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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1235304
審判番号 不服2008-22038  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-28 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2003- 53627「暗号生成装置、暗号復号装置、暗号生成プログラム、暗号復号プログラム、認証システム、電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-266486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年2月28日の出願であって、平成20年1月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月7日付けで意見書が提出されたものの同年7月18日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月28日に審判が請求され、同年9月29日付けで手続補正がなされて前置審査に付され、平成21年3月30日に審査官より前置報告がなされ、平成22年6月18日付けで当審より審尋がなされ、同年8月19日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成20年9月29日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明である以下の発明

「暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列を生成するパラメータ生成手段と、
このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段と、
前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにパラメータ列のスケジューリングを行うスケジューリング手段と
を具備することを特徴とする暗号生成装置。」

を、以下の発明(以下、「本件補正後発明」という。)に変更する補正を含むものである。

「暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列及び鍵固有パラメータを生成するパラメータ生成手段と、
このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段と、
このカオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを平文に適用して暗号文を生成する暗号文生成手段と、
前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズと、前記鍵固有パラメータとを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するスケジューリング手段とを具備し、
前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得ることを特徴とする暗号生成装置。」

2.補正の適否
当該補正は
(i)「パラメータ生成手段」が「カオス演算に用いるパラメータ列」に加えて「鍵固有パラメータ」をも生成するように特定し、
(ii)「カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを平文に適用して暗号文を生成する暗号文生成手段」として、カオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する処理を実行する手段を特定し、
(iii)「スケジュール手段」について、「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにパラメータ列のスケジューリングを行う」との記載から、「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズと、前記鍵固有パラメータとを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給する」に変更し、
(iv)「カオスノイズ発生手段」について「前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」という事項を追加するものである。

当該補正を構成する上記(i)乃至(iv)はいずれも、本願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。
また、上記(ii)及び(iv)は、拒絶査定の備考において指摘された事項を踏まえて明瞭でない記載の釈明を目的としたものと解され、上記(i)及び(iii)は、カオス演算に用いるパラメータ列のスケジューリングについて、カオスノイズに加え、鍵固有パラメータをも用いると限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的としたものと解される。

3.独立特許要件について
以上のように、当該補正は同特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含んでいるので、本件補正後発明が、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定される、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かを以下で検討する。

A.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された文献である特開2001-285277号公報(以下、「引用文献1」という。)には、対応する図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に、暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、前記分割平文情報に適用するカオスノイズを発生する写像関数を第1の周期毎に変更することを特徴とする暗号生成装置。」

(イ)「【0024】[関数設計例](中略)
【0031】ここに、左側関数と右側関数は、共にパラメータpは共通であるが、h,rrはそれぞれ左側(h1,rr1)、右側(h2,rr2)のように個別の値を採っても構わない。従って、以上をまとめて、関数形は以下の(式g)により表されるf(x,p,h1,rrl、h2,rr2)のように整理することができる。
(x<pの場合:左側関数)
f(x,p,h1,rr1,h2,rr2)=-{(h1-rr1 )/p^(2 )}x^(2) +{(2h1-rr1)/p}x (x>pの場合:右側関数)
x= x^(k+1)-1 f(x,p,h1,rr1,h2,rr2)=-{(h2-rr2 )/p^(2) }x^(2) +{(2h2-rr2)/p}x
ただし写像範囲は (0<x <2^((k+1)) ) 以上(式g)」

(ウ)「【0043】特に,nステップ目の関数パラメータを (p[n],h1[n],rr1[n],h2[n],rr2[n])ΞA[n] (式l)
のようにベクトル表記すると、写像関数は
xn+1 =f(xn ,A[n]) (式m)
のように整理される。」

(エ)「【0046】また,A[i]の採り得る状態総数値を超えた場合を考えて、A[i]を以下のようにする。
A[i]=g(A[i]) =fmod(A[i]+δA[i],AMax) (式o´)
上記(式o´)において、AMaxは、A[ ]の取りうる状態総数値を示す。このようにA[i]与え、δA を例えば素数値、かつ、AMax値(A[ ]の取りうる状態総数値)の因数でない値を与えることで、A[ ]の全ての状態値を効率よく走査できる。上記において、fmod(A,B) は、AをBで割った余りを意味する関数で、例えば、fmod(8,3)=2, fmod(13,6)=1 である。」

