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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1235321
審判番号 不服2009-7003  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-02 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2003-342041「携帯通信端末、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開、特開2005-109998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年9月30日に出願したものであって、平成20年1月28日付けの拒絶理由通知に対し平成20年4月7日付けで手続補正がなされたところ、平成21年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年4月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成21年4月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、平成20年4月7日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1について、次のように補正することを含むものである。

(1)補正前
「複数のアプリケーションを保有するアプリケーション保有手段と、
特定のアプリケーションを起動させる通知を受信する受信手段と、
前記保有する複数のアプリケーション毎に、前記アプリケーションを特定する情報と前記起動通知によるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを記憶する記憶手段と、
前記受信手段がアプリケーションを起動させる通知を受信した場合、該通知に含まれるアプリケーションを特定する情報と前記記憶手段におけるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを照合することにより当該アプリケーションの起動の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて当該アプリケーションの起動を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする携帯通信端末。」

(2)補正後
「複数のアプリケーションを保有するアプリケーション保有手段と、
特定のアプリケーションを起動させる通知を受信する受信手段と、
前記保有する複数のアプリケーション毎に、前記アプリケーションを特定する情報と前記起動通知によるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを記憶する記憶手段と、
前記受信手段がアプリケーションを起動させる通知を受信した場合、該通知に含まれるアプリケーションを特定する情報と前記記憶手段におけるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを照合することにより当該アプリケーションの起動の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記アプリケーションを起動させる通知により、前記アプリケーションを起動する、または起動しないように制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする携帯通信端末。」(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「制御手段」に関し、前記アンダーラインで示した補正箇所のとおりに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記1.(2)で認定したとおりである。

