• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1235343
審判番号 不服2010-6572  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-29 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2005- 74339「光源装置及び投写型画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-260865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成17年3月16日の出願であって,平成22年1月26日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2000-036214号公報
2.特開2004-294749号公報」

第3.平成22年3月29日付け手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月29日付け手続補正(以下,「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は,平成21年10月28日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲については,補正前に
「【請求項1】放電ランプと,前記放電ランプから出射された光を反射して出射する反射鏡であって,反射面とその背面とを有する反射鏡と,前記反射鏡の出射側に配置された透光板と,前記放電ランプ,前記反射鏡及び前記透光板を収容するケースとを備え,前記反射鏡と前記透光板とが一定の領域を囲み,前記ケースが,吸気口と排気口とを有し,前記反射鏡が,その透光板側の端部近傍に吸気口と排気口とを有し,前記反射鏡の前記排気口と前記ケースの前記排気口とをつなぐ導風路をさらに備え,前記ケースの前記吸気口から導入した空気を,前記反射鏡の前記背面側を通過させて,前記反射鏡の前記吸気口から前記領域に導き,さらに,前記反射鏡の前記排気口から,前記導風路内を通過させ,前記ケースの前記排気口を介して外部に排気するよう構成された光源装置。
【請求項2】前記ケースは,前記透光板に対応する開口部を有する前面部を備え,前記ケースの前記排気口は,前記ケースの前記前面部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】前記ケースの前記吸気口及び前記排気口に,空気を通過させ,且つ前記放電ランプの破片を通過させない部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】前記吸気口が,前記ケースに,前記反射鏡の前記背面に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】前記排気口が,前記ケースにおいて,前記反射鏡の前記排気口の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】請求項1から5までのいずれか1項に記載の光源装置と,前記光源装置から出射された光を変調してスクリーン上に投写する投写手段と,前記光源装置の前記ケースの前記吸気口から前記ケース内に空気を送り込むための送風ファンとを備えたことを特徴とする投写型画像表示装置。
【請求項7】前記送風ファンは,前記光源装置の出射側とは反対の側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の投写型画像表示装置。
【請求項8】前記光源装置の出射側に,さらにファンを備えたことを特徴とする請求項7に記載の投写型画像表示装置。」
とあるのを

「【請求項1】放電ランプと,前記放電ランプから出射された光を反射して出射する反射鏡であって,反射面とその背面とを有する反射鏡と,前記反射鏡の出射側に配置された透光板と,前記放電ランプ,前記反射鏡及び前記透光板を収容するケースであって,前記透光板に対応する開口部を有する前面部を備えたケースとを備え,前記反射鏡と前記透光板とが一定の領域を囲み,前記ケースが,吸気口と排気口とを有し,前記反射鏡が,その透光板側の端部近傍に吸気口と排気口とを有し,前記ケースの前記排気口は,前記ケースの前記前面部において,前記反射鏡の排気口の近傍に形成され,前記反射鏡の前記排気口と前記ケースの前記排気口とをつなぐ導風路をさらに備え,前記ケースの前記吸気口から導入した空気を,前記反射鏡の前記背面側を通過させて,前記反射鏡の前記吸気口から前記領域に導き,さらに,前記反射鏡の前記排気口から,前記導風路内を通過させ,前記ケースの前記排気口を介して外部に排気するよう構成された光源装置。
【請求項2】前記ケースの前記吸気口及び前記排気口に,空気を通過させ,且つ前記放電ランプの破片を通過させない部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】前記吸気口が,前記ケースに,前記反射鏡の前記背面に対向するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】前記排気口が,前記ケースにおいて,前記反射鏡の前記排気口の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】請求項1から4までのいずれか1項に記載の光源装置と,前記光源装置から出射された光を変調してスクリーン上に投写する投写手段と,前記光源装置の前記ケースの前記吸気口から前記ケース内に空気を送り込むための送風ファンと を備えたことを特徴とする投写型画像表示装置。
【請求項6】前記送風ファンは,前記光源装置の出射側とは反対の側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の投写型画像表示装置。
【請求項7】前記光源装置の出射側に,さらにファンを備えたことを特徴とする請求項6に記載の投写型画像表示装置。」
と補正するものである。

