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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1235792
審判番号 不服2008-14032  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-05 
確定日 2011-04-21 
事件の表示 特願2003-141341「車両用灯具の製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-345094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年5月20日の出願であって、平成20年2月14日付けで拒絶理由が通知され、同年3月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同年7月1日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年8月19日付けで前置報告がなされ、それに基いて当審において平成22年9月6日付けで審尋がなされ、それに対して同年11月2日に回答書が提出されたものである。

第2.平成20年7月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年7月1日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成20年3月21日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の内容について、

「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体を備えてなり、
上記発熱体が、該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており、
この抵抗発熱体として構成された発熱体の加熱面が、上記溶着予定面よりも広幅で、かつ、3次元的に変化する表面形状を有している、ことを特徴とする車両用灯具の製造装置。」



「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って環状に延びる加熱面を有する発熱体を備えてなり、
上記発熱体が、該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており、
この抵抗発熱体として構成された発熱体が、上記加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、該発熱体の端面により上記加熱面が構成されており、
この加熱面が、上記溶着予定面よりも広幅で、かつ、3次元的に変化する表面形状を有している、ことを特徴とする車両用灯具の製造装置。」

とする補正事項(以下、「本件補正1」という。)を含むものである。
(下線は、補正箇所を明示するために請求人が付したものである。)

2.新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
本件補正1は、本件補正前の請求項1において規定されている発熱体について、「環状に」延びる加熱面を有すると規定するとともに、「上記加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、該発熱体の端面により上記加熱面が構成されており、」と規定(「 」が補正により限定された事項を示す。)している補正である。

前記本件補正1は、願書に最初に添付された明細書の段落【0034】及び【0035】の記載並びに図2の記載からして、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてする補正といえる。

そして、前記本件補正1は、補正前の請求項1において規定されていた「発熱体」を更に特定しているものであるから、特許請求の範囲の減縮(いわゆる請求項の限定的減縮)を目的とするものである。

そうすると、本件補正1を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の規定に適合するものであり、同法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
本件補正1を含む本件補正は、上記のとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する補正であるか否か(いわゆる、独立特許要件の有無)について、以下に検討する。

3-1.補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)
本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、補正発明1は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って環状に延びる加熱面を有する発熱体を備えてなり、
上記発熱体が、該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており、
この抵抗発熱体として構成された発熱体が、上記加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、該発熱体の端面により上記加熱面が構成されており、
この加熱面が、上記溶着予定面よりも広幅で、かつ、3次元的に変化する表面形状を有している、ことを特徴とする車両用灯具の製造装置。」

3-2.刊行物の記載事項及び刊行物1に記載された発明の認定

(1)刊行物1の記載事項
平成20年2月14日付け拒絶理由通知で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-297608号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1a)「【発明の属する技術分野】本願発明は、いわゆる熱板溶着により前面レンズとランプボディとを溶着する車両用灯具の製造装置に関するものである。」(段落 【0001】)

(1b)「【従来の技術】車両用灯具の前面レンズとランプボディとを接合する方法としては、従来より、両者をシール材を介して接合する間接接合(例えば、ホットメルトシール等)と、両者を直接当接させて接合する直接接合(例えば、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着等)とが知られている。
上記直接接合の1つである熱板溶着は、図5に示すように、前面レンズ16の溶着予定面16bとランプボディ14の溶着予定面14bとを加熱した後、これら両溶着予定面16b、14bを互いに圧接することにより、前面レンズ16とランプボディ14との溶着を行うようになっている。
この熱板溶着を行う製造装置は、同図に示すように、前面レンズ16を保持するレンズ保持治具102と、ランプボディ4を保持するボディ保持治具104と、両側面に上記両溶着予定面16b、14bと略同一表面形状のレンズ加熱面106aおよびボディ加熱面106bが形成された発熱体106とを備えている。そして、レンズ加熱面106aおよびボディ加熱面106bに両溶着予定面16b、14bを当接させることにより上記加熱を行うようになっている。」(段落 【0002】?【0004】)

(1c)「【発明が解決しようとする課題】・・・本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、熱板溶着により前面レンズとランプボディとを溶着する車両用灯具の製造装置において、溶着面周辺の見映えを大きく損うことなく効率良く溶着を行うことができる車両用灯具の製造装置を提供することを目的とするものである。」(段落 【0005】?【0008】)