(オ)「【0048】暗号生成装置または暗号生成プログラムを使用する電子機器は、カオスノイズ発生手段1、暗号生成手段2、次関数決定手段3を具備する。カオスノイズ発生手段1は、カオスノイズを発生する写像関数を用いて暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生するものであり、鍵発生部11、初期関数生成部12、カオスノイズ発生部13を備える。暗号生成手段2は、平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に対し、カオスノイズ発生手段1により発生されたカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成するものであり、平文分割部21と暗号文生成部22とを具備する。次関数決定手段3は、分割平文情報に適用するカオスノイズを発生する写像関数を第1の周期毎に変更するものであり、周期検出部31と関数変更制御部32とを具備する。
【0049】鍵発生部11は、鍵発生指示入力を受けて鍵情報を発生するものである。初期関数生成部12は、鍵発生部11により発生された鍵情報を用いて(式g)に係る関数の初期関数を生成してカオスノイズ発生部13へ送るものである。カオスノイズ発生部13は、上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力するものである。
【0050】平文分割部21は、平文(暗号化される以前の文)データを入力し1バイト単位に分割して出力する。暗号文生成部22は、分割された平文を平文分割部21から得ると共に、カオスノイズをカオスノイズ発生部13から受け取り、これらを演算により暗号化して出力する。
【0051】周期検出部31は、A[i]のm変調分の周期を検出するものであり、関数変更制御部32は、周期検出部31がm変調分の周期を検出する毎に(式o´)による処理によりA[i]に変更を加えて写像関数自体を変更し、カオスノイズ発生部13へ提供するものである。カオスノイズ発生部13は、次の1サイクルについて変更された写像関数を用いてカオスノイズを発生することになる。」

(カ)「【0062】しかし、同じA[ ]の状態を連続して与えることは、(式a)の係数aを固定する場合と変わらないので、左右の関数を独立した変位方式を与えるなどの対策が必要となる。またδAの与え方にも工夫が必要となる。具体的なパラメータ変動手法を次に示す。
【0063】[具体事例1]前述の[設計関数例での可変化原理]に従い、δA の変調方式を与える。以下、例を挙げ説明する。ここでは、A[ ]を1次元パラメータと考え(実際には(式g)より、(p,h1,rr1,h2,rr2 )の5つのパラメータが存在)て、
A[1] =1
A[2] =2
A[3] =3
A[4] =4
のように、16階調、m=4可変周期、とした場合、5番目(i=5)以降8番目(i=8)までを、A[i+4]=A[i]+δA (i=1?4) とさせる。このとき、δA =1とすると、
A[5] =2
A[6] =3
A[7] =4
A[8] =5となる。
【0064】しかし、別途指定のA´[i] 系列のi=1?4を
A´[1]=2
A´[2]=3
A´[3]=4
A´[4]=5とした場合には、上記A[5?8] と、A´ [1?4] が一致することになる。このように例え一致しても、(式g)におけるxの値が異なれば別の軌道をたどることになるのであるが、写像範囲1/2^(k+1) の確率で軌道が一致する。更には、δA=δA´の条件が重なった場合、A[i]軌道とA´[i] 軌道は全く同軌道を歩むことになり、独立性を保てなくなる。
【0065】そこで,新たにδA を次に示す(式p)により与え、A[i]の初期のパターンA0[i] に依存させる。
δA[i]ΞA0[i](i=1 ?m ) (A0[i] は初期の変位←鍵より求める)
A[i]=g1(A[i],δA[i])
=fmod(A[i]+δA[i],AMax) AMax: A の取りうる状態総数 以上(式p)
上記において、 fmod は既に説明した関数である。これより初期のA[i]パターンのオリジナリティーを保ちつつ変形できる。」

(a)上記(ア)の記載から、引用文献1には、
平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に、暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置
が記載されたものと認められる。