(2)引用例
拒絶査定の拒絶理由に引用され本件出願前に公開された特開2002-77438号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動作制御命令に応じて動作制御される携帯通信端末装置に関する。」(4ページ右欄50行?5ページ左欄2行)
ロ.「【0009】
【発明が解決しようとする課題】携帯電話装置の上述したサブ機能の設定をするには、ユーザは、携帯電話装置からサブ機能を設定するモードを選択し、複数あるサブ機能のメニューから所望のサブ機能、例えば、”着信音機能”などをキー操作などによって検索してから設定を実行する必要があった。さらに、サブ機能によっては、設定項目を複数備えている場合があり、それらを示したサブメニューからユーザは所望の設定項目を検索し、設定を実行する必要があった。
【0010】?【0013】(省略)
【0014】そこで本発明は、上述したような問題を解決するために案出されたものであり、備えられた各種機能をコマンド入力によって動作制御できる携帯通信端末装置・・・(中略)・・・を提供することを目的とする。」(5ページ左欄50行?右欄44行)
ハ.「【0029】携帯電話装置10は、上述した音声情報、文字情報、画像情報といった情報の送受信を行う機能をメイン機能としたとき、ユーザがこれらメイン機能を使用する際にメイン機能の補助的な働き及び携帯電話装置10に付加価値的な働きをするサブ機能を複数備えている。
【0030】サブ機能は、例えば、・・・(中略)・・・複数の電話番号やメールアドレスなどを記憶し管理する電話帖機能などである。・・・(中略)・・・。
【0031】ユーザは、所定の文字列からなる動作制御コマンドを携帯電話装置10に入力することで、サブ機能の設定、サブ機能の設定解除、サブ機能の利用をすることができる。
【0032】動作制御コマンドは、サブ機能の設定又はサブ機能の設定解除をする際に使用される動作制御コマンドと、サブ機能の利用をする際に使用される動作制御コマンドとの2種類に大別される。
【0033】(省略)
【0034】サブ機能の利用をする際に使用される動作制御コマンドは、例えば、電話帖に記載された電話番号やメールアドレスなどの情報を読み出したり、携帯電話装置10を使用した際の電話料金情報、通話した時間を示す通話料金情報などのユーザ情報を読み出すためのINFO(Innformation)コマンドである。
【0035】携帯電話装置10は、・・・(中略)・・・外部装置から通信網9を介し上述の動作制御コマンドを入力し動作制御される遠隔操作コマンド入力モード・・・(中略)・・・がある。」(7ページ左欄37行?右欄30行)
ニ.「【0050】続いて、携帯電話装置10の構成について説明をする。
【0051】?【0060】(省略)
【0061】無線部20は、アンテナ24と、RF(Radio Frequency)制御部21と、送信制御部22と、受信制御部23とを備えている。
【0062】?【0066】(省略)
【0067】CPU31は、KEY11から入力される動作制御コマンドに応じて各サブ機能の制御を行う。CPU31は、携帯電話装置10の動作を統括的に制御する。
【0068】RAM32は、書き込み読み出し自在なメモリであり、ユーザによるINFOコマンドの入力に応じてROM33、EEPROM34から読み出された情報を一時的に記憶する。・・・(中略)・・・。
【0069】ROM33は、読み出し専用のメモリであり、携帯電話装置10のサブ機能を制御するための動作制御コマンドが記憶されている。
【0070】EEPROM34は、電気的に書き込み及び消去可能なメモリであり、サブ機能の設定コマンドによって設定変更される設定情報と、INFOコマンドによって読み出されるユーザ情報とを記憶している。」(8ページ右欄17行?9ページ左欄47行)
ホ.「【0087】続いて図9に、入力された動作制御コマンドに応じて、機能の設定、解除、利用が可能な携帯電話装置10のサブ機能の一例を動作制御コマンドと供に示す。
【0088】?【0094】(省略)
【0095】ユーザ情報に関するサブ機能では、携帯電話装置10のCPU31で制御可能な全ての情報を取得する”情報”と、携帯電話装置10の現在の位置情報を要求する”位置情報取得”と、電話帖記載の情報を要求する”電話帳参照”と、携帯電話装置10が通話した履歴情報を要求する”通話履歴参照”と、携帯電話装置10に入力された動作制御コマンドの履歴情報を要求する”コマンド履歴参照”と、EEPROM34に格納されている設定情報を初期値にリセットする”設定情報リセット”と、INFOコマンドによって取得したユーザ情報を、指定したアドレスに電子メール又はショーットメッセージとして送信する”情報通知方法オプション”とが制御可能であり、コマンド入力による制御が可能なように設定されている場合、コマンド”INFO **** ”、”INFO LOCATION”、”INFO ADDRESS”、”INFO HISTORY”、”INFO COMMAND”、”INFO RESET”、”-MAIL ***@***.**.**(**-***-***)”コマンドをそれぞれ入力することで各サブ機能を利用することができる。」(10ページ左欄45行?11ページ左欄35行)
ヘ.「【0205】続いて、図24及び図26を用いて、遠隔操作コマンド入力モードの被操作端末である携帯電話装置10の処理動作について説明する。
【0206】?【0214】(省略)
【0215】ステップST66において、携帯電話装置10のCPU31は、携帯電話装置10’から送信されたコマンド通知要求信号(S9)が初期設定で設定されEEPROM34に格納されている遠隔入力モードで使用されることを許可された動作制御コマンドであるかどうかのチェックをする。
【0216】?【0219】(省略)
【0220】ステップST69において、CPU31は、コマンド通知要求信号(S9)として送信された動作制御コマンドがINFOコマンドであるかどうかの判断をする。INFOコマンドでない場合は工程はステップST70へと進み、INFOコマンドである場合は工程はステップST72へと進む。
【0221】?【0223】(省略)
【0224】ステップST72において、コマンド通知要求信号(S9)として送信された動作制御コマンドは、ステップST69でINFOコマンドであると判断されているので、CPU31は、EEPROM34、RAM32又はROM33に格納されている情報の中から所定の情報を読み込み、RAM32に一時的に記憶させる。
【0225】ステップST73において、CPU31は、コマンド通知要求信号(S9)として送信されたINFOコマンドに”情報通知方法オプション”が付加されているかどうかを判断する。”情報通知方法オプション”が付加されていない場合はステップST74へと工程を進め、付加されている場合はステップST75へと工程を進める。
【0226】ステップST74において、CPU31は、コマンド通知要求信号(S9)として送信されたINFOコマンドに、”情報通知方法オプション”が付加されていないことから、RAM32に一時的に記憶させた所定の情報を読み出してコマンド応答通知信号(S10)として通信網9を介し携帯電話装置10’に送信する。
【0227】ステップST75において、CPU31は、コマンド通知要求信号(S9)として送信されたINFOコマンドに、”情報通知方法オプション”が付加されていることから、付加された”情報通知方法オプション”が示す電話番号を宛先とするショートメッセージ(S13)を生成し、RAM32に一時的に記憶させた所定の情報をショートメッセージ(S13)の本文に添附する。
【0228】ステップST76において、CPU31は、ステップST75で生成したショートメッセージ(S13)を通信網9を介しSMS制御装置7へ送信し、さらに通信網9を介して携帯電話装置10’に送信する。
【0229】(省略)
【0230】このように、携帯電話装置遠隔装置システム1は、遠隔操作コマンド入力モードにおいて、携帯電話装置10と、携帯電話装置10’とが通信網9を介して接続され、携帯電話装置10’から動作制御コマンドを入力することで、当該携帯電話装置10の動作を連続的に遠隔地から制御できる。」(17ページ左欄50行?18ページ右欄45行)

