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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1235458
審判番号 不服2009-12814  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-14 
確定日 2011-04-14 
事件の表示 特願2006-256492「ゲーム装置、ゲーム制御方法、及びゲーム制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 73255〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。
特許出願 :平成18年 9月21日
手続補正 :平成20年12月22日
拒絶理由通知(最初):平成21年 1月28日(起案日)
手続補正 :平成21年 3月 3日
拒絶査定 :平成21年 4月14日(起案日)
拒絶査定不服審判請求:平成21年 7月14日
手続補正 :平成21年 7月14日
審尋 :平成22年 7月16日(起案日)
回答書 :平成22年 8月10日

第2 平成21年7月14日付け手続補正についての補正の却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成21年7月14日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲および明細書を補正するものであって、その補正は、平成21年3月3日付け手続補正により補正された請求項1の、

「【請求項1】
ゲームフィールドに置かれたオブジェクトを認識する認識部と、
前記認識部により認識された、前記ゲームフィールドにおける前記オブジェクトの状態を記憶する記憶部と、
前記認識部により認識された、プレイヤーによる前記オブジェクトに対する操作に応じてゲームを進行させるゲーム実行部と、
前記オブジェクトに対する操作の内容又は前記オブジェクトの状態を確認し、エラーが発生した場合その旨を報知するエラー処理部と、を備え、
前記エラー処理部は、プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記オブジェクトの状態と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの状態とを比較し、不整合が生じていないかを確認する静的エラー処理部を含む
ことを特徴とするゲーム装置。」

なる記載を、

「【請求項1】
ゲームフィールドに設けられた盤面に置かれたオブジェクトを認識する認識部と、
前記認識部により認識された、前記盤面上の前記オブジェクトの配置を記憶する記憶部と、
前記認識部により認識された、プレイヤーによる前記オブジェクトに対する操作に応じてゲームを進行させるゲーム実行部と、
前記オブジェクトに対する操作の内容又は前記オブジェクトの状態を確認し、エラーが発生した場合その旨を報知するエラー処理部と、を備え、
前記エラー処理部は、プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記盤面上の前記オブジェクトの配置と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの配置とを比較して、不整合が生じていないかを確認し、不整合があればその旨をプレイヤーに報知し、不整合がなければプレイヤーに報知せずにエラーチェックを終了する静的エラー処理部を含む
ことを特徴とするゲーム装置。」

という記載にする補正を含むものであり、当該補正は「ゲームフィールド」及び「静的エラー処理部」について、それぞれ限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている発明特定事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。

2 独立特許要件違反について
2-1 本件補正発明
本件補正発明は、上記「1」に記載したとおりのものである。

2-2 進歩性要件(特許法第29条第2項)について
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2005-230156号公報(公開日:平成17年9月2日。以下、「引用例」という。)には、以下の技術的事項の記載がある(下線は当審で付した。)。

a.「【0001】
本発明は、机やテーブル等の上に置かれたカードを撮像し、その撮像した映像と共に、カードに貼付された識別情報に対応するオブジェクトの三次元画像を表示する画像表示システム、様々に配置されたカードの認識についての画像処理システム並びにこれら画像表示システム及び画像処理システムの原理を利用したビデオゲームシステムに関する。」

b.「【0007】
本発明では、表示されたカードの画像上に、該カードの識別情報に対応するオブジェクトの画像が重畳して表示される。そして、所定のタイミングで撮像した画像データと前記所定のタイミングとは別のタイミングで撮像した画像データとの差分をとられ、差分後のデータに基づいて動きのあった画像が特定される。この特定された画像がオブジェクトの画像に接触しているかどうかが判別され、接触していると判別された場合に、前記識別情報に対応するパラメータが変更されることになる。これは、例えばビデオゲームであれば、ユーザがキャラクタをなでることで、キャラクタの経験値や体力等が増加する等の処理が行われ、キャラクタの育成ゲーム等に好適である。ここで、キャラクタとは、オブジェクトのうち、動きを伴うオブジェクトであって、人間や動物、あるいはテレビ番組やアニメーション映画等で登場する主人公等を模したオブジェクトを指す。」

c.「【0011】
また、本発明は、所定のタイミングで撮像した画像データと前記所定のタイミングとは別のタイミングで撮像した画像データとの差分をとり、差分後のデータに基づいて前記カードに動きがあったかどうかを判別し、その判別結果に従った表示処理を行う。例えば、複数のカードが重なった場合に、前記複数のカードが重なった画像の上に1つの新たなオブジェクトの画像を重畳して表示する等の表示処理が行われる。この場合、前記新たなオブジェクトとしては、前記複数のカードの識別情報の組み合わせに対応したオブジェクト等が考えられる。ビデオゲームに適用した場合は、前記判別結果に従ってビデオゲームのシナリオを進行させる等である。この場合、撮像されたカードの画像が複数ある場合であって、かつ、前記カード動き判別手段にて1つのカードが移動していると判別した場合に、前記各カードの画像上に表示されている複数のオブジェクトの画像のうち、移動していると判別したカードの画像上に表示されているオブジェクトの画像を選択してシナリオを進行させる等の処理を行うことができる。」

