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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1235802 |
審判番号 | 不服2009-714 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-08 |
確定日 | 2011-04-21 |
事件の表示 | 特願2002-130112「可変型光分散補償モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 37561〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年5月1日(優先権主張 平成13年5月16日)の出願であって、平成19年8月28日付けで通知した最初の拒絶理由に対して平成19年11月5日付けで手続補正がされ、さらに平成20年3月28日付けで通知した最後の拒絶理由に対して平成20年6月9日付けで手続補正がなされたところ、平成20年12月5日付けで平成20年6月9日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成21年1月8日に拒絶査定不服審判が請求され、平成21年2月9日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [結論] 平成21年2月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、補正前の平成19年11月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された 「【請求項1】 所定の光分散量を有する光分散補償ファイバ、前記光分散補償ファイバに対するバイパスとなるバイパス路、及び前記光分散補償ファイバと前記バイパス路に接続され前記光分散補償ファイバと前記バイパス路のいずれかに一方に光路を切り換える光スイッチから構成され、前記光分散補償ファイバの長さを異ならせることで前記光分散量を異なるように構成した光分散補償ユニットを2以上直列に接続した光分散補償回路と、 前記光分散補償回路の入出力側にそれぞれ接続した光コネクタと、 前記各光スイッチに接続した制御装置と を備え、 前記制御装置は、予め設定した分散量を基準として前記各光スイッチを適宜選択し、光分散補償ユニットを構成する各光スイッチの光路の切り替えを、設定した所定の光分散量になるように制御することを特徴とする可変型光分散補償モジュール。」を、 「【請求項1】 所定の長さ及び光分散量を有する光分散補償ファイバ、前記光分散補償ファイバに対するバイパスとなるバイパス路、及び前記光分散補償ファイバと前記バイパス路に接続され前記光分散補償ファイバと前記バイパス路のいずれかに一方に光路を切り換える光スイッチから構成された光分散補償ユニットを、光分散補償ユニットごとに前記光分散補償ファイバの長さ及び光分散量が異なるように構成して、2段以上直列に接続した光分散補償回路と、 前記光分散補償回路の入出力側にそれぞれ接続した入出力用コネクタと、 前記各光スイッチに接続した制御装置と を備え、 前記各段の光分散補償ユニットにおける光分散補償ファイバは、光分散量が、2N×X(但し、Nは1からjまでの整数、Xは光分散量)であって、前記入力用コネクタに近く設置したものほど単位長さ当たりの前記光分散量が多くなるように構成し、 前記制御装置は、光伝送路上を伝搬することで発生し、予め設定された補償すべき光分散量を基準として前記各光スイッチを適宜選択して、光分散補償ユニットを構成する各光分散補償ファイバと各バイパス路との何れかに光路の切り替えを行い、前記全光分散補償ファイバでの光分散量の合算値が、前記予め設定した補償すべき光分散量になるように制御することを特徴とする可変型光分散補償モジュール。」に補正することを含むものである。 2.本件補正の適否 (1)新規事項の追加について 本件補正は、本件補正前の請求項1における「光分散補償ファイバ」について、「入力用コネクタに近く設置したものほど単位長さ当たりの前記光分散量が多くなるように構成」する点を追加する補正を含むものである。当該追加された構成について以下に検討する。(下線は当審にて付与。以下同様) 願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、段落番号【0023】?【0024】において、「要求される光分散補償量に応じて、可変型光分散補償モジュールの光スイッチ12a、12b、…、12fをそれぞれ任意に選択して作動させ、伝送光が例えば図1に例示した光分散補償量-160ps/nm、-80ps/nm、-40ps/nm、-20ps/nm、-10ps/nmのDCファイバ10a、10b、…、10eのうちから選択した所望のDCファイバを透過し、その他のDCファイバをバイパスするように光線路を切り替える。 