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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1235272
審判番号 不服2009-23489  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-04-13 
事件の表示 特願2000-556704「高い吸引力と高い透過性を有する液体処理部材を備える吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月 6日国際公開、WO00/00118、平成15年 9月24日国内公表、特表2003-527877〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1999年6月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年6月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月21日付けで拒絶理由の通知がされたが、これに対して意見書及び手続補正書の提出はなく、平成21年7月21日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成21年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされ、当審において平成22年5月12日付けで審尋を通知した。

第2.平成21年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に
「尿などの体液を吸収するための液体処理部材であり、前記液体処理部材が、少なくとも50cmのここに定義される毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、前記液体処理部材が、ここに定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有していることを特徴とする液体処理部材。」
とあるのを、補正後の請求項1に記載されているとおり、
「尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、膜により完全に包囲された内部材料からなり、前記液体処理部材が、本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」
とする補正、及び補正前の請求項4に
「尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、前記液体処理部材が、少なくとも80cmのここに定義される毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおけるその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、前記液体処理部材が、ここに定義される要求吸収性試験にによると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有していることを特徴とする液体処理部材。」
とあるのを、補正後の請求項3に記載されているとおり、
「尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、膜により完全に包囲された内部材料からなり、
前記液体処理部材が、本願明細書に定義される少なくとも80cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおけるその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される要求吸収性試験によると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」
とする補正を含むものである。

2.目的要件等
上記補正は、補正前の請求項1、請求項4の「ここに定義される」の記載を「本願明細書に定義される」として、明瞭でない記載に変更を加えるとともに、補正前の請求項1、請求項4の発明を特定するために必要な事項である「液体処理部材」を「膜により完全に包囲された内部材料から」なるものに限定するものであり、(補正前の請求項2が削除され、補正前の請求項4は請求項3に繰り上がるので)補正後の請求項1、請求項3に記載された発明は、補正前の請求項1、請求項4に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該補正は、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1、請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明1」、「本願補正発明3」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願補正発明1、本願補正発明3は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、膜により完全に包囲された内部材料からなり、
前記液体処理部材が、本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」
「【請求項3】尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、膜により完全に包囲された内部材料からなり、
前記液体処理部材が、本願明細書に定義される少なくとも80cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおけるその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される要求吸収性試験によると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」

A.記載不備について
本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1のA)「50cmの毛細管吸着試験」は、本願明細書の記載において、明確に定義、説明がされておらず、どのようなものを意味するのか特定できない。
同じく、B)「0cm吸収高さ」は、本願明細書の記載において、明確に定義、説明がされておらず、どのようなことを意味するのか特定できない。
同じく、C)「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、」は、「0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有」することと、それが「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験による」理由が不明で、前者と後者の関係を特定できない、また、前者と後者の関係が不明なため、「すくなくとも」が「50cm」を修飾するのか、「50cmの毛細管吸着試験」を修飾するのか不明確で、当該「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、」が、長さの下限を設定したものか、必要条件を規定したものか特定できない。
また、D)同じく、請求項1の「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」、請求項3の「本願明細書に定義される少なくとも80cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおけるその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、かつ本願明細書に定義される要求吸収性試験によると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有している、ことを特徴とする液体処理部材。」は、「本願明細書に定義される」各試験は工業規格化されたものとも認められず、本願明細書の記載からでは、何を規定したものか不明確であり、「本願明細書に定義される」としただけでは、その試験方法が明確に特定できない(例えば、試験片の寸法に関して、本願明細書には、加工可能な場合は、「直径5.4cmの円形をした構造となるように選ばれる」(本願明細書段落【0055】参照)という記載もあり、このような試験片を使うことも考えられるが、本願補正発明1、本願補正発明3の液体処理部材の特性を直接測定するために、試験片として、本願補正発明1、本願補正発明3の液体処理部材と寸法が等しいものをそのまま用いると考えることもでき、どのようなものを用いるか不明確である)。
よって、その試験に従って定められる数値を得るための構成が特定できず、本願補正発明1、本願補正発明3の構成を特定することができない。
したがって、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1、請求項3の記載は不明瞭であって、特許法36条第6項第2号の規定に反するものであり、本願補正発明1、本願補正発明3は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

