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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1235284
審判番号 不服2010-9942  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-10 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2006-232457号「傘ホルダ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 55955号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年8月29日の出願であって、平成22年2月5日付けで拒絶の査定がされ、その査定を不服として同年5月10日に審判請求され、同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 原査定
原査定における拒絶の理由は、以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2005-247095号公報」

第3 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年5月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲は以下のとおりである。

「【請求項1】
傘の一部を保持する保持筒と、該保持筒が設けられている基体とを備える傘ホルダにおいて、
前記基体は該基体を平坦面に固定するための吸盤を備え、
前記保持筒は、軸方向に沿って直線状に形成してあり、
前記保持筒は、傘の中棒を差し込むための両端に亘るスリットを備えること
を特徴とする傘ホルダ。
【請求項2】
前記保持筒は内周に軟性樹脂部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の傘ホルダ。
【請求項3】
前記基体は装飾を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の傘ホルダ。」

2 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

「【請求項1】
傘の一部を保持する保持筒と、該保持筒が設けられている基体とを備える傘ホルダにおいて、
前記保持筒は、
傘の中棒を差し込むための両端に亘るスリットと、
内周に設けた軟性樹脂部材とを備えており、
前記基体は、
該基体を平坦面に固定するための吸盤と、
物体を引掛けることが可能なフック部を有する装飾とを備えることを特徴とする傘ホルダ。」

3 本件補正における目的要件についての判断
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明における「保持筒は、軸方向に沿って直線状に形成してあり」との発明特定事項を除くことを含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。また、本件補正は、同項第1号、第3号、第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4 本願発明について
1 本願発明
平成22年5月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年10月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。そして、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)については、次のとおりである。

「【請求項1】
傘の一部を保持する保持筒と、該保持筒が設けられている基体とを備える傘ホルダにおいて、
前記基体は該基体を平坦面に固定するための吸盤を備え、
前記保持筒は、軸方向に沿って直線状に形成してあり、
前記保持筒は、傘の中棒を差し込むための両端に亘るスリットを備えること
を特徴とする傘ホルダ。」

2 引用刊行物記載の発明
(1)本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-247095号公報(以下「引用例1」という。)には、傘支持具に関し、図面とともに次のア?ウの事項が記載されている。

ア「図示するように本実施形態の傘支持具10は、ゴム、プラスチック、木、金属などからなる本体の前面に、傘を支持するための細長い溝11が形成された形状を有し、溝11が形成された面を前面とすると、後面には自動車に固定するための平らな固定面12が形成されている。
【0015】
溝11は、断面は傘の柄の断面形状よりもやや大きい円形を有し、傘支持具10を自動車に固定したときに、その長手方向が垂直方向となるように形成されている。また溝の底部(長手方向の下端部)11aは柄の手元に対応した形状の曲部が形成されている。即ち、本体は底部がカーブした溝が形成されるように、前面に対して突出しており、この突出部に溝11aの曲部が形成されている。
【0016】
このような溝11は、その長手方向に沿って前面が開口しており、この開口から傘の柄を溝内に嵌め込むことができる。そのため少なくとも溝11の開口の端部は、ゴム、プラスチックのような弾性のある材料で構成されるとともに開口の幅dが傘の柄よりも若干小さく設計されており、端部が変形することによって、傘の嵌め込みや取り出しが可能になっている。」(【0014】?【0016】)

イ「本発明の傘支持具を種々の自動車に適用する場合には、固定面12と溝11との角度を調整可能にすることが好ましい。具体的には、溝11が形成された部材と、固定面12を有する部材、例えば平板状の部材とを別個の部材で構成し、・・(後略)」(【0018】)

ウ「固定面12の自動車に対する取り付け方法は、傘支持具が動かないように固定できる方法であれば特に限定されず、例えば、(1)固定面12の複数箇所(四隅など)に吸盤を設ける、(2)固定面12に磁石を貼り付けておく、(3)接着剤や両面粘着テープで固定する、などの方法を採用することができる。」(【0019】)

これらの記載事項からみて、上記引用例1には、
「傘の一部を保持する、垂直方向の下端部に傘の柄の手元を支持する曲部を設けた溝11が形成された部材と、固定面12を有する部材とからなる傘支持具において、
前記固定面12を有する部材は該部材を平坦面に固定するための吸盤を備え、
該溝11が形成された部材は、傘の柄の手元を含む傘の一部を差し込むための両端に亘る溝11を備える
傘支持具」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)周知技術として引用する、原査定において示された刊行物である実願昭57-168234号(実開昭59-72187号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、自転車用傘取付具に関し、図面とともに次のア?イの事項が記載されている。

ア「受部(7)は長さ約10cmの樋状の受金具(71)の背面一端を前記軸体(58)に固定し、該受金具(71)の内面に合成ゴム等で形成した弾性挟圧部材(72)を装着している。
実施例の受金具(71)は2枚の金属板(71a)(71b)によって2重に形成されている。
弾性挟圧部材(72)には受金具(71)の側面開口側から溝条(73)が開設されている。」(明細書第4頁第10行?同頁第17行)

イ「係止具(6)によって自転車のフレーム体(1)に取付具(3)を取付け、受部(7)の溝条(73)に側方から傘(8)の軸(81)を押し込む。
溝条(73)は弾性部材に形成されており、又、該弾性部材を支持する受金具(71)は樋状に形成されているため、傘軸(81)の押し込みによって溝条(73)が拡がって傘軸(81)の嵌入を許容し、溝条(73)に傘軸(81)が嵌まれば受部(7)の弾性復帰により、傘軸(81)を挟圧して傘(8)を強力に係止する。」(明細書第5頁第4行?同頁第12行)

上記「傘軸(81)」は本願発明の「傘の中棒」に相当するので、そうすると、これらの記載事項からみて、上記引用例2には、
「傘の中棒を押し込むために軸方向に沿って直線状に形成された受部(7)」
の構成が記載されているものと認められる。

3 発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「固定面12を有する部材」は本願発明の「基体」に相当し、以下同様に、「傘支持具」は「傘ホルダ」に、「両端に亘る溝11」は「両端に亘るスリット」にそれぞれ相当する。
また、引用発明に記載された「垂直方向の下端部に傘の柄の手元を支持する曲部を設けた溝11が形成された部材」と本願発明の「保持筒」とは、傘の一部を保持する保持部材であるという点で共通している。

そうすると、両者は、
「傘の一部を保持する保持部材と、該保持部材が設けられている基体とを備える傘ホルダにおいて、
前記基体は該基体を平坦面に固定するための吸盤を備え、
該保持部材は、傘の一部を差し込むための両端に亘るスリットを備える
傘ホルダ」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

[相違点]
本願発明では、傘の一部を保持する部材が「保持筒」であり、「前記保持筒は、傘の中棒を差し込むため」に「軸方向に沿って直線状に形成してあ」るのに対し、引用発明では、傘の一部を保持する保持部材が、傘の柄の手元を含む傘の柄を差し込むために、「垂直方向の下端部に傘の柄の手元を支持する曲部を設け」ている点。

4 当審の判断
[相違点]について
引用発明は傘の一部を保持する保持部材によって傘の柄を保持しているが、傘の一部として具体的に傘のどの部分を保持するかということは、傘ホルダとして傘を保持する機能を発揮する限りにおいて、当業者が適宜定め得る事項である。そして、そのような傘の適宜の一部を保持するための保持部材として、引用例2に記載された上記構成に係る受部(7)を採用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願
は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-10 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-03-01 
出願番号 特願2006-232457(P2006-232457)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
川向 和実
発明の名称 傘ホルダ  
代理人 河野 登夫  

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