d.「【0024】
本実施の形態に係るビデオゲームシステム10は、図1に示すように、ビデオゲーム機12と各種外部機器14とを有する。
【0025】
ビデオゲーム機12は、各種プログラムを実行するCPU16と、各種プログラムやデータが格納されるメインメモリ18と、画像データが記録(描画)される画像メモリ20と、各種外部機器14とのデータのやりとりを行うための入出力ポート22と、後述する差分演算を行うための第1及び第2の差分用メモリ24及び26とを有する。
【0026】
入出力ポート22に接続される各種外部機器14は、表示用インターフェース(I/F)28を介して接続されるモニタ30と、光ディスク(DVD-ROM、DVD-RW、DVD-RAM、CD-ROM等)32に対して再生/記録を行う光ディスクドライブ34と、メモリカード用インターフェース(I/F)36を介して接続されるメモリカード38と、撮像用インターフェース(I/F)40を介して接続されるCCDカメラ42と、ハードディスク44に対して再生/記録を行うハードディスクドライブ(HDD)46と、音声用インターフェース48を介して接続されるスピーカ50とを有する。もちろん、入出力ポート22から図示しないルータを介してインターネット(図示せず)に接続される場合もある。
【0027】
これら外部機器14に対するデータの入出力並びにビデオゲーム機12内でのデータの加工等はCPU16とメインメモリ18を通じて行われ、特に、撮像データや画像データは画像メモリ20に記録(描画)される。」

e.「【0032】
撮像画像データから識別画像56の位置を検出する手法、コーナーセル64の画像を検出する手法並びに識別セル66の二次元パターンを検出する手法は、例えば先に述べた特許文献1(特開2000-82108号公報)に詳しく説明してあるため、該特許文献1を参照されたい。
【0033】
また、本実施の形態では、識別セル66の二次元パターンの各種パターンと各パターンに対応する識別番号との対応テーブルが例えばデータベース68(2Dコードのデータベース:図6や図7参照)としてハードディスク44や光ディスク32等に登録されている。従って、検出した識別セル66の二次元パターンをデータベース68内の前記対応テーブルで照合することによって、カード54の識別番号を容易に検出することができる。
【0034】
そして、ビデオゲームシステムで実現される機能は、図3A及び図3Bに示すように、机やテーブル52等に置かれた例えば6つのカード541、542、543、544、545及び546をCCDカメラ42で撮像してモニタ30の画面に表示すると共に、モニタ30の画面に表示されたカード541、542、543、544、545及び546の各画像、例えば各カード541、542、543、544、545及び546に貼付された識別画像561、562、563、564、565及び566の上に、各カード541?546の識別画像561?566等に対応するオブジェクト(キャラクタ)の画像701、702、703、704、705及び706を重畳して表示することで、ゲームとビデオゲームとを融合したゲームを実現させるというものである。なお、キャラクタとは、オブジェクトのうち、人間や動物、あるいはテレビ番組やアニメーション映画等で登場する主人公等を指す。
【0035】
また、CCDカメラ42は、図3Aに示すように、机やテーブル52上に固定されたスタンド72に取り付けられるが、このとき、例えばユーザによって、CCDカメラ42の撮像面がカード541?546の置かれた部分に向くように調整される。もちろん、図4Aに示すように、ユーザ74が例えば1つのカード542を持っている姿を撮像してモニタ30に映し出すことによって、モニタ30の画面には、図4Bに示すように、ユーザ74の画像とカード542の識別画像562とキャラクタの画像702が表示され、ユーザ74が持っているカード542上にキャラクタが乗っているようなシーンを表示させることもできる。
【0036】
そして、本実施の形態の上述した機能は、例えばハードディスク44にインストールされた各種プログラムのうち、前記機能を実現するためのアプリケーションプログラムがCPU16で実行されることによって達成される。
【0037】
このアプリケーションプログラム80は、図5に示すように、カード認識プログラム82、キャラクタ出現表示プログラム84、キャラクタ動作表示プログラム86、第1のカード位置予測プログラム88、第2のカード位置予測プログラム90、画像動き検出プログラム92、カード動き検出プログラム94、カード再認識プログラム96、キャラクタ変化プログラム98、情報テーブル参照プログラム100を有する。」

