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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P
管理番号 1235927
審判番号 不服2009-3760  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-19 
確定日 2011-04-28 
事件の表示 特願2006-140239「高周波送受信モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-287962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年2月20日に出願した特願2003-42156号の一部を平成18年5月19日に新たな特許出願としたものであって,平成21年1月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年2月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年3月18日付で手続補正がなされたものである。

第2 補正について[補正却下の決定の結論]
平成21年3月18日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,平成20年 7月25日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1である
「導波管端子および信号端子を一方面に配し,ミリ波帯にて動作する半導体素子を収納し,当該半導体素子と当該導波管端子の間を,マイクロストリップ線路-導波管変換器にて接続した,1つまたは2つ以上のパッケージと,
導波管端子および信号端子を上記パッケージの一方面に対応して基板の一方面に配し,当該導波管端子および信号端子を介して上記パッケージの導波管端子および信号端子との間でミリ波帯の高周波信号およびバイアス電圧を授受する樹脂基板と,
を具備し,
上記パッケージの一方面と上記樹脂基板の一方面に夫々設けた信号端子間は,複数の球状の半田を溶融して接続されるとともに,上記パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子は,上記パッケージの導波管端子および上記樹脂基板の導波管端子の周囲を取り囲むように配列された複数の球状の半田にて接続され,
上記樹脂基板の一方面と反対側の裏面には,上記樹脂基板の導波管端子を通じて上記パッケージの導波管端子に接続されるアンテナ素子が設けられたことを特徴とする高周波送受信モジュール。」(以下,この請求項1に記載された発明を「本願発明」という。)は,
「導波管端子および信号端子を一方面に配し,ミリ波帯にて動作する半導体素子を収納し,当該半導体素子と当該導波管端子の間を,マイクロストリップ線路-導波管変換器にて接続した,1つまたは2つ以上のパッケージと,
導波管端子および信号端子を上記パッケージの一方面に対応して基板の一方面に配し,当該導波管端子および信号端子を介して上記パッケージの導波管端子および信号端子との間でミリ波帯の高周波信号およびバイアス電圧を授受するともに,当該基板の一方面に当該信号端子に接続される周辺回路を配した樹脂基板と,
を具備し,
上記パッケージの一方面と上記樹脂基板の一方面に夫々設けた信号端子間は,複数の球状の半田を溶融して接続されるとともに,上記パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子は,上記パッケージの導波管端子および上記樹脂基板の導波管端子の周囲を取り囲むように配列された導波管接続部を構成する複数の球状の半田にて接続され,
上記樹脂基板の一方面と反対側の当該樹脂基板の裏面には,導波管端子に接続されたアンテナ素子が配され, 上記アンテナ素子は,上記樹脂基板の裏面のアンテナ素子に接続された導波管端子と,上記樹脂基板の一方面の導波管端子および上記導波管接続部を通じて,上記パッケージの導波管端子に接続されることを特徴とする高周波送受信モジュール。」(以下,この請求項1に記載された発明を「補正発明」という。)と補正された。
なお,補正発明中の下線部は,補正された箇所である。

