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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1235334
審判番号 不服2010-24  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-04 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2004- 76350「鉄芯の製造方法とその方法に適した装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開,特開2005-269732〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成16年3月17日の出願であって,平成21年9月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項5は,
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備え,ペースト状熱硬化樹脂接着剤を,ディスペンサにシリンジを介して接続され,複数のニードルを具備するノズルを有する接着剤供給部を用いて単位鉄芯の鋼板表面に点状あるいは線状に塗布する接着剤供給部を備えることを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」
と補正された。

上記補正は,請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のニードルを具備するノズルを有する接着剤供給部」について「ディスペンサにシリンジを介して接続され」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-25218号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,積層鉄心を製造する金型装置に関する。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来の接着材によるカシメ積層は,接着強度が前記のカシメ突起による機械的カシメや,レーザー溶接カシメほど信頼性がないことの他に,接着材塗布は他の面から見れば軟質物が被打ち抜き材料に付着することであり,その後の打ち抜き作業時に粘つき,打ち抜きに支障をきたすこと,また塗布した接着材が垂れ,金型装置を汚し,金型装置の本来の所定形状打ち抜き機能に悪影響を及ぼすおそれがある等から,実際には実施されていない。」

・「【0008】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る積層鉄心製造金型装置の実施例を示す断面図,図2は本発明による鉄心片の順送り打ち抜きの例を示す平面図である。
【0009】これらの図において,1は固定金型,2は可動金型,3はストリッパー兼金型ガイド,4は被打ち抜き金属板である。5はガイド孔抜きパンチ,6はスロット抜きパンチであり,7は鉄心を打ち抜く外形抜きパンチであり,打ち抜かれた鉄心片9はダイ8内にて先行して打ち抜きされている鉄心片に接着材にて接着される。10は接着材を被打ち抜き金属板4に下面側から付ける吐出局部付着装置,11は接着材を供給するディスペンサ,12はシリンジ,13は注射器状吐出器である。14はダイ面に設けた凹み溝であり,前記吐出局部付着装置10を設けた箇所から外形抜きのダイ8の方に形成されている。また,図2はこの実施例で回転子鉄心片を打ち抜きするのを示すもので,4aは打ち抜き工程の1ピッチ間隔で開けられるガイド孔,4bは軸孔,4cはスロット,4dは軸孔に対して同心状に付着された接着材,4eは外形打ち抜きパンチにより打ち抜かれた鉄心片の外形である。
【0010】本発明においては,金属板4から鉄心片9を外形抜きするパンチ7とダイ8の前方に,鉄心片打ち抜き予定域の下面へ接着材を付ける吐出局部付着装置10を複数,ダイ8に臨ませて設けている。その吐出局部付着装置10を臨ませた箇所から外形抜きパンチ7とダイ8の間の被打ち抜き鉄心片が通るダイ8の表面に,被打ち抜き鉄心片に付けた接着材が当接しないように凹み溝14を必要に応じて設ける。これにより,前記凹み溝14を設けた場合は,接着材が乾きにくく,また軟らかくても接着材の接触広がりや汚れが無くなり,さらに,接着材は所定付着位置にそのまま付いていて打ち抜き積層後の接着かしめ強さもより高まる。
【0011】前記吐出局部付着装置10は,この実施例ではディスペンサ11,シリンジ12及びノズル13で構成されている。この吐出局部付着装置10は接着材を被打ち抜き鉄心片に局部的に付けるので,その他の外形打ち抜き箇所には接着材が付かず,次工程の打ち抜きが支障なく行われる
【0012】なお,接着材を被打ち抜き金属板4に局部的に付着させる吐出局部付着装置10は,注射器状吐出器,スタンプ装置などの装置でもよい。
【0013】下面に接着材が局部的に付着された鉄心片9は,外形抜きパンチ7で外形抜きされる際に接着材4dが害することなく打ち抜きされ,所定枚数積層され,所定の圧力でプレスされてより強固に接着し,鉄心となる。
【0014】また,前記実施例では回転子鉄心について述べたが,これに限らず固定子鉄心の製造にも適用することができる。」

・「【0015】
【発明の効果】上述したように,本発明によれば下記の効果を奏する。
【0016】(1)金属板から鉄心片を外形抜きするパンチとダイの前方に,前記鉄心片打ち抜き予定域の下面へ接着材を付ける吐出局部付着装置を複数,ダイに臨ませているので,被打ち抜き鉄心片に局部的に接着材が付着され,たれる間もなく直ぐに外形抜きされ,かしめ積層される。
【0017】(2)接着材の吐出局部付着装置をダイに臨ませ設けた箇所から外形抜きパンチとダイの間の被打ち抜き鉄心片が通るダイ面に,前記被打ち抜き鉄心片に付けた接着が当接しないように凹み溝を設けることにより,接着材の接触広がりや汚れが一層無くなり,さらに,打ち抜き後の接着かしめ強さもより高まる。また,前記のように接着かしめ強さが高まるので,鉄心片が例えば0.2mm未満と薄くても強固に積層される。
【0018】(3)前記吐出局部付着装置,例えばディスペンサ,注射器状吐出器,ノズルで接着材を被打ち抜き鉄心片に局部的に付けるので,その後の外形打ち抜き箇所には接着材が付いてなく,打ち抜きが支障なく行われる。」