f.「【0039】
まず、カード認識プログラム82は、机やテーブル52等の上に置かれたカード(例えば図3Aにおけるカード541)の識別画像561を認識して、識別画像561上に表示させるべきキャラクタの画像(例えば図3Bにおける画像701)を特定する処理を行うもので、図6に示すように、撮像画像描画機能102と、基準セル探知機能104と、識別情報検出機能106と、カメラ座標検出機能108と、キャラクタ画像検索機能110とを有する。ここで、「認識」とは、画像メモリ20に描画された撮像画像データから検出されたカード541の識別画像561から当該カード541の識別番号や方向を検出することを示す。
【0040】
撮像画像描画機能102は、撮像した被写体の映像を画像メモリ20に背景画像として設定し描画する。背景画像として設定する処理の1つとしては、ZバッファリングへのZ値の設定等が挙げられる。
【0041】
基準セル探知機能104は、上述したように、画像メモリ20に描画された画像データ(撮像画像データ)からロゴ部58の基準セル62の画像データを探知して、基準セル62の画像データの位置を検出する。基準セル62の画像データの位置は、スクリーン座標として検出される。
【0042】
識別情報検出機能106は、図7に示すように、検出した基準セル62の画像データの位置に基づいてコーナーセル64の画像データを検出し、これら基準セル62及びコーナーセル64によって形成される領域112の画像データをアフィン変換して、カード541の識別画像561を上面から見た画像114と等価な画像データとし、該画像データからコード部60の二次元パターン、すなわち、コーナーセル64と識別セル66の二次元パターンからなるコード116を抽出し、該コード116から識別番号等を検出する。識別番号の検出は、上述したように、抽出したコード116を2Dコードのデータベース68と照合することによって行われる。
【0043】
カメラ座標検出機能108は、図8に示すように、検出したスクリーン座標並びにCCDカメラの焦点距離に基づいてカメラ視点C0を原点とするカメラ座標系(6軸の方向:x、y、z、θx、θy及びθz)を求め、カード541における識別画像561のカメラ座標を求める。このとき、カード541におけるロゴ部58の中心のカメラ座標とコード部60の中心のカメラ座標が求められる。
【0044】
なお、画像メモリ20に描画された画像のスクリーン座標から該画像のカメラ座標を求める手法、並びにある画像のカメラ座標から画像メモリ20上のスクリーン座標を求める手法については、先に述べた特許文献2(特開2000-322602号公報)に詳しく説明してあるため、該特許文献2を参照されたい。
【0045】
キャラクタ画像検索機能110は、検出した識別番号に基づくキャラクタの画像(例えば図3Bに示すキャラクタの画像701)をオブジェクト情報テーブル118から検索する。
【0046】
オブジェクト情報テーブル118の内訳は、例えば図9に示すように、多数のレコードが配列されて構成され、1つのレコードに、識別番号、基本パラメータ(経験値、レベル)、キャラクタの画像データ(レベル1)の格納先頭アドレス、レベル1のパラメータ(体力、攻撃力、防御力等)、キャラクタの画像データ(レベル2)の格納先頭アドレス、レベル2のパラメータ(体力、攻撃力、防御力等)、キャラクタの画像データ(レベル3)の格納先頭アドレス、レベル3のパラメータ(体力、攻撃力、防御力等)、有効/無効ビットが登録されている。
【0047】
画像データとしては、基本パラメータの1つであるレベルに対応する画像データが読み出される。つまり、レベルが1であれば、レベル1に対応する格納先頭アドレスから画像データが読み出され、さらに、レベル1のパラメータが読み出されることになる。レベル2及びレベル3についても同様である。また、有効/無効ビットは、そのレコードが有効であるかどうかを判別するためのビットである。「無効」が設定される場合は、例えば現
段階ではキャラクタの画像が設定されていない場合や、例えばキャラクタがビデオゲームで設定された戦闘で負け、死亡した場合等である。
【0048】
そして、このキャラクタ画像検索機能110は、オブジェクト情報テーブル118から当該識別番号に対応するレコードを検索し、検索したレコードが「有効」であれば、該レコードに登録された複数の格納先頭アドレスのうち、現在のレベルに対応する格納先頭アドレスから画像データ120を読み出す。例えばハードディスク44や光ディスク32等に記録され、かつ、多数の画像データ120が登録されたデータファイル122のうち、前記格納先頭アドレスから当該キャラクタに対応する画像データ120を読み出す。「無効」の場合は、画像データ120を読み出さない。
【0049】
従って、机やテーブル52等に1つのカード541を置いたとき、前記カード認識プログラム82が起動されて、置かれたカード541の識別画像561で特定される識別番号及びレベル(以下、識別番号等と記す)に対応するキャラクタの画像701が特定されることになる。なお、レベルに応じてキャラクタの画像を変化させないのであれば、オブジェクト情報テーブル118の各レコードには、画像データ120について1つの格納先頭アドレスだけが登録されることから、この場合は、カード541の識別画像561で特定される識別番号に対応するキャラクタの画像701が特定されることになる。
【0050】
このカード認識プログラム82により、実空間と仮想空間を融合した視覚効果を表現することが可能となる。そして、このカード認識プログラム82から様々なアプリケーションプログラム(キャラクタ出現表示プログラム84、キャラクタ動作表示プログラム86、第1のカード位置予測プログラム88、第2のカード位置予測プログラム90等)に制御が移されることになる。」

g.「【0058】
次に、キャラクタ動作表示プログラム86は、キャラクタが待機しているシーンや攻撃しているシーン、魔法をかけるシーン、他のキャラクタを庇うシーン等を表示するもので、図11に示すように、上述したキャラクタ出現表示プログラム84とほぼ同様に、動作データ列検索機能142、姿勢設定機能144、三次元画像設定機能146、画像描画機能148、画像表示機能150及び繰返し機能152とを有する。
【0059】
動作データ列検索機能142は、キャラクタが待機するシーン、攻撃するシーン、魔法をかけるシーン、他のキャラクタを庇うシーンを表示するための動作データ列をシーンに応じた各種動作情報テーブル154から検索する。具体的には、まず、例えばハードディスク44や光ディスク32等に記録され、かつ、各レコードに動作データ列の格納先頭アドレスが登録された各種動作情報テーブル154から表示すべき動作に対応する動作情報テーブル154を特定し、さらに、特定された動作情報テーブル154から当該識別番号等に対応するレコードを検索する。そして、例えばハードディスク44や光ディスク32等に記録され、かつ、多数の動作データ列156が登録されたデータファイル158のうち、前記検索したレコードに登録された先頭アドレスから今回表示すべき動作(キャラクタが待機する動作、攻撃する動作、魔法をかける動作、他のキャラクタを庇う動作等)に対応した動作データ列156を読み出す。
【0060】
姿勢設定機能144は、例えばカード541に関するキャラクタであれば、キャラクタの画像701が待機する過程の1つの姿勢、攻撃する過程の1つの姿勢、魔法をかける過程の1つの姿勢、他のキャラクタを庇う過程の1つの姿勢を設定する。例えば読み出された動作データ列156のiフレーム目(i=1,2,3・・・)の動作データに基づいてキャラクタの画像701の頂点データをカメラ座標系で移動して1つの姿勢を設定する。
【0061】
三次元画像設定機能146は、検出したカード541の識別画像561のカメラ座標に基づいて該カード541の識別画像561の上に前記キャラクタの画像701が待機する過程の1つの姿勢、攻撃する過程の1つの姿勢、魔法をかける過程の1つの姿勢、他のキャラクタを庇う過程の1つの姿勢の三次元画像を設定する。
【0062】
画像描画機能148は、キャラクタの画像701が待機する過程の1つの姿勢、攻撃する過程の1つの姿勢、魔法をかける過程の1つの姿勢、他のキャラクタを庇う過程の1つの姿勢の三次元画像をスクリーン座標系の画像に透視変換して画像メモリ20に描画(隠面処理を含む)する。
【0063】
画像表示機能150は、画像メモリ20に描画された画像を1フレーム単位に入出力ポート22を介してモニタ30に出力し、モニタ30の画面に前記画像を表示する。
【0064】
繰返し機能152は、姿勢設定機能144による処理→三次元画像設定機能146による処理→画像描画機能148による処理→画像表示機能150による処理を順次繰り返す。これによって、キャラクタの画像701が待機するシーン、攻撃するシーン、魔法をかけるシーン、他のキャラクタを庇うシーンが表示されることになる。
【0065】
これらカード認識プログラム82、キャラクタ出現表示プログラム84及びキャラクタ動作表示プログラム86によって、カードゲームのキャラクタをビデオゲームのシナリオ中に出現させて様々な動作を行わせることができる。つまり、実空間でしか楽しめなかったカードゲームを仮想空間にまで広げることができ、カードゲームとビデオゲームとが融合した新規なゲームを提供することができる。」

