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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1235918 |
審判番号 | 不服2008-20276 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-07 |
確定日 | 2011-04-28 |
事件の表示 | 特願2006- 20830「光ピックアップ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-200510〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年1月30日の出願であって、平成20年4月14日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年6月20日付けで手続補正がなされ、同年7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月7日付けで拒絶査定不服審判請求がなされた後、同年9月5日付けで手続補正がなされた。 その後、平成22年8月25日付けで審尋がなされ、同年10月28日付けで回答書が提出され、当審がした同年11月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成23年2月3日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年2月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 光ディスクの情報記録面に光ビームを集光させる対物レンズと、この対物レンズを少なくともレンズ光軸方向であるZ軸方向、及び前記光ディスクの径方向であるX軸方向に駆動する駆動装置とを含み、前記駆動装置が、 前記Z軸、X軸と直交するY軸方向に延在するベースと、 前記ベースの一方に取付けられ、前記対物レンズが中心部に設けられ、この対物レンズを中心にして一方の対角線に配置されZ軸周りに巻かれた第1,第2のフォーカスコイル、および前記対物レンズを中心にして他方の対角線に配置されY軸周りに巻かれた第1,第2のトラッキングコイルが設けられたレンズホルダと、 前記第1のフォーカスコイルの外側に隣接して配置されY軸方向に着磁した第1の磁石と、前記第1の磁石に対向する位置で前記第1のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第2の磁石と、前記第2の磁石と同じ列位置で前記第2のフォーカスコイルの外側に隣接して配置されY軸方向に着磁した第3の磁石と、前記第1の磁石と同じ列位置で、かつ前記第3の磁石に対向する位置で前記第2のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第4の磁石とにより構成した磁場形成部と、 前記ベースの他方に取付けられ、前記レンズホルダを前記第1乃至第4の磁石で形成される磁場内に可動的に支持するための支持部材と、を備え、 前記第1および第2のフォーカスコイルにZ軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをZ軸の光軸方向に移動し、前記第1および第2のトラッキングコイルにY軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをX軸の径方向に移動することを特徴とする光ピックアップ装置。」 3.引用例 これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開2003-168230号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 (1)「【請求項31】対物レンズと、 前記対物レンズを保持する対物レンズ保持筒とフォーカスコイルとトラッキングコイルとを有し複数の導電性を有する弾性部材によって変位可能に支持された可動部と、 前記フォーカスコイルを駆動するためのフォーカスマグネットと磁気ヨークとを有する第1磁気回路と、 前記トラッキングコイルを駆動させるためのトラッキングマグネットと前記磁気ヨークとを有する第2磁気回路と、 前記弾性部材とを有する光ピックアップアクチュエータであって、 前記第1磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記フォーカスコイルと一対の前記フォーカスマグネットとを有し、前記第2磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記トラッキングコイルと一対の前記トラッキングマグネットとを有し、 前記第1磁気回路と前記第2磁気回路とは対物レンズの回りに互いに交差するように配置したことを特徴とする光ピックアップアクチュエータ。」 (2)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、DVD等の高密度光ディスク、コンパクトディスク等の低密度光ディスクから情報を再生し、あるいはこれらの光ディスクに情報を記録する光ディスク装置であって、光ディスク装置に使用される光ピックアップに搭載される光ピックアップアクチュエータ(以下アクチュエータと記載)に関するものである。また、本発明の光ピックアップアクチュエータを用いた光ディスク装置に関するものである。」 (3)「【0039】図6(A)、および(C)において、フォーカスコイル33、34はそれぞれ略リング状に巻線されており、トラッキングコイル35と、36も同様にそれぞれ略リング状に巻線されている。これらフォーカスコイル33、34、トラッキングコイル35、36も対物レンズ保持筒32に接着剤等で固定されている。バネ基板37、38は、それぞれ導電性を有するサスペンションワイヤ39(本実施の形態の弾性部材)から電力を供給され、また対物レンズ保持筒32と接合するための中継基板として用いられる。 【0040】サスペンションワイヤ39の一端は、バネ基板37とバネ基板38に半田等で接合され、フォーカスコイル33、34、およびトラッキングコイル35、36もバネ基板37、38に半田付け等でサスペンションワイヤ39に固定される。サスペンションホルダ40にはサスペンションワイヤ39の他の一端を半田等で固定するため、フレキシブル基板が接着固定されている。」 (4)「【0043】フォーカスマグネット41、42はフォーカスコイル33、34に対向して配置される。また、トラッキングマグネット43、44は、トラッキングコイル35、36に対向して配置されている。即ち、図4、図6(A)?(C)において、フォーカスコイル33、34の巻線を巻回して形成された巻回面はフォーカス方向とトラッキング方向とに略平行で、巻線の巻回軸(巻回面の垂直線)はフォーカス方向に対して略垂直でタンジェンシャル方向と略平行をなして配置する。さらに、フォーカスコイル33とフォーカスマグネット41とで構成される第1フォーカス磁気回路と、フォーカスコイル34とフォーカスマグネット42とで構成される第2フォーカス磁気回路とは、対物レンズ24の中心について点対称に配置されている。 【0044】さらにまた、トラッキングコイル35、36もまた、巻線を巻回して形成された巻回面はフォーカス方向とトラッキング方向とに略平行で、巻線の巻回軸(巻回面の垂直線)はフォーカス方向に対して略垂直でタンジェンシャル方向と略平行をなして配置する。さらにトラッキングコイル35とトラッキングマグネット43とで構成される第1トラッキング磁気回路と、トラッキングコイル36とトラッキングマグネット44とで構成される第2トラッキング磁気回路とは、対物レンズ24の中心について点対称に配置されている。 【0045】以上のように、第1フォーカス磁気回路と第2フォーカス磁気回路とを対物レンズ24の中心について点対称に配置し、また併せて、第1トラッキング磁気回路と第2トラッキング磁気回路とを対物レンズ24の中心について点対称に配置したので、電磁力による駆動力の中心を対物レンズ24の中心に一致させることができる。従って、正確なフォーカス制御とトラッキング制御とを実現することができる。 【0046】図9は、本発明のアクチュエータ装置部のフォーカスおよびトラッキングの駆動方向を示す図であって、図9(A)と図9(B)はそれぞれ異なる角度から見た斜視図である。また、図10は、本発明のアクチュエータ装置部のチルトの駆動方向を示すであって、図10(A)と図10(B)はそれぞれ異なる角度から見た斜視図である。本実施の形態においては、図9(A)、図9(B)に示す様に、フォーカスマグネット41、42はフォーカス方向に分割着磁され、トラッキングマグネット43、44はトラッキング方向に分割着磁されている。 【0047】さらに、図9(A)、(B)にN、Sの極性で示す様に、フォーカスコイル33、34の一方の側の線束に対向するフォーカスマグネット41、42の磁極が、フォーカスコイル33、34の他の側の線束に対向するフォーカスマグネット41、42の磁極と反対の磁極となる様に配置されている。同様に、トラッキングコイル35、36の一方の側の線束に対向するトラッキングマグネット43、44の磁極が、トラッキングコイル35、36の他の側の線束に対向するトラッキングマグネット43、44の磁極と反対の磁極となる様に配置されている。 【0048】このとき、フォーカスマグネット41、42と磁気ヨーク45はフォーカス磁気回路(本発明の第1磁気回路)を構成し、トラッキングマグネット43、44と磁気ヨーク45はトラッキング磁気回路(本発明の第2磁気回路)を構成する。フォーカス磁気回路の中にはフォーカスコイル33、34、トラッキング磁気回路の中にはトラッキングコイル35、36が1対ずつ配設された構成が実現できる。また、図4に示すように、第1磁気回路と第2磁気回路とは対物レンズ24の回りに互いに交差するように配置されている。こうして、従来対物レンズの四隅のコーナーにそれぞれ4個のコイルを配置した構造に比べて、同等の機能を半数のコイルで実現することができ、小型化軽量化を実現することができる。」 (5)「【0053】サスペンションワイヤ39は小型化とサスペンションワイヤ39の座屈方向の共振を低減(可撓性とリニアリティを向上する)させるために逆ハの字(アクチュエータ装置12側を幅広く、サスペンションホルダ40側を幅狭く)になってテンションが加えられている。