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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1235322
審判番号 不服2009-8812  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-23 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2003-202584「光記録媒体の記録方法及び記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 71396〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成15年7月28日(優先権主張 平成15年7月1日)の出願であって、平成20年7月8日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して同年9月5日付けで手続補正がされたが、平成21年3月16日付けで拒絶査定された。
これに対し、平成21年4月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月19日付けで手続補正がされた。
そして、平成22年11月30日付けで特許法第164条第3項による報告の内容を利用した審尋がなされ、平成23年1月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成21年5月19日付けの手続の補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成21年5月19日付けの手続の補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正
平成21年5月19日付けの手続の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「 【請求項1】 片面側から記録用レーザを照射して複数の記録層に対して情報信号となる長さnT(nは4以上、14以下の自然数、Tは基準クロック周期)のマークを形成する光記録媒体の記録方法において、
少なくとも前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスと、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスとを用いて前記記録用レーザをパルス状に照射して長さnTのマークを形成する場合に、前記ファーストパルスの前エッジの位置及び前記ラストパルスの後エッジの位置を補正して前記マークの長さが長くなるほど前記ファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記ラストパルスのパルス幅を短くしてマークを形成することを特徴とする、光記録媒体の記録方法。
【請求項2】 前記ラストパルスに対応する前記記録用レーザのパルス成分よりも前記ファーストパルスに対応する前記記録用レーザのパルス成分の最大パワーを大きくすることを特徴とする、請求項1に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項3】 前記記録用レーザの入射位置に対して最も近い記録層以外の記録層に前記マークを形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項4】 前記マークのうち長さ5T以上のマークを形成する際に、さらに前記マークの中間領域を形成するためのマルチパルスを用いて前記記録用レーザを照射することを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項5】 前記記録層が色素含有記録層であることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項6】 複数の記録層を有する光記録媒体の片面側から記録用レーザ光を入射させてそれぞれの記録層に所望の長さのマークを形成して情報を記録する光記録媒体の記録装置であって、
他の記録層を介してパルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くするように構成されることを特徴とする、光記録媒体の記録装置。
【請求項7】 複数の記録層を有する光記録媒体の片面側から記録用レーザ光を入射させてそれぞれの記録層に所望の長さのマークを形成して情報を記録する光記録媒体の記録装置であって、
他の記録層を介さずにパルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くするように構成されることを特徴とする、光記録媒体の記録装置。
【請求項8】 パルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、アシンメトリの値が所望の範囲内になるように記録レーザ光のパワーを調整するように構成されることを特徴とする、請求項6又は7記載の光記録媒体の記録装置。」
とあったところを、

本件補正後、
「 【請求項1】 片面側から記録用レーザを照射して複数の色素含有記録層に対して情報信号となる長さnT(nは4以上、14以下の自然数、Tは基準クロック周期)のマークを形成する貼り合わせ型の光記録媒体の記録方法において、
前記記録用レーザの入射位置に対して最も近い色素含有記録層以外の色素含有記録層に前記マークを形成する場合に、
少なくとも前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスと、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスとを用いて前記記録用レーザをパルス状に照射して長さnTのマークを形成する場合に、前記ファーストパルスの前エッジの位置及び前記ラストパルスの後エッジの位置を補正して前記マークの長さが長くなるほど前記ファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記ラストパルスのパルス幅を短くしてマークを形成することを特徴とする、光記録媒体の記録方法。
【請求項2】 前記ラストパルスに対応する前記記録用レーザのパルス成分よりも前記ファーストパルスに対応する前記記録用レーザのパルス成分の最大パワーを大きくすることを特徴とする、請求項1に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項3】前記マークのうち長さ5T以上のマークを形成する際に、さらに前記マークの中間領域を形成するためのマルチパルスを用いて前記記録用レーザを照射することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光記録媒体の記録方法。
【請求項4】 複数の色素含有記録層を有する貼り合わせ型の光記録媒体の片面側から記録用レーザ光を入射させてそれぞれの色素含有記録層に所望の長さのマークを形成して情報を記録する光記録媒体の記録装置であって、
他の色素含有記録層を介してパルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くするように構成されることを特徴とする、光記録媒体の記録装置。
【請求項5】 パルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、アシンメトリの値が所望の範囲内になるように記録レーザ光のパワーを調整するように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の光記録媒体の記録装置。」
とするものである。