h.「【0066】
次に、第1のカード位置予測プログラム88について説明する。このプログラム88は、例えば図12に示すように、3つのカードを例えば横方向に並べる場合を想定したものである。
【0067】
そして、この第1のカード位置予測プログラム88は、図13Aに示すように、例えば上述したカード認識プログラム82によって1つのカード541の識別画像561の位置が検出された場合に、該識別画像561の位置に基づいて他のカード542及び543(図12参照)の配置位置を予測するものであって、図14に示すように、探知領域設定機能162と、基準セル探知機能164と、識別情報検出機能166と、キャラクタ画像検索機能168とを有する。
【0068】
ここで、第1のカード位置予測プログラム88の処理動作、特に、図13Aに示すように、1つのカード541の識別画像561のカメラ座標が、例えばカード認識プログラム82によって検出された後の動作について図15を参照しながら説明する。
【0069】
まず、図15のステップS1において、探知領域設定機能162は、検出された1つの識別画像561のカメラ座標に基づいて、図13Aに示すように、識別画像561を含むある範囲の探知領域170のカメラ座標を求める。この探知領域170は、複数のカードを横方向に配置するのであれば矩形の領域となる。
【0070】
その後、ステップS2において、得られた探知領域170のカメラ座標から画像メモリ20上での前記探知領域170の描画範囲172を求める。
【0071】
その後、ステップS3において、基準セル探知機能164は、画像メモリ20のうち、探知領域170の描画範囲172に基準セル62の画像データが存在しているか否かを判別する。
【0072】
基準セル62の画像データが存在している場合、例えば図12Aに示すように、カード541の横に2つのカード542及び543が横方向に並べられている場合を想定したとき、図15のステップS4に進み、識別情報検出機能166は、検出した基準セル62及びコーナーセル64によって形成される領域の画像データをアフィン変換する。そして、カード542及び543の識別画像562及び563から各カード542及び543に対応する識別番号を検出する。識別番号の検出は、上述したように、識別画像562及び563から抽出したコードを2Dコードのデータベース68と照合することによって行われる。
【0073】
その後、ステップS5において、キャラクタ画像検索機能168は、カード542及び543の各識別番号等に基づくキャラクタの画像データ120をオブジェクト情報テーブル118から検索する。例えばオブジェクト情報テーブル118からそれぞれ識別番号に
対応するレコードを検索し、検索したレコードが「有効」であれば、各レコードに登録された複数の格納先頭アドレスのうち、現在のレベルに対応する格納先頭アドレスからそれぞれ画像データ120を読み出す。
【0074】
一方、前記ステップS3において、基準セル62の画像データが存在していないと判別された場合は、基準セル探知機能164は、ステップS6に進み、モニタ30の画面に全てのカードを置くように促すエラーメッセージを出力する。その後、ステップS7において、所定時間(例えば3秒間)だけ待機した後、ステップS3に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0075】
そして、探知領域に存在する全てのカードについてキャラクタの画像701?703を決定した段階で、上述した処理動作が終了する。
【0076】
この場合も、例えばキャラクタ出現表示プログラム84が起動されることによって、図12Bに示すように、各カード541?543の識別画像561?563上にそれぞれカード541?543の識別番号に対応するキャラクタの画像701?703が登場するシーンが表示されることになる。」

