• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01P
管理番号 1235440
審判番号 不服2009-6553  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-26 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2003-339504「加速度センサユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開、特開2005-106584〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年9月30日の出願であって、明細書、特許請求の範囲又は図面について平成20年10月31日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成21年1月30日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、同年2月18日付けで決定をもって補正2が却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされ(送達は、同年同月24日)、これに対し、同年3月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月22日付けで明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成22年5月18日付け審尋書により審尋をしたところ、請求人より同年12月6月30日付け回答書の提出があった。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおり補正するものである。(本件補正前)
「加速度センサが設けられた基板と、この基板を位置決めする位置決め部を備えると共に前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記基板の共振周波数と前記加速度センサの共振周波数とを異ならせることを特徴とする加速度センサユニット。」
(本件補正後)
「加速度センサが設けられた基板と、この基板を位置決めする位置決め部を備えると共に前記位置決め部で前記基板を固定し前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する金属材料のピンである支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記位置決め部で前記基板と前記ハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めすることにより前記基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定するものであって、前記基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い方向に異ならせることによって前記基板のダンピング効果により前記加速度センサへの高周波成分を除去することを特徴とする加速度センサユニット。」に補正する補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「支持部」について、「位置決め部で基板を固定し・・・金属材料のピンである」との限定を付加し、「位置決め部」について、「位置決め部で基板と前記ハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めすることにより」との限定を付加するとともに、「支持部が基板の共振周波数と加速度センサの共振周波数とを異ならせる」点について、「基板の共振周波数を加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定するものであって・・・加速度センサの共振周波数よりも低い方向に異ならせることによって前記基板のダンピング効果により前記加速度センサへの高周波成分を除去する」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-257552号公報(以下「引用例1」という。)には、物理量センサ装置(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(f)が図面とともに記載されている。
(a)「 キャップと、接続端子を有するベースとからなるケースを備え、該ケースの内部に弾性部材を介して物理量センサが実装された回路基板を保持すると共に、前記回路基板に設けた端子パターンと前記接続端子を電気的に接続した物理量センサ装置に於いて、前記弾性部材には、先端を細く形成した複数の弾接部を設け、該弾接部の先端で前記回路基板を支持することを特徴とする物理量センサ装置。」(請求項1)
(b)「【発明の属する技術分野】本発明は、物理量センサ装置、特に、内部に振動体を備える角速度センサ及び加速度センサ等の物理量センサを用いた物理量センサ装置に関するものである。」(段落【0001】)
(c)「上述の構成に於いて、回路基板は、ベースに対し垂直に立てても平行に配置しても良く、何れの場合にも物理量センサの検知軸をベースに対して平行に設定することができる。また、回路基板を支持する弾接部は、回路基板を平面方向及び厚み方向の何れの方向から支持しても良い。更に、弾接部を設けた弾性部材は、一体構成でも、分割された形態に構成しても良い。」(段落【0014】
(d)「【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る実施形態例を図面に基いて説明する。図1、図3及び図4は本発明に係る物理量センサ装置の第1実施形態例を示し、図2は物理量センサ装置に用いる弾性部材を示す。
25はベースで、金属材料、例えば、コバールを用いて上面26及び下面27が平坦な長方形の板状に構成されている。ベース25には、長手方向に延びる夫々の端縁に沿って複数の貫通孔が設けられ、ベース25に対しガラス等で電気的に絶縁された端子ピン28が植設されている。端子ピン28の先端は、ベース25の上面26から突出して上面26に2列の端子ピン列を形成している。また、ベース25には、下面27と面一に端縁の周りに鍔29が形成されている。
30はキャップで、ベース25と同じ金属材料の薄板で箱状に構成され、開口部31の外側の周りには鍔32が形成されている。また、キャップ30の天井39側は、対向する一方の側壁35,36方向から同じ割合に縮小されて第二胴部33に構成されている。換言すれば、キャップ30は、開口部31を有する第一胴部34の上に第二胴部33を載せて内壁が連続するように一体に形成した構成である。第二胴部33のもう一方の対向する側壁37,38方向は、第一胴部34と同じ寸法である。
ベース25とキャップ30は、物理量センサ装置製作の最終工程に於いて、キャップ30の開口部31にベース30を嵌めて両方の鍔29,32が熔接され、ベース25とキャップ30は気密封止される。この結果、電磁シールドの機能を有する。なお、キャップ30の内部が窒素ガスで置換された場合には、キャップ30内部の水分量が少なくなるので、ケース内部の結露を防ぐことができる。
40は回路基板で、例えば、ガラス繊維入りエポキシ樹脂を用いて長方形に構成される。回路基板40の表面には、物理量センサ1が固定され、この物理量センサ1の入出力端子部22は、回路基板40に設けた図示しない導体パターンに電気的に接続されている。また、この回路基板40には、必要に応じて物理量センサ1から引出した物理量の変化を示す信号を処理する処理回路を構成することができ、信号処理回路は、導体パターンを利用して回路基板40にIC等の電子部品を搭載することにより構成される。
