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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1235772 |
審判番号 | 不服2009-1534 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-19 |
確定日 | 2011-04-20 |
事件の表示 | 特願2003-526093「合意のサービスの登録および配送」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月13日国際公開、WO03/21887、平成17年 1月20日国内公表、特表2005-502274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、2002年7月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年9月6日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月25日付けの拒絶理由通知に対し平成20年4月24日付けで手続補正がなされたものの、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月19日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同年2月18日に手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年2月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 平成21年2月18日付けの手続補正は、補正前の平成20年4月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「送信到達範囲に渡って、1つの通信プロトコルにしたがって無線伝送することの可能なサービス登録ビーコンデバイスであって、標示されている対話ゾーンの内部に制約されるサービス登録ビーコンデバイスと、 前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送を受信するために、前記対話ゾーンの内部に位置することが必要とされる携帯デバイスであって、前記携帯デバイスに対してサービスを配送するための合意の登録を示すように、前記無線伝送に応答して前記サービス登録ビーコンデバイスに識別子を提供する携帯デバイスと、 制約されていない配送送信到達範囲をもつ少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスであって、前記制約されていない配送送信到達範囲の内部において、前記識別子を介して前記携帯デバイスを検出すると、前記携帯デバイスに前記サービスを配送し、前記携帯デバイスが、前記サービス登録ビーコンデバイスを介して前記合意の登録をした場合のみ、前記サービスが配送される、少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスと を有する通信システム。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「送信到達範囲に渡って、1つの通信プロトコルにしたがって無線伝送することの可能なサービス登録ビーコンデバイスであって、標示されている対話ゾーンの内部に制約されるサービス登録ビーコンデバイスと、 前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送を受信するために、前記対話ゾーンの内部に位置することが必要とされる携帯デバイスであって、前記携帯デバイスに対してサービスを配送するための合意の登録を示すように、前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送に応答して前記サービス登録ビーコンデバイスに識別子を提供する携帯デバイスと、 制約されていない配送送信到達範囲をもつ少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスであって、前記制約されていない配送送信到達範囲の内部において、前記識別子を介して前記携帯デバイスを検出すると、前記携帯デバイスに前記サービスを配送し、前記携帯デバイスが、前記サービス登録ビーコンデバイスを介して前記合意の登録をした場合のみ、前記サービスが配送される、少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスと を有する通信システム。