B.進歩性について
当審において平成22年5月12日付けで審尋を通知して、請求人に釈明の機会を与えたにも拘わらず、請求人は回答書を提出せず、面接要請に対しては、平成22年7月29日に行った電話での問い合わせに対して、本案件は面接希望の対象外とする旨の回答があった。
そこで、上記A.のA)?C)に関しては、本願補正発明1を「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)」を有することで特定する技術的意義が本願明細書に明確に記載されているとは認められないのであるが、本願明細書の段落【0024】、【0026】、【0029】に、それぞれ、「高い液体吸入能力を高い液体透過性と組み合わせる液体処理部材を提供することは、本発明の1つの形態である。」、「高速吸収速度と、高い液体吸入能力を組み合わせる液体処理部材を提供することは、本発明の他の側面である。」、「高い吸収容量は、例えば尿の噴出などの大量の体液の保管を可能にする。」と記載されると共に、請求人が、審判請求書において、「本願発明のように、体液の吸収能力(吸収容量)と体液透過性能、あるいは体液の吸収能力(吸収容量)と体液吸収速度に着目した液体処理部材」(「(iii)本願発明と引用発明との対比」参照)と述べているので、これらの記載から、「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、」の記載で特定される事項は、吸収能力の、特に吸収容量の特性を規定したものと解することができる。
また、D)に関しては、本願補正発明1、本願補正発明3とそれぞれの試験における試験片とは同寸法のものであると解することができ、仮に、以上のように解した場合には、以下に述べるように、本願補正発明1、本願補正発明3は進歩性を有するものとは認められない。

・本願補正発明1について
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第98/22065号(以下、「引用例1」という)には、図面と共に以下の事項が記載されている(和訳は、該国際出願に対応する国内公表(特表2001ー505624号)に基づく)。
(ア)「A multifunctional…life.(超吸収剤、パルプ、および結合構成要素から成る多機能材料であって、前記多機能材料がその有効寿命にわたって100?10000ダルシーの透過率と、約2?15cmの毛管張力を有する多機能材料。)」(明細書第45頁第2?4行)
(イ)「Traditional…example.(パーソナル・ケア製晶用の伝統的な吸収システムは、吸込み(サージコントロール)機能と封じ込め(保持)機能すなわちSCを有するとして一般化することができる。サージ調整材料(SCの中の“S”)は、入ってくる排泄物が製品の外へ洩れ出ないように、排泄物を迅速に受け入れるために設けられている。サージ層はまた吸込み層、移送層、輸送層、等と呼ぶこともできる。サージ材料は、一般に、たとえば幼児の場合、約5?20cc/secの体積流量で入ってくる約60?100ccの排泄物を処理できなければならない。)」(明細書第19頁第8?14行)
(ウ)「The "life"…invention.(多機能材料の有効寿命は、本発明の目的には、それぞれ30分の間隔をおいた3回の100mlの排泄物に対するものでなければならないと考えられる。)」(明細書第30頁第20?21行)
以上の記載によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という)が開示されていると認めることができる。

「有効寿命にわたって100?10000ダルシーの透過率を有し、約5?20cc/secの体積流量で入ってくる約60?100ccの排泄物を処理する多機能材料。」

(2)対比
そこで、本願補正発明1と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「排泄物」、「透過率」、「多機能材料」は、本願補正発明1の「体液」、「液体透過性」、「液体処理部材」に相当する。
したがって、本願補正発明1と引用発明1を対比すると、両者は、
「体液を処理するための液体処理部材。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明1は、膜により完全に包囲された内部部材からなるのに対して、引用発明1では、このような構成を有しない点。
[相違点2]
本願補正発明1は、本願明細書に定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有するのに対して、引用発明1では、有効寿命にわたって100?10000ダルシーの透過率を有する点。
[相違点3]
本願補正発明1は、本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有するのに対して、引用発明1では、約5?20cc/secの体積流量で入ってくる約60?100ccの排泄物を処理する点。

