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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1235801
審判番号 不服2009-614  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-07 
確定日 2011-04-21 
事件の表示 特願2006- 2360「インテリアル・パーマネントマグネット・モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日出願公開、特開2006-109700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年6月13日に出願した特願平08-189853号の一部を平成18年1月10日に新たな特許出願としたものであって、平成20年12月9日付けで拒絶査定がなされ、平成21年1月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成22年5月6日付けで当審の拒絶理由が通知され、同年7月2日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年7月2日付け手続補正書により補正された明細書、及び、図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「固定子と、回転子を備え、前記回転子は、軸が嵌入される軸孔および前記軸孔に平行な複数の収容孔が設けられた鉄心と、前記複数の収容孔に収容される複数の磁石を有し、前記複数の収容孔は、軸方向に垂直な断面において、直線状の孔縁によって直線状に形成されており、前記複数の磁石は、前記回転子の極方向に平行に磁気配向され、前記複数の収容孔に収容された状態で、前記回転子の外側に配置された固定子巻線に着磁電流を通電することにより発生する着磁磁束によって、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁されるインテリアル・パーマネントマグネット・モータにおいて、
前記複数の収容孔の直線状の孔縁には、前記複数の収容孔の孔幅を狭める方向に突出した突起部が設けられており、
前記複数の磁石は、前記複数の収容孔の直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、前記突起部によって、前記複数の収容孔の両端部に磁束短絡防止部が設けられている状態で、前記複数の磁石の両端部において,前記着磁磁束が前記複数の磁石の磁気配向の方向にほぼ沿うように,前記複数の収容孔の中央部に位置決め収容されていることを特徴とするインテリアル・パーマネントマグネット・モータ。」

3.引用例
当審の拒絶理由に引用した国際公開第95/33298号(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「図12は、本発明に係る永久磁石回転子を用いたコンプレッサを示す分解斜視図である。冷媒とオイルが流通する密閉容器21の内部には、圧縮装置(図示を省略)の上に駆動モータ22が直列に配置されている。
駆動モータ22は、本発明に係る永久磁石回転子と、固定子30とから構成され、前記固定子30は、固定子鉄心31と励磁用コイル35から構成されている。
本発明に係る永久磁石回転子は、ロータヨーク2と、二対の板状の界磁用永久磁石3a,3b,3c,3dとを有している。前記ロータヨーク2は、両端部に一群のけい素鋼板4,4を、中央部には他群のけい素鋼板44を、それぞれ積層して構成され、後に詳述する各鋼板は、1つの順送金型だけでそれぞれが型抜き形成されている。ロータヨーク2の鋼板は、外周面に放射方向に突出した4つの磁極5a,5b,5c,5dを有している。これら磁極の基部には、界磁用永久磁石を挿入するスロット6a,6b,6c,6dが設けられている。
冷凍サイクル用コンプレッサの組立に際しては、ロータヨーク2は、回転軸23への挿入前に、数分加熱される。密閉容器21に設置された回転軸23に、加熱したロータヨーク2を矢印Qの方向に挿入し、ロータヨーク2が熱い温度を維持している間に界磁用永久磁石3a,3b,3c,3dを挿入して固定する。そして、バランスウエイト11を、ロータヨーク2の端部近傍まで圧入する。
前記各構成部品の挿着後、密閉容器21の蓋(図示を省略)が閉められ、回転軸23を機械的に固定する。更に、励磁コイル35に高電流を通電することにより、界磁用永久磁石が着磁されその後、密閉容器21の内部に温風を吹きかけて乾燥させ、内部水分を蒸発させる。
このように、回転軸にロータヨークを挿着するに際し、ロータヨークを加熱することとなるが、この加熱により、中心の回転軸孔を膨張させて若干大径となし、熱いまま回転軸に挿入するので、当該ロータヨークの回転軸への挿入が容易になされる。そして、ロータヨークが冷えれば回転軸孔が縮径するので、これによりロータヨークは回転軸に固定される。同様に、ロータヨークが熱い温度を維持している間に界磁用永久磁石を挿入して固定するので、つまりロータヨークを加熱してスロットを拡開しておいて、この広くなったスロットに界磁用永久磁石を挿入するので、当該磁石の挿入が容易になされる。そして、ロータヨークが冷えればスロットが縮径するので、これにより界磁用永久磁石はスロットに固定される。」(第38頁第11行?第39頁第22行)