補正後の請求項1は,補正前の請求項1あるいは請求項2に由来するもので,補正後の請求項1が補正前の請求項1に対応するとした場合は,補正前の請求項2が削除されたと解され,補正後の請求項1が補正前の請求項2に対応するとした場合は,補正前の請求項1が削除されたと解される。補正後の請求項2ないし請求項7は,補正前の請求項3ないし請求項8に由来するものである。
補正後の請求項1が補正前の請求項1に対応するとした場合,該補正は,ケースについて,「前記透光板に対応する開口部を有する前面部を備えた」との限定を付すとともに,ケースの排気口について,「前記ケースの前記排気口は,前記ケースの前記前面部において,前記反射鏡の排気口の近傍に形成され,」との限定を付したものであり,補正後の請求項1が補正前の請求項2に対応するとした場合,該補正は,ケースの排気口について,「前記反射鏡の排気口の近傍に形成され,」との限定を付したものである。
補正後の請求項2ないし請求項7は,形式的には,補正前の請求項1あるいは請求項2の削除に伴い,引用する請求項の番号を1つずつ繰り上げたに過ぎないものであるが,これらの請求項は,直接あるいは間接に請求項1を引用するから,上記と同じ内容の補正がなされたとえいる。
そして,本件補正が産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-36214号公報(以下,「引用例1」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
1a)「【請求項1】発光体(20)を有する光源(2)と,光源(2)を収納する枠体(1)とを具え,枠体(1)はシャーシ(3)に着脱自在に配備されて,冷却空気の光源(2)への給気手段と,光源(2)からの排気手段とが設けられた光源装置に於いて,枠体(1)は,前面が透明部材で覆われて,周囲が密閉されたことを特徴とする光源装置。」

1b)「【0008】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一例を図を用いて詳述する。従来と同一構成については,同一符号を用いて,詳細な説明を省略する。・・・図1は,枠体(1)の斜視図であり,図2はその正面図,図3は図1を左側から見た状態を破断し,内部に光源(2)を収容した側面図である。枠体(1)は周囲が覆われ,前面が開口(15)している。該前面開口(15)に,透明なUVフィルタ(33)が嵌まり,枠体(1)は密閉されている(図3参照)。枠体(1)は上段室(11),中段室(10),下段室(12)の3段に区分けされ,中段室(10)に光源(2)が収納される。」(第3頁第3欄第22?36行)

1c)「上段室(11)の底面及び中段室(10)の底面の前端部には,内向きに凹んだ切欠き(17)(19)が開設され,後記するように,切欠き(17)(19)は光源(2)の冷却空気の通過を許す。」(第3頁第3欄第45?48行)

1d)「【0011】(冷却空気の流路)図2,図3に示す枠体(1)の奥部外側の別部品には,給気用のファン(50)が取り付けられ,該ファン(50)からの空気は,枠体(1)に開設された透窓(14)を通って枠体(1)の内側に位置する給気室(13)に流れる。給気室(13)からの空気は,給気室(13)の側面及び底面に開設された透孔(18)を通って,上段室(11)及び中段室(10)に流れる。上段室(11)の底面には,多数の透孔(18a)が開設され,上段室(11)の空気は該透孔(18a)及び前記切欠き(17)を通って,中段室(10)に流れる。
【0012】中段室(10)の空気は,底面の切欠き(19)を通って下段室(12)に流れる。下段室(12)は,図3に示すように,側面に長孔(16)が開設された排気室(8)と,中段室(10)の底面と排気室(8)の間に位置する繋ぎ室(80)の2室に区分けされている。繋ぎ室(80)は,光源(2)のリフレクタ(25)の下端部に対向した第1水平室(81)と,第1水平室(81)の奥側端部から斜め上向きに奥に延びた傾斜室(83)と,該傾斜室(83)の上端から奥に延びた第2水平室(82)とを具える。第2水平室(82)の底面には,透孔(18b)が開設され,中段室(10)から繋ぎ室(80)に流入した空気は,該透孔(18b)を通って排気室(8)から排気される。繋ぎ室(80)をこのように長く形成している理由は後記する。下段室(12)の側面の別部品には,図2に示すように,排気用のファン(5)が取り付けられ,長孔(16)を通って下段室(12)内の空気を強制的に排出する。」

1e)「【0013】図2に示す給気用のファン(50)により,枠体(1)の透窓(14)から給気された冷却用空気は,図3の給気室(13)に一旦流入し,一部は透孔(18)(18a)を通って,上段室(11)に流れる。上段室(11)内の空気は,切欠き(17)を通って,リフレクタ(25)の上端部から下向きに流れる。該空気は,発光体(20)の先端部に位置する軸体(23)を冷却する。軸体(23)に触れた空気は,排気用のファン(5)により,リフレクタ(25)の切欠き(28)を通って,繋ぎ室(80)に吸引される。この流れにより,発光体(20)の先端部に位置する軸体(23)は冷やされる。給気室(13)からの空気の一部は中段室(10)に入る。中段室(10)に流れた空気は,光源(2)の支持片(26)の切欠部(27)からリフレクタ(25)の内側に流れる。この空気は,発光体(20)の基端部に位置する軸体(22)を冷却した後に,リフレクタ(25)の切欠き(28)を通って,繋ぎ室(80)に吸引される。」