(4)判断
上記相違点1について検討すると、吸収体の全体を包囲するような被覆を設けることは当業者にとって周知の技術であり(登録実用新案第3031006号公報、特開平2-107250号公報参照)、引用発明1において、吸収体として、膜により完全に包囲された多機能材料を用いることは当業者が容易になし得たものと認める。
次に、上記相違点2について検討すると、引用発明1の「有効寿命」は使用している状態を想定したものであると認められ、液体を吸収した時点を含むものと解することができる(上記(1)(ウ)参照)。
また、液体処理部材において、吸収体が特定の量の液体を吸収した時点における透過量を規定することは周知の技術であって(例えば、国際公開第96/20739号参照)、当業者が適宜なす程度のことに過ぎない。
そして、「本願明細書に定義される飽和液体透過性試験」では、「この文脈での飽和とは、試験サンプルが、それが要求吸収性試験で有するその容量の100%を吸収したとして定義される」(本願明細書段落【0091】参照)としているが、本願補正発明1が、吸収体の吸収性能として、すでにその容量の100%を吸収し終えた後での透過性を規定したことに格別な技術的意義を認めることはできない。
次に、上記相違点3について検討すると、本審決「B.進歩性について」の当初において述べたように、本願補正発明1の「本願明細書に定義される少なくとも50cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、」で特定される事項は、吸収能力の、特に吸収容量の特性を規定したものと解されるが、引用発明1においても、入ってくる排泄物が製品の外へ洩れ出ないように、約5?20cc/secの体積流量で入ってくる約60?100ccを吸収して処理する、十分な吸収容量を有するものと認められ、本願補正発明1のものが引用発明1のものと比べて格別な効果を奏するものとは認められない。
一方、液体処理部材の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して所望の吸収容量のものとすることは当業者が適宜なす程度のことにすぎず、また、本願補正発明1が、特に本願明細書に定義される毛細管吸着試験によって、吸収容量の特性を規定する吸収能力を定量化したことには格別な技術的意義を見出すことはできないので、引用発明1の多機能材料の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して本願補正発明1に規定された吸収能力を有するものとすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明1の作用効果も、引用発明1、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

・本願補正発明3について
(1)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第96/21681号(以下、「引用例2」という)には、図面と共に以下の事項が記載されている(和訳は、該国際出願に対応する国内公表(特表平11ー503177号)に基づく)。
(ア)「These absorbent…forces.(これらの吸収性HIPEフォームは、(a)後の流体排出を収容し得るように、吸収した尿または他の体液を初期接触ゾーンからフォーム構造の未使用の残部へ輸送する比較的良好な吸い上げおよび流体分配特性、および(b)負荷下、すなわち圧縮力下で比較的高い流体容量を有する比較的高い貯蔵容量を含む、望ましい流体取扱特性を提供する。)」(明細書第3頁第10?15行)
(イ)「(5)has a …components.((5)効率的にコア部材を利用するおしめその他の吸収性製品を提供するために比較的高い流体用容積を有する連続気泡型吸収性ポリマーフォーム材、特に吸収性HIPEフォームを作ことができることが望ましい。)」(明細書第4頁第11?13行)
(ウ)「More…50 seconds.(本発明の好ましいフォーム吸収材は、せいぜい約70秒以内に、最も好ましくはせいぜい約50秒以内に、この合成尿を垂直に5cm吸い上げる。)」(明細書第10頁第11?13行)
(エ)「Because…products.(本発明のフォームは、水性流体を迅速に獲得し、分配するので、吸収性コアの流体獲得/分配部材として特に有用である。これらの獲得/分配フォームは、重力の助けをもって、または助けなしに、流体を獲得することを可能とし、それ故着用者の皮膚を乾燥状態に保つところの、比較的高い毛管吸収圧と重量当りの容量特性とを組合わせている。この高い容量(所定重量当りの)は、軽量で効率的な製品をもたらす。)」(明細書第31頁第7?13行)
以上の記載によれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という)が開示されていると認めることができる。

「体液を吸収するためのフォーム材であって、高い重量当りの容量特性を有し、約50秒以内に、合成尿を垂直に5cm吸い上げるフォーム材。」

(2)対比
そこで、本願補正発明3と引用発明2とを比較すると、引用発明2の「フォーム材」は、本願補正発明3の「液体処理部材」に相当する。
したがって、本願補正発明3と引用発明2を対比すると、両者は、
「体液を処理するための液体処理部材。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明3は、膜により完全に包囲された内部部材からなるのに対して、引用発明2では、このような構成を有しない点。
[相違点2]
本願補正発明3は、本願明細書に定義される要求吸収性試験によると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有するのに対して、引用発明2では、約50秒以内に、合成尿を垂直に5cm吸い上げる点。
[相違点3]
本願補正発明3は、本願明細書に定義される少なくとも80cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有するのに対して、引用発明2では、高い重量当りの容量特性を有するとし、その特性の内容については規定していない点。