上記摘記事項、及び当該技術分野の技術常識を加味すれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「位置情報取得、電話帳参照、通話履歴参照等、複数のサブ機能を備え、遠隔地の携帯電話装置10’から動作制御コマンドを入力することで、前記サブ機能の動作を制御できるようにした携帯電話装置10において、
前記サブ機能を利用する際に使用される動作制御コマンドであるINFOコマンドを受信する無線部20と、
前記サブ機能の制御を行うCPU31とを備え、
前記CPU31は、他の携帯電話装置10’から前記INFOコマンドを受信すると、RAM32に一時的に記憶させた位置情報、電話帳、通話履歴等、所定の情報を読み出して、通信網9を介し携帯電話装置10’に送信するようにした携帯電話装置。」

(3)対比・判断
引用発明と補正後の発明とを対比する。
イ.引用発明は、「位置情報取得、電話帳参照、通話履歴参照等、複数のサブ機能を備え、遠隔地の携帯電話装置10’から動作制御コマンドを入力することで、前記サブ機能の動作を制御できるようにした携帯電話装置10」であり、前記「サブ機能」は、アプリケーションといえ、また、携帯電話装置10がこのアプリケーションを保有する保有手段を備えることは自明であるから、「複数のアプリケーションを保有するアプリケーション保有手段」を備えた点で、補正後の発明と一致する。
ロ.引用発明は、「前記サブ機能を利用する際に使用される動作制御コマンドであるINFOコマンドを受信する無線部20」を備え、前記「動作制御コマンドであるINFOコマンド」、及び「無線部」は、それぞれ「特定のアプリケーションを起動させる通知」、「受信手段」といえるから、「特定のアプリケーションを起動させる通知を受信する受信手段」備えた点で、補正後の発明と一致する。
ハ.引用発明は、「前記サブ機能の制御を行うCPU31」を備え「前記CPU31は、他の携帯電話装置10’から前記INFOコマンドを受信すると、RAM32に一時的に記憶させた位置情報、電話帳、通話履歴等、所定の情報を読み出して、通信網9を介し携帯電話装置10’に送信する」ものであり、前記CPU31(制御手段)は、INFOコマンドを受信すると、「RAM32に一時的に記憶させた位置情報、電話帳、通話履歴等、所定の情報を読み出して、通信網9を介し携帯電話装置10’に送信する」という位置情報取得、電話帳参照、通話履歴参照等のサブ機能(アプリケーション)を起動することが明らかであるから、「前記アプリケーションを起動させる通知により、前記アプリケーションを起動するように制御する制御手段」を備えた点で、補正後の発明と一致する。
ニ、引用発明は、「携帯電話装置」であるから、「携帯通信端末」である点で,補正後の発明と一致する。

以上総合すると、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「複数のアプリケーションを保有するアプリケーション保有手段と、
特定のアプリケーションを起動させる通知を受信する受信手段と、
前記アプリケーションを起動させる通知により、前記アプリケーションを起動するように制御する制御手段と、
を備えた携帯通信端末。」

(相違点)
補正後の発明は、「前記保有する複数のアプリケーション毎に、前記アプリケーションを特定する情報と前記起動通知によるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを記憶する記憶手段」と、「前記受信手段がアプリケーションを起動させる通知を受信した場合、該通知に含まれるアプリケーションを特定する情報と前記記憶手段におけるアプリケーションの起動の可否を示す情報とを照合することにより当該アプリケーションの起動の可否を判定する判定手段」とを備え、制御手段が「前記判定手段の判定結果に基づいて、前記アプリケーションを起動させる通知により、前記アプリケーションを起動する、または起動しないように制御する」のに対して、引用発明は、この構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討すると、
拒絶理由で引用された特開2003-8738号公報(段落0030,0031等参照)、あるいは特開2003-189357号公報(段落0033?0037等参照)、国際公開第2003/048926号パンフレット(再公表特許7ページ36行?8ページ6行等参照)、特開平11-212894号公報(段落0009、0017等参照)等、に記載されているように、複数の機能を有する携帯通信端末において、特定のアプリケーションの利用制限、起動可否等の設定を行い、その設定に基づき、内部状態の変化や外部からの起動要求により前記特定アプリケーションの起動を制御することは周知であり、また、その具現化のために、設定情報記憶手段、アプリケーション起動可否判定手段、起動制御手段を設けることは設計的事項に過ぎない。
上記周知技術、及び設計的事項によれば、複数の機能を有する携帯通信端末において特定のアプリケーションを起動するという点で、技術分野、及び機能、作用を共通にする引用発明において前記相違点に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、補正後の発明の効果は、引用発明、及び周知技術から当業者が容易に予測し得るものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のとおり、補正後の発明は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年4月7日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(第2.1.(1)補正前、参照)と認められる。

2.引用発明
引用発明は、上記第2.3.(2)で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記第2.3.(3)で検討したとおり、引用発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-04 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-22 
出願番号 特願2003-342041(P2003-342041)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 伊佐雄  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 高野 洋
竹井 文雄
発明の名称 携帯通信端末、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 志賀 正武  

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