こうして、0ps/nmから-310ps/nmまでの範囲において10ps/nm刻みで光分散補償量を調整する。」という記載がある。 また、段落番号【0016】においても「図1に示されるように、本実施形態に係る可変型光分散補償モジュールは、光分散補償量の異なる5種類のDCファイバ10a、10b、…、10eが、6個の光スイッチ12a、12b、…、12fによってシリアル接続されている5段の光分散補償ユニットから構成されている。ここでの5種類のDCファイバ10a、10b、…、10eの各光分散補償量は、例えば-160ps/nm、-80ps/nm、-40ps/nm、-20ps/nm、-10ps/nmである。」と記載されている。 また、段落番号【0055】?【0056】には、「次に、DCファイバを巻きつけるボビンについて説明する。 以下、図5Aから図10を参照して本発明における光分散補償ファイバを巻くボビンの形態を説明する。なお、図1と同じ部材には同じ符号を付して説明をする。 DCファイバ10a、10b、…、10eは、ある所定の光分散補償量となるように、ある所定の長さだけ、図5A、図5B,図6?図10に示すような例えばアルミ製のボビン30に巻き取られ、該アルミボビン30を筐体にネジ等により固定、収納する構造になっている。 ボビンの一方の鍔部にファイバ挿入孔があるボビンの斜視図を図5A に,図5Bにはこの鍔部の平面図を示す。」と記載されている。 また、段落番号【0061】には、「このような構造にすると、5種類の長さのDCファイバを一つのボビン30に巻付けることができる。この結果、通常、1種類の長さのDCFに対し、一つのボビンを使用するが、4種類の長さのDCファイバを一つのボビンに巻付けることもでき、コストダウンおよび小型化となる。なお、それぞれのDCファイバの先端および後端には、コネクタを設けた構造にすると、接続が容易になり好ましいし。さらに、上記実施例では、5種類の長さの異なるDCファイバを一つのボビンに巻付けたが、これに限らず、数種類のファイバを一つのボビンに巻付けることも出来る。」という記載がある。 一方、請求人は、審判請求の理由の(B)補正の根拠の明示において、当初明細書中の段落【0016】、【0023】において、光分散量(当審注:当該段落には「光分散補償量」と記載されている。)に5種類の数値160、80、40、20、10(ps/nm)の具合的な数値があること、及び段落【0060】、【0061】にDCファイバの長さが異なることが記載されていることを根拠として、「「光分散量」の単位については、本願発明に係る当初明細書中に『ps/nm』として記載されていますが、正確には、2つの信号光の波長の差[nm]と、2つの信号光が伝播するときの光ファイバの長さ[km]と、この光ファイバを伝播するときの単位長さ当たりの上記2つの信号光の伝播時間の差[ps]との3種類のパラメータによって決定されるものであり、周知のように、正確な単位として『ps/km/nm』で定義されているものです。但し、本願当初明細書では、引用文献1及び2と同様、(2番目の)[km]の単位が省略されています。」と主張している。 しかしながら、上記明細書には、光スイッチにより選択される各DCファイバ10a、10b、…、10eが所定の光分散補償量を有していること、光スイッチにより選択される各DCファイバ10a、10b、…、10eが所定の光分散補償量となるように所定の長さボビンに巻かれていることについて記載されているが、DCファイバの単位長さ当たりの光分散量が異なることが記載されているということはできない。 上記明細書の記載及び上記主張について検討すると、光分散補償ファイバにおける、単位長さ当たりの光分散補償量「ps/km/nm」、光分散補償ファイバの長さ「km」、及び、光分散補償ファイバの光分散補償量「ps/nm」の関係については、例えば、特開昭62-275204号公報の第3頁左上欄第12行?同頁右上欄第4行に、「第1図において、伝送波長における既設線路6の波長分散係数をm_(0)(ps/km/nm)とすると、長さL(km)の既設線路6に生ずる波長分散はm_(0)L(ps/nm)となり、m_(0)L+ml=0を満足するシングルモードファイバからなる分散補償線路7を介挿することにより、総伝送路、即ち既設線路6の送信機4側端と受信機5側端間にわたる伝送路の波長分散を零とすることができる。 尚、m(ps/km/nm)は分散補償線路7の伝送波長における波長分散係数であり、l(km)は分散補償線路7を構成するシングルモードファイバの実質上の長さである。」と記載されているように、「ps/km/nm」は分散補償線路の単位長さ当たりの分散補償量を意味するのに対し、「ps/nm」は、ある所定の長さの分散補償線路により得られる所定の分散補償量を意味するものと解される。