(b)上記(オ)の記載から、引用文献1に記載の暗号生成装置は、
鍵発生部11により発生された鍵情報を用いて(式g)に係る関数の初期関数を生成してカオスノイズ発生部13へ送る初期関数生成部12と、
上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力するカオスノイズ発生部13と、
分割された平文を平文分割部21から得ると共に、カオスノイズをカオスノイズ発生部13から受け取り、これらを演算により暗号化して出力する暗号文生成部22と、
周期検出部31がm変調分の周期を検出する毎に(式o´)による処理によりA[i]に変更を加えて写像関数自体を変更し、カオスノイズ発生部13へ提供する関数変更制御部32とを具備し、
カオスノイズ発生部13は、次の1サイクルについて変更された写像関数を用いてカオスノイズを発生する暗号生成装置であることが読み取れる。

そして、上記(イ)及び(ウ)の記載を併せると、初期関数生成部12における「(式g)に係る関数の初期関数を生成」は、列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]を生成することで行われることは明らかである。
また、上記(カ)の記載
「【0065】そこで,新たにδA を次に示す(式p)により与え、A[i]の初期のパターンA0[i] に依存させる。
δA[i]ΞA0[i](i=1 ?m ) (A0[i] は初期の変位←鍵より求める) 」
において、A0[i]とは、初期関数に対応する関数パラメータであって初期関数生成部が生成するものであることが自明であるから、当該初期関数生成部12は、鍵情報に基づいてδA[i]をも生成するものといえる。
さらに、上記(エ)の記載を併せると、関数変更制御部32における「(式o´)による処理によりA[i]に変更を加えて写像関数自体を変更し、カオスノイズ発生部13へ提供する」とは、δA[i]を用いて写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成し、この新たな関数パラメータA[i]をカオスノイズ発生部13へ提供することで行われると解される。
したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に、暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
鍵発生部11により発生された鍵情報を用いて列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]を生成することによって初期関数を生成してカオスノイズ発生部13へ送り、また、該鍵情報を用いてδA[i]を生成する初期関数生成部12と、
上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力するカオスノイズ発生部13と、
分割された平文を平文分割部21から得ると共に、カオスノイズをカオスノイズ発生部13から受け取り、これらを演算により暗号化して出力する暗号文生成部22と、
周期検出部31がm変調分の周期を検出する毎に、δA[i]を用いて前記写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成し、この新たな関数パラメータA[i]をカオスノイズ発生部13へ提供することで写像関数を変更する関数変更制御部32とを具備し、
カオスノイズ発生部13は、次の1サイクルについて変更された写像関数を用いてカオスノイズを発生する暗号生成装置。

B.対比
本件補正後発明と、引用発明とを対比する。
引用発明の「分割平文情報」は、本件補正後発明の「平文情報」に相当するものであって、引用発明の「平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に、暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置」と、本件補正後発明の「暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置」とは、同じものである。

引用発明の「列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]」は、本件補正後発明の「カオス演算に用いるパラメータ列」に相当する。
また、引用発明の「鍵発生部11により発生された鍵情報」は、引用発明の「暗号化の鍵データ」と同じものであり、本件補正後発明の「暗号化の鍵データ」に相当するものであることは自明である。
そして、本件補正後発明の「鍵固有パラメータ」は、本願の明細書【0069】段落の「次にパラメータ列(A[ ],B[ ])202の初期位相決定に関する例を説明する。鍵データ201は鍵固有パラメータ列( KEY_A[ ],KEY_B[ ])203の他に、パラメータスケジューリング関数205にて随時変更されるパラメータ列(A[],B[ ])203の初期位相を与える。特に、A[ ]=KEY_A[ ]、B[ ]=KEY_B[ ]と与えても構わないが、この構成例ではカオスを利用する。」と記載されているように、関数パラメータの初期の値と等しいものとして構わないものであるから、引用発明の「δA[i]」は、本件補正後発明の「鍵固有パラメータ」に相当するものといえる。
よって、引用発明の「鍵発生部11により発生された鍵情報を用いて列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]を生成することによって初期関数を生成してカオスノイズ発生部13へ送り、また、該鍵情報を用いてδA[i]を生成する初期関数生成部12」と、本件補正後発明の「前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列及び鍵固有パラメータを生成するパラメータ生成手段」とは、同じものといえる。