上記本件補正の内容は、特許請求の範囲について、本件補正前の請求項に記載されていた発明特定事項である「光記録媒体」について限定を付加するとともに、請求項3、5、7を削除するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項4に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、本件補正における請求項4に記載されたとおりの
「 【請求項4】 複数の色素含有記録層を有する貼り合わせ型の光記録媒体の片面側から記録用レーザ光を入射させてそれぞれの色素含有記録層に所望の長さのマークを形成して情報を記録する光記録媒体の記録装置であって、
他の色素含有記録層を介してパルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くするように構成されることを特徴とする、光記録媒体の記録装置。」
であると認める。

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-67671号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審により付加したものである。)

(a)
「【請求項6】 光学ヘッドから出力されるレーザビームに基づいて層変化によるピットが形成され、可変長のピットとピットの間隔と、可変長の各ピットの長さにより光ディスクにデータが記録される光ディスク装置において、記録するデータに基づくパルスを生成する生成手段と、上記光学ヘッド内に設けられ、上記生成手段により生成されるパルスに応じてレーザビームを出力する出力手段と、
上記光学ヘッドの近傍の温度変化に準じて変化する上記出力手段による電流値を検知する検知手段と、
この検知手段により検知した電流値と前後のピットとの間隔と形成するピットの長さとに基づいて、上記生成手段により生成されるパルスの開始位置と終了位置を変更することにより、上記ピット列の各ピットの形成開始位置と形成終了位置を変更する変更手段と、を具備したことを特徴とする光ディスク装置。」

(b)
「【0043】たとえば、記録保障テーブル42aは、0度におけるテーブルであり、図3に示すように、マーク長(3T、4T、5T、6T以上)に対する前後(たとえばリーディング)のスペースの長さに基づく、記録信号(変調信号、NRZI信号)の立ち上がり時から記録波形のファーストパルスの立ち上げ位置までの時間(T_(SFP))であり、変調信号に応じて変更されるようになっている。この時間としてはnsecのオーダーとなっている。
【0044】この際、時間(T_(SFP))は、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くなり、前後のスペースが長くなるにしたがって時間が長くなるようになっている。」

(c)
「【0046】また、記録保障テーブル43aは、0度におけるテーブルであり、図4に示すように、マーク長(3T、4T、5T、6T以上)に対する前後(たとえばトレイリング)のスペースの長さに基づく、ラストパルスの立ち上げ位置の手前のマルチパルスが出力されるタイミングからラストパルスの立ち下げ位置までの時間(T_(ELP))であり、変調信号に応じて変更されるようになっている。この時間としてはnsecのオーダーとなっている。
【0047】この際、時間(T_(ELP))は、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くなり、前後のスペースが長くなるにしたがって時間が長くなるようになっている。」

(d)
「【0051】記録波形生成回路45は、変調回路44からの変調信号に基づいてCPU25から供給される切換信号とに基づいて、マルチパルス信号の記録パルスを生成するものである。
【0052】記録波形生成回路45は、図5に示すように、電源電圧供給部46、47、48、切換スイッチ49、50、51、加算器52、53により構成されている。
【0053】切換スイッチ48、49、50は、CPU25からの切換信号によりオン、オフされるものである。切換スイッチ49がオンした際に、電源電圧供給部46からの電源電圧が切換スイッチ49を介して加算器52に供給され、切換スイッチ50がオンした際に、電源電圧供給部47からの電源電圧が切換スイッチ50を介して加算器52に供給され、切換スイッチ51がオンした際に、電源電圧供給部48からの電源電圧が切換スイッチ51を介して加算器53に供給される。加算器52は切換スイッチ49、50からの信号を加算するものであり、加算器53は加算器52からの信号と切換スイッチ51からの信号を加算するものである。
【0054】切換スイッチ49、50、51がすべてオンされている際に、加算器53からは電源電圧供給部46、47、48からの電源電圧を加算したピークパワーの信号が出力され、切換スイッチ49、50の2つがオンされている際に、加算器53からは電源電圧供給部46、47からの電源電圧を加算したバイアスパワー1の信号が出力され、切換スイッチ49だけがオンされている際に、加算器53からは電源電圧供給部46からの電源電圧のバイアスパワー2の信号が出力され、切換スイッチ49、50、51がすべてオフされている際に、加算器53からはバイアスパワー3(ゼロレベル)の信号が出力される。
【0055】なお、ピークパワーの信号、バイアスパワー1の信号、バイアスパワー2の信号、バイアスパワー3の信号の順に電源電圧が低いものとなっている。(ピークパワーの信号>バイアスパワー1の信号>バイアスパワー2の信号>バイアスパワー3の信号)たとえば、変調回路44からの変調信号(NRZI信号)として5Tが供給された際に生成される記録波形について、図6の(a)(b)を用いて説明する。
【0056】すなわち、変調信号の立ち上り時、変調信号のローレベル時の切換スイッチ49、50の2つがオンされた状態で、加算器53からバイアスパワー1の信号の出力が維持されている。
【0057】そして、変調信号の立ち上りから時間T_(SFP)が経過した際、切換スイッチ51がさらにオンされることにより加算器53からファーストパルスの立ち上がりとしてのピークパワーの信号が出力され、この後、変調信号の立ち上りから所定時間経過した際に、切換スイッチ49、50、51がすべてオフされることにより加算器53からファーストパルスの立ち下がりとしてのバイアスパワー3の信号が出力され、この後、切換スイッチ49、50、51がすべてオンされることにより加算器53からマルチパルスの立ち上がりとしてのピークパワーの信号が出力され、この後、切換スイッチ49、50、51がすべてオフされることにより加算器53からマルチパルスの立ち下がりとしてのバイアスパワー3の信号が出力される。このマルチパルスが出力された後、次のマルチパルスを立ち上げるタイミングより所定時間送らせて切換スイッチ49、50、51がすべてオンされることにより加算器53からラストパルスを立ち上がりとしてのピークパワーの信号が出力され、上記マルチパルスが出力されるタイミングより時間T_(ELP)後に切換スイッチ49だけがオンされることにより加算器53からラストパルスの立ち下がりとしてのバイアスパワー2の信号が出力される。」

