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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1235725 |
審判番号 | 不服2010-9598 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-06 |
確定日 | 2011-04-21 |
事件の表示 | 特願2000-387778「ゴルフクラブ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 2日出願公開、特開2002-186694〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成12年12月20日に出願したものであって、平成21年7月14日付け及び同年10月30日で手続補正がなされ、平成22年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書についての手続補正がなされたものである。 その後、平成22年10月13日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月1日に回答書が提出された。 2 平成22年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年5月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を30?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5800?7000g・cm^(2 )としたことを特徴とするゴルフクラブ。」 から 「クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を31.5?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5800?7000g・cm^(2) としたことを特徴とするゴルフクラブ。」 と補正された。(下線は、審決で付した。以下、同様。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「シャフトの軸中心線からヘッドの重心までの最小長さである重心距離」について、「30?33mm」から「31.5?33mm」と下限値をさらに限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭63-71272号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある。 ア 「以上説明した如きヘッドを備えたゴルフクラブセットは、次の表に示す如くなった。この表中#1はドライバーに相当し、#12はピッチングウェッジに相当する。#1?#4のヘッドは、カーボン繊維強化樹脂と硬質発泡ウレタンコアとを一体成形し、後にステンレススチール製ソールプレートを装着したものであり、#5及び#6のヘッドは、カーボン繊維強化樹脂を硬質発泡ウレタンコアとステンレススチール製ソールプレートを一体成形したものであり、#7?#12のヘッドは、タングステンの粉末を混入したカーボン繊維強化樹脂とステンレススチール製ソールプレートを一体成形したものである。 表 ┌───────────┬──┬──┬──┬──┬──┐ │ │#1│#2│#3│#4│#5│ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │ライ角(deg) │ 56 │ 57 │57.5│ 58 │58.5│ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │ロフト角(deg) │ 12 │ 16 │ 19 │ 22 │ 25 │ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │クラブ長さ(cm) │109 │107 │105 │103 │101 │ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │ヘッド重量(g) │198 │205 │212 │219 │230 │ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │ヘッド体積(cm^(3)) │198 │146 │131 │126 │110 │ ├───────────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │比重(g/cm^(3)) │1.00│1.40│1.62│1.74│2.09│ └───────────┴──┴──┴──┴──┴──┘」 (第3頁右上欄第13行?左下欄) イ 上記記載及び図面を含む刊行物1、特に、表に示す#3ないし#5のゴルフクラブから、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「クラブ長さが特定値[105cm、103cm、101cm]でありかつロフト角が特定値[19deg、22deg、25deg]であるゴルフクラブ。」 (審決注:上記[]内の数値は、左から順に刊行物1の#3ないし#5のゴルフクラブに対応するものである。) (3)対比 a 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「クラブ長さ」、「ロフト角」及び「ゴルフクラブ」は、それぞれ本願補正発明の「クラブ全長」、「ヘッドのロフト角」及び「ゴルフクラブ」に相当する。 