引用発明の「カオスノイズ発生部13」における「上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力する」とは、初期関数生成部12が生成した写像関数パラメータA[i]を用いてカオス演算を行いカオスノイズを得ることを意味することは明らかであるから、引用発明の「上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力するカオスノイズ発生部13」と、本件補正後発明の「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」とは、同じものといえる。

引用発明の「分割された平文」は本件補正後発明の「平文」に相当し、引用発明の「暗号文生成部22」が、暗号文を生成することは自明であるから、引用発明の「分割された平文を平文分割部21から得ると共に、カオスノイズをカオスノイズ発生部13から受け取り、これらを演算により暗号化して出力する暗号文生成部22」と、本件補正後発明の「このカオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを平文に適用して暗号文を生
成する暗号文生成手段」とは、同じものといえる。

引用発明の「新たな関数パラメータA[i]」は、本件補正後発明の「新たなパラメータ列」に相当し、引用発明の「写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成」することは、パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行うことに他ならないから、引用発明の「周期検出部31がm変調分の周期を検出する毎に、δA[i]を用いて前記写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成し、この新たな関数パラメータA[i]をカオスノイズ発生部13へ提供することで写像関数を変更する関数変更制御部32」と、本件補正後発明の「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズと、前記鍵固有パラメータとを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するスケジューリング手段」とは
”前記鍵固有パラメータを用いて、前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するパラメータ列変更手段”
である点で一致する。

引用発明の「カオスノイズ発生部13は、次の1サイクルについて変更された写像関数を用いてカオスノイズを発生する」とは、カオスノイズ発生部13が、新たな関数パラメータA[i]が関数変更制御部32から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行いカオスノイズを得ることを意味するものであるから、本件補正後発明の「カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」と、”カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記パラメータ列変更手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る”点で一致する。

以上のことから、本件補正後発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列及び鍵固有パラメータを生成するパラメータ生成手段と、
このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段と、
このカオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを平文に適用して暗号文を生成する暗号文生成手段と、
前記鍵固有パラメータを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するパラメータ列変更手段とを具備し、
前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記パラメータ列変更手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得ることを特徴とする暗号生成装置。

(相違点)
新たなパラメータ列を生成するパラメータ列変更手段に関し、本件補正後発明の「スケジューリング手段」は、鍵固有パラメータと共に「カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズ」を用いてスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成するものであるのに対して、引用発明の「関数変更制御部」では、カオスノイズを用いる旨の記載はない点。

C.判断
上記相違点について判断する。
原査定の拒絶の理由に引用された文献である特開平8-123669号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の混合合同法に基づく乱数の生成においては、乱数の初期値X_(0)、定数a及びbが決まると、これらの値に基づいて算出される乱数の数列X_(n)(n=1,2,・・・)は一義的に決定され、一定の周期性を有することになるから、必ずしも一様な確率で分布する品質の高い乱数列が得られない問題がある。本発明の目的は、従来よりも高い品質の乱数列を得ることが出来る乱数生成回路を提供することである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】本発明に係る乱数生成回路は、混合合同法に基づく演算式を用いて乱数を繰り返し算出する演算回路と、前記演算式に含まれる乗算及び加算に用いる2つの定数を設定する定数設定回路とを具え、定数設定回路は、演算回路による過去2回の乱数算出結果を以て、前記2つの定数を夫々更新するものである。
(中略)
【0010】
【作用】上記本発明の乱数生成回路においては、混合合同法に基づく演算式に含まれる乗算及び加算に用いる2つの定数が、従来の如き一定値ではなく、演算が進む過程で得られる乱数列を用いて、2つの定数が更新される。従って、混合合同法に基づく演算式が本来的に有しているランダム性に加えて、演算式の定数にランダム性が付与される結果、従来よりもランダム性に富んだ乱数列が得られる。」

上記の記載から、引用文献2には、
混合合同法に基づく乱数の生成において、従来よりも高い品質の乱数列を得ることを目的として、演算回路による過去の乱数算出結果を以て、演算式に含まれる定数を更新する技術事項が記載されたものと認められる。