(e)
「【0063】この状態において、CPU25はPC31等からSCSIインタフェース制御部22を介して供給される記録データを変調回路44により変調して、CPU25に供給する。これにより、CPU25は供給される変調信号と、現在選択している記録保障テーブルにおける時間(時間T_(SFP)と時間T_(ELP))とに応じた、切換信号を記録波形生成回路45へ出力する。
【0064】すると、記録波形生成回路45はCPU25から供給される切換信号により記録波形(図6の(a)(b)参照)を生成し、記録パルスとしてレーザ制御ユニット5のトランジスタT1のベースに供給される。
【0065】これにより、上記記録パルスに基づいて、半導体レーザ発振器Dからレーザビームが発生され、光ディスク1上に記録ピットが生成される。」

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「光学ヘッドから出力されるレーザビームに基づいてピットが形成され、可変長のピットとピットの間隔と、可変長の各ピットの長さにより光ディスクにデータが記録される光ディスク装置において、
記録するデータに基づくパルスを生成する生成手段と、上記光学ヘッド内に設けられ、上記生成手段により生成されるパルスに応じてレーザビームを出力する出力手段と、記録信号の立ち上がり時から記録波形のファーストパルスの立ち上げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くし、ラストパルスの立ち上げ位置の手前のマルチパルスが出力されるタイミングからラストパルスの立ち下げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くすることにより、形成するピットの長さに基づいて、上記ピット列の各ピットの形成開始位置と形成終了位置を変更する変更手段からなる光ディスク装置。」

3.対比
そこで、本願補正発明を、引用発明と比較する。

引用発明において「光ディスク」は「記録層」を備えていることは明らかであるから、引用発明の「光ディスク」は、本願補正発明の「光記録媒体」と、「記録層を有する光記録媒体」である点で一致する。
引用発明の「レーザビーム」は、本願補正発明の「記録用レーザ光」に相当し、また、引用発明においても「光ディスク」へ入射させていることは明らかである。
そして、引用発明の「レーザビーム」は「パルスに応じて」出力されるので、本願補正発明の「パルス状の記録用レーザ光」である点で一致する。

引用発明の「データ」は、本願補正発明の「情報」に相当し、また、引用発明の「ピット」「マーク」は、どちらも本願補正発明の「マーク」に相当することは明らかである。
そして、引用発明の「マーク長」は、本願補正発明の「マークの長さ」に相当する。