41は弾性部材で、回路基板40の長手方向の両端縁側に装着される。この弾性部材41は、自立可能な厚みを有しており、直方体状に構成され、その面中に長手方向に伸びる開口42aを有し、底部の中央に窓42bを有する凹室部42が設けられている。この弾性部材41は、凹室部42に回路基板40の端縁側を矢印50の方向から挿入することにより回路基板40に装着される。弾性部材41には、弾力に富んだゴム材、例えば、シリコンゴムが用いられる。なお、窓42bは塞いでも良い。
弾性部材41は、長手方向の下側が平坦面46であり、上側は曲面部47として構成されている。この曲面部47は、弾性部材41の短手方向に円弧状に形成されると共に、厚み方向にも回路基板40の挿入側(矢印50方向)から円弧状に丸めた外面を持つ構成である。弾性部材41の短手方向の寸法は、キャップ30の第二胴部33の内寸法よりも小さく、キャップ30を被せたとき、弾性部材41の上側は第二胴部33の内側面33a,33bに緩やかに接触する。
凹室部42の開口42aの横幅w1は、回路基板40の厚味よりも広く、開口42aの縦幅w2(w2>w1)は、回路基板40の短手方向の幅よりも長く形成されている。凹室部42の内側には、その上下方向の内壁面から突出した楔状の弾接部43が設けられ、また、弾接部43に近い凹室部42の底壁面には、先端を開口42a側に向けて突出した楔状の弾接部44が設けられている。
更に、凹室部42の上下方向に延びる両側の内壁面には、弾接部43に近い位置に、相互に対向する方向に突出した先細の弾接部45が設けられている。弾接部43の先端は、図4に示すように、回路基板40の長手端縁(上下端縁)40a,40bに当接し、弾接部44の先端は、回路基板40の短手端縁(左右端縁)40c,40dに当接し、また、弾接部45の先端は、回路基板40の表裏面を支持している。
即ち、回路基板40の上下端縁40a,40bは弾接部43,44と線接触し、また、回路基板40の表裏面は弾接部45と点接触した状態で弾性部材41に支持されているので、両者の接触面積はごく僅かとなる。このため、物理量センサ1を固定した回路基板40は、先端先細の弾接部43,44,45により柔軟に支持される。
2個の弾性部材41が装着された回路基板40は、ベース25の上に突出した2つの端子ピン列の間に載せられている。この場合、回路基板40は、その表面がベース25の上面26に対し直角になる如く起立した配置となる。ベース25の上面26に接触するのは弾性部材41であり、回路基板40はベース25から離間している。
回路基板40に設けた端子パターン49は、可撓性のリード線48により端子ピン28に接続されている。このリード線48の弾力は弾性部材41の弾力に比べて極端に小さいので、リード線48を介してベース25の側から回路基板40に振動や衝撃が伝わることはない。
また、回路基板40は、図3及び図4に示すように、キャップ30の内部に収容され、上述した如く気密封止される。このとき、弾性部材41は、ベース25の上面26とキャップ30の第二胴部33の内天面39aとの間に挟まれ、且つ第二胴部33の内側面33a,33bにより倒れることなく保持される。これにより、回路基板40は、外部から振動や衝撃を受けても、その直立姿勢を維持することができる。
上述のように、回路基板40を弾接部43,44,45の柔軟な支持構造で支持することにより、物理量センサ1に於ける振動体2の機械共振周波数fo付近よりも高い周波波数成分は、考慮する必要のないレベルに減衰される。この結果、物理量センサ装置の内部及び外部から回路基板40に伝わる振動周波数は、振動体2の機械共振周波数foよりも低い周波数f1となる。
ここに、回路基板40が低周波の振動周波数f1で振動し、この周波数f1の振動が物理量センサ1に加わっても、物理量センサ1の振動体2の振動には殆ど影響を及ぼすことはない。上述した弾接部43,44,45の合計した弾力は、不等式f1√2 例えば、外部から加わる振動や衝撃に物理量センサ1が持っている振動体の共振周波数である15kHz付近の周波数が含まれていても、弾接部43,44,45の合計した弾力により低周波の周波数、例えば、2kHz程度の周波数に減衰される。」(段落【0021】?【0036】)
(e)「図19及び図20を用いて物理量センサ装置の第4実施形態例を説明する。なお、図1に示す第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。この実施形態例は、上述した各実施形態例とは異なり、回路基板40を水平にして配設した点に特徴がある。」(段落【0068】)
(f)「端子ピン28の配列と直交する方向のベース25の幅は、図1の場合よりも少し広く構成されており、これに伴って、2列に配設された端子ピン列の間隔も広くなっている。ベース25の上面26には、四角形の枠状をした枠弾性部材102が載置されている。この枠弾性部材102は、ゴム材から構成されており、4枚の長方形の側板103を備え、その面中には長手方向に伸びる長孔104が形成されている。この長孔104の短手方向の幅は、回路基板40の厚みよりも少し広く構成されている。
枠弾性部材102の一辺の外形寸法は、端子ピン列間の間隔よりも少し狭く、枠弾性部材102を端子ピン列の間に載せたとき、端子ピン列と直交する方向の動きが押さえられる。枠弾性部材102の内側寸法は、回路基板40の平面方向の外形寸法よりも少し大きく、内部に回路基板40を収容したとき、回路基板40の4つの角部分が枠弾性部材102の四隅部分と緩やかに接触する。長孔104の部分では、側板103と回路基板40は接触することはない。
また、枠弾性部材102には、その内側の四隅部分に円錐形状の弾接部105が設けられている。詳言すれば、弾接部105は、2枚の側板103が結合した角部分に断面鋭角の先端を上に向けて設けられており、枠弾性部材102の中に挿入された回路基板40の角部分を裏面側から支持する。この構成により、回路基板40はベース25の上面26から浮いた状態でベース25の表面に平行に配置される。
回路基板40を収容した枠弾性部材102の上には、蓋弾性部材106が載せられる。蓋弾性部材106は板状に構成され、枠弾性部材102の弾接部105に相当する位置には、円錐形状の弾接部107が先端を下に向けて設けられている。蓋弾性部材106を枠弾性部材102の上に載せたとき、蓋弾性部材106に設けた弾接部107の先端は、回路基板40の表面に接触して、回路基板40を表面側から支持する。
換言すれば、回路基板40は、その角部分が弾接部102,107により表裏面から支持される。なお、弾接部102,107は、円錐台形状、角錐形状等であっても良い。このように、弾接部102,107の先端部分の面積を小さく構成することにより、回路基板40を柔軟に支持して回路基板40に伝わる振動周波数を格段に低くすることができる。
また回路基板40の端子パターン49にパターン接続部109を接続したフレキシブル配線板108は、枠弾性部材102と蓋弾性部材106に挟まれて引出され、ピン接続部110が端子ピン28に接続される。これにより、外部から衝撃が加わってもフレキシブル配線板108の振動は押さえられ、回路基板40を叩くことはなくなる。
フレキシブル配線板108を端子ピン28に接続した後、ベース25の上には、天井の低いキャップ111が被せられ、鍔112がベース25の鍔29と溶接されて気密封止される。このとき、枠弾性部材102と蓋弾性部材106は、ベース25の上面26とキャップ111の内天面111aの間に挟まれた状態になる。これにより、回路基板40はベース25の上面26に対し水平に保持され、また、ベース25の上面26に対し枠弾性部材102が固定される。
この構成によれば、物理量センサ装置の高さを低く構成することができる。また、回路基板40をベース25の表面に容易に平行な配置とすることができ、物理量センサ1の検知軸を正確に水平保持できると共に、検知軸の方向は、図21に示した如く、用途に合わせて、90度検知方向の異なるX軸又はY軸の何れでも選択することができる。」(段落【0069】?【0076】)