b 1インチが2.54cmとすると、引用発明の「105cm、103cm、101cm」は、「41.34インチ、40.55インチ、39.76インチ」であるから、本願補正発明の「39?42インチ」に包含される。 c 引用発明の「19deg、22deg、25deg」は、本願発明の「16?25゜」に包含される。 d 上記aないしcから、本願補正発明と引用発明は、 「クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明は「シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を31.5?33mmとし」と特定されているのに対し、引用発明は、シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離についての明示がない点。 [相違点2]本願補正発明は「シャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5800?7000g・cm^(2) とした」と特定されているのに対し、引用発明は、シャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントについての明示がない点。 (4)判断 <上記相違点1についての検討> a シャフトの軸中心線からヘッドの重心までの最小長さである重心距離がインパクト時のヘッドの返りに影響することは、本件出願前周知(原査定で引用された特開平9-271545号公報、段落【0048】「比較的ヒール重心とすることでヘッドが返り易くなり」、原査定で引用された特開2000-288131号公報、段落【0003】「ヘッドbの重心距離Lが大きくなると、ボールを打撃する際、ヘッドbの「返り」が悪くなる傾向があり」、特開2000-296192号公報、段落【0025】「ヘッドの重心距離E(ヘッドのスイートスポットSSからシャフト取付部2bの中心線までの最短距離)が著しく大きくなるのを効果的に抑制しうる。これによりヘッド1の返りが悪くなるのを防止できる。」)である(以下「周知技術1」という。)。 b 本願出願当初明細書には、以下の記載がある。 ・【請求項1】 クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を34mm以下とし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5200g・cm^(2 )以上としたことを特徴とするゴルフクラブ。 ・【0018】 前記重心距離Aが大き過ぎると、図4に示した如く、スイング時にヘッド3の「返り」が悪化する傾向があり、フェースが開いた状態でボールをインパクトすることが多くなってボールが右方向に打ち出しされやすくなる。このような観点より、本発明では前記重心距離Aを34mm以下、より好ましくは33mm以下に限定している。なお前記重心距離Aが著しく小さいと、ヘッド3が逆に返りすぎてしまうおそれもある。このような観点より、該重心距離Aは、好ましくは20?34mm、より好ましくは25?34mm、さらに好ましくは30?34mm、特に好ましくは30?33mmとするのが望ましい。 ・【表1】及び【表2】に例示された実施例の内、実施例2の重心距離は、31.0mmと記載されている。 c 平成21年7月14日付け手続補正後の明細書には、以下の記載がある。 ・【請求項1】 クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を30?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5200?7000g・cm^(2 )としたことを特徴とするゴルフクラブ。 ・【0018】 前記重心距離Aが大き過ぎると、図4に示した如く、スイング時にヘッド3の「返り」が悪化する傾向があり、フェースが開いた状態でボールをインパクトすることが多くなってボールが右方向に打ち出しされやすくなる。このような観点より、本発明では前記重心距離Aを33mm以下に限定している。なお前記重心距離Aが著しく小さいと、ヘッド3が逆に返りすぎてしまうおそれもある。このような観点より、該重心距離Aは、30?33mmとする。 d 平成21年10月30日付け手続補正により、重心距離が31.0mmである実施例2は、比較例7と補正された。 e 本件補正後の請求項1の記載は、上記「(1)補正後の本願発明」の補正後の記載として摘記したとおりであり、その他に明細書には、以下の記載がある。 ・【0018】 前記重心距離Aが大き過ぎると、図4に示した如く、スイング時にヘッド3の「返り」が悪化する傾向があり、フェースが開いた状態でボールをインパクトすることが多くなってボールが右方向に打ち出しされやすくなる。このような観点より、本発明では前記重心距離Aを33mm以下に限定している。なお前記重心距離Aが著しく小さいと、ヘッド3が逆に返りすぎてしまうおそれもある。このような観点より、該重心距離Aは、31.5?33mmとする。 f 上記bないしeから、本願補正発明の「シャフトの軸中心線からヘッドの重心までの最小長さである重心距離」についての数値限定に臨界的意義を見いだすことはできず、該数値限定は、ヘッドの返りが好適になる範囲を適宜選択したにすぎないものと認められる。 g そもそも、ゴルフクラブのヘッドにおいて重量配分をどのようにするかは設計事項にすぎず、目標方向に打球を飛ばしやすいゴルフクラブは、全てのゴルフクラブにおいての自明の課題であるから、引用発明において周知技術1を勘案し、インパクト時にヘッドが適正に返り、目標方向に打球を飛ばしやすいゴルフクラブとなるように、シャフトの軸中心線からヘッドの重心までの最小長さである重心距離を適正な値とすることは、当業者が容易になし得る程度のことであり、その際、その数値範囲を実験等により、好適な範囲を選択することは設計事項にすぎない。