• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1235823
審判番号 不服2009-25009  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-17 
確定日 2011-04-21 
事件の表示 特願2004- 84830「経路設定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-274213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年3月23日の出願であって、平成21年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月17日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成21年2月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「地図データに基づいて出発地から目的地までの経路を設定する経路設定手段と、
特定の規制地域に進入する許可を示す期間である許可期間を外部から入力する外部情報入力手段と、
前記外部情報入力手段を介して入力した許可期間に基づいて前記特定の規制地域への進入可否を判断する判断手段と、
を備え、
前記経路設定手段は、前記判断手段によって進入不可と判断された場合には、進入不可と判断された規制地域を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、規制地域を考慮することなく経路を設定すること
を特徴とする経路設定装置。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第01/94887号(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「この発明に係るナビゲーション装置は、道路の時間規制情報を含む地図データを参照して、目的地に至る経路を探索するようにしたものである。
このことによって、時間規制により通行が不可能な経路を提示することなく、実際に通行することが可能な経路を提示することができる効果がある。」(明細書1頁末行?2頁5行)
・「実施の形態1.
第1図はこの発明の実施の形態1によるナビゲーション装置を示す構成図であり、図において、1は目的地を設定するとともに、時間規制情報の追加、変更又は削除を受け付ける情報設定部(規制情報受付手段)、2は道路の時間規制情報を含む地図データを記憶するCD-ROM、DVD-ROM、メモリカードなどの記憶媒体により構成されるデータベース、3は情報設定部1により受け付けられた時間規制情報を格納するSRAM(SRAM以外の書換え可能な記憶媒体でもよい)である。なお、データベース2及びSRAM3から記憶手段が構成されている。
4は地図データ及び時間規制情報を参照して、目的地に至る経路を探索する経路探索部(経路探索手段)、5は経路探索部4により探索された経路をディスプレイ6に表示するとともに、その経路の案内情報等をスピーカ7から出力させる提示部、6はディスプレイ、7はスピーカである。なお、提示部5,ディスプレイ6及びスピーカ7から提示手段が構成されている。
第2図はこの発明の実施の形態1によるナビゲーション装置の処理内容を示すフローチャートである。
次に動作について説明する。
まず、ユーザが情報設定部1を用いて目的地を設定すると、経路探索部4がデータベース2から経路探索に必要な道路のノード番号とリンク番号を取得する(ステップST1)。
経路探索部4は、データベース2から経路探索に必要な道路のノード番号及びリンク番号を取得すると、SRAM3に格納されている道路のノード番号及びリンク番号と比較する(ステップST2)。ここで、SRAM3には、ユーザにより過去に設定された道路の時間規制情報が格納されている。
経路探索部4は、比較の結果、一致する道路のノード番号とリンク番号が存在する場合(ステップST3)、そのノード番号とリンク番号に対応する時間規制情報をSRAM3から取得し(データベース2から取得されたノード番号等の中に、SRAM3に格納されているノード番号等と一致しないものが含まれている場合、そのノード番号に対応する時間規制情報はデータベース2から取得する)、その時間規制情報を考慮して、目的地に至る経路を探索する(ステップST4)。
一方、経路探索部4は、比較の結果、一致する道路のノード番号とリンク番号が存在しない場合(ステップST3)、そのノード番号とリンク番号に対応する時間規制情報をデータベース2から取得し、その時間規制情報を考慮して、目的地に至る経路を探索する(ステップST5)。
なお、目的地に至る経路は、提示部5がディスプレイ6に表示するが、時間規制情報が考慮された経路であるため、その時間規制情報が最新の情報である限り、一方通行を逆走するような経路が表示されることはない。
このようにして、目的地に至る経路がディスプレイ6に表示されるが、この時間の経過に伴って道路の時間規制が変更されることがある。例えば、以前は対面通行が可能であった道路が、時間帯により一方通行になる場合がある。
このような場合に対処するため、経路探索部4は、提示部5が目的地に至る経路をディスプレイ6に表示した後、その経路上の道路において、時間規制情報を追加、変更又は削除を行うか否かをユーザに問いかける処理を実行する。即ち、経路探索部4が提示部5を介して、ユーザに問いかける文章をディスプレイ6に表示するなどをする。
ここで、追加、変更、削除する時間規制情報としては、進入禁止、一方通行、歩行者天国(車両通行禁止)などがある。」(同書4頁14行?6頁15行)
・「 以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、道路の時間規制情報を含む地図データを参照して、目的地に至る経路を探索するように構成したので、時間規制により通行が不可能な経路を提示することなく、実際に通行することが可能な経路を提示することができる効果を奏する。」(同書7頁17行?21行)