イ 技術事項
記載(d)に示した第1実施形態例は、回路基板40をベース25に対し垂直に配置したものに関し、記載(f)に示した第4実施形態例は、回路基板40をベース25に対し水平に配置したものに関するものであるところ、記載(c)、(e)によれば、回路基板40の配置の方向が相違する点を除き、その余の構成は共通であることが了解できる。
よって、まず、記載(a)ないし(f)、並びに第1実施形態例に関する図1ないし4、及び第4実施形態例に関する図19,20より、
(ア)「加速度センサ等の物理量センサ1が設けられた回路基板40と、この回路基板40を正確に水平保持する円錐形状の弾接部105,107を備えると共に、前記円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み、前記回路基板40をベース25及びキャップ111に対して振動可能に支持するゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106と、このゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106並びに加速度センサ等の物理量センサ1が設けられたベース25及びキャップ111とを備え、前記ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106は前記円錐形状の弾接部105,107で前記回路基板40と前記ベース25及びキャップ111とを所定の間隔で正確に水平保持する加速度センサ等の物理量センサ装置。」との技術事項が読み取れる。

次に、記載(d)によれば、回路基板40の振動周波数f1を不等式f1√2<f0(ここで、f0は物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数)を満足するように設定しているから、記載(d)より、
(イ)「ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106は、前記円錐形状の弾接部105,107で前記回路基板40と前記ベース25及びキャップ111とを所定の間隔で正確に水平保持することにより、回路基板40の振動周波数f1を、不等式f1√2<f0(ここで、f0は、物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数)を満たす共振周波数に設定するものであって、前記回路基板40の振動周波数f1を、物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0よりも低い方向に異ならせることによって、円錐形状の弾接部105,107の合計した弾力により物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0付近よりも高い周波数成分は、考慮する必要のないレベルに減衰される。」との技術事項が読み取れる。