磁気ヨーク45は、磁気的な観点からはフォーカスマグネット41、42及びトラッキングマグネット43、44のヨークの役目を果たす。構造的な観点からは、磁気ヨーク45はサスペンションホルダ40を保持して固定する機能を担っており、接着剤等でサスペンションホルダ40に固定されている。」 (6)「【0062】図9(A)および図9(B)において、フォーカスコイル33とフォーカスコイル34にいずれも正方向(または負方向)に電流を流すと、フォーカスコイル33、34とフォーカスマグネット41、42の配置関係と、2分割した磁極の極性の関係からフォーカス方向に可動にできるフォーカス磁気回路が形成され、電流を流す方向及び量に応じてフォーカス方向の制御が可能になる。 【0063】次に、トラッキングコイル35、36に正方向(または負方向)に電流を流すと、トラッキングコイル35、36とトラッキングマグネット43、44の配置関係と、2分割した磁極の極性の関係からトラッキング方向に可動にできるトラッキング磁気回路が形成され、トラッキング方向の制御が可能になる。」 (7)磁気ヨーク45はタンジェンシャル方向に延在し、レンズ保持筒32は磁気ヨーク45のタンジェンシャル方向における一方の側に配置され、サスペンションホルダ40は磁気ヨーク45のタンジェンシャル方向における他方の側に配置されている。(図4、図5) 上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「対物レンズと、 タンジェンシャル方向に延在する磁気ヨークと、 前記対物レンズを保持し、タンジェンシャル方向と略平行な巻線軸回りに巻回された一対のフォーカスコイル、およびタンジェンシャル方向と略平行な巻線軸回りに巻回された一対のトラッキングコイルが固定されるとともに、複数のサスペンションワイヤによって変位可能に支持された対物レンズ保持筒と、 フォーカス方向に分割着磁された一対のフォーカスマグネット、およびトラッキング方向に分割着磁された一対のトラッキングマグネットと、 前記フォーカスマグネットと前記磁気ヨークとを有する第1磁気回路と、前記トラッキングマグネットと前記磁気ヨークとを有する第2磁気回路と、前記第1磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記フォーカスコイルと一対の前記フォーカスマグネットとを有し、前記第2磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記トラッキングコイルと一対の前記トラッキングマグネットとを有し、前記第1磁気回路と前記第2磁気回路とは対物レンズの回りに互いに交差するように配置され、 前記磁気ヨークに保持固定され、前記複数のサスペンションワイヤの一端が固定されたサスペンションホルダと、を備え、 前記対物レンズ保持筒は前記磁気ヨークのタンジェンシャル方向における一方の側に配置され、前記サスペンションホルダは前記磁気ヨークのタンジェンシャル方向における他方の側に配置され、 前記一対のフォーカスコイルに流す電流の方向及び量に応じてフォーカス方向の制御が可能になり、前記一対のトラッキングコイルに流す電流の方向及び量に応じてトラッキング方向の制御が可能になる光ピックアップアクチュエータを搭載した光ピックアップ。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「対物レンズ」は、本願発明における、光ディスクの情報記録面に光ビームを集光させる「対物レンズ」に相当する。 また、引用発明における「フォーカス方向」、「トラッキング方向」、「タンジェンシャル方向」は、それぞれ本願発明における、レンズ光軸方向である「Z軸方向」、光ディスクの径方向である「X軸方向」、Z軸,X軸と直交する「Y軸方向」に相当する。 (2)引用発明における「タンジェンシャル方向に延在する磁気ヨーク」は、本願発明における「Y軸方向に延在するベース」に相当する。 (3)引用発明における「一対のフォーカスコイル」、「一対のトラッキングコイル」、「対物レンズ保持筒」は、それぞれ本願発明における「第1,第2のフォーカスコイル」、「第1,第2のトラッキングコイル」、「レンズホルダ」に相当し、 引用発明における「前記対物レンズを保持し、タンジェンシャル方向と略平行な巻線軸回りに巻回された一対のフォーカスコイル、およびタンジェンシャル方向と略平行な巻線軸回りに巻回された一対のトラッキングコイルが固定されるとともに、複数のサスペンションワイヤによって変位可能に支持された対物レンズ保持筒」、「前記第1磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記フォーカスコイルと一対の前記フォーカスマグネットとを有し、前記第2磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記トラッキングコイルと一対の前記トラッキングマグネットとを有し、前記第1磁気回路と前記第2磁気回路とは対物レンズの回りに互いに交差するように配置され」によれば、「一対のフォーカスコイル」は対物レンズを中心にして一方の対角線に配置され、「一対のトラッキングコイル」は対物レンズを中心として他方の対角線に配置されるものであり、また、引用発明は「前記対物レンズ保持筒は前記磁気ヨークのタンジェンシャル方向における一方の側に配置され」るものであるから、結局、引用発明と本願発明とは「前記ベースの一方に取付けられ、前記対物レンズが中心部に設けられ、この対物レンズを中心にして一方の対角線に配置され[所定の]軸周りに巻かれた第1,第2のフォーカスコイル、および前記対物レンズを中心にして他方の対角線に配置されY軸周りに巻かれた第1,第2のトラッキングコイルが設けられたレンズホルダ」を備える点で共通する。 (4)引用発明における「一対のフォーカスマグネット」は、本願発明における「第1の磁石」と「第3の磁石」に相当し、引用発明における「一対のトラッキングマグネット」は、本願発明における「第2の磁石」と「第4の磁石」に相当し、 引用発明における「フォーカス方向に分割着磁された一対のフォーカスマグネット、およびトラッキング方向に分割着磁された一対のトラッキングマグネットと、前記フォーカスマグネットと前記磁気ヨークとを有する第1磁気回路と、前記トラッキングマグネットと前記磁気ヨークとを有する第2磁気回路と、前記第1磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記フォーカスコイルと一対の前記フォーカスマグネットとを有し、前記第2磁気回路には前記対物レンズの中心に対し点対称に配置した一対の前記トラッキングコイルと一対の前記トラッキングマグネットとを有し、前記第1磁気回路と前記第2磁気回路とは対物レンズの回りに互いに交差するように配置され」によれば、結局、引用発明と本願発明とは「前記第1のフォーカスコイルの外側に隣接して配置され[前記所定の軸、X軸と直交する]軸方向に着磁した第1の磁石と、前記第1の磁石に対向する位置で前記第1のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第2の磁石と、前記第2の磁石と同じ列位置で前記第2のフォーカスコイルの外側に隣接して配置され[前記所定の軸、X軸と直交する]軸方向に着磁した第3の磁石と、前記第1の磁石と同じ列位置で、かつ前記第3の磁石に対向する位置で前記第2のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第4の磁石とにより構成した磁場形成部」を備える点で共通するといえる。 (5)引用発明における「複数のサスペンションワイヤによって変位可能に支持された対物レンズ保持筒」、「前記磁気ヨークに保持固定され、前記複数のサスペンションワイヤの一端が固定されたサスペンションホルダ」等によれば、結局、引用発明における「サスペンションホルダ」は、複数のサスペンションワイヤを介して対物レンズ保持筒を一対のフォーカスマグネットおよび一対のトラッキングマグネットで形成される磁場内に変位可能に支持してなるものであり、さらに「前記磁気ヨークのタンジェンシャル方向における他方の側に配置され」るものであるから、本願発明における「前記ベースの他方に取付けられ、前記レンズホルダを前記第1乃至第4の磁石で形成される磁場内に可動的に支持するための支持部材」に相当する。 (6)引用発明における「前記一対のフォーカスコイルに流す電流の方向及び量に応じてフォーカス方向の制御が可能になり、前記一対のトラッキングコイルに流す電流の方向及び量に応じてトラッキング方向の制御が可能になる」によれば、引用発明と本願発明とは「前記第1および第2のフォーカスコイルに[前記所定の]軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをZ軸の光軸方向に移動し、前記第1および第2のトラッキングコイルにY軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをX軸の径方向に移動する」ものである点で共通する。 (7)また、以上のことから、引用発明における「磁気ヨーク」、「対物レンズ保持筒」、「第1磁気回路と第2磁気回路」及び「サスペンションホルダ」等は、本願発明でいう、対物レンズを少なくともレンズ光軸方向であるZ軸方向、及び光ディスクの径方向であるX軸方向に駆動する「駆動装置」を構成するものに相当する。 (8)そして、引用発明における「光ピックアップアクチュエータを搭載した光ピックアップ」は、本願発明における「光ピックアップ装置」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「光ディスクの情報記録面に光ビームを集光させる対物レンズと、この対物レンズを少なくともレンズ光軸方向であるZ軸方向、及び前記光ディスクの径方向であるX軸方向に駆動する駆動装置とを含み、前記駆動装置が、 前記Z軸、X軸と直交するY軸方向に延在するベースと、 前記ベースの一方に取付けられ、前記対物レンズが中心部に設けられ、この対物レンズを中心にして一方の対角線に配置され[所定の]軸周りに巻かれた第1,第2のフォーカスコイル、および前記対物レンズを中心にして他方の対角線に配置されY軸周りに巻かれた第1,第2のトラッキングコイルが設けられたレンズホルダと、 