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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1235403
審判番号 不服2008-9648  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2004- 35689「電動パワーステアリング装置用モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月25日出願公開、特開2005-229721〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年2月12日の特許出願であって、平成20年3月13日付けで拒絶査定がなされ、同年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成21年12月21日付けで当審の拒絶理由が通知され、平成22年2月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年2月19日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「有底筒状のフレームと、
このフレームの開口部に設けられたブラケットと、
このブラケットと前記フレームとの間に軸方向に挟まれて設けられたグロメットと、
前記フレームの中心軸上に回転可能に設けられたシャフトを有する回転子と、
この回転子の外周で前記フレームに固定され、固定子巻線が巻装された固定子と、
この固定子と前記ブラケットとの間に設けられ前記ブラケット側に延びた接続部を有するとともに前記固定子巻線に接続された固定子側ターミナルと、
前記接続部の先端部に接続された接続ターミナル、この接続ターミナルが表面に設けられ、前記ブラケットに係止される突出部を有するベース部およびこのベース部に設けられた収納部に収納された雌ねじ部を含み、前記ブラケットに係止された接続ベースと、
前記接続ターミナルに接触したリード線側ターミナルを端部に有するとともに、前記グロメットを貫通して外部から前記固定子巻線に電流を導くリード線と、
前記雌ねじ部に螺着し前記接続ターミナルと前記リード線側ターミナルとを締結した雄ねじ部材とを備え、
前記収納部の内径は、前記雌ねじ部の外径寸法よりも大きく、収納部の内壁と雌ねじ部の外壁との間でクリアランスを有しており、前記収納部に前記雌ねじ部を挿入し、前記接続ターミナルに設けられた突起が前記ベース部に圧入されて、前記雌ねじ部は、前記ベース部と前記接続ターミナルとの間に挟まれて配設されてなる
電動パワーステアリング装置用モータ。」

3.引用例
当審の拒絶理由に引用した特開2003-204654号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両のハンドルの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置に関するものである。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の電動パワーステアリング装置では、ケース101内に、モータ100および制御回路ユニット103が収納されているので、次のような問題点があった。
(1)モータ100と制御回路ユニット103とを簡単に分離できないので、モータ100および制御回路ユニット103の何れか一方に不具合が生じたときに、電動パワーステアリング装置そのものを交換しなければならない。
(2)有底円筒形状のケース101内に、互いにリード線を介して接続されたモータ100および制御回路ユニット103を同時に組み付けなければならないので、組立作業性がよくない。
【0005】この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、モータおよび制御回路ユニットの何れか一方に不具合が生じたときに、不具合が生じた方のみを交換すればよく、また組立作業性が向上した電動パワーステアリング装置を得ることを目的とする。」

