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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J
管理番号 1235387
審判番号 不服2007-12570  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-01 
確定日 2011-04-13 
事件の表示 特願2004-300317「プラズマディスプレイパネル用ヒートスプレッダ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-123194〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成16年10月14日 特許出願(パリ条約による優先権主張2003年10月14日、2004年5月12日、アメリカ合衆国)
平成17年11月 2日 拒絶理由通知(同年11月8日発送)
平成18年 2月 7日 意見書・手続補正書
平成18年 3月 2日 拒絶理由通知(同年3月7日発送)
平成18年 9月 7日 意見書・手続補足書(意見書の添付資料の提出)・手続補正書
平成18年10月11日 拒絶理由通知(同年10月13日発送)
平成19年 1月15日 意見書・手続補正書
平成19年 1月26日 拒絶査定(同年1月30日発送)
平成19年 5月 1日 本件審判請求
平成19年11月 8日 上申書
平成21年12月15日 拒絶理由通知(同年12月22日発送。以下、「当審拒絶理由通知」という。)
平成22年 6月21日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成22年6月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1には以下のとおり記載されている。

「(a)天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート上に接着剤が設けられた1以上の前記シートからなる実質的に平坦な異方性のヒートスプレッダを準備する工程と、
(b)前記接着剤が前記シートと離型材料との間に狭持されるように、離型材料を配置する工程と、
(c)前記離型材料を除去する工程と、
(d)前記ヒートスプレッダが複数の放電セルを覆うように、前記接着剤により、前記ヒートスプレッダをプラズマディスプレイパネルに適用する工程と、
を含んでなる、ヒートスプレッダを放電セルを含んでなるプラズマディスプレイパネルに適用する方法であって、
前記ヒートスプレッダは、前記プラズマディスプレイパネルの方向に関係なく、前記プラズマディスプレイパネル上の所定位置に維持されており、
前記ヒートスプレッダ自体が、前記放電セルからの熱を効果的に拡散するものである
ことを特徴とする方法。」(以下、「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知で通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1?27に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用刊行物
刊行物1:特開平9-199040号公報
刊行物2:特公昭44-23966号公報

4 引用発明
4-1 当審拒絶理由通知で引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

4-1-1
「【0002】
【従来の技術】プラズマディスプレイパネルを用いたディスプレイ装置では、プラズマディスプレイパネルの各放電セルの電極に電圧を印加して所望の放電セルを発光させることで表示をするようになっている。放電セルは発光時には発熱する。パネル本体の基材はガラス等で作られている。セルで発生した熱は基材の材料の性質から横方向に伝わりにくいので、発光したセルは著しく温度上昇するのに、発光しないセルはあまり温度上昇しない。このため、放熱上の工夫をしないとパネルの温度が局部的に上昇し、一部のセルの熱劣化が早く進む。また、両セルの温度差が非常に大きいので本体に応力が生じて、本体がわれやすくなる。放電セルの電極への印加電圧を大きくすると、輝度が高まるのであるが、同時にセルの発熱量が増大し、セルの熱劣化やパネル本体のわれが一層ひどくなる。」

4-1-2
「【0007】本発明は、プラズマディスプレイパネルの放熱性を向上させて、温度上昇による上記問題を防止し、また、ファン数の低減またはファンの不設置を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に係るプラズマディスプレイパネルは、縦横に面状に配された多数の放電セルを含む湾曲パネル状の本体と、前記本体の裏面に接合された放熱部材とを備えている。放熱部材は、互いに間隔をおいて配置された多数の放熱部と、放熱部を熱伝達可能に連結する接合面部とを有する。接合面部は、放熱部間で可撓性を有することにより、本体裏面の湾曲に沿うようになっている。
【0009】本体は、縦横に面状に配された多数の放電セルを含んでいる。本体の材料や構造は、プラズマディスプレイパネルの種類や要求性能によって異なるが、たとえば、既知のDC型のカラープラズマディスプレイパネル、AC型のカラープラズマディスプレイパネル、その他の通常のプラズマディスプレイパネルの本体と同様の材料および構造が採用される。
【0010】放熱部材は、本体裏面に接合される。放熱部材は、好ましくは、本体裏面の全体、または、本体裏面の周縁部付近を除くほぼ全体に配置されることで放熱性が向上する。放熱部材の材料は、本体の材料(たとえばガラスなど)よりも熱伝導性が良いものであり、放熱性が良く、加工が容易であること、あるいは、接着剤による接合性の良い金属が好ましく、例えばアルミが好ましい材料である。また、接合面部の材料は、熱伝導性が非常に良好であるという点からは、高配向性のグラファイトが好ましいが、発熱量が少ない場合は通常のグラファイトシートまたはカーボンシートでも可能である。」