i.「【0078】
次に、第2のカード位置予測プログラム90について説明する。このプログラム82は、図3Aに示すように、2人がそれぞれ3つのカードを例えば横方向に並べる場合であって、かつ、各人が最初に例えば左側に1枚目のカード541及び544を置く場合、即ち、対角線上に2枚のカード541及び544を置く場合を想定したものである。
【0079】
そして、この第2のカード位置予測プログラム90は、2つのカードが対角線上に置かれた場合に、他のカードの位置を予測するものであって、図16に示すように、矩形領域設定機能174と、基準セル探知機能176と、識別情報検出機能178と、キャラクタ画像検索機能180とを有する。
【0080】
ここで、第2のカード位置予測プログラム90の処理動作、特に、図17Aに示すように、対角線Lm上に置かれた2つのカード541及び544の識別画像561及び564のカメラ座標が、例えばカード認識プログラム82によって検出された後の動作について図18を参照しながら説明する。
【0081】
まず、図18のステップS101において、矩形領域設定機能174は、図17Aに示すように、対角線Lm上に置かれた2つのカード541及び544の識別画像561及び564のカメラ座標に基づいて、該対角線Lmを含む矩形領域182のカメラ座標を求める。
【0082】
その後、ステップS102において、得られた矩形領域182のカメラ座標から、図17Bに示すように、画像メモリ20上での前記矩形領域182の描画範囲184を求める。その後、ステップS103において、基準セル探知機能176は、画像メモリ20のうち、矩形領域182の描画範囲184に基準セル62の画像データが存在しているか否かを判別する。
【0083】
基準セル62の画像データが存在している場合、例えば図3Aに示すように、カード541の横に2つのカード542及び543が横方向に並べられ、かつ、カード544の横に2つのカード545及び546が横方向に並べられている場合を想定したとき、図18のステップS104に進み、識別情報検出機能178は、検出した基準セル62及びコーナーセル64によって形成される領域の画像データをアフィン変換する。そして、残りのカード542、543、545及び546の識別画像562、563、565及び566から各カード542、543、545及び546に対応する識別番号を検出する。識別番号の検出は、上述したように、識別画像562、563、565及び566から抽出したコードを2Dコードのデータベース68と照合することによって行われる。
【0084】
その後、ステップS105において、キャラクタ画像検索機能180は、カード542、543、545及び546の各識別番号等に基づくキャラクタの画像データ120をオブジェクト情報テーブル118から検索する。例えばオブジェクト情報テーブル118からそれぞれ識別番号に対応するレコードを検索し、検索したレコードが「有効」であれば、各レコードに登録された複数の格納先頭アドレスのうち、現在のレベルに対応する格納先頭アドレスからそれぞれ画像データ120を読み出す。
【0085】
一方、前記ステップS3において、残りのカード542、543、545及び546の識別画像562、563、565及び566が存在していないと判別された場合は、基準セル探知機能176は、ステップS106に進み、モニタ30の画面に残りの全てのカード542、543、545及び546を置くように促すエラーメッセージを出力し、その後、ステップS107において、所定時間(例えば3秒間)だけ待機した後、ステップS103に戻り、処理を繰り返す。
【0086】
そして、矩形領域182に存在する全てのカード541?546についてキャラクタの画像701?706を決定した段階で、上述した処理動作が終了する。
【0087】
この場合も、例えばキャラクタ出現表示プログラム84が起動されることによって、各カード541?546の識別画像561?566上にそれぞれカード541?546の識別番号等に対応するキャラクタの画像701?706が登場するシーンが表示されることになる。」

j.「【0089】
上述した第1及び第2のカード位置予測プログラム88及び90においては、カード541?546の配置を示す情報テーブル(カード配置情報テーブル:図示せず)を複数の対戦者に対応して複数用意し、カード541?546の識別画像561?566のカメラ座標とカード541?546の識別番号が検出される毎に、該当するカード配置情報テーブルに登録するようにしてもよい。この場合、机やテーブル52等に置かれた全てのカード541?546のカメラ座標がすべてカード配置情報テーブルに登録された段階で、それ以降、このカード配置情報テーブルに登録されたカメラ座標に基づいてカード541?546の認識(再認識)を行うようにしてもよい。
【0090】
なお、対戦者がそれぞれ3つのカードを例えば横方向に並べる場合において、それぞれ
3つのカードの方向を変えて配置することで、各対戦者での処理手順をそれぞれ1つに特定するようにしてもよい。
【0091】
例えば3つのカード541?543のうち、左側のカード541の配置方向によって動作を行うキャラクタを特定し、中央のカード542の配置方向によって動作によって影響を与えるべき相手のキャラクタを特定し、右側のカードの配置方向によって動作を特定する、等である。
【0092】
すなわち、左側のカード541の配置方向によって動作を行うキャラクタが特定される場合、前記カード541が左方向であれば、該カード541に対応するキャラクタの画像701が選択され、上方向であれば、中央のカード542に対応するキャラクタの画像702が選択され、右方向であれば、右側のカード543に対応するキャラクタの画像703が選択され、下方向であれば、3つのカード541?543に対応する3つのキャラクタの画像701?703が選択される。
【0093】
中央のカード542の配置方向によって相手となるキャラクタが特定される場合、前記カード542が左方向であれば、相手方のカード544に対応するキャラクタの画像704が選択され、上方向であれば、相手方の中央のカード545に対応するキャラクタの画像705が選択され、右方向であれば、相手方の右側のカード546に対応するキャラクタの画像706が選択され、下方向であれば、自分方の左側のカード541の配置方向で選択したキャラクタの画像が選択される。
【0094】
右側のカード543の配置方向によって動作が特定される場合、カード543が左方向であれば「攻撃する」が選択され、上方向であれば「魔法をかける」が選択され、右方向であれば「防御する」が選択され、下方向であれば「庇う」が選択される。
【0095】
このカードの配置方向に応じた処理を行うようにすれば、操作装置(キー操作によってコマンド入力を行うための装置)を使用しなくても、複数のカード541?543の向きの組み合わせによって様々な処理を指示することができる。」