・「図14(1)において、けい素鋼板4は、外周面に放射方向に突出した4つの磁極5a,5b,5c,5dを有している。これら磁極の基部には、界磁用永久磁石を貫通させるスロット6a,6b,6c,6dが設けられており、磁極先端と磁極基部とを結ぶ箇所にブリッジ4aが存在する。前記けい素鋼板4においては、スロット6a,6b,6c,6dが長手方向にやや広く形成されており、従って、ブリッジ4aは細く製作されている。そのため、スロット6a,6b,6c,6dの側部と、界磁用永久磁石3a,3b,3c,3dの側部3eとの間には、僅かな隙間が存在している。
これに対して、図14(2)に示すように、けい素鋼板44の方は、磁極先端と磁極基部とを結ぶ箇所のブリッジ44aは、その幅が厚く形成されており、従って、前記けい素鋼板4の場合とは異なり、スロット側部と磁石側部との間には隙間は存在していない。」(第40頁第19行?第41頁第5行)

・Fig.12には、ロータヨーク2に回転軸23が挿入される軸孔を設ける点、前記軸孔に平行なスロット6a、6b、6c、6dが設けられた点、及び、永久磁石回転子の外側に励磁コイル35を配置する点が示されており、Fig.14には、回転軸23の軸方向に垂直な断面が示されており、その断面においてスロット6a、6b、6c、6dは直線状の孔縁によって直線状に形成されている点、及び、二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dは前記スロット6a、6b、6c、6dの直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成されたことから、前記スロット6a、6b、6c、6dの両端部に前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dとの間に隙間が設けられている状態で、前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dは前記スロット6a、6b、6c、6dの中央部に挿入されている点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「固定子30と、永久磁石回転子を備え、前記永久磁石回転子は、回転軸23が挿入される軸孔および前記軸孔に平行なスロット6a、6b、6c、6dが設けられたロータヨーク2と、前記スロット6a、6b、6c、6dに挿入される二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを有し、前記スロット6a、6b、6c、6dは、軸方向に垂直な断面において、直線状の孔縁によって直線状に形成されており、前記二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dは、前記スロット6a、6b、6c、6dに収容された状態で、前記永久磁石回転子の外側に配置された励磁コイル35に高電流を通電することによって、着磁される駆動モータ22において、
前記スロット6a、6b、6c、6dを加熱により拡開して前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを挿入し、その後に冷やすことにより、前記スロット6a、6b、6c、6dが縮径することにより前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを固定され、
前記二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dは、前記スロット6a、6b、6c、6dの直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、加熱した後に冷えることによる縮径によって界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを固定する手段によって、前記スロット6a、6b、6c、6dの両端部に前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dの両端の隙間が設けられている状態で、前記スロット6a、6b、6c、6dの中央部に収容されている駆動モータ22。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「固定子30」が前者の「固定子」に相当し、同様に、
「永久磁石回転子」が「回転子」に相当する。

(イ)後者の「回転軸23が挿入される軸孔」が前者の「軸が嵌入される軸孔」に相当し、以下同様に、
「スロット6a、6b、6c、6d」が「複数の収容孔」に、
「ロータヨーク2」が「鉄心」に、
「挿入される」が「収容される」に、
「二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3d」が「複数の磁石」に、それぞれ相当する。

(ウ)後者の「スロット6a、6b、6c、6dは、軸方向に垂直な断面において、直線状の孔縁によって直線状に形成されて」いる態様が、
前者の「複数の収容孔は、軸方向に垂直な断面において、直線状の孔縁によって直線状に形成されて」いる態様に相当する。

(エ)後者の「二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3d」との態様と
前者の「複数の磁石は、回転子の極方向に平行に磁気配向され」ている態様とは、
「複数の磁石」なる概念で共通する。

(オ)後者の「駆動モータ22」は、ロータヨーク2に界磁用永久磁石が挿入されている「永久磁石回転子」と「固定子30」とから構成されているので、前者の「固定子30と、永久磁石回転子を備え」た「インテリアル・パーマネントマグネット・モータ」に相当するといえることから、
後者の「励磁コイル35に高電流を通電することによって」との態様が前者の「固定子巻線に着磁電流を通電することにより発生する着磁磁束によって」との態様に相当し、同様に、
「駆動モータ22」が「インテリアル・パーマネントマグネット・モータ」に、相当し、
後者の「スロット6a、6b、6c、6dに収容された状態で、永久磁石回転子の外側に配置された励磁コイル35に高電流を通電することによって、着磁される駆動モータ22」と
前者の「複数の収容孔に収容された状態で、回転子の外側に配置された固定子巻線に着磁電流を通電することにより発生する着磁磁束によって、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁されるインテリアル・パーマネントマグネット・モータ」とは、
「複数の収容孔に収容された状態で、回転子の外側に配置された固定子巻線に着磁電流を通電することにより発生する着磁磁束によって、着磁されるインテリアル・パーマネントマグネット・モータ」なる概念で共通する。