本件補正は,
「(樹脂)基板の一方面に当該信号端子に接続される周辺回路を配した」との構成を「樹脂基板」に付加することにより具体的に限定し,
「パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子」を接続する「複数の球状の半田」が「導波管接続部を構成する」ことを明記することで,「複数の球状の半田」の技術的意義を明確するとともに具体的に限定し,
さらに,「アンテナ素子」は「導波管端子に接続され」ており,しかも,
「樹脂基板の裏面のアンテナ素子に接続された導波管端子と,
上記樹脂基板の一方面の導波管端子および上記導波管接続部を通じて,上記パッケージの導波管端子に接続される」と,アンテナ素子の接続構造を具体的に限定しているから,
これらは,構成の付加による限定ということができる。そして,これらの付加事項は,本願の当初明細書等に明らかに開示されている。
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満足し,しかも,本件補正により,発明がより限定されたということもできるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そこで,補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-164465号公報(以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア.「【発明の属する技術分野】 本発明は,マイクロ波やミリ波の領域で,ガラスエポキシ等の安価な配線ボードを使用できるようにするための配線基板,配線ボード,それらの実装構造ならびにマルチチップモジュールに関する。
【0002】
【従来技術】近年,高度情報化時代を迎え,情報伝達に用いられる電波は1?30GHzのマイクロ波領域から,更に30?300GHzのミリ波領域の周波数まで活用することが検討されており,例えば,車間レーダーのようなミリ波の電波を用いた応用システムも提案されるようになっている。」(第2頁第2欄)
イ.「【0017】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一例を説明する図1乃至図5をもとに詳述する。図1は,本発明の配線基板の一例を説明するもので(a)は配線基板の断面図,(b)は高周波部品搭載側の平面図,(c)は,実装面側の底面図である。
【0018】この図1によれば,配線基板Aは,誘電体層1a,1b,1c,の積層構造からなる誘電体基板1を有し,この誘電体基板1の表面に,蓋体2を接合することによって気密に封止されたキャビティ3を形成する。また,誘電体基板1の表面には,高周波部品を搭載する搭載部が形成されており,高周波部品4が搭載されている。また誘電体基板1表面には,マイクロストリップ線路のストリップ導体5が形成され,誘電体基板1における誘電体層1c表面にはマイクロストリップ線路のグランド層6が形成されており,ストリップ導体5とグランド層6によってマイクロストリップ線路を構成している。
【0019】さらに,誘電体基板1の表面には,搭載される高周波部品4に電力や制御系信号を供給するための電源用あるいは制御用線路7が被着形成されている。
【0020】一方,誘電体基板1の裏面には,導波管構造体の断面と同一形状の開口8の周囲に導波管用パッド9が形成されている。図1の配線基板Aにおいては,入力用と出力用の2つの導波管用パッド9が形成されている。また,誘電体基板1の裏面には,表面側に形成された電源用あるいは制御用線路7とビア導体10によって接続された電源用パッド11が被着形成されている。
【0021】また,本発明の配線基板Aによれば,導波管と誘電体基板1の表面に形成されたマイクロストリップ線路とを結合するための変換部12を具備する。この変換部12によれば,図1(c)に示すように,グランド層6において,平面的にみて導波管用パッド9内の開口8の中央部に位置する部分にスロット孔13が形成されており,またマイクロストリップ線路を構成するストリップ導体5の開放端5aはこのスロット孔13と所定の位置に対峙するように形成されている。
【0022】また,誘電体基板1における誘電体層1cには,グランド層6と導波管用パッド9とを接続するように垂直導体14が形成され,この垂直導体14によって囲まれた領域に,導波管とのインピーダンスの整合を図るための整合部15が形成されている。かかる変換部12によってマイクロストリップ線路と導波管とはスロット孔13を介して電磁的に結合することができる。
【0023】上記スロット孔13とストリップ導体5との電磁結合させるための位置関係は,従来から知られている変換構造と同じであって,例えば,F17244やWO96/27913号記載に記載される通りである。つまり,平面的にみてストリップ導体5の開放端5aが,スロット孔13の中心から信号波長の1/4長さ突き出る位置に形成される。またスロット孔13は長方形,楕円形などの細長い孔であり,形状は使用周波数と周波数の帯域幅によって調整される。スロット孔13の長径は信号波長の1/2長さに,また短径は1/5から1/50長さに設定される。
【0024】本発明によれば,上記の構造からなる配線基板は,導波管と接続可能な導波管用パッド9を具備することから,あらゆる導波管構造体とキャビティ3内におけるマイクロストリップ線路と結合することが可能である。さらに,この配線基板は,電源用パッド11を有することから,この配線基板を後述するような導波管構造体を具備する配線ボードに対して表面実装することができる。
【0025】次に,配線ボードについて図2の(a)平面図,(b)(a)のY-Y断面図に基づき説明する。この配線ボードBは,誘電体ボード21を有し,この誘電体ボード21には,表面から裏面に貫通して形成され断面が導波管の断面開口形状からなりその内壁に導体が被覆されてなる導波管構造体22が形成されている。そして,誘電体ボード21の表面および裏面の導波管構造体22の周囲には,導波管用パッド23,24がそれぞれ形成されている。また,誘電体ボード21の表面には,電源用パッド25が形成されており,電源用パッド25は,配線ボードB上に搭載される抵抗素子,コンデンサ素子などの低周波部品等とともに構成された電源回路や制御回路に接続され,最終的に接続パッド26を経由して外部回路と接続される。また,この配線ボードBには,導波管や導波管ポートを有する平面アンテナ等の外部回路を接続する場合において,外部回路とネジ止めするためのネジ孔27を形成していてもよい。
【0026】次に,上記図1の配線基板Aを上記図2の配線ボードBに実装した時の概略断面図を図3に示した。図3に示すように,配線基板A側の導波管用パッド9と配線ボードB側の導波管用パッド23と,また配線基板A側の電源用パッド11と配線ボードB側の電源用パッド25とをそれぞれロウ材30によって電気的に接続される。
【0027】かかる実装構造によれば,配線基板Aと配線ボードBとを導波管モードによって接続することが可能となる。これによって,配線ボードBにおける誘電体ボード21をガラスエポキシ絶縁材料のように有機樹脂を成分として含有する絶縁材料によて誘電体ボード21を形成した場合において,従来のマイクロストリップ線路やコプレーナ線路などによる接続に比較して,誘電体ボード21の誘電特性に係わらず,導波管モードによって信号の伝達が可能となる。」(第4頁第5欄?第5頁第7欄)。
ウ.「0032】なお,上記のモジュール構造においては,導波管構造体22a,22dの端部には,さらに他の配線基板や導波管C等を経由して他の高周波部品やアンテナなどに接続される。」(第5頁第7欄)
エ.「【0043】評価用サンプルに測定用導波管を接続し,76GHzにおける挿入損失を測定して配線基板内のマイクロストリップ線路から配線ボードの導波管開口までの接続損失を見積った。その結果,76GHzにおける接続損失は約0.4dBであり実用的なモジュールを作製する上で充分に小さい損失であることが確認された。」(第6頁第9欄)