ウ 引用発明
以上の技術事項(ア)及び(イ)を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「加速度センサ等の物理量センサ1が設けられた回路基板40と、この回路基板40を正確に水平保持する円錐形状の弾接部105,107を備えると共に前記円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み前記回路基板40をベース25及びキャップ111に対して振動可能に支持するゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106と、このゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106並びに加速度センサ等の物理量センサ1が設けられたベース25及びキャップ111とを備え、前記ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106は、前記円錐形状の弾接部105,107で前記回路基板40と前記ベース25及びキャップ111とを所定の間隔で正確に水平保持することにより、前記回路基板40の振動周波数f1を、不等式f1√2<f0(ここで、f0は、加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数)を満たす共振周波数に設定するものであって、前記回路基板40の振動周波数f1を前記加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0よりも低い方向に異ならせることによって、前記円錐形状の弾接部105,107の合計した弾力により前記加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0付近よりも高い周波数成分が考慮する必要のないレベルに減衰される加速度センサ等の物理量センサ装置。」(以下、「引用発明1」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「加速度センサ等の物理量センサ1」、「回路基板40」、「正確に水平保持する」、「円錐形状の弾接部105,107」、「ベース25及びキャップ111」、「振動可能に」、「所定の間隔」、「回路基板40の振動周波数f1」、「加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0」、及び「加速度センサ等の物理量センサ装置装置」は、
本願補正発明の「加速度センサ」、「基板」、「位置決めする」、「位置決め部」、「ハウジング」、「揺動可能に」、「予め定めた所定の間隔」、「基板の共振周波数」、「加速度センサの共振周波数」、及び「加速度センサユニット」にそれぞれ相当する。
以上の相当関係を踏まえると、引用発明1の「回路基板40の振動周波数f1を、不等式f1√2<f0(ここで、f0は、加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数)を満たす共振周波数に設定する」は、本願補正発明の「基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定する」に相当するといえる。