・「【0010】この発明の電動パワーステアリング装置では、バスバーの端部と中継線の端部とがネジを用いて接続されている。」

・「【0028】図6は図1のモータ1を除いた制御回路ユニット2の図、図7は図6の制御回路ユニット2の背面図、図8は図2のモータ1を除いた制御回路ユニット2の図、図9は図8の制御回路ユニット2の背面図、図10は図6の制御回路ユニット2の平面図、図11は図6の制御回路ユニット2の底面図、図12は図2の制御回路ユニット2の除いたときのモータ1の平面図である。図13は図1の電動パワーステアリング装置の一部切欠き断面図、図14は図13のXIV-XIV線に沿った断面図、図15は図13のXV-XV線に沿った断面図である。
【0029】この電動パワーステアリング装置は、モータ1と制御回路ユニット2とを備えている。モータ1は、アルミ等の材料で作られたハウジング3と、ハウジング3の嵌合部32に周縁部が嵌着された有底円筒形状のフレーム5と、このフレーム5の内壁面に固定されたステータ4と、このステータ4の片側側面に固定されたドーナツ形状のホルダ15と、このホルダ15の上側で支持されたベース18と、ハウジング3およびステータ4の中心軸線上に配置されフロントベアリング6およびリアベアリング7により回転自在に支持されたシャフト24と、このシャフト24にN極およびS極磁石25が交互に接着され外周表面に保護チューブ(図示せず)が被覆されたロータ8と、シャフト24の端部に圧入されステアリング機構(図示せず)と連結されるボス26と、このボス26とブッシュ27との間に設けられロータ8の回転角度を検出する回転位置センサであるレゾルバとを備えている。
【0030】ステータ4は、珪素鋼板が積層されているとともに軸線方向に延びたスロット(図示せず)が周方向に間隔をおいて形成されたコア4Aと、このコア4Aのスロットにボビン9を介して導線が巻回されて構成されたモータコイル10とを備えている。このモータコイル10のU相コイル部、V相コイル部およびW相コイル部はスター結線されており、それぞれのコイル部のコモン側はコモンターミナル14にヒュージングにより接続されている。
【0031】ホルダ15は、樹脂成形されたホルダ本体に形成されそれぞれが周方向に延び、かつ径寸法が異なる溝部に収まったU相ターミナル11、V相ターミナル12およびW相ターミナル13を有している。U相ターミナル11、V相ターミナル12およびW相ターミナル13は平面状に展開したときには帯状であり、各溝部に収まっているときには円形状である。これらのターミナル11、12および13は、モータコイル10のU相コイル部、V相コイル部およびW相コイル部と接続されている。また、U相ターミナル11、V相ターミナル12およびW相ターミナル13は、それぞれ軸線方向に延びた接続部17を有している。
【0032】ベース18は、バスバー20とネジ21で接続されるバスバー側ターミナル16と、ネジ21が螺着されるナット19とがインサートモールド成形されて構成されている。バスバー20と面接触するバスバー側ターミナル16は露出している。このバスバー側ターミナル16の両側にはバスバーガイド部22が設けられている。また、ベース18には開口部に向かって拡大したテーパ状の挿入口18Aが形成されている。全数3個のベース18の各挿入口18Aには、U相ターミナル11、V相ターミナル12およびW相ターミナル13からそれぞれ軸線方向に延びた接続部17が挿入されており、接続部17の先端部がバスバー側ターミナル16とTIG溶接により接続されている。バスバー側ターミナル16はシャフト24に対して直角である。ここで、バスバー側ターミナル16、接続部17および各相ターミナル11,12,13により中継線を構成しており、この中継線はバスバー20とモータコイル10とを電気的に接続している。
【0033】図13に示すように、ベース18の両端部には中心に穴23Aがあるボス23が形成されている。ボス23の係止部である穴23Aにはハウジング3の内面から軸線方向に突出した被係止部であるボス(図示しない)が係止しており、バスバー20がベース18にネジ21で固着される際に、ベース18が回動するのを防止している。レゾルバは、シャフト24に圧入された楕円形状のレゾルバロータ28と、このレゾルバロータ28を囲ったレゾルバステータ34とを備えている。」

・「【0038】制御回路ケースは、フィン部41aを有するヒートシンク41、側壁部42およびカバー43で構成されている。その内部には、パワー素子44等が実装された金属基板45、制御用のマイコン48等が実装された基板49が収納されている。パワー素子44が実装されていない金属基板45の面にはヒートシンク41が密着させている。ヒートシンク41は軽量で熱伝導性の高いアルミニウム製である。ヒートシンク41には、ハウジング開口部38と同形で、中心軸線が一致したヒートシンク開口部46が形成されている。ケース開口部であるこのヒートシンク開口部46からはモータコイル10のU、V、W、各相のコイル部に駆動電流を通電するための3本のバスバー20が突出している。パワー素子44と電気的に接続されたバスバー20は、ヒートシンク開口部46を塞ぐ樹脂モールド部46Aによってヒートシンク41に固定されている。この樹脂モールド部46Aは、樹脂を用いて隙間を埋める、所謂ポッテングという手段を用いて密封されている。
【0039】リード線であるバスバー20は、パワー素子44が実装された金属基板45に対して直角で、かつモータ1に制御回路ユニット2を組み付けた状態のときにバスバー20の板厚方向がシャフト24と平行になるように取り付けられている。また、バスバー20はバスバー20自体の撓み性によって、シャフト24の軸線方向に所定量だけ揺動可能である。なお、この実施の形態ではバスバー20が揺動可能な構成であるが、バスバー側ターミナル16が揺動可能な構成であるようにしてもよい。」

・「【0043】上記のように構成された電動パワーステアリング装置では、次の手順に従って組み立てられる。先ず、ハウジング開口部38とヒートシンク開口部46とを付き合わせるようにして、モータ1に制御回路ユニット2を重ね合わせる。その際、制御回路ユニット2のバスバー20の端部はベース18に対面し、同時に制御回路ユニット2のセンサターミナル47が第2のセンサコネクタ36Bに挿入される。その後、ヒートシンク41とハウジング3とをネジ3Aで固定する。また、ヒートシンク41とフレーム5とを断面Lの字形状のステー51で固定する。最後に、ハウジング3のネジ止め用の穴40からバスバー20とベース18とをネジ21を用いて固着し、モータコイル10と制御回路ユニット2との電気的接続を行う。」