(1d)「

」(8頁の図5)

(1e)「図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具の製造装置を示す分解断面斜視図であり、図2は、この製造装置により製造される車両用灯具10を上向きに配置した状態で示す側断面図である。・・・図1に示すように、本実施形態に係る製造装置は、レンズ保持治具112とボディ保持治具114と発熱体116とを備えてなっている。・・・
上記発熱体116は、略プレート状の金属部材118に熱源としてのカートリッジヒータ120が埋設されてなっている。この発熱体116の上面116aには、前面レンズ16の溶着予定面16b(すなわちシール脚16aの先端面)と略同一表面形状のレンズ加熱面116bが形成されている。そして、この上面116aにおけるレンズ加熱面116bおよびその周辺領域には、セラミック被膜Cが施されている。また、上記発熱体116の下面116cには、ランプボディ14の溶着予定面14b(すなわち突起部14aの先端面)と略同一表面形状のボディ加熱面116dが形成されている。そして、この発熱体116の下面116cにおけるボディ加熱面116dおよびその周辺領域には、セラミック被膜Cが施されている。」(段落 【0024】?【0030】)

(1f)「図3は、本実施形態に係る製造装置による前面レンズ16とランプボディ14との熱板溶着の様子を、図2のIII 部について詳細に示す工程図である。
まず、同図(a)に示すように、前面レンズ16を保持したレンズ保持治具112とランプボディ14を保持したボディ保持治具114とを、両者間に発熱体116を挿入するようにして上下に配置する。その際、発熱体116は、そのカートリッジヒータ120に通電してその金属部材118を予め500?800℃程度に加熱しておく。そして、発熱体116と前面レンズ16とは、そのレンズ加熱面116bと溶着予定面16bとを微小間隔d1(0.5<d1<1.0mm)だけ離すようにして近接配置し、また、発熱体116とランプボディ14とは、そのボディ加熱面116dと溶着予定面14bとを微小間隔d2(0.5<d2<1.0mm)だけ離すようにして近接配置する。この状態で所定時間(10?25秒程度)放置し、発熱体116から両セラミック被膜Cを介して放射される赤外線の熱エネルギにより、前面レンズ16における溶着予定面16bの近傍部位およびランプボディにおける溶着予定面14bの近傍部位を軟化溶融させる。
次に、同図(b)に示すように、レンズ保持治具112とボディ保持治具114との間から発熱体116を除去した後、レンズ保持治具112を下降させ、前面レンズ16の溶着予定面16bとランプボディ14の溶着予定面14bとを当接させ、さらに微小量だけレンズ保持治具112を下降させて両溶着予定面16b、14bを互いに圧接することにより、両溶着予定面16b、14bを確実に溶着する。
そして、同図(c)に示すように、上記溶着により前面レンズ16とランプボディ14との溶着が完了した車両用灯具10には、前面レンズ16のシール脚16aとランプボディ14の突起部14aとの溶着面の両側に発泡バリPが発生するが、この発泡バリPは上記圧接により発生するものであり、そのはみ出し量は極僅かなものとなる。」(段落 【0034】?【0037】)

(1g)「

」(6頁の図1)

(1h)「

」(7頁の図3)

(2)刊行物2の記載事項
平成20年2月14日付け拒絶理由通知で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-86570号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】2個以上のプラスチック成形品のそれぞれに設けた溶着部を加熱軟化させて溶着するに当たり、該溶着部に対応する形状の接触面を有する通電発熱体を突出させて設けた溶着用加熱型の該通電発熱体に予め通電して発熱状態にすると共に該通電発熱体を前記溶着部に当接して加圧し、該溶着部を加熱軟化させると共に圧縮変形させた後、対向するプラスチック成形品同士の溶着部を互いに当接させると共に冷却固着されるまで押圧することを特徴とするプラスチック成形品の溶着方法。
・・・・
【請求項3】2個以上のプラスチック成形品3、3Aを対向させて保持すると共に上下動可能にして配置された下型10と上型10Aとの間位置に、中間定盤21を入出可能にして配設し、該中間定盤21の上下面左右位置にガイドピン22、22Aを設けると共に該ガイドピン22、22Aに下・上支持板23、23Aを昇降可能にして係合し、前記中間定盤21と前記下・上支持板23、23Aとの間に圧縮ばね30、30Aを介在させて下・上支持板23、23Aを支持させ、該下・上支持板23、23Aに前記下・上型10、10Aに保持されたプラスチック成形品3、3Aの溶着部5、5Aに対応する通電発熱体27、27Aを突出して配設させたことを特徴とするプラスチック成形品の溶着用加熱型。」(特許請求の範囲の請求項1,3)

