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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01G |
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管理番号 | 1235783 |
審判番号 | 不服2008-658 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-10 |
確定日 | 2011-04-21 |
事件の表示 | 特願2002-238928「キャパシタ用セパレーター」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月13日出願公開、特開2003-168629〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年8月20日(優先日、平成13年8月30日、平成13年9月4日、平成13年9月20日)の出願であって、平成19年6月11日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年8月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年12月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成20年1月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 なお、本願は上記優先権主張を伴う出願であるが、優先権主張の基礎となる特願2001-261201号、特願2001-267078号、特願2001-286370号には、本願の請求項1に係る発明のキャパシタ用セパレータの「比表面積が4?7m^(2)/g」である点に関して記載されていないから、本願の請求項1に係る発明については優先権主張の効果は認められない。 したがって、本願は、実際の出願日である平成14年8月20日を出願日とする。 第2 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、平成19年8月20日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子を含有する湿式不織布からなるキャパシタ用セパレーターであって、比表面積が4?7m^(2)/gであることを特徴とするキャパシタ用セパレーター。」 第3 刊行物に記載された発明 1 刊行物1:国際公開第01/93350号 本願の出願前に外国において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された国際公開第01/93350号(以下「引用例1」という。)には、「キャパシタ用セパレーター」に関して、以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。以下同様)。 (ア)「少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化された有機繊維を1種類以上含有し、且つ、フィブリル化されていない繊度0.5dtex以下の有機繊維を1種類以上含有してなる湿式不織布からなることを特徴とする電気化学素子用セパレーター。」(請求の範囲第1項) (イ)「フィブリル化された有機繊維の一部または全部が、融点または熱分解温度が250℃以上の液晶性高分子繊維であることを特徴とする請求の範囲第1?3項の何れかに記載の電気化学素子用セパレーター。」(請求の範囲第4項) (ウ)「請求の範囲第1?28項の何れかに記載の電気化学素子用セパレーターを用いてなることを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレーター。」(請求の範囲第29項) (エ)「本発明は、耐熱性、電解液保持性、内部短絡防止性、巻回性に優れ、電気化学素子の内部抵抗を低くし、長寿命にし得る電気化学素子用セパレーター及びその製造方法に関するものである。本発明における電気化学素子とは、一次電池、二次電子、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサともいう)などを指す。これらの電気化学素子に用いられる電解液は水溶液系、有機電解液系の何れでも良い。」(公報第1ページ6行?10行) (オ)「<内部短絡不良率1> 実施例1?89及び比較例1?5で作製した電気化学素子用セパレーターを具備してなる電気化学素子1に2.5Vの直流電圧を72時間印加した後、2.5Vまで充電し、充電直後の漏れ電流を測定し、10mA以上の漏れ電流が観測されたものを内部短絡不良と見なし、100個あたりの内部短絡不良率を求め、内部短絡不良率1とした。」(公報第48ページ20行?25行) (カ)「<内部抵抗> 実施例1?89及び比較例1?5で作製した電気化学素子用セパレーターを具備してなる電気化学素子1について内部抵抗を測定し、その値を示した。」(公報第49ページ2行?4行) 以上の記載から、引用例1には、「融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化された有機繊維を含有する湿式不織布からなることを特徴とするキャパシタ用セパレーター。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 2 刊行物2:特開2000-138050号公報 本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2000-138050号公報(以下「引用例2」という。)には、ニッケル・水素二次電池に用いる「セパレーター」に関して、以下の記載がある。 (キ)「また、用いるセパレータとしては、窒素を用いたBET1点法で測定したときの比表面積が0.5?5.0m^(2)/gの値を示すものであることが好ましい。比表面積が0.5m^(2)/gより小さいセパレータを用いると、保液性が低下し、また比表面積が5.0m^(2)/gより大きいセパレータは、その引張強度が低くなるので保形性は低下し、電極群を製造する際の巻回時にセパレータの破損などが起こりやすいからである。セパレータとしては、1.0?4.0m2/gの比表面積のものがとくに好ましい。」(段落【0019】) 第4 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「フィブリル化された有機繊維」は、繊維が高分子であることは明らかであるので,本願発明の「フィブリル化高分子」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子を含有する湿式不織布からなることを特徴とするキャパシタ用セパレーター。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明は、セパレーターの「比表面積が4?7m^(2)/g」とされているのに対し、引用発明は、比表面積が特定されていない点。 2 判断 (1)相違点について 引用例2の(キ)の記載から、保液性を考慮してセパレーターの比表面積が0.5m^(2)/g以上とすることが好ましいことが分かる。また、不織布のセパレーターが二次電池、キャパシタどちらにも適用可能であることは、引用例1の(エ)の記載にもあるように、また、キャパシタ用セパレーターを設計するに際し、内部抵抗、漏れ電流という特性を考慮することは、引用例1の(オ)、(カ)の記載にもあるように、それぞれ当業者にとって周知の技術である。 そして、引用発明のキャパシタ用セパレーターにおいて、保液性の他に、内部抵抗、漏れ電流値を含めたこれらの特性を総合的に考慮して設計する際に、セパレーターの比表面積に関して、実験的に数値範囲を最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、引用例2に記載されたセパレーターの比表面積0.5m^(2)/g以上という範囲から、本願発明の4?7m^(2)/gの範囲とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 なお、本願のDC抵抗という特性は、内部抵抗と相関がある旨本願明細書の段落0056に記載されており、内部抵抗を考慮することによりDC抵抗を考慮したことになっていることは明らかである。 したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例1,2に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-17 |
結審通知日 | 2011-02-22 |
審決日 | 2011-03-07 |
出願番号 | 特願2002-238928(P2002-238928) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 晃洋 |
特許庁審判長 |
橋本 武 |
特許庁審判官 |
高橋 宣博 西脇 博志 |
発明の名称 | キャパシタ用セパレーター |