・「【0045】なお、図16に示すように、リード線であるバスバー20の代わりに、U相、V相、W相の各リード線52を用い、センサターミナル47の代わりにセンサリード線53を用い、これらを導出するアタッチメント54をモータ1に装着することで、前述したモータ1の構造を変えることなく、制御回路ユニットと電気的に接続することができる。また、図17に示したように図16のリード線52およびセンサリード線53を削除し、アタッチメント56と、U相、V相、W相用コネクタ55、センサ用コネクタとを一体化したものでも、前述したモータ1の構造を変えることなく、制御回路ユニットと電気的に接続することができる。」

・「【0051】また、この発明の電動パワーステアリング装置によれば、バスバーの端部と中継線の端部とがネジを用いて接続されているので、モータと制御回路ユニットとの電気的な接続が容易であるとともに、モータと制御回路ユニットとの分離も容易である。」

・「【0053】また、この発明の電動パワーステアリング装置によれば、バスバーは、シャフトの軸線に対して垂直に延びているので、バスバーをハウジング開口部に簡単に挿入でき、モータと制御回路ユニットとの一体化が容易である。」

・「【0059】また、この発明の電動パワーステアリング装置によれば、バスバーとネジで螺着される、中継線のバスバー側ターミナルと、ネジが螺着されるナットとがインサートモールド成形されてベースが構成されているので、バスバーとバスバー側ターミナルとの螺着およびその解除を簡単に行うことができる。」

・図14には、ロータ8の外周に設けられたステータ4と、フレーム5の開口部に設けられたハウジング3と、このハウジング3と前記フレーム5との間に設けられた樹脂モールド部46Aとが示されており、さらに、樹脂モールド部46Aを貫通して外部からモータコイル10に電流を導くバスバー20が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「有底円筒形状のフレーム5と、
このフレーム5の開口部に設けられたハウジング3と、
このハウジング3と前記フレーム5との間に設けられた樹脂モールド部46Aと、
前記フレーム5の中心軸線上に回転自在に設けられたシャフト24を有するロータ8と、
このロータ8の外周で前記フレーム5の内壁面に固定され、モータコイル10が巻回されたステータ4と、
このステータ4と前記ハウジング3との間に設けられ前記軸線方向に延びた接続部17を有するとともに前記モータコイル10に接続されたU相ターミナル11、V相ターミナル12、及び、W相ターミナル13と、
前記接続部17の先端にTIG溶接により接続されているバスバー側ターミナル16、このバスバー側ターミナル16はバスバーの端部と面接触するために露出して設けられ、前記ハウジング3に係止される穴23Aを有するベース18およびナット19を含み、前記ハウジング3に係止されたベース18と、
前記バスバー側ターミナル16に接触したバスバーの端部を有するとともに、前記樹脂モールド部46Aを貫通して外部から前記モータコイル10に電流を導くバスバー20と、
前記ナット19に螺着し前記バスバー側ターミナル16と前記バスバー20の端部とを固着したネジ21とを備え、
バスバー側ターミナル16とネジ21が螺着されるナット19とがインサートモールド成形されて、前記ナット19は、前記ベース18と前記バスバー側ターミナル16との間に挟まれて配設されてなる
電動パワーステアリング装置。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「有底円筒形状」が前者の「有底筒状」に相当し、同様に、
「フレーム5」が「フレーム」に相当する。

(イ)後者の「ハウジング3」が前者の「ブラケット」に相当する。

(ウ)後者の「このハウジング3とフレーム5との間に設けられた樹脂モールド部46A」と
前者の「このブラケットとフレームとの間に軸方向に挟まれて設けられたグロメット」とは、
「このブラケットとフレームとの間に設けられた通電部材が貫通する樹脂要素」なる概念で共通する。

(エ)後者の「中心軸線上」が前者の「中心軸上」に相当し、以下同様に、
「回転自在」が「回転可能」に、
「シャフト24」が「シャフト」に、
「ロータ8」が「回転子」に、それぞれ相当する。

(オ)後者の「モータコイル10」が前者の「固定子巻線」に相当することから、
後者の「このロータ8の外周でフレーム5の内壁面に固定され、モータコイル10が巻回されたステータ4」が、
前者の「この回転子の外周でフレームに固定され、固定子巻線が巻装された固定子」に相当する。