(2b)「【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂よりなる成形品(以下プラスチック成形品という)を溶着する方法及び溶着するための加熱型に関する。
【従来の技術】ABS、PMMA、PS、PP、ナイロン等より成る2個のプラスチック成形品(例えば自動車のランプ、インテ-クマニホ-ルド、バッテリ-等)を互いに熱溶着する方法として、カ-トリッジヒ-タ-等の電気ヒ-タ-を金属ブロックに埋設し、この金属ブロックの表面を加工して加熱体を作成し、この加熱体をプラスチック成形品に押圧して溶着部を加熱軟化させた後、この2個のプラスチック成形品の溶着部を互いに当接させて押圧し、成形品同士を熱溶着する方法が広く行われている。」(段落 【0001】?【0002】)

(2c)「【発明が解決しようとする課題】しかし上記のように熱容量の大きな金属ブロックを用い、これを電気ヒ-タ-で加熱し、この熱を金属ブロックの表面に伝え、この熱でプラスチック成形品の溶着部を加熱軟化させる方法では、金属ブロックの熱容量が大きいため溶着部を加熱軟化させるのに十分な温度まで金属ブロックの表面温度を昇温させるのに、多大の時間と多大かつ無駄なエネルギ-を要していた。また金属ブロックの表面と電気ヒ-タ-との距離を全体にわたり均一にすることは困難であり、このため表面温度を均一にすることも困難であった。従って溶着の信頼性にも極めて悪い影響をおよぼすことがあった。本発明は上記の問題に鑑みて成されたもので、全体にわたりほぼ均一な加熱温度となり、無駄なエネルギ-を消費することなく、かつ速やかな昇温が可能なプラスチック成形品の溶着用加熱型及びその型を用いたプラスチック成形品の溶着方法を提供することを目的とする。」(段落 【0003】)

(2d)「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明におけるプラスチック成形品の溶着方法は、2個以上のプラスチック成形品のそれぞれに設けた溶着部を加熱軟化させて溶着するに当たり、該溶着部に対応する形状の接触面を有する通電発熱体を突出させて設けた溶着用加熱型の該通電発熱体に予め通電して発熱状態にすると共に該通電発熱体を前記溶着部に当接して加圧し、該溶着部を加熱軟化させると共に圧縮変形させた後、対向するプラスチック成形品同士の溶着部を互いに当接させると共に冷却固着されるまで押圧することを特徴とする。」(段落 【0004】)

(2e)「【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。図示されない昇降手段により昇降可能にされた下定盤1の上部には剛性のあるFRP等の樹脂型2が固定されており、該樹脂型2の上部には、プラスチック成形品3の表面を傷つけないようにウレタンゴム等の弾性体4が固定され、全体としてプラスチック成形品3を保持する下型10が構成されている。なおプラスチック成形品3の裏面周縁(図1において上面周縁)には、連続した帯状の溶着部5が形成されている。また溶着部5の外側及び内側には、連続した帯状のリブ31が形成されている。このリブ31は、溶着部を互いに当接させ冷却固着されるまで押圧する際に溶着部の圧縮変形量(溶着高さ)を定めるためのものであると共に溶着による接合部を隠して美観をそこねないようにするためのものである。
また下型10の上方には、図示されない昇降手段により昇降可能にされた上定盤1Aが配置されており、該上定盤1Aの下部には剛性のあるFRP等の樹脂型2Aが固定されていると共に該樹脂型2Aの下部にはプラスチック成形品3Aの表面を傷つけないようにウレタンゴム等の弾性体4Aが固定されている。また上定盤1Aと樹脂型2A内部とにより図示されない真空源に通じるチャンバ-6Aが画成されていると共に該チャンバ-6Aは、多数の細孔7A、7Aを介してプラスチック成形品3Aの表面に連通されており、全体としてプラスチック成形品3Aを保持可能な上型10Aが構成されている。なおプラスチック成形品3Aの裏面(図1において下面)における前記溶着部5に対応する位置には溶着部5Aが連続した帯状にして形成されている。
前記下型10と上型10Aとの間位置には中間定盤21が入出移動可能にして配設されており、該中間定盤21の上下面左右位置には、一対のガイドピン22、22、22A、22Aが設けられている。該ガイドピン22、22には下支持板23が昇降可能にして貫通係合されており、ストッパ-24によりその下降が制限されている。また下支持板23の下面における前記プラスチック成形品3の溶着部5に対応する位置には、高さ調節可能な支持棒25及び耐火・絶縁性のホルダ-26を介して通電発熱体27が帯状に設けられている。なお通電発熱体27は、Ni-Cr合金等より成り、電気を流すことにより容易に短時間で発熱し、近傍に取り付けられた図示されない温度センサ-、温度調節器及び電力調整器により所望の温度に保持できるようになっている。」(段落 【0008】?【0010】)