k.「【0096】
次に、画像動き検出プログラム92について説明する。このプログラム92は、所定のタイミングで撮像した画像データと前記所定のタイミングとは別のタイミングで撮像した画像データとの差分をとり、差分後のデータに基づいて動きのあった画像を特定し、この特定された画像(ユーザの手の画像等)がキャラクタの画像に接触しているかどうかを判別し、接触していると判別した場合に、前記キャラクタに対応するパラメータを変更するというものである。
【0097】
このプログラム92は、図19に示すように、第1のメモリ機能188と、第2のメモリ機能190と、差分演算機能192と、画像特定機能194と、接触判別機能196と、繰返し機能198と、パラメータ変更機能200とを有する。
【0098】
このプログラム92の動作、例えば、図20Aに示すように、ユーザ74が一方の手202に1つのカード542を持つことによって、モニタ30の画面上において、カード542の識別画像562上に、該カード542の識別番号等に対応するキャラクタの画像702が登場した以降の動作について図19?図21を参照しながら説明する。
【0099】
まず、第1のメモリ機能188は、第1の差分信号S1の入力タイミングに基づいてCCDカメラ42からの撮像画像データ204を取り込んで第1の差分用メモリ24に記憶する。第1の差分信号S1の入力タイミングは任意に設定することができる。
【0100】
第2のメモリ機能190は、第2の差分信号S2の入力タイミングに基づいてCCDカメラ42からの撮像画像データ206を取り込んで第2の差分用メモリ26に記憶する。第2の差分信号S2の入力タイミングも任意に設定することができ、例えば第1の差分信号S1の1フレーム後、2フレーム後、5フレーム後等が挙げられる。
【0101】
差分演算機能192は、図21に示すように、第1の差分用メモリ24に記憶された撮像画像データ204と第2の差分用メモリ26に記憶された撮像画像データ206との差分をとる。例えば第2の差分用メモリ26に記憶された撮像画像データ206から第1の差分用メモリ24に記憶された撮像画像データ204を差し引く等の処理を行うようにしてもよい。
【0102】
画像特定機能194は、差分後のデータ208から動きのあった画像を特定する。差分後のデータ208としては、1画素単位や数画素単位でそれぞれ島状に分散したデータが想定されるが、ここでは、差分後のデータ208について、100画素以上の大きな固まりを示すデータを抽出し、抽出したデータを動きのあった画像として特定する。図21の例では、動きのあった画像として3つの画像208a?208cが特定された場合を示している。特定とは、抽出したデータ208a?208cの記録範囲をスクリーン座標として検出することを示す。
・・・(中略)・・・
【0110】
ところで、ビデオゲームの進行に伴って、机やテーブル52等に置かれたカードがユーザの手で動かされる場合がある。例えば1以上のカードの位置がずれたり、カードの配置の入れ替えや新たなカードとの交換等である。このようにカードに動きがあった場合、動きのあったカードについて再度認識する必要がある。
【0111】
これを解決するには、カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90を、数フレーム単位あるいは数10フレーム単位に起動すればよい。もちろん、新たなカード(例えばカード541)を認識した場合は、キャラクタ出現表示プログラム84を起動して新たなカード541の識別画像561上に、該新たなカード541の識別番号等に応じたキャラクタの画像701を登場させ、カード541の位置がずれたり、配置が入れ替わる程度であれば、キャラクタ動作表示プログラム86を起動して、例えば「待機」の動作を表示すればよい。」

l.図3


m.図15


n.図18


これらの記載からして、引用例には、

「CPU16、メインメモリ18、画像メモリ20、机やテーブル52等に置かれたカード541?546を撮像するCCDカメラ42を有するビデオゲームシステムであって、
ビデオゲームシステムにおけるデータの加工等はCPU16とメインメモリ18を通じて行われ、
CPU16は各種プログラムを実行し、
カード認識プログラム82によって、CCDカメラ42の撮像データからカード541?546の識別画像561?566を認識し、
カード認識プログラム82の基準セル探知機能104並びに第1及び第2のカード位置予測プログラム88及び90の基準セル探知機能164及び176によって、識別画像561?566の基準セル62の画像データの位置を検出し、
カード認識プログラム82、キャラクタ出現表示プログラム84及びキャラクタ動作表示プログラム86によって、カードゲームのキャラクタをビデオゲームのシナリオ中に出現させて様々な動作を行わせることができ、
第1及び第2のカード位置予測プログラム88及び90の基準セル探知機能164及び176は、探知領域の描画範囲にカードの画像が存在しない場合にエラーメッセージを出力し、
ビデオゲームの進行に伴って、机やテーブル52等に置かれたカードがユーザの手で動かされる場合があり、カードに動きがあった場合、動きのあったカードについて再度認識する必要があるため、カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90を数フレーム単位あるいは数10フレーム単位に起動し、
新たなカード(例えばカード541)を認識した場合は、キャラクタ出現表示プログラム84を起動して新たなカード541の識別画像561上に、該新たなカード541の識別番号等に応じたキャラクタの画像701を登場させ、カード541の位置がずれたり、配置が入れ替わる程度であれば、キャラクタ動作表示プログラム86を起動して、例えば「待機」の動作を表示するビデオゲームシステム。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

<対応関係A>
引用発明の「カード」、「カードゲーム」及び「ビデオゲームシステム」は、それぞれ本件補正発明の「オブジェクト」、「ゲーム」及び「ゲーム装置」に相当する。

<対応関係B>
引用発明の「机やテーブル52等」はその上でカードゲームを行う台であるから、カードゲームを行うための盤であるといえるので、当該「机やテーブル52等」の上面は、本件補正発明の「ゲームフィールドに設けられた盤面」に相当する。

<対応関係C>
引用発明の「CPU16」は、「カード認識プログラム82」を実行することによって、カードを認識する機能を奏するから、本件補正発明の「ゲームフィールドに設けられた盤面に置かれたオブジェクトを認識する認識部」に相当する。