引用発明の「光ディスク装置」は、本願補正発明の「光記録媒体の記録装置」に相当する。

引用発明と本願補正発明において、「ファーストパルス」「ラストパルス」は共通する。
そして、上記摘記事項(d)の「変調信号の立ち上りから時間T_(SFP)が経過した際、切換スイッチ51がさらにオンされることにより加算器53からファーストパルスの立ち上がりとしてのピークパワーの信号が出力され、この後、変調信号の立ち上りから所定時間経過した際に、切換スイッチ49、50、51がすべてオフされることにより加算器53からファーストパルスの立ち下がりとしてのバイアスパワー3の信号が出力され」る旨の記載も参照すると、引用発明の「記録信号の立ち上がり時から記録波形のファーストパルスの立ち上げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短く」する点は、本願補正発明の「前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長く」する点に相当する。
また、上記摘記事項(d)の「次のマルチパルスを立ち上げるタイミングより所定時間送らせて切換スイッチ49、50、51がすべてオンされることにより加算器53からラストパルスを立ち上がりとしてのピークパワーの信号が出力され、上記マルチパルスが出力されるタイミングより時間T_(ELP)後に切換スイッチ49だけがオンされることにより加算器53からラストパルスの立ち下がりとしてのバイアスパワー2の信号が出力される」旨の記載も参照すると、引用発明の「ラストパルスの立ち上げ位置の手前のマルチパルスが出力されるタイミングからラストパルスの立ち下げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くする」点は、本願補正発明の「前記マークの長さが長くなるほど」「前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くする」点に相当する。

すると、本願補正発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
記録層を有する光記録媒体(へ)記録用レーザ光を入射させて記録層に所望の長さのマークを形成して情報を記録する光記録媒体の記録装置であって、
パルス状の記録用レーザ光を照射して前記マークを形成する場合、前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くするように構成される、光記録媒体の記録装置。

一方で、以下の点で相違する。
<相違点>1.
本願補正発明は「光記録媒体」が「複数の色素含有記録層を有する貼り合わせ型の光記録媒体」と特定され、その「記録用レーザ光」を「片面側から」入射させると特定されているのに対し、引用発明では「光ディスク」及び「レーザビーム」の入射について特定されていない点。
<相違点>2.
本願補正発明は「パルス状の記録用レーザ光」について、「他の色素含有記録層を介して」「マークを形成する場合」に「前記マークの長さが長くなるほど前記マークの始端領域を形成するためのファーストパルスのパルス幅を長くし、かつ、前記マークの終端領域を形成するためのラストパルスのパルス幅を短くする」と特定されているのに対し、引用発明の「レーザビーム」は「記録信号の立ち上がり時から記録波形のファーストパルスの立ち上げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くし、ラストパルスの立ち上げ位置の手前のマルチパルスが出力されるタイミングからラストパルスの立ち下げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くする」場合について特定されていない点。

4.判断
<相違点>1.及び2.について
光記録媒体として「複数の色素含有記録層を有する貼り合わせ型の光記録媒体」及び、そのような光記録媒体へ「記録用レーザ光」を「片面側から」入射させて記録マークを形成する点は、原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-14677号公報(「貼り合わせ型」については【請求項1】及び段落【0023】、「色素含有記録層」については段落【0017】、「片面側から」入射させる点については【請求項1】及び【0004】の記載等を特に参照されたい。)や、例えば、特開平10-269575号公報(「貼り合わせ型」については段落【0017】、「色素含有記録層」については段落【0015】及び【0025】、「片面側から」入射させる点については段落【0007】及び【0018】の記載等を特に参照されたい。)等に記載されているように周知技術にすぎない。
すると、引用発明の「光ディスク」として、上記周知の光記録媒体を採用し、その「レーザビーム」を「片面側から」入射させることは、当業者が容易になし得たものである。
このとき、引用発明の「レーザビーム」は「複数の色素含有記録層」のすべての層に対して「記録信号の立ち上がり時から記録波形のファーストパルスの立ち上げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くし、ラストパルスの立ち上げ位置の手前のマルチパルスが出力されるタイミングからラストパルスの立ち下げ位置までの時間を、マーク長が長くなるにしたがって時間が短くする」こととなるのは当然であるから、「他の色素含有記録層を介して」「マークを形成する場合」と特定する点に格別のものはない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
平成21年5月19日付けの手続の補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成20年9月5日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであるところ、請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 〔理 由〕1.」に本件補正前の請求項6として掲げたとおりのものである。

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理 由〕2.」に引用例として記載したとおりのものである。

3.対比
本願発明は、「第2 〔理 由〕」で検討した本願補正発明の「光記録媒体」について、その限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理由〕4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-07 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-24 
出願番号 特願2003-202584(P2003-202584)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 勇太小山 和俊  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 関谷 隆一
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 光記録媒体の記録方法及び記録装置  
代理人 真田 有  

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