(なお、上記周知技術で1で例示し、原査定で引用された特開平9-271545号公報の【表6】には、#3の重心距離32.2mmが記載されており、本願補正発明程度の数値範囲を採用することに困難性はない。) h 上記aないしgから、本願補正発明の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。 <上記相違点2についての検討> a シャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントが大きいとインパクト後のヘッドのぶれが小さくなること、及び、シャフト軸中心から遠い位置に重量を配分してシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを大きくすることは、本件出願前周知(原査定で引用された特開平7-136299号公報、段落【0025】「トウ側重量配分領域48cを設けているので、トウ42側の上部への効果的な重量配分が可能になり、スイング時におけるシャフトの中心軸6aの回りの慣性モーメントが増大する。この結果、・・・特にインパクト時にフェース41のぶれが生じ難く、ショットが比較的安定したものとなる。」、特開平7-255879号公報、段落【0002】「インパクト時にスウィートスポットをはずしてインパクトした時、ヘッドの振れを減少させるために、シャフト軸中心線回りの慣性モーメントを増大させる」、段落【0003】「シャフト軸線回りの慣性モーメントI_(S) が増加してゆき、その結果ヘッドの返り易く振り抜き易いゴルフクラブを提供する」、段落【0013】「トウ部に重量を集中的に配分でき、シャフト軸線回りの慣性モーメントI_(S )を大きくすることができる。」、段落【0016】「ウェイト部Wはシャフト軸中心線Xから距離Lだけ離れた凹部トウ側線Yよりもトウ側に設けられているため、シャフト中心軸から垂直距離が最も離れた位置に、より多くの質量を効果的に配分することができる。」)である(以下「周知技術2」という。)。 b 本願出願当初明細書には、以下の記載がある。 ・【請求項1】 クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離 を34mm以下とし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5200g・cm^(2 )以上としたことを特徴とするゴルフクラブ。 ・【0019】 またシャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBが小さいと、上述の如く、フェース部3aのトウt寄りでボールを打球した場合、ヘッド3がシャフト2を中心として開く方向に回転し、打球がさらに右方向に打ち出されやすい。このため、本発明では、該シャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBを従来よりも増大しており、具体的には5200g ・ cm^(2) 以上に設定する。なおシャフト2の軸中心線CL周りの慣性モーメントBが著しく大きなヘッド3では、前記重心距離Aを34mm以下に設定することが困難となる場合がある。このような観点より、前記慣性モーメントBは、好ましくは5200?8000g・ cm^(2) 、さらに好ましくは5200?7000g・ cm^(2 )、特に好ましくは5800?7000g・cm^(2 )とすることが望ましい。 ・【表1】及び【表2】に例示された実施例の内、実施例2の慣性モーメントは、5200g・cm^(2)(審決注:「g・mm^(2)」が「g・cm^(2)」の誤記であることは明白なので訂正して記載した。以下同様。)と記載され、実施例5の慣性モーメントは、8000g・cm^(2)と記載されている。 c 平成21年7月14日付け手続補正後の明細書には、以下の記載がある。 ・【請求項1】 クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を30?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5200?7000g・cm^(2 )としたことを特徴とするゴルフクラブ。 ・【0019】 またシャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBが小さいと、上述の如く、フェース部3aのトウt寄りでボールを打球した場合、ヘッド3がシャフト2を中心として開く方向に回転し、打球がさらに右方向に打ち出されやすい。このため、本発明では、該シャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBを従来よりも増大しており、具体的には5200g ・ cm^(2 )以上に設定する。なおシャフト2の軸中心線CL周りの慣性モーメントBが著しく大きなヘッド3では、前記重心距離Aを33mm以下に設定することが困難となる場合がある。このような観点より、前記慣性モーメントBは、5200?7000g・ cm^(2) とし、特に好ましくは5800?7000g・cm^(2 )とすることが望ましい。 ・慣性モーメントが8000g・cm^(2)である実施例5は、比較例6と補正された。 d 平成21年10月30日付け手続補正後の明細書には、以下の記載がある。 ・【請求項1】 クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を30?