イ 次に、本願補正発明における「位置決め部で前記基板を固定し(する)・・・支持部」の意味するところについて検討するに、これに対応する発明の詳細な説明の記載は、次のとおりである。
「また、この実施の形態においては、基板10はリードピン16、17にのみ半田付などにより固定されており、ピン9、13とは固定されていない。すなわち、ピン9、13は基板の穴10、15内を変位することができる。
このことにより、基板10はより大きく揺動することができ、ダンピング効果を高めることができるものである。
なお、ピン9、13についても半田付等により基板10に固定したとしても、ピン9、13の弾性力によって、ダンピング効果は得られるものである。」(段落【0038】?【0040】)
以上の記載によれば、「位置決め部で基板を固定し(する)・・・支持部」とは、例えば、ピン9,13が基板の穴10,15内を変位できるようにしてあるものとは異なり、例えば、リードピン16,17及びピン9,13の全てが基板10に各位置決め部で固定されていることから、支持部であるリードピン16,17及びピン9,13は、基板10と一体的に揺動することとなるものの、リードピン16,17及びピン9,13自体の有する弾性力によって、ダンピング効果が得られるとの技術的意義を有するものと認められる。
他方、引用発明1における「円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み(む)・・・ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106」も、円錐形状の弾接部105,107をそれぞれ備えた枠弾性部材102及び蓋弾性部材106が、いずれもゴム材からなっており、回路基板40が動かないように、これら円錐形状の弾接部105,107の先端部分で挟むようにしたことで、ゴム自身の有する弾性力により振動レベルを減衰させる効果(すなわち、ダンピング効果)を奏するものである。
よって、引用発明1の「円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み(む)・・・ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106」は、本願補正発明の「位置決め部で前記基板を固定し(する)・・・支持部」に相当するといえる。

ウ 上記ア、イの相当関係を踏まえると、引用発明1における「円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み、前記回路基板40をベース25及びキャップ111に対して振動可能に支持するゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106」も、本願補正発明における「位置決め部で前記基板を固定し前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する金属材料のピンである支持部」も、共に、「位置決め部で前記基板を固定し前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する支持部」である点で共通する。

エ また、引用発明1における「円錐形状の弾接部105,107の合計した弾力により前記加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2の機械共振周波数f0付近よりも高い周波数成分は、考慮する必要のないレベルに減衰される」についてみると、このことは、回路基板40が、ゴム材からなっている円錐形状の弾接部105,107によって支持されていることにより、加速度センサ等の物理量センサ1における振動体2への高周波成分が除去されることを意味するから、本願補正発明における「基板のダンピング効果により前記加速度センサへの高周波成分を除去する」に相当するといえる。

オ してみると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「加速度センサが設けられた基板と、この基板を位置決めする位置決め部を備えると共に前記位置決め部で前記基板を固定し前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記位置決め部で前記基板と前記ハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めすることにより前記基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定するものであって、前記基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い方向に異ならせることによって前記基板のダンピング効果により前記加速度センサへの高周波成分を除去することを特徴とする加速度センサユニット。」
(相違点)
・相違点1:支持部として、
本願補正発明では、「金属材料のピン」を採用しているのに対し、引用発明1では「ゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106」を用いている点。