そうすると、「ps/nm」を「ps/km/nm」とする補正は、補正前はある所定の長さの分散補償線路の所定の分散補償量によって、発明の課題を解決しようとしていたのに対して、補正後は分散補償路の単位長さ当たりの分散によって、発明の課題を解決しようとすることになり、発明の課題解決のための技術的手段が変更されたといえる。 よって、本件補正は当初明細書等のすべての記載を統合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)補正の目的及び独立特許要件について 上記のとおり、本件補正は新規事項を追加しているが、仮に、新規事項の追加ではなく、「光分散補償ファイバ」について限定しようとするものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 補正発明においては、「光分散補償ファイバ」について、光分散補償ユニットごとに「長さ」及び「光分散量」が異なるように構成して、さらに、「単位長さ当たりの前記光分散量」を入力用コネクタに近く設置したものほど多くなるように構成する補正をしている。そうすると、例えば、光分散補償量の大小関係を特定するためには、「単位長さ当たりの前記光分散量」及び「長さ」の一方を固定値とした上で他方の大小が特定されなければならないが、上記のように「長さ」及び「光分散量」が異ったうえに「単位長さ当たりの前記光分散量」についてのみ大小関係を特定しても、光分散補償ユニットとしての光分散補償量は大小関係が特定されないので特許請求の範囲の記載が不明確となる。 よって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成21年2月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年11月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2.引用例に記載された発明 (1)引用例 原審の拒絶理由に引用された特開平11-252010号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (a) 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】分散媒質として光ファイバが使用されることが多いが、従来、以下のような問題点があった。 【0005】第1に、補償すべき波長分散量が多くなると、光ファイバを長くしなければならず、その損失も増大する。その結果、損失補償用の光増幅器が必要となる。しかし、光増幅器の挿入台数が異なると、光信号対雑音比が変化してしまうので、伝送特性に新たな不確定要因を発生させることになる。 【0006】第2に、分散補償用の光ファイバの長さは離散的なものとならざるを得ないが、波長分割多重信号の伝送特性を評価する場合で、ある1つの光信号波長から次の光信号波長へと被測定信号を変化させるようなときに、分散補償用光ファイバの追加又は削除が必要となり、光コネクタの付け替え等の作業も発生してしまう。これでは、非常に作業性が悪い。 【0007】そこで、本発明は信号光対雑音光比を変えずに、より迅速に所望の波長分散を付与できる波長分散付与装置を提示することを目的とする。」 (第2頁左欄第40行?同頁右欄第9行) (b) 「【0021】どのような分散量の光ファイバを組み合わせて使用すると、波長分散量を効率的に選択できるかを具体的に検討した。その検討例を図5に示す。この例では、最小の分散量の絶対値を10ps/nmとしている。その他の分散量をこの値の2のn乗倍とすることにより、10ps/nm単位で分散等化量を調整できる。 【0022】具体的には、光信号入力ポート50と光信号出力ポート52との間に接続する11個の分散選択ユニット54?74は、正常分散の光パスとゼロ分散の光パスを選択可能である。異常分散の光パスを有しないので、異常分散の分散等化ファイバの損失と一致させるための減衰器34は不要になるので、削除してある。即ち、分散選択ユニット54?74は、1入力・2出力の入力側光スイッチ76、2入力・1出力の出力側光スイッチ78、入力側光スイッチ76の第1出力ポートと出力側光スイッチ78の第1入力ポートとの間に接続される正常分散の分散等化ファイバ80、及び、分散等化ファイバ80と同じ損失でゼロ分散の光減衰器82からなる。 【0023】分散選択ユニット54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74の正常分散の分散量は、それぞれ、10ps/nm、20ps/nm、40ps/nm、80ps/nm、160ps/nm、320ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、及び640ps/nmである。