(2f)「

」(5頁の図1)

(4)引用文献1に記載された発明の認定
引用文献1の上記摘示事項(1b)、(1d)の記載からみて、引用文献1には、その従来技術として、
「前面レンズの溶着予定面とランプボディの溶着予定面とを加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧接することにより、上記前面レンズと上記ランプボディとを溶着する車両用灯具の製造装置において、
両側面に上記両溶着予定面と略同一表面形状のレンズ加熱面およびボディ加熱面が形成された発熱体とを備えている車両用灯具の製造装置。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3-3.対比
補正発明1と引用発明との対比する。
引用発明の「前面レンズ」は、補正発明1の「透光カバー」に相当することは明らかである。
引用発明における「両側面に上記両溶着予定面と略同一表面形状のレンズ加熱面およびボディ加熱面」は、引用発明における発熱体の前記レンズ加熱面及びボディ加熱面により溶着予定面が加熱されなければならないことから、補正発明1の「透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面」に相当する。

そうすると、両者は、

「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体を備えてなる、
車両用灯具の製造装置。」の点で一致し、

以下の点で相違している。

<相違点1>
発熱体に関し、補正発明1においては、「発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており、この抵抗発熱体として構成された発熱体が、上記加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、該発熱体の端面により加熱面が構成され」と特定されているのに対して、引用発明においては、この点について規定はない点。

<相違点2>
補正発明1においては、発熱体の加熱面が「記溶着予定面より広幅」と特定しているのに対して、引用発明においては、この点についての規定はない点。

<相違点3>
発熱体の加熱面に関し、補正発明1においては、溶着予定面に沿って「環状に」延び、この加熱面が、「3次元的に変化する表面形状を有している」と特定しているのに対して、引用発明1においては、この点について規定はない点。

3-4.判断
以下、相違点について検討する。
相違点1について
引用文献2の上記摘示事項(2a)?(2f)には、引用発明と同一の技術分野であるプラスチック成形品の溶着の分野において、溶着部分を加熱軟化させる溶着用加熱型の効率化及び溶着部分を均一な温度で加熱するために、該溶着用加熱型の加熱体としてNi-Cr合金等(本願発明の「金属製の部材」に相当)の発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体を用いることが記載されている。
引用発明においても、上記摘示事項(1c)に「溶着面周辺の見映えを大きく損うことなく効率良く溶着を行うことができる車両用灯具の製造装置を提供することを目的」とあるように、溶着面の見映えよくかつより効率良く溶着を行うことが必要とされており、また、溶着面の見映えには発熱体の温度の均一性が影響することも本願出願時の当業者の技術常識といえることから、より効率よく溶着を行い、溶着面の見映えをより良くするために、引用発明に引用文献2に記載の上記技術を適用して、加熱体を金属製の部材で構成される発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体を利用するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用文献2には、抵抗発熱体の断面形状及び加熱面について具体的な記載はないが、抵抗発熱体が溶着部を均一な温度で加熱するためのものであることから、全長にわたって略同一断面で形成され、該略同一断面で形成された金属製の部材の端面により加熱面が構成されていることは当然に行われている事項といえる。