(4)判断
前記相違点1について検討する。
この種の加速度センサ装置において、外部からの振動や衝撃が加速度センサに直接伝達するのを防止するために、基板をハウジングに対して支持する支持部として金属材料のピンを用いることは、ゴム材を用いることと共に、周知な技術事項である。
この点については、例えば、原審で引用された特開平5-149967号公報には、第1の回路基板11(本願発明の「基板」に相当する。以下、同様。)を第2の回路基板12(ハウジングに相当。)に対して支持するために接続端子15(金属材料のピンに相当。)自体を用いること(図1,2及びこれらに関する発明の詳細な説明に記載を参照のこと)が、吸振部材19,20を用いること(図3,4及びこれらに関する発明の詳細な説明の箇所参照のこと)と共に示されている。
また、原審で引用された特開平7-140163号公報にも、回路基板53,62(基板に相当。)を金属ベース板51,64(ハウジングに相当。)に対して支持するために、接続端子54,63(金属材料のピンに相当。)を用いることが示されている(図5,6及びこれらに関する発明の詳細な説明の箇所参照のこと)。
そうすると、引用発明1において、支持部として、同じく弾性力を備えた周知の金属材料のピンを採用することは当業者ならば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由や回答書において、概略、以下のとおり主張している。
「本願請求項1の特徴は、特に、「基板を位置決めする位置決め部を備えると共に前記位置決め部で前記基板を固定し前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する金属材料のピンである支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記位置決め部で前記基板と前記ハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めすることにより前記基板の共振周波数を前記加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定する」にあり、このような構成にすることにより、
ア 基板共振のゲイン周波数特性の減衰領域が素子共振周波数と重なるため、トータルゲインを低くすることができるので、加速度センサの共振倍率を十分に下げることができ、S/N比を向上させることができる、
イ 金属材料のピンの位置決め部に基板を固定しているため、基板とハウジングの取り付け座面との距離が不変であり、よって基板が取り付け座面に対して垂直方向となるZ軸方向に振動を受けたとしても基板が斜めに傾くことを防止できる。
即ち、金属材料のピンを支持部として採用するとともに、この支持部の位置決め部で基板を固定し、もって基板とハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めする、というこれら複数の構成を同時に満足することにより、基板のダンピング効果を狙いどおりに設定することを可能としている。」
しかしながら、まず、上記ア に関し、「基板共振のゲイン周波数特性の減衰領域が素子共振周波数と重なる」とは、基板の共振周波数を加速度センサの共振周波数よりも低くししたため、基板共振のゲイン周波数特性は、加速度センサの共振周波数においては減衰領域となっていることを意味すると認められるが、このような作用効果は、「回路基板40の振動周波数f1を、不等式f1√2<f0を満たす共振周波数に設定する」引用発明1においても、同様に奏する作用効果であり、支持部として金属材料のピンを採用したことにより初めて奏する作用効果ではないから、請求人の主張は採用できない。
次に、上記イの、「基板とハウジングの取り付け座面との距離が不変であり、」について検討するに、引用発明1においても、「回路基板40を正確に水平保持する円錐形状の弾接部105,107を備えると共に前記円錐形状の弾接部105,107の先端部分で前記回路基板40を挟み前記回路基板40をベース25及びキャップ111に対して振動可能に支持するゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106」とあるように、円錐形状の弾接部105,107を備えたゴム材の枠弾性部材102及び蓋弾性部材106により回路基板40を、円錐形状の弾接部105,107の先端部分で挟むことで、回路基板40を正確に水平保持するものであるから、引用発明1においても、同様に奏する作用効果であって、支持部として金属材料のピンを採用するとともに、支持部の位置決め部で基板を固定したことにより初めて奏する作用効果ではないから、やはり請求人の主張は採用できない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「加速度センサが設けられた基板と、この基板を位置決めする位置決め部を備えると共に前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記基板の共振周波数と前記加速度センサの共振周波数とを異ならせることを特徴とする加速度センサユニット。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載の事項及び引用発明1は、前記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から「支持部」、「位置決め部」及び「支持部が基板の共振周波数と加速度センサの共振周波数とを異ならせる」点についての限定事項である「位置決め部で基板を固定し・・・金属材料のピンである」、「位置決め部で基板と前記ハウジングとを予め定めた所定の間隔で位置決めする」及び「基板の共振周波数を加速度センサの共振周波数よりも低い予め定めた所定の共振周波数に設定するものであって・・・加速度センサの共振周波数よりも低い方向に異ならせることによって前記基板のダンピング効果により前記加速度センサへの高周波成分を除去する」との発明特定事項を、それぞれ省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比」、「2.(4)判断」に記載したとおり引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)予備的検討
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるが、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-140163号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明に基づく容易想到性についても、検討しておく。