そして、引用発明におけるカオスノイズが乱数列として用いられるものであることは、技術常識からみても、引用文献1の「【0004】(中略)(式a)の反復使用によりカオス乱数列<x_(n)>を得ることができる。・・・【0005】(式a)は、係数aの微小な差異、例えば、倍精度実数型(浮動小数点演算)においては、表現しうる最小?1.0E-15 の差異で、全く異なる乱数列を生成する。例えば、図3に示されるように初期値の僅かな差によってそれぞれ異なる軌跡を描き、これがカオスの初期条件敏感性などと称されている。」との記載からみても明らかであるから、上記技術事項とカオスノイズを発生させる発明である引用発明とは、共に乱数を発生させる装置の技術分野に属するものといえる。
そうしてみれば、当該技術事項と引用発明とは、乱数を発生させる装置の技術分野において、高い品質の乱数列を得るために、乱数を発生する演算式に含まれるパラメータを変更する技術である点で一致することから、当該技術事項に混合合同法に関して示された高い品質を得るための態様である、過去の乱数算出結果を以て演算式に含まれる定数を更新する態様を、引用発明において乱数を発生する関数である写像関数に対して採用することにより、写像関数の関数パラメータA[i]の変更に、δA[i]を用いることに加えて、カオスノイズ発生部により発生されたカオスノイズである過去の乱数算出結果をも用いるよう構成することは当業者が容易に想到し得た事項といえる。

よって、上記相違点は格別のものではない。

そして、本件補正後発明の奏する効果について検討しても、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が容易に予測し得た程度のものである。

以上のとおりであるから、本件補正後発明は、原査定の拒絶の理由に引用された文献である引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

また、ストリーム暗号に用いるための擬似乱数をカオス関数にて発生させる技術の分野においても、カオス関数にて発生させたカオス信号に基づいて当該カオス関数のパラメータを変動させることは、以下に示すように本願出願前に公知である。
すなわち、本願の出願日前である平成15年1月24日に公知となった文献である特開2003-23421号公報(以下、「参考文献1」という。)には、「【従来の技術】」として以下の記載がある。
「【0013】他方、カオス暗号方式のうちで、カオス信号をキーストリームの生成に用いるストリーム暗号方式では、擬似乱数としてのキーストリームの安全性を向上する必要がある。従来は、そのために、まず鍵をカオス関数の初期値やパラメータに用い、カオス関数で1回目のカオス信号を生成し、次に1回目のカオス信号をそのカオス関数の初期値やパラメータに用いて2回目のカオス信号を生成し、さらに2回目のカオス信号をそのカオス関数の初期値やパラメータに用いて3回目のカオス信号を生成するといった具合に、カオス信号生成手段(本願におけるカオスエミュレータに相当)の入出力間でフィードバックを繰り返し、カオス信号の複雑さを増し、多数回循環させて得たカオス信号をキーストリームとしていた。この従来のキーストリーム生成方法では、カオス信号を循環させる回数だけ処理時間を要し、また何回巡回させたとしてもカオス関数が知られているならば、解読される虞は残る。」

上記の記載から、参考文献1には、従来の技術として
カオス信号をキーストリームとするストリーム暗号方式において、安全性を向上させるために、鍵をカオス関数の初期値やパラメータに用いて1回目のカオス信号を生成し、次に1回目のカオス信号をそのカオス関数の初期値やパラメータに用いて2回目のカオス信号を生成するといった具合に、カオス信号生成手段の入出力間でフィードバックを繰り返す発明
が記載されている。

そして、引用発明と参考文献1に記載された発明とは、カオス信号をキーストリームとするストリーム暗号方式という同一の技術分野に属する技術であり、また、カオス信号の安全性の向上を課題としている点でも共通するから、引用発明においてカオス信号の安全性の向上のために該参考文献1に記載された発明を適用することで、生成したカオス信号をもカオス関数のパラメータにフィードバックする、すなわち、生成したカオス信号も新たなパラメータ列のスケジューリングに用いるよう構成することは当業者が容易に想到し得たものといえる。

したがって、本件補正後発明は、原査定の拒絶の理由に引用された文献である引用文献1、及び、参考文献1に記載された発明に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

D.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明である本件補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年9月29日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願の願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。

暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列を生成するパラメータ生成手段と、
このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段と、
前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにパラメータ列のスケジューリングを行うスケジューリング手段と
を具備することを特徴とする暗号生成装置。