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、「前記無線伝送に応答して」を「前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送に応答して」とすることにより、「前記無線伝送」の構成を限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 a.引用発明1 原査定の拒絶理由に引用された特開平8-18523号公報(以下、「引用例1」という。)には「情報配信システムおよび携帯型情報端末」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【0039】 【実施例】以下、本発明の詳細を図示した各実施例によって説明する。 【0040】〈第1実施例〉図1は、本発明の第1実施例に係る情報配信システムの概念図である。本実施例は、電車の駅におけるシステム例を示したものである。 【0041】図1において、1は本情報配信システムの利用者、2は携帯型記憶媒体で、磁気記録による自動改札が出来る定期券を兼ね、契約情報も記憶している。3は改札口に設置された読取り装置で、携帯型記憶媒体2が挿入されると定期券の自動改札を行う機能と、携帯型記憶媒体2からの契約内容等を読み取る機能と、ID番号の照合機能と、後述する情報を後述する携帯型情報端末に伝送するときの、利用者1に割当てられた送信チャンネルデータの通知のための無線送受信機能とを併せ持っている。4は情報蓄積装置で、文字や写真や図表を含む各種情報を蓄積している。5は情報管理装置で、情報蓄積装置4を制御し、外部情報の情報蓄積装置4への書き込みと、携帯型記憶媒体2に記憶された契約内容に沿った情報の読み出しを行う。6は送信管理装置で、情報管理装置5が読み出した情報を、前記利用者1に割当てた送信チャンネルにより駅構内に向けて送信する。7は駅の情報配信システムを統括制御するシステム管理装置で、読取り装置3と情報管理装置5と送信管理装置6との間における各種データのやり取りの制御と、情報管理装置5を介した外部システムとの通信制御等を司る。8は利用者1が手軽に携行可能な携帯型情報端末で、読取り装置3との交信機能と、送信管理装置6から情報を受信する機能と、受信した情報を記憶し利用者1に提示する機能とを併せ持っている。9は外部情報群で、情報管理装置5を通して利用者1の希望する各種情報を供給する、例えば、新聞社や雑誌社、パソコンネットなどである。」(第6頁、段落0039-0041) イ.「【0042】図2は、図1に示した構成において、情報やその他のデータがどのように本実施例のシステムの中で処理されるかを示したものである。 【0043】図2において、21は携帯型記憶媒体2に記憶されている携帯型情報端末8のID番号(携帯型記憶媒体2と対をなす携帯型情報端末8と同一のID番号)、22は同様に記憶されている利用者1が契約した契約データ、31は読取り装置3のID番号確認部、32は携帯型情報端末8と近距離での無線交信をするための読取り装置3の無線送受信部、41は情報蓄積装置4から読み出された情報、51は情報管理装置5が発生したメッセージ、52は契約期間を確認する情報管理装置5の契約確認部、61は送信管理装置6が情報を送信するチャンネルを示す送信チャンネルデータ、62は情報を構内に向けて電波によって発信するための送信機や空中線を含む送信管理装置6の無線送信部、71は外部情報群9にデータの伝送を要求するシステム管理装置7からの伝送要求、72は外部情報群9との契約の有無を確認し、伝送要求71と契約データ22とを所定の外部情報群9に通知するシステム管理装置7の外部契約確認部、81は携帯型情報端末8毎に予め決められた固有ID番号、82は読取り装置3と近距離での無線交信をするための携帯型情報端末8の無線送受信部、83は送信管理装置6から送信された情報を受信するための携帯型情報端末8の無線受信部、84は受信した文字や写真や図表などの情報を表示するための携帯型情報端末8の情報提示部、85は受信した情報を記憶するための携帯型情報端末8の情報記憶部、91は外部情報群9の中の1つとしての情報を提供する新聞社、911は新聞社91の情報蓄積装置、912は新聞社91の情報管理装置、913は新聞社91の情報入力装置、914は情報入力装置913により情報を打ち込む新聞社91のオペレーター、915は情報入力装置913により入力された外部情報、92は外部情報群9の中の1つとしての個人向け情報を扱う配信会社、921は配信会社92のメール蓄積装置、922は配信会社92のメール管理装置、923は配信会社92に接続されたパソコンネット(パーソナルコンピュータネットワーク)、924はパソコンネット923を用いた配信会社92へのメールの送信者、925は送信者924により送信された個人宛のメールである。」(第6頁、段落0042-第7頁、段落0043) ウ.