波長分散の累積が640ps/nmの整数倍になる位置、具体的には、分散選択ユニット64と同66の間、分散選択ユニット66と同68の間、分散選択ユニット68と同70の間、分散選択ユニット70と同72との間、分散選択ユニット72と同74の間にそれぞれ、光増幅器84,86,88,90,92が挿入されている。 【0024】この例では、10ps/nmから3830ps/nmまでの範囲で10ps/nm刻みで等化分散量を変更できる。勿論、各分散選択ユニット54?74に、同じ分散量で異常分散の分散等化ファイバの光パスを設ければ、更に、-10ps/nmから-3830ps/nmまでの範囲で10ps/nm刻みの等化分散量をも選択できることになる。勿論、この場合に、正常分散の光パスには、異常分散の光パスの損失と一致させるための減衰器を挿入し、ゼロ分散の光パスの減衰器82の減衰量もそれに応じた値にしなければならない。 【0025】分散等化ファイバ(及び減衰器)による損失補償用の光増幅器84?92は、分散量の絶対値として640/nm毎に挿入しているが、これは光信号対雑音比の劣化を抑制するには、光信号を大きく減衰させないのが好ましいからである。 【0026】図6は、実施例を収容する架台の正面図、図7は、その側面図を示す。正面の上段94,96には、各分散選択ユニット14?20,54?74の入力側光スイッチ30,76及び出力側光スイッチ40,78を切り換えるスイッチ操作パネルが配置され、下段98,100,102に光増幅器22,84?92が配置される。スイッチ操作パネル94,96の後側104,106に入力側光スイッチ30,76及び出力側光スイッチ40,78がそれぞれ収容される。架台の後半分108には、分散等化ファイバ32,36,80及び光減衰器34,38,82が収容される。このように各部材を収容することにより、スイッチ操作パネル上の操作のみで、所要の等化分散量を入力光に与えることができ、波長分割多重伝送される各信号光に所望の量の波長分散を与えることができる。」 (第3頁右欄第15行?第4頁左欄第26行) (c)第5図を参照すると、分散選択ユニット54?74は、光信号入力ポート50及び光信号出力ポート52間に直列に接続されている。 したがって、上記記載事項及び図面から引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「光信号入力ポート50と光信号出力ポート52との間に直列に接続された11個の分散選択ユニット54?74は、正常分散の光パスとゼロ分散の光パスを選択可能であり、 分散選択ユニット54?74は、1入力・2出力の入力側光スイッチ76、2入力・1出力の出力側光スイッチ78、入力側光スイッチ76と出力側光スイッチ78との間に接続される正常分散の分散等化ファイバ80、及び、分散等化ファイバ80と同じ損失でゼロ分散の光減衰器82からなり、 分散選択ユニット54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74の正常分散の分散量は、それぞれ、10ps/nm、20ps/nm、40ps/nm、80ps/nm、160ps/nm、320ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、及び640ps/nmであり、 10ps/nmから3830ps/nmまでの範囲で10ps/nm刻みで等化分散量を変更でき、スイッチ操作パネル上の操作で各光スイッチを操作して、所要の等化分散量を入力光に与えることができ、より迅速に所望の波長分散を付与できる波長分散付与装置。」 3.本願発明と引用発明の一致点・相違点 引用発明の「分散等化ファイバ80」は、各分散選択ユニット54,56,58,60,62,64,66,68,70,72,74に設けられ、分散量は、それぞれ、10ps/nm、20ps/nm、40ps/nm、80ps/nm、160ps/nm、320ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、640ps/nm、及び640ps/nmである所定の分散量を有しているから、本願発明の「所定の光分散量を有する光分散補償ファイバ」に相当する。 引用発明の「光減衰器82」は、ゼロ分散の光パスであって、正常分散の光パスをバイパスしているから、本願発明の「光分散補償ファイバに対するバイパスとなるバイパス路」に相当する。 引用発明の「1入力・2出力の入力側光スイッチ76、2入力・1出力の出力側光スイッチ78」は、入力側光スイッチ76と出力側光スイッチ78との間に接続される正常分散の分散等化ファイバ80、及び、分散等化ファイバ80と同じ損失でゼロ分散の光減衰器82を、正常分散の光パスとゼロ分散の光パスとして選択可能としているから、本願発明の「光スイッチ」に相当する。 引用発明の「分散選択ユニット54?74」は、本願発明の「光分散補償ユニット」と光分散補償ファイバ、バイパス路及び光スイッチを備える点で共通している。 引用発明の「直列に接続された11個の分散選択ユニット54?74」は、本願発明の「光分散補償ユニットを2以上直列に接続した光分散補償回路」に相当する。 