ア 記載事項
引用例2には、加速度センサ(発明の名称)に関し、次の事項が図面とともに記載されている。
(g)「【産業上の利用分野】本発明は、主として車載用エアバックシステムに組み込んで使用される加速度センサに関する。
【従来の技術】従来から、この種の加速度センサとして、図6に示すものがある。この加速度センサ60は加速度検出素子61とこの加速度検出素子61が検出した加速度信号を処理する信号処理回路(図示省略)を搭載した回路基板62と、信号処理回路から導出されるとともに、回路基板62の対向端部それぞれから裏面側に向けて突出する複数の接続端子63(図では一対だけ図示している)と、基板裏面側に配設された金属ベース板64と、金属ベース板64に取り付けられて加速度センサ60全体を覆うケース65とを備えている。接続端子63は金属ベース板64を貫通して配設されており、接続端子63と金属ベース板64との間は図示はしないが絶縁処理が施されている。
この加速度センサ60では、接続端子63で支持することによって回路基板62を金属ベース板64に対して隙間Aを空けて対向配置しており、これによって回路基板62裏面側へ信号処理回路等を構成する各種回路部品(図示省略)を搭載することが可能になり、その分、回路基板62の小型化、延いては、加速度センサ60全体の小型化ができるようになっている。
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の加速度センサ60には、回路基板62に共振が発生するために、加速度測定精度を悪化させるという問題があった。すなわち、回路基板62は接続端子63によって持ち上げ支持されているために、加速度センサ60が取り付けられる部材等からの振動等を受けて横揺れ共振を起こすことがある。このような横揺れ共振の周波数は接続端子63の直径や長さ、さらにはこの接続端子62に係る荷重(回路基板62の重量等)等の制約からその共振周波数を10kHz以上に追いやることは困難であった。
したがって、車載用エアバックシステムに組み込んで使用される加速度センサでの測定領域(0?1kHz程度)と共振周波数とが近接しすぎて、加速度測定領域の高域側に、回路基板62の横揺れ共振に起因する余分な信号(ノイズ)が混入してしまって、加速度測定精度を悪化させていた。」(段落【0001】?【0005】)
(h)「次に本発明の第5実施例を説明する。図5は第5実施例の縦断面図である。この加速度センサ50は金属ベース板51に特徴がある。すなわち、金属ベース板51には回路基板53に向かって突出する凸部52が形成されている。凸部52は接続端子54と対向して設けられており、凸部51の高さは金属ベース板52と回路基板53との間の離間間隔より小さくなっている。
そして、回路基板53の両端それぞれに設けられた接続端子54が凸部52形成位置の金属ベース板51を貫通してその裏面側に突出しており、回路基板53は金属ベース板51で貫通固定される接続端子54によって支持されている。接続端子54と金属ベース板51との間には図示はしないが絶縁処理が施されている。
このようにして支持される回路基板53と金属ベース板51との間には隙間Aが形成されており、隙間Aを有することによって、回路基板53の裏面側は回路部品(図示省略)を搭載することが可能になり、その分、回路基板53の面積は小さいものとなっている。
接続端子3は凸部52を形成した位置で金属ベース板52を貫通しており、回路基板53と金属ベース板51との間で露出している接続端子54の一部は凸部52によって覆い包まれている。したがって、回路基板53と金属ベース板51との間で露出している接続端子54の長さは隙間Aの高さ寸法に比べて十分短いものとなっている。
このように、この加速度センサ50では、接続端子54の一部を凸部52で覆い包むことによって、回路基板53と金属ベース板51との間で露出する接続端子54の長さを隙間Aの高さ寸法より短いものとしている。これは次のような理由によっている。
すなわち、回路基板53は接続端子54によって支持されるために横揺れ共振を引き起こすが、その共振周波数は回路基板53と金属ベース板51との間で露出して揺動する接続端子54の長さに反比例することが知られている。そのため、隙間Aの高さ寸法を小さくして、揺動する接続端子54の長さを短くすれば、回路基板53で発生する共振の周波数を、加速度検出素子2の測定領域(0?1kHz)に影響を与えない10kHz以上の領域に追いやることができる。しかしながら、そうすれば、隙間Aが狭くなって、回路基板53の裏面側に回路部品を搭載することが不可能になってしまい、隙間Aを設ける意味がなくなっていまうことになる。
そこで、この加速度センサ50では、凸部52で接続端子54の一部を覆い包むことによって、隙間Aの高さ寸法を小さくすることなく、揺動する接続端子54の長さ寸法を短くした。そのため、回路部品の回路基板裏面側搭載が可能なうえに、回路基板53の共振周波数を10kHzの領域に追いやっている。」(段落【0028】?【0034】)