「【0045】次に、本実施例の動作を、図1および図2を用いて説明する。ここでは、利用者1が所持する携帯型記憶媒体2には、予め新聞の社会面の情報と配信会社92に契約した自分宛てのメールとを受信する契約内容が記録されているものとする。また、利用者1は中規模の駅から乗車し、通勤しているものとする。 【0046】まず、利用者1は電車に乗るために改札口において、携帯型記憶媒体2を読取り装置3に挿入する。すると、読取り装置3は、携帯型記憶媒体2に記憶された契約データ22とID番号21とを読み取り(図2の手順(1))、ID番号21をID番号確認部31に入力する。続いて、読取り装置3は、無線送受信部32によって、利用者1が携行する携帯型情報端末8を、ID番号21を用いて呼び出す(図2の手順(2))。一方、無線電波を受けた携帯型情報端末8は、内部に記憶している固有ID番号81と送信されたID番号21とを比較し、これが一致したときは無線送受信部82により応答を返す。 【0047】携帯型情報端末8からの応答を受けた読取り装置3のID確認部31は、この応答によって、携帯型記憶媒体2の所有者が携行している携帯型情報端末8が正規の情報送信先であることを確認する。 【0048】ここで、もし確認が取れなかった場合には、読取り装置3は、利用者1が今日は携帯型情報端末8を携行していないと判断してこの後の処理を行わず、次の利用者を待ち受ける。 【0049】上記の確認が取れると、次に読取り装置3は、ID番号21と契約データ22を、システム管理装置7へ転送する(図2の手順(3))。ここで、システム管理装置7が、ID番号21を送信管理装置6へ送ると(図2の手順(4))、送信管理装置6は、複数の送信チャンネルの中から、最も空いているチャンネルを、ID番号21の携帯型記憶媒体2の所有者が携行している携帯型情報端末8に割当て、割当てたチャンネルを示す送信チャンネルデータ61を、システム管理装置7を介して読取り装置3へ転送する(図2の手順(5))。さらに、読取り装置3に転送された送信チャンネルデータ61は、無線送受信部32により携帯型情報端末8に送信され(同じく、図2の手順(5))、これによって、無線受信部83にチャンネルのデータが設定され、携帯型情報端末8の受信準備が完了する。 【0050】以上までの動作が、利用者1が、読取り装置3に携帯型記憶媒体2を挿入し、読取り装置3から携帯型記憶媒体2を受け取って、ここを通過する間に行われる。読取り装置3を通過した利用者1は、この後プラットホームへと向かう。」(第7頁、段落0045-0050) エ.「【0051】一方、本実施例の情報配信システムの配信側は、携帯型情報端末8へ情報を送信するために、以下の動作に移る。 【0052】まず、システム管理装置7が、契約データ22を情報管理装置5にある契約確認部52へ転送する(図2の手順(6))と共に、外部契約確認部72において、利用者1と外部情報群9との間の契約の有無を確認する。 【0053】本実施例では最初に述べたとおり、利用者1が配信会社92と個人宛てメールの受信契約をしていることから、外部契約確認部72は、メール925の伝送を要求する伝送要求71と、契約データ22とを、配信会社92のメール管理装置922へ転送する(図2の手順(7))。 【0054】配信会社92のメール管理装置922は、上記の伝送要求71と契約データ22を受け取ると、送信者924からパソコンネット923を介して、メール蓄積装置921に記憶された利用者1宛てのメール925を取り出し、これを情報管理装置5へ伝送する(図2の手順(8))。 【0055】また、情報管理装置5の契約確認部52は、契約データ22に含まれる契約期間に関するデータを今日の日付と比較し、もし契約期日を過ぎている場合には、契約切れにより利用できない旨を表すメッセージ51を、また、契約切れが近いときには、契約の更新を促すメッセージ51を発生するように動作する。 【0056】そして、契約確認が終了すると、情報管理装置5は契約データ22の内容に基づき、ここでは、新聞の社会面の記事を情報蓄積装置4から情報41として取り出し(図2の手順(9))、この情報41に、先に発生したメッセージ51と配信会社92より伝送されたメール925とを付加して、システム管理装置7へ転送する(図2の手順(10))。 【0057】情報41とメッセージ51とメール925とを受けたシステム管理装置7は、これらにさらにID番号を付加して、送信管理装置6へ転送する(図2の手順(11))。 【0058】ID番号81(=ID番号21)と情報41とメッセージ51とメール925を受けた送信管理装置6は、ID番号81から、先に同ID番号に割当てた送信チャンネルを無線送信部62に設定し、上記4種類の情報を構内に設置した空中線によって携帯型情報端末8へ送信する(図2の手順(12))。 【0059】以上の動作により、契約内容に沿った情報が、自動的に携帯型情報端末8へ向けて送信されたことになる。 