(カ)後者の「軸線方向に延びた接続部17」が前者の「ブラケット側に延びた接続部」に相当し、同様に、
「U相ターミナル11、V相ターミナル12、及び、W相ターミナル13」が「固定子側ターミナル」に相当する。

(キ)後者の「ベース18」は前者の「ベース部」、及び、「接続ベース」に相当する。
後者の「接続部17の先端にTIG溶接により接続されているバスバー側ターミナル16」が前者の「接続部の先端部に接続された接続ターミナル」に相当し、同様に、
「このバスバー側ターミナル16はバスバーの端部と面接触するために露出して設けられ」が「この接続ターミナルが表面に設けられ」に相当し、
後者の「接続部17の先端にTIG溶接により接続されているバスバー側ターミナル16、このバスバー側ターミナル16はバスバーの端部と面接触するために露出して設けられ、ハウジング3に係止される穴23Aを有するベース18」と
前者の「接続部の先端部に接続された接続ターミナル、この接続ターミナルが表面に設けられ、ブラケットに係止される突出部を有するベース部」とは、
「接続部の先端部に接続された接続ターミナル、この接続ターミナルが表面に設けられ、ブラケットに係止される係止部を有するベース部」なる概念で共通する。

(ク)後者の「ナット19」が前者の「雌ねじ部」に相当する。

(ケ)後者の「ハウジング3に係止されたベース18」が、
前者の「ブラケットに係止された接続ベース」に相当する。

(コ)後者の「バスバー側ターミナル16に接触したバスバーの端部を有する」態様が前者の「接続ターミナルに接触したリード線側ターミナルを端部に有する」態様に相当し、同様に、
「バスバー20」が「リード線」に相当する。そして、
後者の「樹脂モールド部46Aを貫通して」いる態様と、前者の「グロメットを貫通して」いる態様とは、「通電部材が貫通する樹脂要素を貫通して」との概念で共通することから、
後者の「バスバー側ターミナル16に接触したバスバーの端部を有するとともに、樹脂モールド部46Aを貫通して外部からモータコイル10に電流を導くバスバー20」と
前者の「接続ターミナルに接触したリード線側ターミナルを端部に有するとともに、グロメットを貫通して外部から固定子巻線に電流を導くリード線」とは、
「接続ターミナルに接触したリード線側ターミナルを端部に有するとともに、通電部材が貫通する樹脂要素を貫通して外部から固定子巻線に電流を導くリード線」なる概念で共通する。

(サ)後者の「固着」が前者の「締結」に相当し、同様に、
「ネジ21」が「雄ねじ部材」に相当する。

(シ)後者の「バスバー側ターミナル16とネジ21が螺着されるナット19とがインサートモールド成形されて」いる態様と
前者の「接続ターミナルに設けられた突起がベース部に圧入されて」いる態様とは、
「接続ターミナルがベース部に固定されて」いるとの概念で共通する。

(ス)後者の「電動パワーステアリング装置」が前者の「電動パワーステアリング装置用モータ」に相当する。

したがって、両者は、
「有底筒状のフレームと、
このフレームの開口部に設けられたブラケットと、
このブラケットと前記フレームとの間に設けられた通電部材が貫通する樹脂要素と、
前記フレームの中心軸上に回転可能に設けられたシャフトを有する回転子と、
この回転子の外周で前記フレームに固定され、固定子巻線が巻装された固定子と、
この固定子と前記ブラケットとの間に設けられ前記ブラケット側に延びた接続部を有するとともに前記固定子巻線に接続された固定子側ターミナルと、
前記接続部の先端部に接続された接続ターミナル、この接続ターミナルが表面に設けられ、前記ブラケットに係止される係止部を有するベース部および雌ねじ部を含み、前記ブラケットに係止された接続ベースと、
前記接続ターミナルに接触したリード線側ターミナルを端部に有するとともに、前記通電部材が貫通する樹脂要素を貫通して外部から前記固定子巻線に電流を導くリード線と、
前記雌ねじ部に螺着し前記接続ターミナルと前記リード線側ターミナルとを締結した雄ねじ部材とを備え、
前記接続ターミナルが前記ベース部に固定されて、前記雌ねじ部は、前記ベース部と前記接続ターミナルとの間に挟まれて配設されてなる
電動パワーステアリング装置用モータ。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
通電部材が貫通する樹脂要素に関し、本願発明では、ブラケットとフレームとの間に「軸方向に挟まれて」設けられた「グロメット」であるのに対し、引用発明ではハウジングとフレームとの間に設けられた「樹脂モールド部」である点。