4-1-3
「【0017】本体と放熱部材とは、均熱層を介して接合されることができる。均熱層の材料は、本体の材料(たとえばガラスなど)よりも熱伝導性が良く、かつ、本体裏面の湾曲に沿って湾曲しうるものであり、たとえば、金属または高配向性のグラファイトなどの熱伝導性の良い可撓性材料からなる、フィルム、シートまたは薄板である。金属としては、例えば銅が好ましい材料である。また、均熱層の材料は、熱伝導性が非常に良好であるという点からは、放熱部材の材料よりも熱伝導性が良い高配向性のグラファイトがより好ましい。」

4-1-4
「【0023】本発明に使用される高配向性のグラファイトは、グラファイト結晶の配向方向がそろった高結晶グラファイト、とくにロッキング特性が20度以下のグラファイトであればよく、炭化水素系ガスを用いCVD法によって炭素原子を基板上に積層させてからアニーリングして得られるもの、特定の高分子化合物のフィルムをグラファイト化したものを挙げることができる。中でも、高分子化合物のフィルムをグラファイト化したものを使用すると熱伝導性がよいので好ましい。・・・」

4-1-5
「【0030】このようにして得られる高配向性グラファイト素材は、プレート状、シート状,フィルム状のいずれの形態でもよい。しかも、可撓性を有していても、可撓性のない硬いものでもいずれであってもよい。たとえば、芳香族ポリイミドを焼成して得られた可撓性のない高配向性グラファイト素材は、比重が2.25(Alは2.67)、熱伝導性がAB面方向で860kcal/m・h・℃(Cuの2.5倍,Alの4.4倍)であり、AB面方向の電気伝導性が250,000S/cm、AB面方向の弾性率が84,300kgf/mm^(2)である。
【0031】可撓性を有する高配向性グラファイト素材は、可撓性がない高配向性グラファイト素材より比重が軽い(0.5?1.5)が、熱伝導性はあまり変化せず、本発明において、放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用できるので好ましい。なお、高配向性グラファイトを放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用する場合には、パネル本体の局部的な温度上昇を防いで温度分布を起こりにくくするという点を考慮すると、高配向性グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させておくのが好ましい。」

4-1-6
「【0039】以下に、本発明を、その実施形態を模式的に表す説明図を参照しながら説明する。
-第1実施形態-
・・・。
【0040】プラズマディスプレイパネル10は、本体1と放熱部材2とを備えている。本体1は、図示されていないが、2枚のガラス基板の間に縦横に面状に配された多数の放電セルを形成してなり、厚み5.5mm程度である。・・・。
・・・・・
【0048】上記のような構造のパネル10は、各種のディスプレイ装置に使用することができる。」

4-1-7
「【0051】-第3実施形態-
図5に示すプラズマディスプレイパネル100は、前記第1または第2実施形態と基本的な構造は共通するが、本体と放熱部材との間に高配向性のグラファイトフィルムを介在させていること、および放熱部材の構造が異なる。
【0052】放熱部材4は、概ね断面凹形の底部内面41に多数のフィン42を有し、底部外面43が本体裏面11との接合面となっていて、外周縁の側部44外面がディスプレイ装置のキャビネットとの接合面となる。放熱部材4は、従来のアルミニウム製フィン型放熱器であり全体的に硬いため、本体裏面11の湾曲に沿って変形できず、該裏面11との間に従来と同様の大きな空間を生じる。この空間は、高配向性のグラファイト層を有する。すなわち、厚み0.2mmの可撓性を有する高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置し、グラファイトフィルム6の上に厚み2mmのシリコーンシート7を積層してある。グラファイトフィルム6は、比重0.5?1.5の範囲内である。放熱部材4は、接着剤層50を介して本体裏面11の外周縁に接着されている。シリコーンシート7は、本体裏面11と放熱部材4との間の空間形状に合うように変形している。接着剤層50の接着剤としては、接着剤としては、ゴム弾性に優れた一液加熱硬化型シリコーン接着剤(例えば、信越化学工業社製FE-61)が用いられる。なお、放熱部材4の少なくとも底部外面43にも高配向性のグラファイトフィルムが積層されていると、全部のフィン42の温度のばらつきを少なくして放熱効果を高めることができる。
【0053】パネル10の使用時に本体1内部で発生する熱は、本体1の壁面を通して外部に放熱され、特に、裏面11からグラファイトフィルム6とシリコーンシート7、または接着剤層50を介して放熱部材4に伝熱されて、放熱部材4の表面、特にフィン42の表面から外気へと放熱される。本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させる。このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる。放熱部材4に伝わった熱は、フィン42から空気中に放熱される。放熱部材4は放熱性の良いアルミ材からなり、フィン42によって実質的な放熱面積が増大しているので、パネル100の放熱性を向上させることができる。
・・・・・
【0055】シリコーンシート7は熱伝導性の良いものであるが、代わりに他の熱伝導性の良い合成樹脂シートを用いることができる。放熱部材4と本体裏面11との間の空間は、高配向性のグラファイトで埋められたり、高配向性のグラファイトを含むコンポジット体で埋められたり、高配向性のグラファイトフィルムと合成樹脂との積層体で埋められたりすることができる。高配向性のグラファイトで埋める場合には、該グラファイトを該空間と同じ形状のバルク体として作製したり、可撓性を有する高配向性のグラファイトフィルムを複数枚積層したりすることにより該空間が埋められる。
・・・・・
【0057】本体1と高配向性グラファイトフィルムと合成樹脂と放熱部材4を積層する場合、上記接着剤層を薄く(たとえば、0.1mm厚程度)介在させて接着してもよい。」