【0060】次に、プラットホームへと向かっている利用者1が携行する携帯型情報端末8が受信待機しているチャンネルに、無線送信部62から送信された情報が届くと、無線受信部83は、受信した情報の先頭に有るID番号を固有ID番号81と照合し、これが一致していれば、続いて受信している情報が本携帯型情報端末8に宛てられた情報であるので、これを情報記憶部85に順次記憶していく(図2の手順(13))。」(第8頁、段落0051-0060) オ.「【0069】また本実施例では、利用者1が携帯型記憶媒体2を読取り装置3に挿入するようにしたが、図4に示すように、携帯型記憶媒体2に、読取り装置3からの無線指令を受ける機能と、内部記憶した契約データ等を無線送信する機能とを持たせ、また、読取り装置3に、携帯型記憶媒体2からデータを送信させる指令を無線で出す機能と、送信された契約データ等を受信する機能とを持たせるようにすれば、携帯型記憶媒体2を読取り装置3に挿入することなく、ただ利用者1が読取り装置3の側を通過するだけで、先と同じように、契約データ等がシステム管理装置7へ転送され、手元の携帯型情報端末8において情報の配信を受けることが出来るようになる。 【0070】さらに、図5に示すように、先に説明した携帯型情報端末8の機能と、上記した図4の携帯型記憶媒体2の機能とを一体化させることによって、つまり特定区域内で情報を受信し表示する機能を持った携帯型情報端末8自身に、契約データ等を記憶する機能と、このデータを読取り装置3からの無線指令で送信する機能とを持たせることにより、利用者1が読取り装置3の近くを通過するだけで契約データ等がシステム管理装置7に転送され、手元の携帯型情報端末8において情報の配信を受けることが可能となり、さらに、携帯型記憶媒体2と携帯型情報端末8とをばらばらに携帯する必要がなくなるといった利点が生まれる。」(第9頁、段落0069-0070) カ.「【0132】また、第1?第4実施例で述べた以外で、本発明の情報配信システムの応用できる施設としては、例えば、映画館や劇場なら、観覧チケットを読み取ることで、その内容で携帯型情報端末8に俳優の経歴などを配信でき、空港なら搭乗券を読み取って、目的地に関する耳より情報や現地の天気情報などを配信でき、博物館や動物園や美術館なら、入場券を読み取って、特別展示のお知らせなどを配信できる。さらに、乗車駅ではなく下車駅において本発明のシステムを起動すれば、上記の航空券の例と同様に、その下車駅周辺の案内や、当日の催しに関する情報を自動的に入手できる、と言ったように様々な応用が考えられる。」(第13頁、段落0132) キ.「【0173】また、特定区域の入り口において、携帯型情報端末へ送信チャンネルに関するデータを通知して、携帯型情報端末を受信スタンバイ状態にするので、情報を送信するまでの待ち時間を短く出来、携帯型情報端末まで情報が届く時間を短くすることが出来る。 ・・・(中略)・・・ 【0177】また、特定区域内だけで情報の配信をすれば良いので、システムの管理をやりやすくなる。」(第15頁、段落0173-第16頁、段落0177) 上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 ・読取り装置3の無線送受信部32は、携帯型情報端末8と近距離での無線交信をするものである(摘記事項イ.)が、このような無線交信が、送信到達範囲に渡って、1つの通信プロトコルにしたがって無線伝送を行うものであることは自明であり、 ・読取り装置3は駅の改札口に設置され、携帯型情報端末8は自動改札を利用する利用者1に携行される(摘記事項ア.)ものであるが、上記のような無線伝送は、利用者1が読取り装置3の近くを通過するだけで行われる(摘記事項オ.)から、無線送受信部32は改札口に制約されていると言うことができ、 ・携帯型情報端末8は、無線送受信部32からの無線伝送を受信するために、改札口に位置することが必要とされることは自明であり、 ・読取り装置3からの無線指令に対して携帯型情報端末8からは契約データ等が転送される(摘記事項オ.)が、この「契約データ等」とは「契約データ22とID番号21」(摘記事項ウ.)であることは明らかであるところ、上記契約データ等は携帯型情報端末8に配送される情報すなわちサービスについてなされた契約に関するデータを含み、通常このような契約は利用者とサービス提供者との間の合意に基づくものと認められ、また、上記契約データ等の転送は、携帯型情報端末に対してサービスを配送するための、配信システムへの登録とも言えるものであるから、契約データ22とID番号21を転送することは、携帯型情報端末8に対してサービスを配送するための合意の登録を示すと言え、 ・無線送信部62はプラットホーム等の駅構内という特定区域内だけで情報すなわちサービスを配信するものであり(摘記事項ア.,エ.,キ.)