1f)図3を参照すると,リフレクタ(25)の右側端部すなわちUVフィルタ(33)側端部の上下にそれぞれ切欠き(28)が設けられることが看取できる。

上記記載事項1a?1fによれば,引用例1には以下の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という)。
「発光体(20)の背面にリフレクタ(25)を設けて構成される光源(2)と,前面開口(15)に透明なUVフィルタ(33)が嵌められた枠体(1)とを備えた光源装置であって,枠体(1)は,上段室(11),中段室(10)及び下段室(12)に区分けされ,中段室(10)には光源(2)が収納され,下段室(12)は,さらに排気室(8)と繋ぎ室(80)に区分けされ,リフレクタ(25)のUVフィルタ(33)側端部の上下にそれぞれ切欠き(28)が設けられており,給気用のファン(50)により枠体(1)の透窓(14)から給気室(13)に流入した冷却用空気の一部は,給気室(13)に開設された透孔(18)と上段室(11)の底面に開設された多数の透孔(18a)を通って上段室(11)に流れ,さらに,上段室(11)の底面に開設された切欠き(17)を通ってリフレクタ(25)の上側切欠き(28)から下向きに流れ,発光体(20)の先端部に位置する軸体(23)を冷却する一方,前記冷却用空気の他の一部は,給気室(13)に開設された透孔(18)を通って中段室(10)に入った後,光源(2)の支持片(26)の切欠部(27)からリフレクタ(25)の内側に流れ,発光体(20)の基端部に位置する軸体(22)を冷却し,発光体(20)の先端部及び基端部を冷却した後の空気は,排気用のファン(5)により,リフレクタ(25)の下側切欠き(28)と中段室(10)の底面に開設された切欠き(19)を通って繋ぎ室(80)に吸引された後,排気室(8)に開設された長孔(16)から排気されるようにした光源装置。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-294749号公報(以下,「引用例2」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
2a)「【0009】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は,本発明の光源装置に適用される光源10の外観図であり,図2はその断面図である。光源10は,発光体11と,この発光体11を覆うように設けられた反射部材12と,反射部材12の開口端を塞ぐ前面ガラス部材13を備えている。
発光体11は,投射型映像表示機器に一般的に用いられるランプであり,例えばメタルハライドランプ,あるいは超高圧水銀ランプまたはキセノンランプ等で構成され,その長手方向が反射部材12の反射面の軸と略と一致するように,反射部材12の根本部に固定されている。発光体11は,反射部材12から突出する部分に一方の電極が設けられ,他方の電極は反射部材12内部の端に形成され,その電極に接続される図示しないリードが反射部材12の反射面を貫通して光源10の外部に導出される。
【0010】反射部材11は,内面が放物面あるいは楕円面に形成され,反射素材がコーティングされた例えば硬質ガラスで構成され,前面ガラス部材13側の端部に開孔部14が設けられている。開孔部14は,略長方形状を有し,発光体11を挟んで対向するように一対設けられている。」