以上の記載事項と図面を参酌し、刊行物1に記載された発明を認定する。

ア 「【0031】…、高配向性グラファイトを放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用する場合には、パネル本体の局部的な温度上昇を防いで温度分布を起こりにくくするという点を考慮すると、高配向性グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させておくのが好ましい。」との記載から、「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルム」が開示されている。また、「【0057】本体1と高配向性グラファイトフィルムと合成樹脂と放熱部材4を積層する場合、上記接着剤層を薄く(たとえば、0.1mm厚程度)介在させて接着してもよい。」との記載から、本体1と高配向性グラファイトフィルムを接着剤を介在させて積層しているから、接着に先立って「高配向性グラファイトフィルムを準備する工程」を有している。
してみると、刊行物1には、「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルムを準備する工程」が記載されている。

イ 「【0040】プラズマディスプレイパネル10は、本体1と放熱部材2とを備えている。本体1は、図示されていないが、2枚のガラス基板の間に縦横に面状に配された多数の放電セルを形成してなり、」との記載、「【0057】本体1と高配向性グラファイトフィルムと合成樹脂と放熱部材4を積層する場合、上記接着剤層を薄く(たとえば、0.1mm厚程度)介在させて接着してもよい。」との記載とから、刊行物1には、「高配向性グラファイトフィルムが複数の放電セルを覆うように、接着剤により、高配向性グラファイトフィルムを前記プラズマディスプレイパネルに接着する工程」が記載されている。

ウ 「【0031】可撓性を有する高配向性グラファイト素材は、…、本発明において、放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用できるので好ましい。」との記載から、高配向性グラファイトフィルムは、均熱層として使用され、上記イと併せると、刊行物1には、「均熱層として使用する高配向性グラファイトフィルムを、放電セルを含んでなるプラズマディスプレイパネルに接着する方法」が開示されている。

エ 「【0052】…、厚み0.2mmの可撓性を有する高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置し、」との記載から、刊行物1には「高配向性グラファイトフィルムは、プラズマディスプレイパネルの本体裏面の外周縁を除く全面に配置」することが開示されている。

オ 「【0002】【従来の技術】プラズマディスプレイパネルを用いたディスプレイ装置では、プラズマディスプレイパネルの各放電セルの電極に電圧を印加して所望の放電セルを発光させることで表示をするようになっている。放電セルは発光時には発熱する。」との記載、「【0053】…。本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させる。このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる。…」との記載、グラファイトフィルム6は高配向性グラファイトフィルムであることから、刊行物1には「高配向性グラファイトフィルム自体が、放電セルからの熱を拡散する」ことが開示されている。

以上のことから、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「(a)厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルムを準備する工程と
(b)前記高配向性グラファイトフィルムが複数の放電セルを覆うように、接着剤により、高配向性グラファイトフィルムを前記プラズマディスプレイパネルに接着する工程と、
を含んでなる、均熱層として使用する高配向性グラファイトフィルムを、放電セルを含んでなるプラズマディスプレイパネルに接着する方法であって、
前記高配向性グラファイトフィルムは、プラズマディスプレイパネルの本体裏面の外周縁を除く全面に配置されており、
前記高配向性グラファイトフィルム自体が、放電セルからの熱を拡散するものである、
方法。」(以下、「引用発明1」という。)