、また、このようなサービスの配信あるいは配送は、携帯型情報端末8が読取り装置3を介して契約データ22とID番号21を提供した場合のみ行われるから、 結局、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。 「送信到達範囲に渡って、1つの通信プロトコルにしたがって無線伝送することの可能な無線送受信部であって、改札口に制約される無線送受信部と、 前記無線送受信部からの前記無線伝送を受信するために、前記改札口に位置することが必要とされる携帯型情報端末であって、前記携帯型情報端末に対してサービスを配送するための合意の登録を示すように、前記無線送受信部からの前記無線伝送に応答して前記無線送受信部に契約データとID番号を提供する携帯型情報端末と、 特定区域に配送送信到達範囲をもつ無線送信部であって、前記配送送信到達範囲の内部において、前記携帯型情報端末に前記サービスを配送し、前記携帯型情報端末が、前記無線送受信部を介して前記合意の登録をした場合のみ、前記サービスが配送される、無線送信部と を有する情報配信システム。」 b.引用発明2 同じく原査定の拒絶理由に引用された特開2001-119761号公報(以下、「引用例2」という。)には「情報提供システム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 ク.「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は携帯電話機やPHS等のような携帯性の優れた無線による情報端末を使用した情報提供システムに関する。」(第3頁、段落0001) ケ.「【0062】図9は、図3に示した美術品展示場に利用者が入場する場合の情報端末に対する処理の流れの概要を表わしたものである。まず、情報処理装置113は部屋用基地局111Rによって情報端末117が新たに検出されるかどうかを監視している(ステップS301)。新たな利用者が図3に示した部屋に情報端末117を所持して入ってくると、この情報端末117が発信する信号を部屋用基地局111Rが受信することで、この検出が行われる。すると情報処理装置113は、新たに発信する情報端末117の電話番号から個人情報を取得し(ステップS302)、この個人情報に対応させてその利用者が欲する選択情報を取得する(ステップS303)。そして、この選択情報で示された選択すべき情報を選んで、その利用者の情報端末117に情報を提供することになる(ステップS304)。」(第9頁、段落0062) 上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「電話番号を介して情報端末を検出すると、該情報端末に選択すべき情報を配送する部屋用基地局を有する情報提供システム。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明1とを対比すると、 ・補正後の発明の「サービス登録ビーコンデバイス」、「携帯デバイス」、「少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイス」は、それぞれ、引用発明1の「無線送受信部」、「携帯型情報端末」、「無線送信部」に相当し、 ・補正後の発明の「識別子」は引用発明1の「ID番号」に相当するから、補正後の発明の「識別子」と引用発明1の「契約データとID番号」は「識別子を含む情報」である点で共通し、 ・補正後の発明の「通信システム」は引用発明1の「情報配信システム」を含み、 ・引用発明1の「改札口」は無線送受信部と携帯型情報端末との間で情報伝送が行われる場所であり、このような情報伝送は、無線送受信部と携帯型情報端末との間の「対話」と言うことができるから、引用発明1の「改札口」は「対話ゾーンの内部」である。 したがって、両者は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「送信到達範囲に渡って、1つの通信プロトコルにしたがって無線伝送することの可能なサービス登録ビーコンデバイスであって、対話ゾーンの内部に制約されるサービス登録ビーコンデバイスと、 前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送を受信するために、前記対話ゾーンの内部に位置することが必要とされる携帯デバイスであって、前記携帯デバイスに対してサービスを配送するための合意の登録を示すように、前記サービス登録ビーコンデバイスからの前記無線伝送に応答して前記サービス登録ビーコンデバイスに識別子を含む情報を提供する携帯デバイスと、 配送送信到達範囲をもつ少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスであって、前記配送送信到達範囲の内部において、前記携帯デバイスに前記サービスを配送し、前記携帯デバイスが、前記サービス登録ビーコンデバイスを介して前記合意の登録をした場合のみ、前記サービスが配送される、少なくとも1つのサービス配送ビーコンデバイスと を有する通信システム。」 (相違点1) 「対話ゾーンの内部」が、補正後の発明では「標示されている」のに対し、引用発明1では標示されてはいない点。 (相違点2) 「識別子を含む情報」が、補正後の発明では「識別子」であるのに対し、引用発明1では「契約データとID番号」である点。 (相違点3) 「配送送信到達範囲」が、補正後の発明では「制約されていない」のに対し、引用発明1では不明である点。 (相違点4) サービスの配送に関し、補正後の発明は「前記識別子を介して前記携帯デバイスを検出すると」これを行うのに対し、引用発明1はこのような構成を有しない点。 以下に、上記各相違点につき検討する。 (相違点1)について 引用例1の対話ゾーンの内部の具体例としてあげられている改札口は、利用者が通過し得る通路を備えた自動改札機で構成されている(【図5】等参照)が、該通路において利用者の携帯情報端末と自動改札機との間で情報伝送がなされることは一般に広く知られていることであるから、上記自動改札機の存在自体によって、対話ゾーンの内部が実質的に標示されている。また、引用例1の摘記事項カ.によれば、映画館、劇場、博物館等も例示されており、明示的・暗示的に標示することは当然の技術的事項ということもできる。 したがって、上記相違点1は補正後の発明と引用発明1との間の格別の相違と言うことはできない。 (相違点2)について 利用者と情報配信の契約を交わした情報配信システムが利用者毎の契約データを保持していることは当然のことであり、また、利用者を識別子あるいはID番号で記録することも普通に行われていることに過ぎないから、引用発明1の情報配信システムにおいて、ID番号から契約データを取得するよう構成することで、情報配信システムにID番号すなわち識別子のみを提供するように変更することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。 (相違点3)について 引用発明1の「配送送信到達範囲」は、例えば摘記事項キ.によれば、駅構内という「特定区域」であるものの、利用目的によっては「特定区域」との制限を取り払って、「制約されない」とする程度のことは容易である。 (相違点4)について まず、引用発明2の情報提供システムは、より具体的にいえば、美術品展示場等で利用されるシステムである(摘記事項ケ.)が、引用発明1の情報配信システムも、駅以外に「博物館や動物園や美術館」での利用が可能であることが示唆されており(摘記事項カ.)、両発明は類似した公共の場所で利用される情報提供システムという共通の技術分野に属する発明である。 そして、引用発明2の「電話番号」、「情報端末」、「部屋用基地局」はそれぞれ引用発明1の「ID番号」、「携帯型情報端末」、「無線送信部」に相当し、また、引用発明1の「ID番号」、「携帯型情報端末」はそれぞれ補正後の発明の「識別子」、「携帯デバイス」に相当するから、引用発明1における無線送信部によるサービス配送方法として、引用発明2における部屋用基地局による配送方法を適用し、「前記識別子を介して前記携帯デバイスを検出すると」サービスの配送を行うようにすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。 そして、補正後の発明の作用・効果も引用発明1,2から当業者が予測し得る範囲のものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成21年2月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明1とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1,2に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1,2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-24 |
結審通知日 | 2010-11-25 |
審決日 | 2010-12-07 |
出願番号 | 特願2003-526093(P2003-526093) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 努 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 高野 洋 |
発明の名称 | 合意のサービスの登録および配送 |
代理人 | 宮崎 昭彦 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 笛田 秀仙 |