前記第1のフォーカスコイルの外側に隣接して配置され[前記所定の軸、X軸と直交する]軸方向に着磁した第1の磁石と、前記第1の磁石に対向する位置で前記第1のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第2の磁石と、前記第2の磁石と同じ列位置で前記第2のフォーカスコイルの外側に隣接して配置され[前記所定の軸、X軸と直交する]軸方向に着磁した第3の磁石と、前記第1の磁石と同じ列位置で、かつ前記第3の磁石に対向する位置で前記第2のトラッキングコイルの外側に隣接して配置されX軸方向に着磁した第4の磁石とにより構成した磁場形成部と、 前記ベースの他方に取付けられ、前記レンズホルダを前記第1乃至第4の磁石で形成される磁場内に可動的に支持するための支持部材と、を備え、 前記第1および第2のフォーカスコイルに[前記所定の]軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをZ軸の光軸方向に移動し、前記第1および第2のトラッキングコイルにY軸回りの電流を流すことにより前記レンズホルダと共に前記対物レンズをX軸の径方向に移動することを特徴とする光ピックアップ装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 第1および第2のフォーカスコイルの巻線軸である[所定の]軸と、これらフォーカスコイルに隣接してそれぞれ配置された第1及び第3の磁石の着磁方向である[前記所定の軸、X軸と直交する]軸方向とが、本願発明では、巻線軸がZ軸であり、着磁方向がY軸方向であるのに対し、引用発明では、巻線軸がタンジェンシャル方向と略平行(すなわち、Y軸)であり、着磁方向がフォーカス方向(すなわち、Z軸方向)である点。 5.判断 上記相違点について検討する。 そもそも、引用発明においても、トラッキングコイル全体がマグネットからの磁束内にあるように配置されており、マグネットから磁束を有効に利用でき、小型、薄型化が可能である点で本願発明と特段相違がない。一方、フォーカスコイルとこれに隣接して配置される磁石との組み合わせに関して、フォーカスコイルの巻線軸をZ軸とし、磁石の着磁方向をY軸方向としたものは、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平11-167736号公報(例えば、フォーカシングコイル5と第1の永久磁石15または16の組み合わせ)、実願平4-90919号(実開平6-52014号)のCD-ROM(縦方向駆動コイル3の一つと隣接する磁石5の一つの組み合わせ)、さらには特開2004-362759号公報(図1,図2に示される例えば第2コイル12aとマグネット22aの組み合わせ)に見られるように周知のものであり、引用発明においても、フォーカスコイルとこれに隣接して配置される磁石との組み合わせについて、かかる周知のものを採用することは、これにより対物レンズを中心とする点対称の配置等に影響を及ぼすものでもなく、当業者であれば容易に想到し得ることである。 なお、当審がした拒絶理由通知に対する応答時に提出した意見書において、請求人は、引用例では「・・同様に、トラッキングマグネット43,44についても、N極とS極を貼り合わせた磁石を2つ用意して、対物レンズ側にN極をヨーク45a側に向けたNS磁石を取り付け、また外側にS極をヨーク45a側に向けたSN磁石を取り付ける構造としております。・・」と述べ、特に引用発明におけるトラッキングマグネット43,44の着磁方向と、本願発明における第2及び第4の磁石の着磁方向とは全く異なっている旨主張している。確かに引用例の図9をみると各マグネットは、その厚み方向にも分極着磁されているものの、トラッキングコイル側からみてトラッキング方向(X軸方向)に分極着磁されている〔特に、引用例の段落【0046】9?11行(前記「3.(4)」参照)には、「トラッキングマグネット43、44はトラッキング方向に分割着磁されている。」と明記されている〕点において本願発明の第2及び第4の磁石と特段、相違するものでもなく、また本願請求項1の記載からしても、「第2及び第4の磁石」が、引用発明におけるマグネットのように厚み方向にも分極着磁されたものを排斥していると認める根拠もないから、両者の着磁方向は全く異なっているという請求人の上記主張は採用できない。(因みに、例えば上記の特開2004-362759号公報(図1、図2に示されるマグネット21a,21bを参照)には、トラッキング方向にのみ分極着磁され、厚み方向には分極着磁されていない例も示されている。) そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-28 |
結審通知日 | 2011-03-01 |
審決日 | 2011-03-15 |
出願番号 | 特願2006-20830(P2006-20830) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山澤 宏 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 井上 信一 |
発明の名称 | 光ピックアップ装置 |
代理人 | 特許業務法人 天城国際特許事務所 |