相違点2について
加熱面を広幅とする点については、接触により加熱を行う場合において、溶着予定面より広幅の加熱面を持つようにすることは、引用文献1の上記摘示事項(1b)及び(1d)のレンズ加熱面(106)においても示されているように周知の事項であり、加熱面の広さは、加熱手段がカートリッジによる加熱であるか、通電により発熱する抵抗発熱体であるから左右される事項ではないから、加熱面を広幅にすることは容易になし得たことである。

相違点3について
引用発明における加熱面は、「溶着予定面と略同一表面形状」とされており、溶着予定面に加熱面を接触させて加熱するものであることから、加熱面が、接着予定面の具体的な形状に合わせたものとなることは自明な事項である。
一方、上記摘示事項(1e)及び(1g)には、環状であり平面状のレンズ加熱面が記載されている。また、三次元構造の接着予定面をとるプラスチック成形品の溶着構造は周知(特開2000-198143号公報、特開平1-229616号公報の5頁右上欄9-12行、第8図等参照)であって、引用発明において、直線状の加熱面を取らなければならない理由は引用文献1には記載されていない。
そうすると、接着すべき具体的な接着予定面の形状に合わせて、引用発明における加熱面を、環状にし、三次元的に変化する表面形状を有するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

補正発明1の効果について検討する。
まず、本件補正後の本願明細書の【0012】に記載の「発熱体が該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されているので、該発熱体の加熱面を適正加熱温度まで短時間で昇温させることができる。また、この発熱体の加熱面は該発熱体自体の発熱により直接加熱されるので、加熱面の温度コントロールを精度良く行うことができる」という効果は、引用文献2の上記摘示事項(2c)の記載から、当業者が予測しうるものといえ、格別なものとは認められない。
加熱面を広幅にすることによる効果についても、審判請求人は、平成20年7月1日に提出された手続補正書により補正された審判請求書において「冶具へのセットの際に多少の位置ズレが生じても、加熱が適正に行われない箇所が生じてしまうおそれを無くすことができ」ると主張しているが、接触による加熱を行うものにおいて、接触面積を接触予定面より広くすることで接触時の位置ずれの許容範囲が広がることは当業者において自明な効果といえることから、当該効果は当業者が予測しうるものといえ、格別なものということはできない。
また、加熱面を、環状にし、三次元的に変化する表面形状を有するようにすることによる効果についても、加熱面を被加熱面の形状に合わせることで当然奏される効果であり、当業者において自明な効果にすぎず、格別なものということはできない。
そうすると、補正発明1の効果は、引用発明、及び引用文献2に記載された発明の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

よって、補正発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3-4.審判請求人の主張についての検討
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、平成20年6月5日に提出した審判請求書(平成20年7月1日に手続補正書(方式)により補正)及び平成22年11月2日提出の回答書において、下記の主張を行っている。