2.引用発明
引用発明は、「第2.平成20年9月29日付けの手続補正の補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「A.引用発明」の項中で認定したとおりのものである。

3.対比
本願発明と、引用発明とを対比する。

引用発明の「分割平文情報」は、本願発明の「平文情報」に相当するものであって、引用発明の「平文情報を所定の長さに分割した分割平文情報に、暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置」と、本願発明の「暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置」とは、同じものである。

引用発明において「暗号化の鍵データ」と「鍵発生部11により発生された鍵情報」とは同じものを指していることは自明であり、また、引用発明の「列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]」は、本願発明の「カオス演算に用いるパラメータ列」に相当するから、引用発明の「鍵発生部11により発生された鍵情報を用いて列ベクトルとして表記できる、写像関数の関数パラメータA[i]を生成することによって初期関数を生成してカオスノイズ発生部13へ送り、また、該鍵情報を用いてδA[i]を生成する初期関数生成部12」と、本願発明の「前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列を生成するパラメータ生成手段」とは、同じものといえる。

引用発明の「カオスノイズ発生部13」における「上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力する」とは、初期関数生成部12が生成した写像関数パラメータA[i]を用いてカオス演算を行いカオスノイズを得ることを意味することは明らかであるから、引用発明の「上記初期関数を用いてカオスノイズを発生して出力するカオスノイズ発生部13」と、本願発明の「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」とは、同じものといえる。

引用発明の「写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成」することは、パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行うことに他ならないから、引用発明の「周期検出部31がm変調分の周期を検出する毎に、δA[i]を用いて前記写像関数の関数パラメータA[i]を変更して新たな関数パラメータA[i]を生成し、この新たな関数パラメータA[i]をカオスノイズ発生部13へ提供することで写像関数を変更する関数変更制御部32」と、本願発明の「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにパラメータ列のスケジューリングを行うスケジューリング手段」とは、
”前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行うパラメータ列変更手段”
である点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
暗号化の鍵データに基づきカオスノイズを発生する写像関数を用いて得たカオスノイズを平文情報に対して適用する演算を行って暗号を生成する暗号生成装置において、
前記鍵データに基づいてカオス演算に用いるパラメータ列を生成するパラメータ生成手段と、
このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段と、
前記パラメータ列に変更を生じさせるようにパラメータ列のスケジューリングを行うパラメータ列変更手段と
を具備することを特徴とする暗号生成装置。

(相違点)
パラメータ列変更手段に関し、本願発明は、パラメータ列のスケジューリングに「カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズ」を用いているのに対して、引用発明の関数変更制御部32は、カオスノイズ発生部により発生されたカオスノイズを用いる旨の記載はない点。

4.判断
上記相違点について判断する。
「第2.平成20年9月29日付けの手続補正の補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「A.引用発明」の項中で認定したとおり、引用文献2には
混合合同法に基づく乱数の生成において、従来よりも高い品質の乱数列を得ることを目的として、演算回路による過去の乱数算出結果を以て、演算式に含まれる定数を更新する技術事項が記載されたものと認められる。

そして、当該技術事項と引用発明とは、乱数を発生させる装置の技術分野において、高い品質の乱数列を得るために、乱数を発生する演算式に含まれるパラメータを変更する技術である点で一致するものであることからみて、当該技術事項に混合合同法に関して示された高い品質を得るための態様である、過去の乱数算出結果を以て演算式に含まれる定数を更新する態様を、引用発明において乱数を発生する関数である写像関数に対して採用することにより、カオスノイズ発生部により発生されたカオスノイズである過去の乱数算出結果を用いて写像関数の関数パラメータA[i]を変更するよう構成することは当業者が容易に想到し得た事項といえる。

よって、上記相違点は格別のものではない。

さらに、本願発明の奏する効果について検討しても、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が容易に予測し得た程度のものである。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。

5.付言
審判請求人は、平成22年8月19日付けで回答書を提出し、また、平成22年12月20日付けで上申書を提出し、そのいずれにおいても補正案を提示している。
そこで、当該回答書及び当該上申書に記載の補正案についても予備的に検討する。