(4)判断
上記相違点1について検討すると、吸収体の全体を包囲するような被覆を設けることは当業者にとって周知の技術であり(登録実用新案第3031006号公報、特開平2-107250号公報参照)、引用発明1において、吸収体として、膜により完全に包囲された液体処理部材を用いることは当業者が容易になし得たものと認める。
次に、上記相違点2について検討すると、液の通過する開口の大きさに応じて流体の吸収が左右されることが周知であり(例えば国際公開97/17925号、特開平5ー31138号公報参照)、また、本願明細書の段落【0090】には「試験の最後に、液体処理部材の総液体取り込みが記録される。さらに、液体処理部材がそのその総液体取り込みの80パーセントを吸収した後の時間が記録される。」と記載されているが、液体処理部材の「総液体取り込み」やその80パーセントにまで吸収される時間は、液体処理部材の長さ、幅、厚さ、外側寸法によって変わるものと認められるので、引用発明2において、液体処理部材の前記開口を設定した上で、液体処理部材の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して本願明細書に規定されている要求吸収性試験に従って定量化される本願補正発明3の範囲の吸収速度を得ることは当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎないと認められる。
次に、上記相違点3について検討すると、本審決「B.進歩性について」の当初において本願補正発明1について述べたように、本願補正発明3の「本願明細書に定義される少なくとも80cmの毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、」で特定される事項も、吸収能力の、特に吸収容量の特性を示すものと解され、また、本願補正発明3においては、「高い液体吸収容量」を有するものと解される(審判請求書、「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(iii)本願発明と引用発明との対比」参照)が、引用発明2は高い重量当りの容量特性を有するものであって、本願補正発明3のものが引用発明2のものと比べて格別な効果を奏するものとは認められない。
一方、液体処理部材の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して所望の吸収容量のものとすることは当業者が適宜なす程度のことにすぎず、また、本願補正発明3が、特に本願明細書に定義される毛細管吸着試験によって、吸収容量の特性を規定する吸収能力を定量化したことには格別な技術的意義を見出すことはできないので、引用発明2の液体処理部材の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して本願補正発明3に規定された吸収能力を有するものとすることは当業者が容易になし得た程度の事項にすぎないと認められる。

そして、本願補正発明3の作用効果も、引用発明2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて、本願補正発明3は、引用発明2及び周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、平成20年12月2日付けの拒絶理由において、上記引用文献1、引用文献2を提示したところ、これに対する意見書、手続補正書の提出はなく、審判請求時に上記のように特許請求の範囲を補正するとともに、審判請求書において、「本願発明においては、所定の毛細管吸着試験、飽和体液透過性試験および要求吸収試験の各試験において、請求項1や請求項3に規定する毛細管吸着吸収高さ、液体透過性および吸収時間の数値範囲内となるように、上記内部材料の長さ、幅、厚さ、外側寸法によって調整しております(段落[0031])。よって、本願明細書に接した当業者であれば、本願明細書に例示された内部材料を用い、長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整して、本願発明に規定する各数値範囲内にある液体処理部材を作製できることは明らかであると出願人は考えます。」(「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(ii)記載不備について」参照)と主張し、また、各引用文献には「本願発明のように、体液の吸収能力(吸収容量)と体液透過性能、あるいは体液の吸収能力(吸収容量)と体液吸収速度に着目した液体処理部材」、「本願発明のように、液体処理部材を、所定の各試験において特定の体積膨張率、吸収時間および離脱圧力の数値範囲となるように内部材料の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整すること」については開示も示唆もないと主張している(「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(iii)本願発明と引用発明との対比」参照)。
この点については、一般に、体液を吸収するための液体処理部材において、吸収容量と透過性能または吸収速度に着目することは当業者が当然行うべき事項にすぎず、また、本願明細書の記載において、液体処理部材を、所定の各試験において特定の体積膨張率、吸収時間および離脱圧力の数値範囲となるように内部材料の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整すること手法について明確に説明がされているとは認められないが、所望の吸収時間等となるように内部材料の長さ、幅、厚さ、外側寸法を適宜調整することは当業者が適宜なす程度の事項にすぎないものと認めることができ、当該出願人の主張は妥当でない。
また、本願補正発明1、本願補正発明3は、その液体処理部材の構成を、その物性値で限定したものであるが、それが、従来技術からは当業者が容易に想到し得ない格別な構成によって達成され得るものであるとは認めることはできない。