「d)本願発明と引用発明との対比
引用文献1、2の各々に記載された製造装置は、その発熱体の加熱面が平面状に形成されており、本願発明に係る車両用灯具の製造装置のように、その発熱体の加熱面が3次元的に変化する表面形状を有してはおりません。
この点、引用文献3に記載された製造装置についても同様です。
また、引用文献2、3の各々に記載された製造装置においては、抵抗発熱体に相当すべき通電発熱体、樹脂板の加熱面が、溶着予定面の幅と略同一幅で形成されており、本願発明に係る車両用灯具の製造装置のように、その加熱面が溶着予定面よりも広幅で形成されてはおりません。
なお、引用文献1に記載された製造装置においては、その発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅で形成されておりますが、抵抗発熱体として構成された発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅で形成されているわけではありません。
したがって、『引用文献1の発明において、引用文献2の上記手段を適用することに特段の支障はない。』としても、溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体が、該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成された上で、その加熱面が溶着予定面よりも広幅でかつ3次元的に変化する表面形状を有している、という本願発明の構成については、これら引用文献1、2に記載された構成を組み合わせたとしても得ることはできず、また、これに引用文献3に記載された構成を組み合わせたとしても得ることはできないものと思料致します。
原査定には、『1 引用文献2、3の発明では発熱体の加熱面が溶着予定面の幅と略同一幅で形成されているところ、略同一幅というのは(わずかに)広幅・狭幅の両方の場合を意味すると解される。』とした上で、『 2 そして発熱体の加熱面が溶着予定面の幅と正確に同一幅で形成されていようと、あるいは(わずかに)広幅・狭幅で形成されていようと、それによって奏される効果に格別の差は生じないと推認される。』との指摘がなされております。
この指摘自体は確かにそのとおりですが、本願発明においては、「この加熱面が、上記溶着予定面よりも広幅で、かつ、3次元的に変化する表面形状を有している、」として、加熱面が溶着予定面よりも広幅であることを積極的に規定しております。したがって、ここでいう「広幅」とは、「略同一幅」で規定される「(わずかに)広幅」を超える程度の広幅であると解釈すべきものと思料致します。
また、このように3次元的に変化する表面形状を有する加熱面が、溶着予定面よりも広幅で形成されていることにより、上述したように、溶着予定面が3次元的に変化している場合においても、この溶着予定面の加熱を確実に行うことができるという、「略同一幅」で形成されている場合には得られない特有の作用効果を得ることができます。
具体的には、発熱体の加熱面が溶着予定面の幅と略同一幅である場合には、透光カバーまたはランプボディを冶具にセットする際に生じる位置ズレによって、溶着予定面の一部に加熱が適正に行われない箇所が生じてしまうおそれがありますが、発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅である場合には、上記冶具へのセットの際に多少の位置ズレが生じても、加熱が適正に行われない箇所が生じてしまうおそれを無くすことができます。
また、原査定には、『3 次に、発熱体の加熱面が3次元的に変化する表面形状を有することの技術的意義を検討すると、・・、溶着されるべき透光カバーとランプボディとが3次元的に変化する表面形状を有することは想定可能であるから、発熱体の加熱面が3次元的に変化する表面形状を有することに格別の技術的意義はない。』との指摘がなされております。
しかしながら、『溶着されるべき透光カバーとランプボディとが3次元的に変化する表面形状を有することは想定可能である』としても、その際、3次元的に変化する溶着予定面に対して適正な加熱を行うことができなければ、いわゆる熱板溶着という締結手段を採用することはできません。
その点、本願発明においては、発熱体の加熱面が、3次元的に変化する表面形状を有しているだけでなく、溶着予定面よりも広幅で形成されているので、上述したように、溶着予定面の加熱を確実に行うことが可能となり、これにより熱板溶着の採用が可能となるものであり、この点において格別の技術的意義があるものと思料致します。
さらに、平成20年7月1日に提出した手続補正書において、発熱体が、環状に延びる加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、その端面により加熱面が構成されている、旨の限定を加えましたので、3次元的に変化する表面形状を有する加熱面を、精度良く加工することが可能となります。したがって、この点からも、溶着予定面を均一に加熱することが可能となり、これにより、3次元的に変化する溶着予定面に対して、より適正な加熱を行うことが可能となります。
このように本願発明は、引用文献1?3記載の構成の組合せからは決して得られない構成を有しており、これにより上記のような特有の作用効果を奏するものであり、したがって本願発明の構成が引用文献1?3に記載された構成から容易に想到可能であるとは到底考えられません。」