4-2 当審拒絶理由通知で引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。

4-2-1
「本発明は黒鉛に関し、更に詳細には可撓黒鉛シート材料、および前記可撓黒鉛の製造方法に関する。
本発明の主要目的は主として黒鉛よりなる可撓シート材を提供することであり、かつこれは実質上何等の接着剤を含まず、かつ異方性または高度の方向性を有するものである。
黒鉛は炭素の積層構造、即ち弱いフアン・デル・ワールス力によって互いに結合された炭素分子の積重ねられた層または積層よりなる構造体であることを特徴とする。黒鉛の構成を考慮すれば、通常の2つの軸線または方向が見られ、即ち”C”軸または方向および”a”軸または方向である。簡単のため”C”軸または方向を炭素層に垂直な方向と考えることにする。”a”軸または方向は炭素層に平行または”C”方向に垂直な方向と考えられる。
高い定位度を表すかまたは有する黒鉛の内、天然黒鉛、キツシユ(Kish)黒鉛及び熱分解黒鉛のような人造黒鉛について記載する。天然黒鉛は一般に小さな、軟い載片または粉末状にて見出されまた得られる。・・・」(1頁1欄34行?同頁2欄17行)

4-2-2
「第1図を参照すれば、これは黒鉛粒子から可撓黒鉛シート材を形成する方法およびかかる可撓黒鉛シート材について行われた変形方法を示すものである。図示のように、望ましい高度の定位を有する薄片、粉末、切片または粒子形状の黒鉛粒子は、炭素網状組織の層間に開口を形成するよう層間作業を行われる。層間作業は黒鉛粒子を硫酸と硝酸とを含む混合物の如き酸化剤に作用させることによって行うことが望ましい。黒鉛粒子が充分に湿気を与えられ、かつ出来得れば全く湿潤された後、これらは酸化性媒体より除去され、かつ次に急速に加熱されるか、または100℃以上の温度下に置かれ、これによりほぼ瞬間的に黒鉛粒子の完全な”C”方向膨張を行うようにする。必要に応じ、酸化媒体から除去後、湿潤された粒子は充分に水でさらされまたはすすぎ、次に膨張させる。所望の膨張度を有する所定量の膨張した、または芋虫状の黒鉛物質は次に接着剤を使用することなく互いに圧縮または固められ、これにより所望の厚さと密度を有する可撓性の一体化された黒鉛シート材料を形成する。」(2頁4欄44行?3頁5欄19行)

4-2-3
「可撓性を有する黒鉛シート材は化学的の不活性、熱安定性、高い純度および非湿潤性を有する。・・・これはまた定位に従って低度または高度の熱伝導性を有する。黒鉛シート材の予備試験により”C”方向の熱伝導度1.488Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)を示し、これは熱分解黒鉛または任意その他の入手し得る高温絶縁物のものより低い。このように本発明による黒鉛材料は独特の可撓性を有する他に、低温学的温度から3700℃範囲において優れた熱絶縁性を有する。このように非常に小さい空間において非常に有効な絶縁障壁が得られる。”a”方向の熱伝導度は208?223Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)の範囲にあり、これは熱分解黒鉛のものとほぼ等しい。異方性熱特性の他に、このシート材はまた異方性電気的特性をも有する。」(8頁15欄16?32行)

4-2-4
「本発明による可撓性黒鉛材料は広範な用途を有する。例えば、黒鉛材料は絶縁材料または熱伝導材料またはこの両方に使用される。」(8頁15欄43?45行)

4-2-5
「更に本発明による可撓製品は適当に被覆することが出来る。例えば、適当な接着被覆、例えば感圧接着剤を少なくとも1面上に設けることが出来、・・・。
・・・。例えば金属被覆の黒鉛シートは2重壁液化ガス貯蔵容器の排気した空間内に配置される熱絶縁材料として使用される。
可撓性黒鉛シート材は種々の成層体または複合構造体を形成するのに使用される。例えば適当な接着剤によって接着された2枚の可撓黒鉛シートよりなる成層構造体が得られる。またこれに代わり層の一方は紙、布または繊維または合成重合材料の如き可撓性の繊維質または非類似の被繊維質材料よりなることも出来る。同様に黒鉛シートは、例えば凝集力よりは粘着力の大きい接着力を有する紙の如き担体シートまたはテープと結合され、従ってこの紙を除去または引きはがすことにより接着材料は紙より移動して黒鉛シートに付着し、これにより接着剤を塗布された可撓黒鉛シートを製出することが出来る。」(8頁16欄43?9頁17欄26行)