・図1には,ディスペンサ11にシリンジ12を介して接続され,複数の注射器状突出部を具備するノズル13を有する吐出局部付着装置10が示され,図2には,接着材4dが点状に付着される態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「可動金型2と固定金型1とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた鉄心片9を積層する鉄心片9の積層部をダイ8内に備え,接着材4dを,ディスペンサ11にシリンジ12を介して接続され,複数の注射器状突出部を具備するノズル13を有する吐出局部付着装置10を用いて鉄心片9の下面に点状に付着させる吐出局部付着装置10を備える積層鉄心製造金型装置。」

b)同じく,引用された特開2002-151339号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。

・「【請求項6】 雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備え,接着剤を単位鉄芯の部分的表面あるいは端面に塗布する接着剤供給部を備えることにより,積層した単位鉄芯を一体化することを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」

c)同じく,引用された特開2002-164224号公報(以下「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。

・「【0026】また,本発明の第3の態様によれば,硬化して,室温からの重量減少が5%となる温度(Td_(5))が空気中において300℃以上である耐熱性樹脂となる樹脂を磁性薄板の少なくとも一部分に付着させ,その後,前記耐熱性樹脂となる樹脂が付着された前記磁性薄板を巻回または前記耐熱性樹脂となる樹脂が付着された前記磁性薄板同士を積層し,その後,前記耐熱性樹脂となる樹脂を硬化させて,前記耐熱性樹脂が付与されると共に巻回または積層された前記磁性薄板を形成することを特徴とする磁性基材の製造方法が提供される。
【0027】この方法は,例えば,耐熱性樹脂が,熱硬化性樹脂である場合に好適に用いられるが,耐熱性樹脂が,熱可塑性樹脂等の非熱硬化性樹脂である場合にも用いることができる。」

・「【0080】また,本発明における磁性薄板の片面または両面もしくは端面の少なくとも一部分に付着させる樹脂として,ペ-スト状樹脂を使用する場合は,主として磁性薄板と磁性薄板など複数の磁性薄板を積層する場合に用いることが好ましい。そのため,樹脂は液状樹脂のような流動性よりは仮接着固定や仮止めができる粘度があれば良く,ポッティングや刷毛塗りなどの方法で塗布することができる。したがって,樹脂の粘度としては,5Pa・s以上の粘度であることが好ましい。」

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「可動金型2」は前者の「雄型打抜き金型」に,後者の「固定金型1」は前者の「雌型打抜き金型」に,後者の「鉄心片9」は前者の「単位鉄芯」に,それぞれ相当している。

次に,後者の「鉄心片9の積層部をダイ8内に備え」る態様と前者の「単位鉄芯積層部を分離して備え」る態様とは,「単位鉄芯積層部を備え」るとの概念で共通している。

また,後者の「接着材4d」と前者の「ペースト状熱硬化樹脂接着剤」とは,「接着剤」との概念で共通している。

さらに,後者の「複数の注射器状突出部を具備するノズル13」は前者の「複数のニードルを具備するノズル」に,後者の「吐出局部付着装置10」は前者の「接着剤供給部」に,後者の「鉄心片9の下面」は前者の「単位鉄芯の鋼板表面」に,後者の「点状に付着させる」態様は前者の「点状あるいは線状に塗布する」態様に,後者の「積層鉄心製造金型装置」は前者の「積層鉄芯の製造装置」に,それぞれ相当している。

したがって,両者は,
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を備え,接着剤を,ディスペンサにシリンジを介して接続され,複数のニードルを具備するノズルを有する接着剤供給部を用いて単位鉄芯の鋼板表面に点状あるいは線状に塗布する接着剤供給部を備える積層鉄芯の製造装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
単位鉄芯積層部を備える態様に関し,本願補正発明は,単位鉄芯積層部を「分離して」,即ち,打抜き加工部と別体に備えているのに対し,引用発明は,「ダイ8内に」,即ち,打抜き加工部と一体に備えている点。
[相違点2]
接着剤に関し,本願補正発明は,「ペースト状熱硬化樹脂」接着剤であるのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1について
例えば,引用例2にも開示されているように,雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備える構成は,積層鉄芯の製造装置の分野における周知の構成である。
そうすると,引用発明において,上記周知の構成に倣い,単位鉄芯積層部を分離して備えることにより,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

・相違点2について
例えば,引用例3にも開示されているように,単位鉄芯の鋼板表面に塗布する接着剤(「磁性薄板の一部に付着させる場合の樹脂」が相当)として,ペースト状熱硬化樹脂(「熱硬化性樹脂」からなる「ペースト状樹脂」が相当)を用いることが好ましいことは,積層鉄芯(「複数の磁性薄板を積層したもの」が相当)の製造装置の分野における周知の事項である。
そうすると,引用発明において,上記周知の事項を踏まえ,積層鉄芯に用いる接着剤の種類をペースト状熱硬化樹脂とすることで,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易である。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,上記周知の構成及び上記周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明,上記周知の構成及び上記周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項5に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成21年3月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「雄型打抜き金型と雌型打抜き金型とを有する打抜き加工部を具備し,打抜かれた単位鉄芯を積層する単位鉄芯積層部を分離して備え,ペースト状熱硬化樹脂接着剤を複数のニードルを具備するノズルを有する接着剤供給部を用いて単位鉄芯の鋼板表面に点状あるいは線状に塗布する接着剤供給部を備えることを特徴とする積層鉄芯の製造装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「複数のニードルを具備するノズルを有する接着剤供給部」について「ディスペンサにシリンジを介して接続され」との限定構成を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり,引用発明,上記周知の構成及び上記周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,上記周知の構成及び上記周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知の構成及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2004-76350(P2004-76350)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森山 拓哉  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 神山 茂樹
田良島 潔
発明の名称 鉄芯の製造方法とその方法に適した装置  
代理人 田村 弘明  
代理人 田村 弘明  
代理人 吉迫 大祐  
代理人 渡辺 良幸  
代理人 吉迫 大祐  
代理人 津波古 繁夫  
代理人 渡辺 良幸  
代理人 津波古 繁夫  

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