「審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(a)本願発明の説明」の欄において、・・・と主張しているとおり、発熱体の加熱面が、3次元的に変化する表面形状を有することと、溶着予定面よりも広幅で形成されていることとが、密接に関連している事柄であることは明らかであるものと思料致します。 ・・・
しかしながら、上記(a)で述べたとおり、3次元的に変化する表面形状を有することと、溶着予定面よりも広幅で形成されていることとは、密接に関連している事柄であることは明らかです。したがって、両者を「互いに独立した発明特定事項であるという観点から、その容易想到性を検討しても何ら差し支えないというべきである」との認定は誤りであるものと思料致します。・・・・
前置報告書には、『4 そうであれば、拒絶査定の備考2、3に記載したとおり、発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅で形成されていることは、奏される効果の点で格別ではなく(構成上も、わずかに広幅と広幅とは区別できない)、一方、発熱体の加熱面が3次元的に変化する表面形状を有し得ることは想定可能であり、そのこと自体に格別の技術的意義はない。』との指摘がなされております。
しかしながら、上記(c)で述べたとおり、「そうであれば、」の認定自体に誤りがあるので、このように、3次元的に変化する表面形状を有することと、溶着予定面よりも広幅で形成されていることとを、互いに独立した発明特定事項であるという観点から、その容易想到性を検討することは妥当でないものと思料致します。
前置報告書には、『5 なお、新たに加入された補正事項も格別でなく、引用文献1?3のいずれかに記載乃至示唆されている。』との指摘がなされております。
しかしながら、このような曖昧な指摘内容では、新たに加入された補正事項が、如何なる理由で格別でなく、また、この新たに加入された補正事項が、引用文献1?3のうちのどの引用文献のどの箇所に記載されているのか、あるいは示唆されているのかについて、出願人において判断することができません。
この新たに加入された補正事項による作用効果については、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(a)本願発明の説明」の欄において、
『また、この発熱体は、加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されており、その端面により加熱面が構成されているので、加熱面が3次元的に変化する表面形状を有しているにもかかわらず、これを精度良く加工することができます。そしてこれにより、3次元的に変化している溶着予定面に対する加熱を、より一層均一に行うことができます。
しかも、この発熱体は環状に形成されているので、加熱面積を小さくすることができ、その加熱面を短時間で適正温度まで上昇させることができます。このため、加熱のための消費電力を少なくすることができ、これにより効率良く溶着を行うことができます。』と主張しております。
このような作用効果が得られることから、新たに加入された補正事項が格別でないものでないことは明らかであるものと思料致します。・・・・」

(2)審判請求人の主張の検討
上記審判請求人の主張をまとめると、以下の3点を主張しているといえる。

ア.本願発明は、引用文献1には記載されていない「発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅で、3次元的に変化する表面形状」を有しているから、それにより「冶具へのセットの際に多少の位置ズレが生じても、加熱が適正に行われない箇所が生じてしまうおそれを無くすことができ」、「溶着予定面の加熱を確実に行うことが可能となり、これにより熱板溶着の採用が可能となる」という格別の作用効果を奏するものであるので、引用文献に記載の発明に対して進歩性を有する。

イ.本願発明は、「発熱体が、環状に延びる加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、その端面により加熱面が構成されている」点を新たに限定したので、「3次元的に変化する表面形状を有する加熱面を、精度良く加工することが可能となります。したがって、この点からも、溶着予定面を均一に加熱することが可能となり、これにより、3次元的に変化する溶着予定面に対して、より適正な加熱を行うことが可能とな」るという格別の効果を奏するので、引用文献に記載の発明に対して進歩性を有する。

ウ.発熱体の加熱面が、3次元的に変化する表面形状を有することと、溶着予定面よりも広幅で形成されていることとが、密接に関連している事柄であることは明らかであり、両者を互いに独立した発明特定事項であるという観点から、その容易想到性を検討することは妥当でない。

そこで、それぞれの点について検討する。

<主張アについて>
まず、「発熱体の加熱面が溶着予定面よりも広幅」である点については、上記第2.3-4における相違点2で検討したとおりであって、審判請求人が主張する「冶具へのセットの際に多少の位置ズレが生じても、加熱が適正に行われない箇所が生じてしまうおそれを無くすことができ」るという効果は、当業者が予測しうる効果である。
また、溶着予定面が三次元形状であれ、平面形状であれ、いずれにおいても上記効果は生じるものであり、溶着予定面が三次元形状であることにより相乗的な効果が生じるとは認められない。
さらに、「熱板溶着の採用が可能となる」なる効果は、本願の特許請求の範囲に「熱板溶着」なる文言がないから、請求項の記載に基づかないものであるし、引用発明自体が、熱板溶着しているものであることから格別の効果とはいえないものである。

<主張イについて>
上記第2.3-4の相違点1で検討したとおりであって、「発熱体が、環状に延びる加熱面の全長にわたって略同一断面で形成された金属製の部材で構成されるとともに、その端面により加熱面が構成されている」ことは、引用文献2の発熱体においても同じ構成がとられているものと認められ、そのことによる格別は、引用文献2の記載から予測しうる効果である。

