊維をプラスチックに混合した材料の開発が盛んとなっている。しかしながら、一般に植物性繊維とプラスチックの親和性は低く、植物性繊維をプラスチック中に分散させることは困難である。その結果、木材の有する加工性、強度、釘うち性、切削性や意匠性等の長所と、プラスチックの有する耐水性や耐候性等の長所を同時に満足する材料は得られ難い。」
(3c)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のごとき問題点を解決し、既述した木材およびプラスチックの各々の長所を有し、しかも環境問題を考慮した新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく、植物性繊維とプラスチックとの親和性を高める第三成分の添加につき鋭意検討した。その結果、当該第三成分としてロジン系樹脂を特定量用いることにより上記課題を悉く解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(3d)「【0009】植物性繊維(B)としては、微細パルプ、微粉砕された新聞紙や雑誌、ダンボール等の古紙および微粉砕されたレーヨン製不織布または棉布、および木片や木片を微粉砕した木粉等を使用することができる。これらの中でも安価で入手が容易な木片や木粉が好ましい。植物性繊維(B)は木片、木粉、紙、パルプ等を各種の粉砕機により粉砕処理することで製造される。」
(3e)「【0011】本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ロジン系樹脂(C)は、熱可塑性樹脂(A)と植物性繊維(B)との親和性や結合力を高める相溶化剤、可塑剤として機能する。しかもロジン系樹脂(C)は天然物由来の化合物であり、近年問題となっている環境ホルモンの疑いもない。かかるロジン系樹脂(C)を第三成分として使用することにより、植物性繊維を(B)熱可塑性樹脂(A)中に均一に分散させ、両者の親和性を高度に維持することができる。その結果(A)熱可塑性樹脂の強度を維持し、且つ植物性繊維(B)に由来する、木材の風合いを有する熱可塑性樹脂組成物を得ることが可能となる。また、本発明の熱可塑性樹脂を用いた発泡性樹脂成型品は、ロジン系樹脂(C)に由来し、平滑で優れた外観を有する。
【0012】ロジン系樹脂(C)としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどのロジン類、およびこれらロジン類に種々の安定化処理、エステル化処理、精製処理などを施したロジン誘導体を使用することが出来る。該安定化処理とは、上記ロジン類を水素化、不均化、脱水素化、重合処理等を施すことをいう。また、該エステル化処理とは、上記ロジン類、または安定化処理を施したロジン類を各種アルコールと反応させてロジンエステルとする処理のことをいう。また、該精製処理とは上記ロジン類から不ケン化物、夾雑物を取り除く処理のことをいい、蒸留や再結晶等の方法が挙げられる。・・・」
(3f)「【0017】ロジン系樹脂(C)の使用割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し1?40重量部程度、好ましくは5?25重量部である。使用量が下限値未満の場合は植物性繊維の分散性が劣る傾向にあり、上限値を超えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や強度が低下する傾向にある。」
(3g)「【0023】また、ロジン系樹脂(C)として常温で液状のものを使用する場合には、必ずしも植物性油(D)を使用する必要はない。」(段落)
(3h)「【0024】また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れた加工性を有するため、例えば(発泡)押し出し成型、・・・などの公知の方法により樹脂成型品を得ることができる。
【0025】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は各種方法で容易に成形でき、優れた熱的、機械的強度、および植物性繊維に由来する木質感に富む外観を有し、且つ熱可塑性樹脂成分に由来する耐水性や耐候性を有する優れた樹脂成型品を提供することができる。そして、当該成形品は・・・、建築材料、・・・などの各種用途に好適に使用できる。また、当該熱可塑性組成物の成分をなす植物性繊維、ロジン系樹脂、植物性油はいずれも天然由来の原材料であり、省資源、リサイクル性に富み、工業的に大変有用である。」

(2)対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「床材に用いられる化粧材」は、本願発明の「床材」に相当する。
したがって、両者は、
「少なくともポリオレフィン系樹脂が含まれる熱可塑性樹脂と木質系充填剤とからなる木質樹脂発泡形成体と、該木質樹脂発泡成形体の表面に、前記熱可塑性樹脂と同系の熱可塑性樹脂を主体とする化粧シートを積層してなる床材」の点で一致し、次の点で相違している。
[相違点1]
木質系充填剤の平均粒径が、本願発明では、10?150μmであるのに対し、刊行物1記載の発明では、1?200μmである点。
[相違点2]
木質樹脂発泡成形体の発泡倍率が、本願発明では、2倍を越えるのに対し、刊行物1記載の発明は、1.1?10.0倍である点。
[相違点3]
本願発明は、熱可塑性樹脂にロジン類の金属塩が含まれ、ロジン類の金属塩が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1?20重量部配合されてなるのに対し、刊行物1記載の発明は、ロジン類の金属塩を含んでいない点。
[相違点4]
木質系充填剤の熱可塑性樹脂100重量部に対する配合割合が、本願発明は、30?150重量部であるのに対し、刊行物1記載の発明は、10?500重量部であり、実施例では、400重量部である点。