[相違点2]
係止部に関し、本願発明ではブラケットに係止される「突出部」であるのに対し、引用発明では「穴」である点。

[相違点3]
雌ねじ部に関し、本願発明では「ベース部に設けられた収納部に収納された」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点4]
ベース部に関し、本願発明では「収納部の内径は、雌ねじ部の外径寸法よりも大きく、収納部の内壁と雌ねじ部の外壁との間でクリアランスを有しており、前記収納部に前記雌ねじ部を挿入し、接続ターミナルに設けられた突起がベース部に圧入されて」いるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点5]
接続ターミナルをベース部に固定するための手段に関し、本願発明では接続ターミナル「に設けられた突起」がベース部に「圧入」されているのに対し、引用発明ではバスバー側ターミナルとネジが螺着されるナットとがインサートモールド成型されている点。

5.判断
[相違点1]について
例えば、当審の拒絶の理由において引用した特開2002-354755号公報の第1図に「ブラケット32とフレーム31との間に軸方向に挟まれて設けられたグロメット」が図示されているように、電動パワーステアリング装置用モータにおいて、ブラケットとフレームとの間に軸方向に挟まれて設けられたグロメットは周知慣用技術にすぎない。
そうすると、引用発明に電動パワーステアリング装置用モータに係る上記周知慣用技術を採用することにより相違点1に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
突出部と穴により2つの部材を係止するものにおいて、突出部と穴を2つの部材のいずれに設けるのかは必要に応じて選択可能であることは明らかである。そして、出願当初の明細書には、ブラケットに係止される突出部を設けたことにより作用上の相違点があるとは記載されていないことから、ブラケットに、係止される突出部を設けたことは設計事項にすぎないものと認められる。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることというべきである。

[相違点3、及び、4]について
例えば、当審の拒絶の理由に引用した特開2001-118616号公報の図2にブロック12(「ベース部」に相当)に設けられたナット挿入孔35(「収納部」に相当)に収納されたナット34(「雌ねじ部」に相当)を含み、結線部36(「リード線側ターミナル」に相当)を端部に有するとともに、電流を導く接続部40(「リード線」に相当)と、ナット挿入孔35の内径は、ナット34の外径寸法よりも大きく、ナット挿入孔35とナット34との間でクリアランスを有しており(図2にナット34とナット挿入孔35との間にクリアランスがある点が図示されているので、「収納部の内径は、雌ねじ部の外径寸法よりも大きく、収納部の内壁と雌ねじ部の外壁との間でクリアランスを有しており」に相当)ナット挿入孔35にナット34を挿入した点が示されているように、雌ねじによりリード線を固定するものにおいて、ベース部に設けられた収納部に収納された雌ねじ部を含み、リード線側ターミナルを端部に有するとともに、電流を導くリード線と、収納部の内径は、雌ねじ部の外径寸法よりも大きく、収納部の内壁と雌ねじ部の外壁との間でクリアランスを有しており、収納部に雌ねじ部を挿入した点は周知の技術にすぎない。
そうすると、「ナットに螺着し、バスバー側ターミナルとバスバーの端部とを固着したネジとを備え」、ナットがベースとバスバー側ターミナルに挟まれてインサートモールド成形された引用発明に上記周知の技術を採用することにより相違点3、及び、4に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点5]について
当審の拒絶の理由に引用した実願昭62-39878号(実開昭63-149167号)のマイクロフィルムの明細書第10頁の第10行から第15行に「・・・導電部材14(「接続ターミナル」に相当)に備えた有爪状係合部14aと導電部材12に備えた有爪状係合部12a(「突起」に相当)とをエンドブラケット4(「接続ターミナル」に相当)の嵌入孔4eおよび4fに圧入することにより、導電部材14・・・はエンドブラケット4に保持される」と記載されているように、ターミナルを固定するために、接続ターミナルに設けられた突起をベース部に圧入する点は常套手段にすぎない。
そうすると、ターミナルを固定するために、引用発明に上記常套手段を採用することにより相違点5に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知慣用技術、上記周知の技術、及び、上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知慣用技術、上記周知の技術、及び、上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-03-03 
出願番号 特願2004-35689(P2004-35689)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
田良島 潔
発明の名称 電動パワーステアリング装置用モータ  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  

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