以上の記載によれば、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「地図データを参照して、目的地に至る経路を探索する経路探索部4と、
道路の時間規制情報のユーザによる追加、変更又は削除を受け付ける情報設定部1と、
を備え、
前記経路探索部4は、地図データ及び時間規制情報を参照し、その時間規制情報を考慮して、時間規制により通行が不可能な経路を提示することなく、目的地に至る経路を探索する
ナビゲーション装置。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「地図データを参照して」は、前者の「地図データに基づいて」に相当し、以下同様に「目的地に至る経路を探索する」は、「出発地から目的地までの経路を設定する」に、「経路探索部」は「経路設定手段」に、それぞれ相当する。
また、後者の「規制情報」を有する「道路」と前者の「特定の規制地域」とは「特定の規制情報を有する場所」との概念で共通し、後者の「時間規制情報」と前者の「進入する許可を示す期間である許可期間」とは「進入可否に関する時間情報」との概念で共通するということができるので、後者の「道路の時間規制情報のユーザによる追加、変更又は削除を受け付ける情報設定部」と前者の「特定の規制地域に進入する許可を示す期間である許可期間を外部から入力する外部情報入力手段」とは「特定の規制情報を有する場所への進入可否に関する時間情報を外部から入力する外部情報入力手段」である点で共通する。
さらに、後者の「経路探索部4」は、「地図データ及び時間規制情報を参照し、その時間規制情報を考慮して、時間規制により通行が不可能な経路を提示することなく、目的地に至る経路を探索する」ものであるから、「情報設定部を介して入力した時間規制情報に基づいて規制情報を有する道路への進入可否を判断する判断手段」を有するということができ、この判断手段と、前者の「外部情報入力手段を介して入力した許可期間に基づいて前記特定の規制地域への進入可否を判断する判断手段」とは「外部情報入力手段を介して入力した進入可否に関する時間情報に基づいて特定の規制情報を有する場所への進入可否を判断する判断手段」である点で共通する。
そして、後者の「経路探索部4」は、「時間規制により通行が不可能な経路を提示することなく、目的地に至る経路を探索する」ものであるから、「判断手段によって進入不可と判断された場合には、進入不可と判断された道路を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、規制を考慮することなく経路を設定する」ものであるということができ、この経路探索部の態様と、前者の「判断手段によって進入不可と判断された場合には、進入不可と判断された規制地域を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、規制地域を考慮することなく経路を設定する」態様とは、「判断手段によって進入不可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を考慮することなく経路を設定する」態様で共通するということができる。
そして、後者の「ナビゲーション装置」は前者の「経路設定装置」に相当する。

[一致点]
したがって、両者は
「地図データに基づいて出発地から目的地までの経路を設定する経路設定手段と、
特定の規制情報を有する場所への進入可否に関する時間情報を外部から入力する外部情報入力手段と、
前記外部情報入力手段を介して入力した進入可否に関する時間情報に基づいて特定の規制情報を有する場所への進入可否を判断する判断手段と、
を備え、
前記経路設定手段は、前記判断手段によって進入不可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を考慮することなく経路を設定する
経路設定装置。」で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「特定の規制情報を有する場所への進入可否に関する時間情報」に関し、本願発明が「特定の規制地域に進入する許可を示す期間である許可期間」であるのに対し、引用発明では「道路の時間規制情報」である点。

[相違点2]
「判断手段」に関して、本願発明が「外部情報入力手段を介して入力した許可期間に基づいて特定の規制地域への進入可否を判断する判断手段」であるのに対して引用発明では「外部情報入力手段を介して入力した進入可否に関する時間情報に基づいて特定の規制情報を有する場所への進入可否を判断する判断手段」である点。

[相違点3]
「判断手段によって進入不可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、特定の規制情報を有する場所を考慮することなく経路を設定する」態様に関し、本願発明が「判断手段によって進入不可と判断された場合には、進入不可と判断された規制地域を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、規制地域を考慮することなく経路を設定する」態様であるのに対し、引用発明では「判断手段によって進入不可と判断された場合には、進入不可と判断された道路を回避したる経路を設定し、前記判断手段にて進入可と判断された場合には、規制を考慮することなく経路を設定する」態様である点。

4.相違点に対する判断
相違点1ないし3について
通行を制限する道路を「領域」のような特定の規制地域で設定することは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-181571号公報(「課金対象領域」との記載参照)に記載されているように周知技術に過ぎず、経路設定装置においては、その情報を道路の単位で記憶することも領域単位で記憶することも常套手段であるから、引用発明において「道路」の情報を地域単位で記憶させることは必要に応じて適宜設計し得る事項と認められる。
また、「期間」と「時間」とは、その長さが特定されない限りにおいて相違はない時間に関する表現と認められるので、この点の表現の相違は実質的な構成の相違ではない。
したがって、引用発明において、上記周知技術及び常套手段を踏まえて「時間規制情報」を有する「道路」を「特定の規制地域」とし、「時間規制情報」、「時間情報」を「進入する許可を示す期間である許可期間」の「情報」とすることで相違点1ないし3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、上記周知技術、及び上記常套手段から予測し得る程度のものと認められる。

なお、請求人は審判請求の理由3.(a)において、引用刊行物に関し「時間や暦で規制内容が変更される時間規制情報を考慮した経路案内を行う点が開示されています。しかし、この発明は、その規制時間内においては物理的に通行が不可能となる道路を考慮するものであり、例えば休日に歩行者天国となっている道路に関しては、その歩行者天国となっている時間内は、いずれの人も車両通行が禁止されます。
それに対して本願発明では、ロードプライシングエリアのように、物理的には進入可能であっても、人為的なルールによって許可されている場合にしか進入できないようにされている規制地域を想定した問題を解決するものであります。したがって、許可を受けていれば進入できるが、許可を受けていなければ進入できない、という状況が発生します。この点、引用刊行物で想定しているような規制地域とは性質が異なります。」旨の主張をしているが、許可を受けているか否かは、本願発明が特定する事項ではなく、引用刊行物に記載されたような時間によって一方通行となるような道路では、物理的には(規制時間外には)進入可能であっても、人為的なルールによって許可されている場合(一方通行の入口側から)にしか進入できないようにされている規制地域である点では共通するものであるから、請求人の上記主張は本願発明の特定する事項に基づかないものであって、採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-15 
結審通知日 2011-02-22 
審決日 2011-03-07 
出願番号 特願2004-84830(P2004-84830)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 勝之池田 貴俊  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 槙原 進
藤井 昇
発明の名称 経路設定装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  
代理人 加藤 大登  
代理人 永井 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