以上の記載事項と図面を参酌し、刊行物2に記載された発明を認定する。
ア 上記4-2-1「高い定位度を表すかまたは有する黒鉛の内、天然黒鉛、…について記載する。」(当審注:下線は当審で付加した。以下、同様である。)との記載、上記4-2-2「望ましい高度の定位を有する薄片、粉末、切片または粒子形状の黒鉛粒子は、炭素網状組織の層間に開口を形成するよう層間作業を行われる。層間作業は黒鉛粒子を硫酸と硝酸とを含む混合物の如き酸化剤に作用させることによって行うことが望ましい。黒鉛粒子が充分に湿気を与えられ、かつ出来得れば全く湿潤された後、これらは酸化性媒体より除去され、かつ次に急速に加熱されるか、または100℃以上の温度下に置かれ、これによりほぼ瞬間的に黒鉛粒子の完全な”C”方向膨張を行うようにする。必要に応じ、酸化媒体から除去後、湿潤された粒子は充分に水でさらされまたはすすぎ、次に膨張させる。所望の膨張度を有する所定量の膨張した、または芋虫状の黒鉛物質は次に接着剤を使用することなく互いに圧縮または固められ、これにより所望の厚さと密度を有する可撓性の一体化された黒鉛シート材料を形成する。」との記載から、特に下線部分を参照すると、刊行物2には、
「(イ)高度の定位を有する薄片、粉末、切片または粒子形状の天然の黒鉛粒子を硫酸と硝酸とを含む混合物の如き酸化剤に作用させ、黒鉛粒子が湿潤された後、黒鉛粒子を酸化剤から除去し、充分に水でさらされまたはすすぎ、
(ロ)急速に加熱するか、または100℃以上の温度下に置き、これによりほぼ瞬間的に黒鉛粒子の完全な”C”方向膨張を行って膨張した、または芋虫状の黒鉛物質とし、
(ハ)接着剤を使用することなく互いに圧縮または固めて得る、
可撓性黒鉛シート」
が記載されている。

イ 上記4-2-3 「…”C”方向の熱伝導度1.488Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)を示し、…。…。”a”方向の熱伝導度は208?223Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)の範囲にあり、…。異方性熱特性の他に、このシート材はまた異方性電気的特性をも有する。」との記載から、可撓性黒鉛シートは、”C”方向の熱伝導度が”a”方向の熱伝導度より低い異方性熱特性を有しすることが開示されている。また、上記4-2-4「本発明による可撓性黒鉛材料は広範な用途を有する。例えば、黒鉛材料は絶縁材料または熱伝導材料またはこの両方に使用される。」との記載から、可撓性黒鉛シートは、熱伝導材料の用途を有することが開示されている。してみると、刊行物2には、「可撓性黒鉛シートは、”C”方向の熱伝導度が”a”方向の熱伝導度より低い異方性熱特性を有して熱伝導材料の用途を有する」ことが開示されている。

ウ 上記1-2-5「…。例えば、適当な接着被覆、例えば感圧接着剤を少なくとも1面上に設けることが出来、…。…。可撓性黒鉛シート材は種々の成層体または複合構造体を形成するのに使用される…。同様に黒鉛シートは、例えば凝集力よりは粘着力の大きい接着力を有する紙の如き担体シートまたはテープと結合され、従ってこの紙を除去または引きはがすことにより接着材料は紙より移動して黒鉛シートに付着し、これにより接着剤を塗布された可撓黒鉛シートを製出することが出来る。」との記載から、「凝集力よりは粘着力の大きい接着力を有する紙の如き担体シートまたはテープと結合された上記可撓黒鉛シートは、この紙を除去または引きはがすことにより接着材料は紙より移動して黒鉛シートに付着し、これにより接着剤を塗布された可撓黒鉛シートを製出することが出来、接着被覆などの被覆または成層体若しくは複合構造体を形成するのに使用される」ことが開示されている。

以上のことから、刊行物2には、以下の発明が記載されている。
「(イ)高度の定位を有する薄片、粉末、切片または粒子形状の天然の黒鉛粒子を硫酸と硝酸とを含む混合物の如き酸化剤に作用させ、黒鉛粒子が湿潤された後、黒鉛粒子を酸化剤から除去し、充分に水でさらされまたはすすぎ、
(ロ)急速に加熱するか、または100℃以上の温度下に置き、これによりほぼ瞬間的に黒鉛粒子の完全な”C”方向膨張を行って膨張した、または芋虫状の黒鉛物質とし、
(ハ)接着剤を使用することなく互いに圧縮または固めて得る、
可撓性黒鉛シートであって、
上記可撓性黒鉛シートは、”C”方向の熱伝導度が”a”方向の熱伝導度より低い異方性熱特性を有して熱伝導材料の用途を有し、
凝集力よりは粘着力の大きい接着力を有する紙の如き担体シートまたはテープと結合された上記可撓黒鉛シートは、この紙を除去または引きはがすことにより接着材料は紙より移動して黒鉛シートに付着し、これにより接着剤を塗布された可撓黒鉛シートを製出することが出来、接着被覆などの被覆または成層体若しくは複合構造体を形成するのに使用される
上記可撓性黒鉛シート。」(以下、「引用発明2」という。)