<主張ウについて>
「加熱面を溶着予定面より広幅とすること」(以下、「幅事項」という。)と「加熱面を三次元に変化する表面形状とすること」(以下、「三次元事項」という。)との関連性について検討する。
「幅事項」と「三次元事項」は、共に加熱面の具体的な形状についてを規定するものであるから、加熱面を表現するためのパラメータといえるものである。ここで、これ2つのパラメータ相互間の関係をみてみると、幅事項を変化させても、三次元に変化していた加熱面が三次元でなくなることはないし、2次元であった加熱面が三次元に変化することもないものである。逆に、三次元事項を変化させることで、「幅事項」が変化して、加熱面が溶着予定面より広幅でなくなることもない。
そうすると、「幅事項」と「三次元事項」は、相互の相関性は認められないから、それぞれを個別に検討することが可能なパラメータということができるものである。
してみれば、発明特定事項として、互いに独立したものとして検討することに妥当性がないとの審判請求人の主張は採用できない。

したがって、審判請求人の上記主張ア、イ、ウは採用できない。

3-6.まとめ
よって、補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年7月1日付けの手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年3月21日提出の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体を備えてなり、
上記発熱体が、該発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており、
この抵抗発熱体として構成された発熱体の加熱面が、上記溶着予定面よりも広幅で、かつ、3次元的に変化する表面形状を有している、ことを特徴とする車両用灯具の製造装置。」

2.原査定の理由の概要
原査定の理由とされた、平成20年2月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1?4
・引用文献 1?3
・備考
1 引用文献1の発明は、本願発明の前提構成のほか、透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体を備えているが、ただ発熱体が発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されていない点で本願発明と相違する。
2 一方引用文献2には、プラスチック成形品の溶着にあたって通電発熱体(抵抗発熱体に相当)を用いることが記載されている。
3 引用文献1の発明において、引用文献2の上記手段を適用することに特段の支障はない。
4 本願請求項2に記載の事項は格別でなく、引用文献1、2からも想定可能であるが、引用文献3の「ほぼ同一平面形状でほぼ同材質の樹脂板を介在させ」との記載からも容易に想到できる(注:前記樹脂板は導電発熱体である)。
5 本願請求項3、4については、引用文献1の2頁1欄9?14行参照。

引 用 文 献 一 覧
1.特開2001-297608号公報
2.特開2002-086570号公報
・・・(以下略) 」

3.当審の判断
3-1.刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
拒絶理由で提示された引用文献等1の特開2001-297608号公報(以下、前記第2.3.と同様に「引用文献1」という。)、引用文献等2の特開2002-86570号公報(以下、前記第2.3.と同様に「引用文献2」という。)には、前記第2.3.3-2に記載した刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明が記載されている。

3-2.対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると、前記第2.3.3-3と同様の理由から、両者は、

「透光カバーとランプボディとが溶着されてなる車両用灯具を製造する装置であって、上記透光カバーおよびランプボディの溶着予定面を各々加熱した後、これら両溶着予定面を互いに圧着することにより上記溶着を行うように構成された車両用灯具の製造装置において、
上記透光カバーまたはランプボディの溶着予定面と略同一表面形状で該溶着予定面に沿って延びる加熱面を有する発熱体を備えてなる、
車両用灯具の製造装置。」の点で一致し、

以下の点で相違している。

<相違点4>
発熱体に関し、本願発明1においては、「発熱体自体への通電により発熱する抵抗発熱体で構成されており」と特定されているのに対して、引用発明においては、この点について規定はない点。

<相違点5>
本願発明1においては、発熱体の加熱面が「記溶着予定面より広幅」と特定しているのに対して、引用発明においては、この点についての規定はない点。

<相違点6>
発熱体の加熱面に関し、補正発明1においては、この加熱面が、「3次元的に変化する表面形状を有している」と特定しているのに対して、引用発明1においては、この点について規定はない点。

以下、相違点について検討する。
相違点4については、前記第2.3.3-4の「相違点1について」で教示していることからみて、引用発明に引用文献2に記載の技術を適用することにより、容易になし得たことといえる。
相違点5は、上記第2.3.3-3における相違点2と同一であるから、前記第2.3.3-4の「相違点2について」で記載したとおりである。
相違点6については、前記第2.3.3-4の「相違点3について」で教示していることからみて、周知技術に基づき、当業者が容易になし得たことといえる。
そして、効果についても前記第2.3.3-4で検討したとおりである。
したがって、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-07 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2003-141341(P2003-141341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保倉 行雄佐藤 健史  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 内田 靖恵
大島 祥吾
発明の名称 車両用灯具の製造装置  
代理人 森山 隆  

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