(カ)後者の「スロット6a、6b、6c、6dを加熱により拡開して界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを挿入し、その後に冷やすことにより、前記スロット6a、6b、6c、6dが縮径することにより前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを固定され」る態様と
前者の「複数の収容孔の直線状の孔縁には、前記複数の収容孔の孔幅を狭める方向に突出した突起部が設けられており」との態様とは、
「複数の収容孔に前記複数の磁石を固定し」ているとの概念で共通する。

(キ)後者の「界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dの両端の隙間」は、当審の拒絶の理由に引用した国際公開第94/5075号の第11頁第24行から同頁第29行に記載されているように永久磁石回転子において磁束がブリッジを介して短絡することを防止する機能を有していることは技術常識であるといえるので、
後者の「界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dの両端の隙間」が前者の「磁束短絡防止部」に相当し、後者の「二対の板状の界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dは、スロット6a、6b、6c、6dの直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、加熱した後に冷えることによる縮径によって界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを固定する手段によって、前記スロット6a、6b、6c、6dの両端部に前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dの両端の隙間が設けられている状態で」と
前者の「複数の磁石は、前記複数の収容孔の直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、突起部によって、前記複数の収容孔の両端部に磁束短絡防止部が設けられている状態で」とは、
「複数の磁石は、前記複数の収容孔の直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、前記複数の磁石を固定する手段によって、前記複数の収容孔の両端部に磁束短絡防止部が設けられている状態で」なる概念で共通する。

(ク)後者の「スロット6a、6b、6c、6dの中央部に収容されている」態様と
前者の「複数の収容孔の中央部に位置決め収容されている」態様とは、
「複数の収容孔の中央部に収容されている」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「固定子と、回転子を備え、前記回転子は、軸が嵌入される軸孔および前記軸孔に平行な複数の収容孔が設けられた鉄心と、前記複数の収容孔に収容される複数の磁石を有し、前記複数の収容孔は、軸方向に垂直な断面において、直線状の孔縁によって直線状に形成されており、前記複数の磁石は、前記複数の収容孔に収容された状態で、前記回転子の外側に配置された固定子巻線に着磁電流を通電することにより発生する着磁磁束によって、着磁されるインテリアル・パーマネントマグネット・モータにおいて、
前記複数の収容孔に前記複数の磁石を固定し、
前記複数の磁石は、前記複数の収容孔の直線状の孔縁の長さに満たない長さに形成され、前記複数の磁石を固定する手段によって、前記複数の収容孔の両端部に磁束短絡防止部が設けられている状態で、前記複数の収容孔の中央部に収容されているインテリアル・パーマネントマグネット・モータ。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
複数の磁石に関し、本願発明では「回転子の極方向に平行に磁気配向され」ているのに対し、引用発明ではかかる特定はなされていない点。

[相違点2]
着磁磁束によって着磁する極性に関し、本願発明では「隣接する磁極が互いに異極となるように」着磁されるのに対し、引用発明ではかかる特定がなされていない点。

[相違点3]
複数の磁石を固定する手段に関し、本願発明では、複数の収容孔「の直線状の孔縁には、前記複数の収容孔の孔幅を狭める方向に突出した突起部が設けられ」ていることを特定しているのに対し、引用発明ではスロットを加熱後に冷やすことにより、前記スロットが縮径することにより固定しているが、「突起部」により固定する点は特定されていない点。

[相違点4]
着磁磁束によって着磁する処理に関し、本願発明では「複数の磁石の両端部において、着磁磁束が前記複数の磁石の磁気配向の方向にほぼ沿う」ものであることを特定しているのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点5]
複数の磁石が収容孔の中央部に収容されている状態に関し、本願発明では「位置決め」収容されているのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