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5800?7000g・cm^(2 )としたことを特徴とするゴルフクラブ。 ・【0019】 またシャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBが小さいと、上述の如く、フェース部3aのトウt寄りでボールを打球した場合、ヘッド3がシャフト2を中心として開く方向に回転し、打球がさらに右方向に打ち出されやすい。このため、本発明では、該シャフト2の軸中心線CL周りのヘッドの慣性モーメントBを従来よりも増大しており、具体的には5800g・ cm^(2) 以上に設定する。なおシャフト2の軸中心線CL周りの慣性モーメントBが著しく大きなヘッド3では、前記重心距離Aを33mm以下に設定することが困難となる場合がある。このような観点より、前記慣性モーメントBは、5800?7000g・ cm^(2 )とする。 ・慣性モーメントが5200g・cm^(2)である実施例2は、比較例7と補正された。 e 本件補正後の請求項1の記載は、上記「(1)補正後の本願発明」の補正後の記載として摘記したとおりである。 f 上記bないしeから、本願補正発明の「シャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメント」についての数値限定に臨界的意義を見いだすことはできず、該数値限定は、重心距離を小さく維持しつつヘッドのぶれが好適になるシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントの範囲を適宜選択したにすぎないものと認められる。 g そもそも、ゴルフクラブのヘッドにおいて重量配分をどのようにするかは設計事項にすぎず、目標方向に打球を飛ばしやすいゴルフクラブは、全てのゴルフクラブにおいての自明の課題であるから、引用発明において周知技術2を勘案し、インパクト後にヘッドのぶれが小さくなり、目標方向に打球を飛ばしやすいゴルフクラブとなるように、シャフト軸中心から遠い位置に重量を配分してシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを大きな値とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。 h 重心距離を小さくするには、シャフトの軸中心線に重量を配分するのが有効であることは、当業者に自明のことであり、上記周知技術2で例示し、原査定で引用された特開平7-136299号公報の段落【0022】に「トウ42側に延在するトウ側重量配分領域48cと、・・・ヒール43側に延在するヒール側重量配分領域48dとに重量が配分される。」と記載されているように、シャフトの軸中心線から遠い位置と近い位置に重量配分することが記載されているから、引用発明において周知技術2を勘案し、シャフトの軸中心線から遠い位置に重量配分する際、相違点1に係る重心距離を小さく維持できるよう、シャフトの軸中心線から遠い位置と近い位置に重量配分し、重心距離を小さく維持しつつヘッドのぶれが好適になるようシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントの数値範囲を実験等により、選択することは設計事項にすぎない。(なお、原査定で引用された特開平1-166781号公報【表-1】にシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントが5869?6533g・cm^(2)のゴルフクラブが記載されており、本願補正発明程度の数値範囲を採用することに困難性はない。) i 上記aないしhから、本願補正発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。 以上のとおりであるから、本願補正発明の相違点1及び2に係る構成は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について 平成22年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成21年10月30日付け手続補正後の明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「クラブ全長が39?42インチでありかつヘッドのロフト角が16?25゜であるゴルフクラブであって、 シャフトの軸中心線から前記ヘッドの重心までの最小長さである重心距離を30?33mmとし、 かつシャフトの軸中心線回りのヘッドの慣性モーメントを5800?7000g・cm^(2 )としたことを特徴とするゴルフクラブ。」 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「シャフトの軸中心線からヘッドの重心までの最小長さである重心距離」についての限定事項である「31.5?33mm」との数値範囲を拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらなる限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-14 |
結審通知日 | 2011-02-22 |
審決日 | 2011-03-07 |
出願番号 | 特願2000-387778(P2000-387778) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
野村 伸雄 鈴木 秀幹 |
発明の名称 | ゴルフクラブ |
代理人 | 住友 慎太郎 |