<対応関係D>
引用発明の「CPU16」は、「カード認識プログラム82の基準セル探知機能104並びに第1及び第2のカード位置予測プログラム88及び90の基準セル探知機能164及び176」を実行してカード541?546の識別画像561?566の基準セル62の画像データの位置を検出することによって、カードの位置を検出している。
そして、技術常識を踏まえれば、当該カードの位置に関する情報は、当然、「メインメモリ18」に記憶されるものであるから、引用発明の「メインメモリ18」は、本件補正発明の「前記認識部により認識された、前記盤面上の前記オブジェクトの配置を記憶する記憶部」に相当する。

<対応関係E>
引用発明の「CPU16」は、「カード認識プログラム82、キャラクタ出現表示プログラム84及びキャラクタ動作表示プログラム86によって、カードゲームのキャラクタをビデオゲームのシナリオ中に出現させて様々な動作を行わせる」ものであるから、本件補正発明の「前記認識部により認識された、プレイヤーによる前記オブジェクトに対する操作に応じてゲームを進行させるゲーム実行部」に相当する。

<対応関係F>
引用発明の「CPU16」は、「第1及び第2のカード位置予測プログラム88及び90の基準セル探知機能164及び176」により「描画領域範囲にカードの画像が存在しない場合」に「エラーメッセージ」を出力するから、本件補正発明の「前記オブジェクトに対する操作の内容又は前記オブジェクトの状態を確認し、エラーが発生した場合その旨を報知するエラー処理部」に相当する。

<対応関係G>
引用発明において、「ビデオゲームの進行に伴って、机やテーブル52等に置かれたカードがユーザの手で動かされる場合があり、カードに動きがあった場合、動きのあったカードについて再度認識する必要があるため、カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90を数フレーム単位あるいは数10フレーム単位に起動」することにより、「新たなカード(例えばカード541)を認識した場合は、キャラクタ出現表示プログラム84を起動して新たなカード541の識別画像561上に、該新たなカード541の識別番号等に応じたキャラクタの画像701を登場させ、カード541の位置がずれたり、配置が入れ替わる程度であれば、キャラクタ動作表示プログラム86を起動して、例えば「待機」の動作を表示する」ということは、技術常識を踏まえれば、「新たなカード」が出されたかどうか、「カード541の位置がずれた」かどうか、あるいは、「配置が入れ替わる程度」かどうかについて、「カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90」を繰り返し実行し、それによって得られた認識されたカードの種類やその位置に関する前回の結果と今回の結果とをCPU16が比較することにより判別する工程を意味していることは明らかである。
また、「カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90」を繰り返し実行して、それらの結果を比較して、「新たなカード」が出されたかどうか、「カード541の位置がずれた」かどうか、あるいは、「配置が入れ替わる程度」かどうかを判別するということは、それらの結果が互いに一致しているか不一致であるかを判別しているということである。
これに対して、本件補正発明の「静的エラー処理部」における「不整合」の確認とは、本願明細書の段落【0026】の記載、
「【0026】
図4は、プレイヤーがカードをキャストするときのエラー処理の手順を示すフローチャートである。まず、ターンの開始前に、静的エラー処理部45が静的エラーチェックを行う(S10)。静的エラー処理部45は、認識部41に盤面6上のカード4の状態を認識させ、パラメータ保持部60に記憶された、前ターン終了時のカードの状態と比較する。カードの状態に不整合があれば、静的エラー処理部45は、その旨をプレイヤーに報知し、正しい状態に修正するよう指示する。静的エラー処理部45は、盤面6上のカードの状態が、前ターン終了時の状態と同一になれば、エラーチェックを終了する。」
からして、現在のカードの状態(配置)が全ターン終了時の状態と同一ではない状態を判別する工程を意味するから、引用発明における上記の判別工程は、カード認識プログラムやカード位置予測プログラムで得たカード位置の間について、「不整合」を確認する工程であるといえる。
さらに、引用発明において、「新たなカード」が出されたかどうか、「カード541の位置がずれた」かどうか、あるいは、「配置が入れ替わる程度」かどうかを判別する工程はユーザのカードに対する操作の結果を判別するものであるから、その工程のタイミングは、本件補正発明における「プレイヤーが前記オブジェクトを操作する・・・後」に相当するものであるといえるし、そのさらに後のカードの操作からみれば、「プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前」であるともいえる。
そうすると、引用発明の「ビデオゲームの進行に伴って、机やテーブル52等に置かれたカードがユーザの手で動かされる場合があり、カードに動きがあった場合、動きのあったカードについて再度認識する必要があるため、カード認識プログラム82、第1のカード位置予測プログラム88並びに第2のカード位置予測プログラム90を数フレーム単位あるいは数10フレーム単位に起動し、新たなカード(例えばカード541)を認識した場合は、キャラクタ出現表示プログラム84を起動して新たなカード541の識別画像561上に、該新たなカード541の識別番号等に応じたキャラクタの画像701を登場させ、カード541の位置がずれたり、配置が入れ替わる程度であれば、キャラクタ動作表示プログラム86を起動して、例えば「待機」の動作を表示する」ことと、本件補正発明の「前記エラー処理部は、プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記盤面上の前記オブジェクトの配置と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの配置とを比較して、不整合が生じていないかを確認し、不整合があればその旨をプレイヤーに報知し、不整合がなければプレイヤーに報知せずにエラーチェックを終了する静的エラー処理部を含む」こととは、
「プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記盤面上の前記オブジェクトの配置と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの配置とを比較して、不整合が生じていないかを確認する処理部を有する」
点で共通している。