5.判断
[相違点1、2、及び、4]について
本願発明において、複数の磁石は、回転子の極方向に平行に磁気配向され、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁されるインテリアル・パーマネントマグネット・モータにおいて、着磁磁束が複数の磁石の磁気配向の方向にほぼ沿うようにしたことによる技術的な意義は出願当初の明細書の【0019】の「図1に示した回転子は、前述したように磁石3aが鉄心1aの外周部寄りに埋め込まれているため、回転子の外側に配置させた固定子巻線または専用の着磁巻線に着磁電流を通電して着磁する際、図6に示すように、着磁磁束16は着磁磁界の極間部近傍に相当する磁石3aの両端部において、磁石3aの磁気配向の方向に対する傾斜が緩やかとなる。これは磁石3aが図6に破線で示す従来の磁石13の位置より外側に配置されることにより、着磁巻線の磁極に近接するためであり、この結果、磁石3aの両端部においてほぼ配向方向に沿った十分な着磁が達成される。」によれば、従来の磁石13の位置より外側に配置されることにより(直線上の収容孔とすることにより達成されると解される)、磁石3aの両端部においてほぼ配向方向に沿った十分な着磁が達成されるものと解することができる。
一方、当審の拒絶の理由に引用した国際公開第94/5075号のFig.26には、インテリアル・パーマネントマグネット・モータにおいて、回転子の極方向に平行に着磁され、更に、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁された複数の磁石3が図示されているように、インテリアル・パーマネントマグネット・モータにおいて、回転子の極方向に平行に着磁され、更に、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁された複数の磁石は周知慣用技術にすぎない。
また、当審の拒絶理由において記載したように、「磁石を着磁する際に、着磁磁束が磁石の磁気配向の方向にほぼ沿うように配慮することは、当然に行うことでもある」点は磁石の着磁における技術常識にすぎない。従って、引用発明に上記周知慣用技術の回転子の極方向に平行に着磁され、更に、隣接する磁極が互いに異極となるように着磁された複数の磁石を採用する際に、着磁後の磁石の極性を考慮して磁気配向、及び、着磁磁束が磁気配向の方向にほぼ沿うようにすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。(なお、必要があれば、平成8年4月16日に公開され、本願の原出願の出願前において公知となっている特開平8-103062号公報の【0019】に「ロータマグネット30は、・・・、周方向にN極とS極とが交互に配列されて12個の磁極を形成している。このロータマグネット30は、図1に矢印で示すように、半径方向に対し一律にほぼ45度だけ一方向(右回転方向)に傾斜して磁気配向され、つまり磁化容易軸が設定され、この方向に着磁されて各磁極を形成している。」とあり、さらに、【0020】に「成形時にマグネット素材31の長手方向に対し45度の角度に磁場を強く発生させて磁化容易軸を形成する。その後、この磁化容易軸に沿って各磁極の着磁(平行着磁)を行い」と記載されているように、本願の原出願の出願前において、「磁石を着磁する際に、着磁磁束が磁石の磁気配向の方向にほぼ沿うように配慮することは、当然に行うことでもある」点は磁石の着磁における技術常識にすぎないといえる。)
そうすると、引用発明において上記周知慣用技術を採用した場合において、上記技術常識を考慮することにより、相違点1、2、及び、4に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって設計事項にすぎない。

[相違点3、及び、5]について
当審の拒絶の理由に引用した国際公開第94/5075号の第11頁第24行から同頁第29行に「スロット6(「収容孔」に相当)の両端には、磁極部5の先端部と磁極部5の基部とを連結するブリッジ部10が存在し、前記ブリッジ部10と界磁用永久磁石3,3の間に空隙(「磁束短絡防止部」が相当)があるため、・・・ブリッジ部10に通る磁束が少なくなる(「磁束短絡防止部」の作用に相当)」と記載され、第12頁第4行から第7行に「この突出部9(「突起部」が相当)により、界磁用永久磁石3,3は、スロット6,6の回転軸内周面及びブリッジ部10とは接触しない。このため、界磁用永久磁石3,3とスロット6,6との接触による摩擦が少なく、小さな力で挿入でき界磁用永久磁石の位置決めを行うことができる」と記載されているように、複数の収容孔の直線状の孔縁には、複数の収容孔の孔幅を狭める方向に突出した突起部が設けられており、突起部によって、複数の収容孔の両端部に磁束短絡防止部が設けられている状態で、複数の収容孔の中央部に磁石を位置決め収容することは周知の技術にすぎない。
一方、引用発明においても、「スロット6a、6b、6c、6dを加熱により拡開して界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを挿入し、その後に冷やすことにより、前記スロット6a、6b、6c、6dが縮径することにより前記界磁用永久磁石3a、3b、3c、3dを固定され」ているものであり、本願の出願当初の明細書には、「突起部」とすることによる技術的な意義は記載されておらず、また、モータにおいて磁石を固定する手法は各種のものが常用されており、周知の手法であればどの手法を採用するのかは製造の手数等に応じて任意に選択可能であるといえる。
そうすると、モータの磁石を固定するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知の技術の「突起部」を採用することにより相違点3、及び、5に係る本願発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、上記周知慣用技術、上記周知の技術、及び、上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

6.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知慣用技術、上記周知の技術、及び、上記技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-24 
結審通知日 2011-02-25 
審決日 2011-03-09 
出願番号 特願2006-2360(P2006-2360)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 倉橋 紀夫
田良島 潔
発明の名称 インテリアル・パーマネントマグネット・モータ  
代理人 岩田 哲幸  
代理人 池田 敏行  

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