5 対比・判断
5-1 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 本願発明の「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート上に接着剤が設けられた1以上の前記シートからなる実質的に平坦な異方性のヒートスプレッダを準備する工程」と、引用発明1の「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルムを準備する工程」とを対比する。
引用発明1における「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルム」は、「シート」の形状で「実質的に平坦」である。そして、厚み方向と横方向とで熱伝導性が異なるから熱伝導特性が異方性である。また、引用発明1における「高配向性グラファイトフィルム」は均熱層として使用するものであるから、熱を拡散して均一化する機能を有している。してみると、引用発明1における「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた高配向性グラファイトフィルムを準備する工程」と、本願発明における「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート上に接着剤が設けられた1以上の前記シートからなる実質的に平坦な異方性のヒートスプレッダを準備する工程」とは、「1以上ののグラファイトのシートからなる、実質的に平坦な異方性のヒートスプレッダを準備する工程」の点で一致する。

イ 本願発明の「前記ヒートスプレッダが複数の放電セルを覆うように、前記接着剤により、前記ヒートスプレッダをプラズマディスプレイパネルに適用する工程」と、引用発明1の「前記高配向性グラファイトフィルムが複数の放電セルを覆うように、接着剤により、高配向性グラファイトフィルムを前記プラズマディスプレイパネルに接着する工程」とを対比する。
上記アで検討したとおり、引用発明1の「高配向性グラファイトフィルム」は本願発明の「ヒートスプレッダ」に相当するから、引用発明1における「高配向性グラファイトフィルムを前記プラズマディスプレイパネルに接着する」ことは、本願発明における「ヒートスプレッダをプラズマディスプレイパネルに適用する」ことに相当する。
してみると、引用発明1における「前記高配向性グラファイトフィルムが複数の放電セルを覆うように、接着剤により、高配向性グラファイトフィルムを前記プラズマディスプレイパネルに接着する工程」は、本願発明の「前記ヒートスプレッダが複数の放電セルを覆うように、前記接着剤により、前記ヒートスプレッダをプラズマディスプレイパネルに適用する工程」に相当する。

ウ 本願発明の「前記ヒートスプレッダは、前記プラズマディスプレイパネルの方向に関係なく、前記プラズマディスプレイパネル上の所定位置に維持されており、」と、引用発明1の「前記高配向性グラファイトフィルムは、プラズマディスプレイパネルの本体裏面の外周縁を除く全面に配置されており、」とを対比する。
上記アで検討したとおり、引用発明1の「高配向性グラファイトフィルム」は本願発明の「ヒートスプレッダ」に相当する。
次に、本願発明における「前記プラズマディスプレイパネルの方向に関係なく、」との発明特定事項が意味するところを検討する。本願の発明の詳細な説明には、「【0071】 しかしながら、グラファイトの層間剥離を生じることなく接着剤/グラファイトシートから離型ライナーを剥離できるように接着剤と離型ライナーを選択しなければならないものの、パネルが種々の方向に向けられることを前提として、プラズマディスプレイパネル上にグラファイトシートが所定位置に維持されるとともに、ヒートスプレッダ(単一又は複数)とパネルとの間の良好な熱接触を確保できるよう、接着剤が充分な接着強度を有していなければならない。」(当審注:下線は当審で付加した。)と記載されており、ヒートスプレッダのプラズマディスプレイパネルへの適用が、パネルが種々の方向に向けられた場合にも維持されることを意味するものである。そうすると、引用発明1において、高配向性グラファイトフィルムをプラズマディスプレイパネルの本体裏面の外周縁を除く全面に配置し、即ち接着することは、プラズマディスプレイパネルが種々の方向に向けられた場合にも、高配向性グラファイトフィルムはプラズマディスプレイパネルの所定位置に維持されている。
したがって、引用発明1における「前記高配向性グラファイトフィルムは、プラズマディスプレイパネルの本体裏面の外周縁を除く全面に配置されており、」は、本願発明における「前記ヒートスプレッダは、前記プラズマディスプレイパネルの方向に関係なく、前記プラズマディスプレイパネル上の所定位置に維持されており、」に相当する。