(1)平成22年8月19日付け回答書に記載の補正案について
平成22年8月19日付け回答書には、本件補正後発明に係る暗号生成装置が「暗号化した暗号文が平文に戻せるように暗号化を行う暗号生成装置」であることを明確にする補正を行うことを希望する旨記載されている。
しかし、引用文献1の【請求項17】に「暗号文復号装置」も記載されているように、引用発明に記載の暗号生成装置も暗号化した暗号文が平文に戻せるように暗号化を行うものであることは明らかであるから、本件補正後発明に対して当該補正を行っても、本件補正後発明と引用発明との間で既に検討した相違点以外に新たな相違点を生じるものではない。
したがって、本件補正後発明に対して同回答書で希望する補正を行った発明について検討しても、本件補正後発明と同様に引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえる。

(2)平成22年12月20日付け上申書に記載の補正案について
平成22年12月20日付け上申書には、平成22年8月19日付け回答書に記載された補正案に請求項1として記載された発明に対し、
(a)「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」を、「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列のパラメータを用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」に変更すると共に、
「前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」を「前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列のパラメータを用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」に変更する補正案(「補正案1」)と、
(b)「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」を、「このパラメータ生成手段により生成されたパラメータ列のパラメータを演算毎に順次変更して用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得るカオスノイズ発生手段」に変更すると共に、
「前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列を用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」を「前記カオスノイズ発生手段は、前記新たなパラメータ列が前記スケジューリング手段から供給された以降は、この新たなパラメータ列のパラメータを演算毎に順次変更して用いて用いてカオス演算を行い前記カオスノイズを得る」と変更する補正案(「補正案2」)と、
(c)上記(b)の変更に加えて、さらに「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズと、前記鍵固有パラメータとを用いて前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するスケジューリング手段」を「前記カオスノイズ発生手段により発生されたカオスノイズと、前記鍵固有パラメータとを用いてパラメータスケジュール関数により前記パラメータ列に変更を生じさせるようにスケジューリングを行い、新たなパラメータ列を生成し、この新たなパラメータ列を前記カオスノイズ発生手段へ供給するスケジューリング手段」と変更する補正案(「補正案3」)とが記載されている。

しかしながら、引用発明1もカオス演算を「写像関数の関数パラメータA[i]」のパラメータを用いて行い、当該「「写像関数の関数パラメータA[i]」」が更新された以降は、更新されたパラメータによってカオス演算を行うものであるから、補正案1に請求項1として記載された発明も、本件補正後発明と同様に引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、「第2.平成20年9月29日付けの手続補正の補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「C.判断」の項で記載したとおり、参考文献1(特開2003-23421号公報)には、
カオス信号をキーストリームとするストリーム暗号方式において、安全性を向上させるために、鍵をカオス関数の初期値やパラメータに用いて1回目のカオス信号を生成し、次に1回目のカオス信号をそのカオス関数の初期値やパラメータに用いて2回目のカオス信号を生成するといった具合に、カオス信号生成手段の入出力間でフィードバックを繰り返す発明が記載されており、当該発明はカオス関数の演算に用いるパラメータを、カオス演算毎に順次変更するものであることは明らかであるから、補正案2に請求項1として記載された発明も、本件補正後発明と同様に引用文献1及び参考文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえる。
さらに、引用文献1に記載された発明に対して参考文献1に記載された発明を適用し、パラメータ列の変更を、鍵固有パラメータに加えてカオスノイズをも用いて行うようにするに際して、鍵固有パラメータ及びカオスノイズとパラメータ列との対応付けをどのようにするのかは当業者が適宜定めなければならない事項であるところ、数値間の対応付けとして一般的な態様である「関数」(パラメータスケジュール関数)を用いることは当業者が適宜行い得るものといえるから、補正案3に請求項1として記載された発明も、本件補正後発明と同様に引用文献1及び参考文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえる。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-24 
結審通知日 2011-01-25 
審決日 2011-02-18 
出願番号 特願2003-53627(P2003-53627)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
宮司 卓佳
発明の名称 暗号生成装置、暗号復号装置、暗号生成プログラム、暗号復号プログラム、認証システム、電子装置  
代理人 本田 崇  
代理人 本田 崇  

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