(3)判断
ア 相違点1について
木質系充填剤の平均粒径について、本願明細書の段落には「1?200μm、好ましくは10?150μmであることが重要である。」と記載されており、特に10?150μmの範囲とした点に、臨界的意義は認められない。
一方、刊行物1には、平均粒径が1μm未満のものは、取り扱いが困難であること、200μmより大きいと、成形品の均質性、平面性、機械的強度が低下することが記載され、実施例には本願発明の範囲に含まれる平均粒径20μmのものを使用したことが記載されており(記載事項(1e)段落【0025】)、取り扱い性や、成形品に求められる特性に応じて、木質系充填剤の平均粒径を10?150μmとすることは、刊行物1記載の発明に基いて当業者が適宜なしうることである。

イ 相違点2について
刊行物1の記載事項(1d)、(1h)を参照すると、木質樹脂発泡成形体には、軽量化により施工性や経済性が向上することなどの利点があるが、木質樹脂発泡成形体の発泡倍率は、低過ぎると発泡による各種効果に乏しく、一方逆に高過ぎても、機械的強度が低下したり、表面強度が低下する場合があるので、用途にもよるが一般に概ね1.1?10.0倍、より好ましくは1.3?8.0倍の範囲内とすることが望ましいと記載され、実施例には4倍とすることが示されている(記載事項(1i))。
そして、刊行物1記載の発明では、機械的強度や、表面強度の低下しない程度の発泡倍率により、軽量化による施工性や経済性の向上を図ろうとしていることが明らかである。
そうすると、刊行物1記載の発明において、床材の使用場所や施工性に応じて、発泡倍率を2倍を越えるものとすることは、当業者が適宜なしうることである。

ウ 相違点3について
刊行物2には、木質系充填剤は含まれていないが、ポリオレフィン100重量部と、ロジン類の金属塩を主成分として含有する結晶核剤0.001?5重量部とから形成されているポリオレフィン組成物が記載され、実施例では0.9重量部配合することが記載され(記載事項(2c))、このような組成物は、剛性、耐熱剛性などの機械的特性および/または透明性、表面平滑性などの光学的特性に優れた成形体を製造することができ、しかも経済的にも有利であることが記載されている。
また、刊行物3には、熱可塑性樹脂100重量部に対し、木粉等の植物性繊維(本願発明の「木質系充填剤」に相当。)5?150重量部、ロジン系樹脂1?40重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物が記載され、ロジン系樹脂は、熱可塑性樹脂と植物性繊維との親和性や結合力を高める相溶化剤、可塑剤として機能し、建築材料等の発泡性樹脂成型品に使用できることが記載されている(記載事項(3e))。
そうすると、刊行物1記載の発明において、2倍を越える高発泡倍率を採用するに際し、高い機械的特性や表面硬度を付与するために、ポリオレフィン樹脂の結晶核剤として働き、かつ高い機械的特性や表面硬度を付与し、熱可塑性樹脂と植物性繊維との親和性を有することが期待できるロジン類の金属塩を配合することは、当業者が容易に想到しうることである。
また、本願発明において、ロジン類の金属塩を、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1?20重量部配合しているが、この割合は、刊行物2、3に記載されているように通常添加される範囲であって、必要な強度等に応じて適宜決めうる程度のものである。

エ 相違点4について
本願明細書の段落【0034】には、「木質系充填剤12の配合量については、ロジン類の金属塩とポリオレフィン系樹脂などからなる熱可塑性樹脂11の100重量部に対して、10重量部から300重量部まで適宜選択が可能であるが、成形性や均質性を高めるために、木質系充填剤12は、熱可塑性樹脂11の100重量部に対して20?200重量部、より好ましくは30?150重量部の配合量とすることが望ましい。」と記載され、本願発明において、木質系充填剤を熱可塑性樹脂100重量部に対して30?150重量部としたのは、成形性や均質性を高めるためと認められるが、数値範囲に特に臨界的意義は認められない。
そして、刊行物1には、木質系充填剤の配合割合は、用途や成形方法、成形後の切削加工の有無、成形性や均質性等に応じて適宜調整することが記載されており(記載事項(1f))、刊行物3には、熱可塑性樹脂100重量部に対し、木質系充填剤5?150重量部、ロジン系樹脂1?40重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物が記載されており、刊行物1記載の発明に刊行物2、3記載の発明を適用して、ポリオレフィン系樹脂とロジン類の金属塩が含まれる熱可塑性樹脂を使用するに際し、床材の施工場所や成形方法、成形性や均質性を考慮して、木質系充填剤の配合割合を熱可塑性樹脂100重量部に対30?150重量部とすることは、当業者が適宜設計しうる程度のことである。

オ 作用効果について
本願発明は、床材の表面硬度が高く耐キャスター性が優れ、曲げ強度も大きい効果を奏するものと認められるが、機械的強度が高い効果は、刊行物2、3記載の発明から予測できることであり、本願発明の作用効果は、刊行物1ないし3記載の発明から予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、刊行物1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし3記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-10 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2004-44058(P2004-44058)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 隆  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
土屋 真理子
発明の名称 床材  

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