イ 引用発明
以上の記載(g)、(h)及び図5,6から、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「加速度検出素子2を搭載した回路基板53と、この回路基板53をケース7及び凸部52が形成された金属ベース板51に対して横揺れ可能に支持する接続端子54と、この接続端子54及び前記加速度検出素子2が設けられたケース7及び凸部52が形成された金属ベース板51とを備え、前記接続端子54は前記回路基板53の共振周波数と前記加速度検出素子2の測定周波数領域とを異ならせた加速度センサ50。」(以下、「引用発明2」という。)

ウ 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2における「加速度検出素子2」、「搭載した」、「回路基板53」、「ケース7及び凸部52が形成された金属ベース板51」、「横揺れ可能に」、「接続端子54」、及び「加速度センサ50」は、本願発明における「加速度センサ」、「設けられた」、「基板」、「ハウジング」、「揺動可能に」、「支持部」、及び「加速度センサユニット」にそれぞれ相当する。

(イ)上記相当関係を踏まえると、引用発明2における「接続端子54は回路基板53の共振周波数と前記加速度検出素子2の測定周波数領域とを異ならせた」も、本願発明の「支持部は前記基板の共振周波数と前記加速度センサの共振周波数とを異ならせる」も、共に、「支持部は前記基板の共振周波数と前記加速度センサに関連する周波数とを異ならせる」点で、共通するといえる。

してみると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「加速度センサが設けられた基板と、前記基板をハウジングに対して揺動可能に支持する支持部と、この支持部及び前記加速度センサが設けられたハウジングとを備え、前記支持部は前記基板の共振周波数と前記加速度センサに関連する周波数とを異ならせる加速度センサユニット。」
(相違点)
・相違点2:本願発明は、「基板を位置決めする位置決め部」を備えるのに対し、引用発明2では位置決め部を備えていない点。
・相違点3:基板の共振周波数と異ならせる対象である加速度センサに関連する周波数が、
本願発明では、「加速度センサの共振周波数」であるのに対し、引用発明2では、加速度検出素子2(加速度センサ)の測定周波数領域である点。

エ 判断
前記相違点について検討する。
(ア)相違点2について、
一般に、基板をハウジングに組み付ける際に、基板とハウジングとの位置関係を所定のものとするために、支持部の所定の位置に位置決め部を設けることは、周知な技術事項である(例えば、原審で引用された特開平11-26955号公報:特に、段落【0016】【0018】【0022】及び図1に記載の、プリント基板16の位置を決めるストッパとして機能している湾曲部26,28を備えた金属ターミナル22,24を参照のこと)。
引用発明2においても、回路基板53は、ケース7及び凸部52が形成された金属ベース板51に対して所定の位置に在るべく、接続端子54によって支持されていると解されるから、引用発明2において、回路基板53(基板)を接続端子54(支持部)で横揺れ可能に(揺動可能に)支持するに際し、本願発明のように、支持部に位置決め部を設けようとすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

(イ)相違点3について、
基板上に加速度センサが設けられた加速度センサ装置において、加速度センサに外部からのノイズが混入することを防止するために、基板の共振周波数と加速度センサの共振周波数と異ならせることは周知である(例えば、原審で引用された特開2002-257552号公報、特に、段落【0035】の記載等を参照)。そして、一般に、加速度センサは、感度向上のため、その共振周波数付近を測定周波数領域とするものであるから、同じく外部からのノイズの混入を防止することを意図した(上記「ア(g)」)引用発明2において、基板の共振周波数と異ならせる対象を加速度センサの共振周波数とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明2及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
したがって、本願発明は引用発明2及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-08 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2003-339504(P2003-339504)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01P)
P 1 8・ 121- Z (G01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山川 雅也
古屋野 浩志
発明の名称 加速度センサユニット  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