エ 本願発明の「前記ヒートスプレッダ自体が、前記放電セルからの熱を効果的に拡散するものである」と、引用発明1の「前記高配向性グラファイトフィルム自体が、放電セルからの熱を拡散するものである」とを対比する。
上記アで検討したとおり、引用発明1の「高配向性グラファイトフィルム」は本願発明の「ヒートスプレッダ」に相当する。
引用発明の高配向性グラファイトフィルムは、均熱層として使用されるものであるから、高配向性グラファイトフィルム自体が熱を拡散するものである。そして、高配向性グラファイトフィルムは、厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好であるから、熱を効率的に拡散するものである。
してみると、引用発明1の「前記高配向性グラファイトフィルム自体が、放電セルからの熱を拡散するものである」は、本願発明の「前記ヒートスプレッダ自体が、前記放電セルからの熱を効果的に拡散するものである」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「 (a)1以上のグラファイトのシートからなる、実質的に平坦な異方性のヒートスプレッダを準備する工程と、
(d)前記ヒートスプレッダが複数の放電セルを覆うように、接着剤により、前記ヒートスプレッダを前記プラズマディスプレイパネルに適用する工程と、
を含んでなる、ヒートスプレッダを放電セルを含んでなるプラズマディスプレイパネルに適用する方法であって、
前記ヒートスプレッダは、前記プラズマディスプレイパネルの方向に関係なく、プラズマディスプレイパネル上の所定位置に維持されており、
前記ヒートスプレッダ自体が、前記放電セルからの熱を効果的に拡散するものである方法。」
の点で一致するものの、以下の点で相違する。

相違点1:グラファイトのシートが、本願発明1では、「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」であるのに対し、引用発明1では、そのような特定が為されていない点。

相違点2:「接着剤により、前記ヒートスプレッダを前記プラズマディスプレイパネルに適用」する方法として、本願発明は、「シート上に接着剤が設けられた1以上の前記シートからなる」「ヒートスプレッダを準備する工程」と、「(b)前記接着剤が前記シートと離型材料との間に狭持されるように、離型材料を配置する工程と、(c)前記離型材料を除去する工程と、」を有しているのに対し、引用発明1は、ヒートスプレッダを準備する工程を有しているものの、該ヒートスプレッダはシート上に接着剤が設けられているか否か不明であり、上記(b)、(c)の工程を有していない点。

5-2 判断
以下、上記相違点1,2について、検討する。
相違点1について: 本願発明における「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」は、本願の明細書の段落【0030】?【0066】にその製造方法が記載されており、
(1)天然グラファイト粒子等のグラファイト粒子を硫酸及び硝酸の溶液からなる挿入物質で処理してインターカラントグラファイト粒子を形成し、
(2)高温暴露し、c軸方向に蛇腹状に膨張させて、膨張グラファイト粒子とし、
(3)圧縮してフレキシブルシートとした、
フレキシブルグラファイトシートである。
ここで、上記「フレキシブルグラファイトシート」の製造方法と引用発明2における「可撓性黒鉛シート」の製造方法とを比較すると、
引用発明2における黒鉛粒子を硫酸と硝酸とを含む混合物の如き酸化剤に作用させる(イ)の工程は、硫酸及び硝酸の溶液からなる挿入物質で処理してインターカラントグラファイト粒子を形成する上記(1)の工程に相当し、
引用発明2における100℃以上の温度下に置いて”C”方向膨張を行う(ロ)の工程は、高温暴露し、c軸方向に膨張させて膨張グラファイト粒子とする上記(2)の工程に相当し、
引用発明2における圧縮または固める(ハ)の工程は、圧縮してフレキシブルシートとする上記(3)の工程に
それぞれ、相当する。してみると、本願発明における「剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」と引用発明2における「可撓性黒鉛シート」とは、その製造方法が同一であることから、引用発明2における「可撓性黒鉛シート」は、本願発明における「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」に相当する。(なお、本願明細書の段落【0033】には、「グラファイトシートを製造するための一般的な方法が、米国特許第3,404,061号(Shane等)に記載されている。この文献に開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容の一部とされる。」との記載があり、刊行物2が、前記米国特許第3,404,061号のファミリー文献であることからも、本願発明における「剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」と刊行物2に記載された発明である引用発明2の「可撓性黒鉛シート」とは、同じ製造方法で製造されているものと認められる。)
そして、引用発明2の「可撓性黒鉛シート」は、「”C”方向の熱伝導度が”a”方向の熱伝導度より低い異方性熱特性を有して熱伝導材料の用途を有」していることから、引用発明1の「均熱層として使用する高配向性グラファイトフィルム」に代えて、引用発明2における「可撓性黒鉛シート」を用い、上記相違点1に係る発明特定事項と為すことに困難性は無い。