以上の対応関係からして、本件補正発明と引用発明とは、
「ゲームフィールドに設けられた盤面に置かれたオブジェクトを認識する認識部と、
前記認識部により認識された、前記盤面上の前記オブジェクトの配置を記憶する記憶部と、
前記認識部により認識された、プレイヤーによる前記オブジェクトに対する操作に応じてゲームを進行させるゲーム実行部と、
前記オブジェクトに対する操作の内容又は前記オブジェクトの状態を確認し、エラーが発生した場合その旨を報知するエラー処理部と、を備え、
プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記盤面上の前記オブジェクトの配置と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの配置とを比較して、不整合が生じていないかを確認する処理部を有するゲーム装置」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点)
本件補正発明は、「その時点における前記盤面上の前記オブジェクトの配置と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの配置とを比較して」、「不整合」が生じている場合、その「不整合」をエラーとしてプレイヤーに報知し、「不整合」がなければプレイヤーに報知せずにエラーチェックを終了するのに対して、引用発明は、ゲームを進行できないエラーとなる状態が発生した場合にエラーとして報知する技術思想は有するものの、カードに動きがあってもそれをエラーとしておらず、ユーザーに報知していない点。

(3)検討・判断
上記相違点について検討する。

カードゲームにおいて、配置されたカードに何らかの動き・変化があった場合にどのような対応をするべきであるかは、ゲームルールとの関係によって決まることであるから、引用発明において、カードの動きが検出された場合にどのような処理を行うべきであるかは、実際に採用するカードゲームのゲームルールに応じて当業者が適宜に設定し得る設計的事項に過ぎない。つまり、上記相違点は本件補正発明と引用発明とがそれぞれ採用しているゲームルールの相違に起因するものであって、実質的な技術的進歩性の有無とは無関係であるといえる。
また、ゲームルールそれ自体は人為的な取り決め事項の類であり、どのようなゲームルールを採用しようとも、格別な技術的効果をもたらすものではない。
そうすると、引用発明のビデオゲームシステムで遊ぶカードゲームについて、ゲームルール上、カードの位置に意味があって、カードの配置状態をユーザが勝手に変更することはルール違反であり禁止されるようなゲームルールを採用して、そのゲームルールに反した、例えば、(1)一方のプレイヤーがカードを3枚配置したのに、ゲームルールに反してその内の1枚を取り除いた(待ったをかけた)、(2)一方のプレイヤーがカードを3枚配置したのに、ゲームルールに反してその内の1枚を別のカードに差し替えた(出し直しをした)、(3)一方のプレイヤーがカードを3枚配置し、ゲームルール上は他方のプレイヤーの番であるのに、引き続きカードを動かしてしまった(順番を間違えた)、などといった場合は、ゲームを正常に進行できないエラー状態としてユーザに報知するように為すことは、当業者にとって格別の創意を必要としない設計変更に過ぎない(なお、ゲームルール上、カードの位置に意味があるようなカードゲームは周知のものである。例えば、拒絶査定で引用された特開2004-313616号公報を参照されたい。)。
さらに、普通にゲームを進行できる状態であれば、そのことを一々報知しないというのは当たり前のことであって、当業者であれば当然にそのようにする程度のことである。

そして、本件補正発明が奏する作用効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本件補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、上記<対応関係B>において、通常の解釈を行い、引用発明の「机やテーブル52等」の上面は、本件補正発明の「ゲームフィールドに設けられた盤面」に相当すると認定したが、仮に、本件補正発明の「盤面」が、本願明細書における実施の形態として記載されているような複数の仕切り線によりカードを配置する区画であるマスが形成された盤面のみを意味しており、その点が一応の相違点になったとしても、結論は変わらない。
なぜなら、カードを配置するマスが形成された盤面を用いるカードゲームは周知のものであり(例えば、上述の特開2004-313616号公報を参照されたい。)、当然、そのようなマスが形成された盤面も周知のものであるから、引用発明のビデオゲームシステムで遊ぶカードゲームについて、そのような盤面を用いるものとすることも当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
この場合、本件補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第36条第6項第2号及び第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成21年 7月14日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成21年3月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ゲームフィールドに置かれたオブジェクトを認識する認識部と、
前記認識部により認識された、前記ゲームフィールドにおける前記オブジェクトの状態を記憶する記憶部と、
前記認識部により認識された、プレイヤーによる前記オブジェクトに対する操作に応じてゲームを進行させるゲーム実行部と、
前記オブジェクトに対する操作の内容又は前記オブジェクトの状態を確認し、エラーが発生した場合その旨を報知するエラー処理部と、を備え、
前記エラー処理部は、プレイヤーが前記オブジェクトを操作する前又は後に、その時点における前記オブジェクトの状態と、前記記憶部に記憶された前記オブジェクトの状態とを比較し、不整合が生じていないかを確認する静的エラー処理部を含む
ことを特徴とするゲーム装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例およびその記載事項は、前記「第2」「〔理由〕」「2-3」「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比、検討・判断
本願発明は、上記「第2」「〔理由〕」「1 本件補正の目的」で検討した本件補正発明の発明特定事項において、「ゲームフィールド」及び「静的エラー処理部」に関する限定的事項の一部を省いたものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加したものに相当する本件補正発明は、上記「第2」「〔理由〕」「2-3」「(3)検討・判断」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、本件補正発明から追加的な発明特定事項を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-14 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2006-256492(P2006-256492)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 樋口 信宏
橋本 直明
発明の名称 ゲーム装置、ゲーム制御方法、及びゲーム制御プログラム  
代理人 村田 雄祐  
代理人 森下 賢樹  
代理人 青木 武司  
代理人 三木 友由  

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