C.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成21年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明10」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】尿などの体液を吸収するための液体処理部材であり、前記液体処理部材が、少なくとも50cmのここに定義される毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、前記液体処理部材が、ここに定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも5ダルシーという液体透過性を有していることを特徴とする液体処理部材。
【請求項2】前記液体処理部材が、ここに定義される飽和透過性試験によると、少なくとも10ダルシーの液体透過性を有している、請求項1に記載の液体処理部材。
【請求項3】尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、前記液体処理部材が、少なくとも80cmのここに定義される毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおいてその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、前記液体処理部材が、ここに定義される飽和液体透過性試験によると、少なくとも2ダルシーの液体透過性を有していることを特徴とする、液体処理部材。
【請求項4】尿などの体液を吸収するための液体処理部材であって、前記液体処理部材が、少なくとも80cmのここに定義される毛細管吸着試験によると、0cm吸収高さにおけるその容量の50%の毛細管吸着吸収高さ(CSAH50)を有し、前記液体処理部材が、ここに定義される要求吸収性試験にによると、5秒未満のその容量の80%に対する吸収時間を有していることを特徴とする液体処理部材。
【請求項5さらに、ここに定義される毛細管吸着試験に従った少なくとも5g/gの100cm吸収高さの毛細管吸着吸収容量を有している前記請求項のいずれかに記載の液体処理部材。
【請求項6】前記請求項のいずれかに記載の液体処理部材を備える体液を処理するための装置。
【請求項7】流体の取得/分散のための第1部位を備え、前記第1部位が液体を取得および/または輸送するための少なくとも1つの部材を備え、流体の保管のための第2部位を備え、前記第2部位が、請求項1から請求項5のいずれかに記載の液体処理部材を備える、吸収性構造。
【請求項8】請求項7に記載の吸収性構造を備える体液を処理するための装置。
【請求項9】前記装置が、使い捨て吸収体である、請求項6から請求項8に記載の体液を処理するための装置。
【請求項10】前記装置が使い捨ておむつである、請求項9に記載の体液を処理するための装置。」

第4.原査定の理由
原査定の理由は以下のとおりである。
「『理由1』
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1?10記載のものはどのようなものを指しているのか不明である(請求項記載の物性を得るための構造的特徴を請求項に記載する必要があります)。

『理由2』
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1?10
・引用文献1?3
・備考
引用文献1?3には、液体処理部材が記載されている。出願人が定める液体処理部材の物性に液体処理部材を最適化することは、当業者にとって容易である。
なお、意見書を提出されるのであれば、先行技術(少なくとも引用文献1?3記載のもの)が本願請求項記載の物性を有しないことの証明をお願いします。そして、補正されるのであれば、段落【0030】記載の名称セファーや、名称ブルプレンなどは商品名なので、構造的特徴での記載をお願いします。

引 用 文 献 等 一 覧

1.国際公開第97/034557号
2.国際公開第96/021681号
3.国際公開第98/022065号」

第5.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2.」の3.B.に記載したとおりである。

第6.対比・判断
A.特許請求の範囲の記載不備について
本願の請求項1?5の「ここに定義される」の記載は不明瞭であり、各試験方法が明確に特定できず、ひいてはその試験に従って定められる数値を得るための構成が特定できず、その構成を特定することができないので、本願発明1?5を特定できない。
また、請求項7の「流体の取得/分散のための」及び「液体を取得および/または輸送するための」の記載は不明瞭であり、本願発明7を特定できない。
したがって、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

B.進歩性について
仮に、「ここに定義される」の記載を上記「第2.」3.Bと同様に「本願明細書に定議される」と解した場合、本願発明1、本願発明4は、前記「第2.」で検討した本願補正発明1、本願補正発明3における「液体処理部材」を「膜により完全に包囲された内部材料からなり」ものとした限定を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「第2.」の3.B.に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同様に、本願発明4の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明3が、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明4も同様の理由により、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に反する。

第7.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-11-16 
結審通知日 2010-11-19 
審決日 2010-12-01 
出願番号 特願2000-556704(P2000-556704)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A41B)
P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 536- Z (A41B)
P 1 8・ 537- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直米村 耕一平田 信勝  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 高い吸引力と高い透過性を有する液体処理部材を備える吸収体  
代理人 横田 修孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 中村 行孝  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  
代理人 浅野 真理  

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