相違点2について: 引用発明2における「可撓黒鉛シート」は、「凝集力よりは粘着力の大きい接着力を有する紙の如き担体シートまたはテープと結合された」「可撓黒鉛シート」とし、「この紙を除去または引きはがすことにより接着材料は紙より移動して黒鉛シートに付着し、これにより接着剤を塗布された可撓黒鉛シート」となり、接着被覆などの被覆または成層体若しくは複合構造体を形成するのに使用される。ここで、引用発明2と本願発明1とを比較すると、引用発明2における「紙の如き担体シートまたはテープ」が本願発明の離型材料に相当し、同様に、「接着材料」が「接着剤」に、「可撓黒鉛シート」が「剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」に相当する。そして、引用発明1の「高配向性グラファイトフィルム」と引用発明2の「可撓性黒鉛シート」とは、何れも、接着剤により他の部材に接着被覆するよう適用されるグラファイト(黒鉛)のシートである点で共通するから、引用発明1において、グラファイトフィルムをプラズマディスプレイパネルに適用する際、引用発明2の方法を採用し、上記相違点2に係る構成と為すことは当業者が容易に想到し得たことと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、2に記載されたものに基いて当業者が予測しうる程度のものであり、格別のものとは認められない。

5-3 平成22年6月21日付け意見書の主張に対して
審判請求人は、平成22年6月21日付け意見書において、
(1)本願発明における「前記ヒートスプレッダ自体が、前記放電セルからの熱を効果的に拡散するものである」点は、刊行物1に記載されておらず、また、示唆もされていない、
(2)「高配向性のグラファイトフィルム」が属する合成グラファイト産業と、「天然の剥離グラファイトの圧縮粒子からなるシート」が属する天然グラファイト産業のとの間には交差点が無く、置換困難である、
(3)仮に置換を思い付いたとしても、放熱部材なしでも使える「ヒートスプレッダ」としての使用にまで網羅できるものではない、
旨主張するので、以下、検討する。

(1)について
刊行物1には、「【0031】…、高配向性グラファイトを放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用する場合には、パネル本体の局部的な温度上昇を防いで温度分布を起こりにくくするという点を考慮すると、高配向性グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させておくのが好ましい。」との記載があり、また、「【0053】…。本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させる。このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる。」との記載がある。前記記載から、引用発明1における高配向性グラファイトフィルムは、本体で局所的に発生した熱を、本体の発熱していない部分を昇温させるように熱伝導させる、即ち、熱を効果的に拡散するものである。
審判請求人は、引用発明1の高配向性グラファイトフィルムは、天然グラファイトではなく、合成グラファイトであるため十分な厚さ(1.0mm以上)に加工できず、面垂直方向にも熱が伝わる旨主張する。しかしながら、本願発明は、グラファイトのシートの厚さを特定するものではないから、審判請求人の主張は採用できない。仮に、本願発明における「熱を効果的に拡散するもの」という発明特定事項が、天然のグラファイトを用いたことによるものであるとしても、刊行物2に記載された天然黒鉛を用いた可撓性黒鉛シートは、本願のヒートスプレッダが有する熱の拡散性能と同様の熱伝導性能を有するものであり、引用発明1の均熱層として刊行物2に記載された天然黒鉛を用いた可撓性黒鉛シートを採用することで、当然に奏する事項である。

(2)について
刊行物2には、可撓黒鉛シートとして、天然黒鉛を用いたものと、熱分解黒鉛のような人造黒鉛を用いたものの両者が記載されており(前記「4-2-1」参照)、また、「本発明による可撓性黒鉛材料は広範な用途を有する。例えば、黒鉛材料は絶縁材料または熱伝導材料またはこの両方に使用される。」(8頁15欄43?45行)との記載がある。してみると、熱伝導材料として人造(合成)黒鉛を用いたものを天然黒鉛を用いたものに置換することに困難性は認められない。よって、審判請求人の主張は採用できない。

(3)について
ヒートスプレッダに放熱部材を設けるか否かは、本願発明の発明特定事項ではないから、審判請求人の放熱部材なしでも使える旨の主張は採用できない。

以上のとおり、平成22年6月21日付け意見書における審判請求人の主張は何れも採用できない。
したがって、本願発明は、引用発明1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-01 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-12-01 
出願番号 特願2004-300317(P2004-300317)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 村田 尚英
今関 雅子
発明の名称 プラズマディスプレイパネル用ヒートスプレッダ  
代理人 熊谷 一正  
代理人 飯田 敏三  
代理人 横田 修孝  
代理人 佐々木 渉  
代理人 宮前 尚祐  
代理人 浅野 真理  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 紺野 昭男  
代理人 吉武 賢次  
代理人 中村 行孝  

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