2b)「【0012】さらに,筐体31には,光源10の開孔部14の一方に対応して導風路を構成する排気ダクト34が設けられている。排気ダクト34の排気側には,排気ファン35が設けられ,排気ファン35によって排気ダクト34内の空気が,筐体31の排気部36から排気される。排気部36は,筐体31を部分的に断面にして示されている。図に示すように排気部36は筐体31の内壁と外壁を貫通する複数の穴で構成されるものとして示されているが,排気が可能であればいかなる構造であっても構わない。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「発光体(20)」,「リフレクタ(25)」,「UVフィルタ(33)」,「枠体(1)」は,それぞれ本願補正発明の「放電ランプ」,「反射鏡」,「透光板」,「ケース」に相当する。
引用発明の「透窓(14)」は,本願補正発明における「ケース」の「吸気口」に相当し,同様に,「長孔(16)」は,本願補正発明における「ケース」の「排気口」に,「リフレクタ(25)の上側切欠き(28)」は,本願補正発明における「反射鏡」の「吸気口」に,「リフレクタ(25)の下側切欠き(28)」は,本願補正発明における「反射鏡」の「排気口」に相当する。
引用発明は,枠体(1)前面開口(15)に透明なUVフィルタ(33)が嵌められるものであるから,本願補正発明における「透光板に対応する開口部を有する前面部を備えたケース」との要件を備える。
引用発明は,枠体(1)の透窓(14)から給気室(13)に流入した冷却用空気の一部は,上段室(11)に流れ,さらに,上段室(11)の底面に開設された切欠き(17)を通ってリフレクタ(25)の上側切欠き(28)から下向きに流れ,発光体(20)の先端部に位置する軸体(23)を冷却した後,リフレクタ(25)の下側切欠き(28)と中段室(10)の底面に開設された切欠き(19)を通って繋ぎ室(80)に吸引された後,排気室(8)に開設された長孔(16)から排気されるものであるから,本願補正発明における「ケースの吸気口から導入した空気を」「反射鏡の吸気口から(反射鏡と透光板が囲む)領域に導き,さらに,反射鏡の排気口から」「ケースの排気口を介して外部に排気する」との要件を備えるといえる。
引用発明において,リフレクタ(25)とUVフィルタ(33)とが一定の領域を囲むことは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば,
「放電ランプと,前記放電ランプから出射された光を反射して出射する反射鏡であって,反射面とその背面とを有する反射鏡と,前記反射鏡の出射側に配置された透光板と,前記放電ランプ,前記反射鏡及び前記透光板を収容するケースであって,前記透光板に対応する開口部を有する前面部を備えたケースとを備え,前記反射鏡と前記透光板とが一定の領域を囲み,前記ケースが,吸気口と排気口とを有し,前記反射鏡が,その透光板側の端部近傍に吸気口と排気口とを有し,前記ケースの前記吸気口から導入した空気を,前記反射鏡の前記吸気口から前記領域に導き,さらに,前記反射鏡の前記排気口から,前記ケースの前記排気口を介して外部に排気するよう構成された光源装置。」
である点で一致し,以下の点で一応相違する。
[相違点1]
本願補正発明では,ケースの吸気口から導入された空気が反射鏡の吸気口に至るまでの間に,反射鏡の背面側を通過するのに対して,引用発明では,透窓(14)から導入された空気がリフレクタ(25)の上側切欠き(28)に至るまでの間に,リフレクタ(25)の背面側を通過するか否か必ずしも明らかではない点。
[相違点2]
本願補正発明では,ケースの排気口は,ケースの前面部において,反射鏡の排気口の近傍に形成され,反射鏡の排気口とケースの排気口とをつなぐ導風路をさらに備えるのに対して,引用発明では,長孔(16)は,枠体(1)の前面部に形成されるものでも,リフレクタ(25)の下側切欠き(28)の近傍に形成されるものでもなく,また,リフレクタ(25)の下側切欠き(28)と中段室(10)の底面に開設された切欠き(19)との間は特に導風路が設けられていないため,リフレクタ(25)の下側切欠き(28)から長孔(16)までの冷却風通路のすべてが導風路によって案内されているわけではない点。

相違点1について検討する。引用発明において,枠体(1)の透窓(14)から給気室(13)に流入した冷却用空気の一部は,給気室(13)に開設された透孔(18)と上段室(11)の底面に開設された多数の透孔(18a)を通って上段室(11)に流れるものであり,したがって,該冷却用空気の一部は,給気室(13)に開設された透孔(18)を通って中段室(10)に入った後,上段室(11)の底面に開設された多数の透孔(18a)を通るものである。そして,この冷却用空気の流れの中に,リフレクタ(25)の背面の近傍を通過するものが含まれることは明らかである。したがって,相違点1は,実質的な相違点とはいえない。
相違点2について検討する。引用発明は,光源を寿命間際まで使用して発光体(20)が爆発したとき,排気用のファン(5)から外部に漏れる爆発音を小さくするために中段室(10)等を設け,流路を長くしたものであるが,光源を寿命間際まで使用した際に生じ得る爆発音を小さくすることは,光源装置において求められる不可欠な機能ではなく,流路を短くして枠体の構成を簡素化することは,当業者が容易に想到し得たというべきである。枠体の排気口を枠体の前面部であって,リフレクタの下側切欠きの近傍に形成することは,当業者が適宜なし得た程度の事項に過ぎない。また,引用例2には,光源の開孔部14と筐体の排気部36との間を導風路を構成する排気ダクト34でつなぐことが記載されており,引用発明において,リフレクタの下側切欠きから枠体の排気口までを導風路でつなぐことも,当業者が適宜なし得た程度の事項に過ぎない。
以上のことから,本願補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成21年10月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下,「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。
してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-27 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2005-74339(P2005-74339)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F21V)
P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 光源装置及び投写型画像表示装置  
代理人 山形 洋一  
代理人 篠原 昌彦  
代理人 前田 実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