引用発明の「波長分散付与装置」は、本願発明の「可変型光分散補償モジュール」に相当する。 すると、本願発明と、引用発明とは、次の点で一致する。 (一致点) 所定の光分散量を有する光分散補償ファイバ、前記光分散補償ファイバに対するバイパスとなるバイパス路、及び前記光分散補償ファイバと前記バイパス路に接続され前記光分散補償ファイバと前記バイパス路のいずれかに一方に光路を切り換える光スイッチから構成され、前記光分散量を異なるように構成した光分散補償ユニットを2以上直列に接続した光分散補償回路を備えた可変型光分散補償モジュール。 一方で、両者は、次の相違点で相違する。 (相違点1) 本願発明では、光分散量を異なるようにするために光分散補償ファイバの長さを異ならせているのに対し、引用発明では、光分散量を異ならせるのに、分散等化ファイバ80の長さを異ならせるようにする構成が明記されていない点。 (相違点2) 本願発明では、光分散補償回路の入出力側にそれぞれ接続した光コネクタを備えているのに対し、引用発明では、光信号入力ポート50と光信号出力ポート52を備えているが、光コネクターである記載がない点。 (相違点3) 本願発明では、各光スイッチを適宜選択し、設定した所定の光分散量になるように制御する制御装置を備えているのに対し、引用発明では、スイッチ操作パネル上の操作で各光スイッチを操作して所要の等化分散量を入力光に与えることができるが、制御装置についての特段の記載がない点。 4.相違点についての当審の判断 (相違点1について) 光通信の技術分野において、伝送路の波長分散を補償するための波長分散補償量を設定する際に、分散補償光ファイバの長さで設定することは周知技術(例えば、上記引用例の段落番号【0005】の「補償すべき波長分散量が多くなると、光ファイバを長くしなければならず」という記載、特開2000-147300号公報の段落番号【0029】?【0030】の「DCF2による双方向の分散補償量がそれぞれ約1020ps/nmとなるようにした。この分散補償量は、SMF60km分の分散量とほぼ等しい量であり、DCF2として分散が約100ps/nm/kmのものを用いて、長さを約10.2kmとした。 さらに、DCF8による分散補償量が約340ps/nmとなるようにした。この分散補償量は、SMF20km分の分散量とほぼ等しい量であり、DCF8として分散が約100ps/nm/kmのものを用いて、長さを約3.4kmとした。」という記載等参照)である。したがって、引用発明において所定の分散量を得るために、光分散量を異なるようにするために光分散補償ファイバの長さを異ならせる構成とすることは当業者が容易に想到するものである。 (相違点2について) 光通信の技術分野において、光信号を入出力するポートとして光コネクタを用いることは文献を提示するまでもなく慣用技術である。したがって、引用発明の光信号入力ポート50及び光信号出力ポート52として光コネクタを用いる構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項であり容易に想到するものである。 (相違点3について) 一般に直列に接続される回路の接続状態を、スイッチにより所望の接続状態に自動的に設定するために制御装置を設けることは周知(例えば、特開平6-164452号公報の段落番号【0053】?【0058】の記載、特開平11-88260号公報の段落番号【0015】及び第12図の記載等参照)である。 したがって、引用発明において所要の等化分散量を入力光に与えるために、各光スイッチを操作する制御装置を設ける構成とすることは当業者が容易に想到するものである。 また、本願発明による効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-14 |
結審通知日 | 2011-02-15 |
審決日 | 2011-02-28 |
出願番号 | 特願2002-130112(P2002-130112) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) P 1 8・ 575- Z (H04B) P 1 8・ 537- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 貴裕、木下 直哉 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
鈴木 重幸 近藤 聡 |
発明の名称 | 可変型光分散補償モジュール |
代理人 | 大久保 恵 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 住吉 秀一 |
代理人 | 茜ヶ久保 公二 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 江村 美彦 |
代理人 | 宮城 康史 |