上記摘記事項イ及び関連する図1の「スロット孔13」下部の「垂直導体14」で構成された部分は,実質的に導波管端子を構成しており,
上記摘記事項イの「高周波部品4に電力や制御系信号を供給するための電源用あるいは制御用線路7」(【0019】)「誘電体基板1の裏面には,表面側に形成された電源用あるいは制御用線路7とビア導体10によって接続された電源用パッド11が被着形成されている。」(【0020】)との記載によれば,配線基板Aの一方の面には,制御用線路に接続された電源用パッドがあり,これは制御系信号の信号端子ということができ,
上記摘記事項イ及び関連する図1によれば,「蓋体2」を備える「配線基板A」は全体してパッケージであり,
上記摘記事項ア,エによれば,高周波部品はミリ波帯にて動作するものであり,
上記摘記事項イ及び関連する図1によれば,「ストリップ導体5」及び「スロット孔13」で構成された部分は,機能的にはマイクロストリップ線路-導波管変換器ということができ,
上記摘記事項イ及び関連する図2,3によれば,「導波管構造体22」の上部は導波管端子を構成しており,
上記摘記事項イ及び関連する図2,3によれば,「配線基板」の「電源用パッド11」と同様の意味で,「電源用パッド25」は信号端子であり,また,「配線基板」の「電源用パッド11」の一部には当然バイアス電圧が「配線ボード」の「電源用パッド25」によって与えられており,
上記摘記事項イの「配線ボードB上に搭載される抵抗素子,コンデンサ素子などの低周波部品等」(【0025】)との記載によれば,「配線ボード」には周辺回路が配されており,当然にこれらは信号端子に接続されており,
上記摘記事項イの「ガラスエポキシ絶縁材料のように有機樹脂を成分として含有する絶縁材料によて誘電体ボード21を形成した場合」(段落【0027】)との記載によれば,「配線ボード」の主たる部分である「誘電体ボード」が樹脂を成分としている態様を含んでいるから,結果として「配線ボード」は樹脂を成分としている。
したがって,摘記事項イ及び第3図に示された構造体についてまとめると,引用文献には,以下の発明が開示されている。
「導波管端子および信号端子を一方面に配し,ミリ波帯にて動作する高周波部品を収納し,当該高周波部品と当該導波管端子の間を,マイクロストリップ線路-導波管変換器にて接続した,パッケージと,
導波管端子および信号端子を上記パッケージの一方面に対応して誘電体ボードの一方面に配し,当該導波管端子および信号端子を介して上記パッケージの導波管端子および信号端子との間でミリ波帯の高周波信号およびバイアス電圧を授受するともに,当該誘電体ボードに当該信号端子に接続される周辺回路を配した樹脂を成分とする配線ボードと,
を具備し,
上記パッケージの一方面と上記配線ボードの一方面に夫々設けた信号端子間は,ロウ材を溶融して接続されるとともに,上記パッケージの導波管端子と上記配線ボードの導波管端子は,ロウ材にて接続された,
配線基板と配線ボードからなる構造体。」(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

(3)対比
そこで,補正発明と引用発明とを比較する。
・補正発明の「半導体素子」は,ミリ波帯にて動作するから,高周波部品の一種である。
・引用発明の「誘電体ボード」は基板の一種である。
・引用発明の「配線ボード」は「樹脂を成分」としているから,「配線ボード」は樹脂基板ということができる。
・補正発明の「球状の半田」は,ロウ材の一種である。
・引用発明の「配線基板と配線ボードからなる構造体」は,高周波送受信を実行するものであり,しかも全体としてみればモジュールということができるから,高周波送受信モジュールということができる。

したがって,両者は,
「導波管端子および信号端子を一方面に配し,ミリ波帯にて動作する高周波部品を収納し,当該高周波部品と当該導波管端子の間を,マイクロストリップ線路-導波管変換器にて接続した,1つまたは2つ以上のパッケージと,
導波管端子および信号端子を上記パッケージの一方面に対応して基板の一方面に配し,当該導波管端子および信号端子を介して上記パッケージの導波管端子および信号端子との間でミリ波帯の高周波信号およびバイアス電圧を授受するともに,当該基板に当該信号端子に接続される周辺回路を配した樹脂基板と,
を具備し,
上記パッケージの一方面と上記樹脂基板の一方面に夫々設けた信号端子間は,ロウ材を溶融して接続されるとともに,上記パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子は,ロウ材を利用して接続された高周波送受信モジュール。」の点で一致し,以下の点で相違する。
(相違点1)
高周波部品に関して,補正発明は「半導体素子」と限定されているのに対して,引用発明の「高周波部品」に半導体素子が含まれるのかは不明である。,

(相違点2)
周辺回路が,補正発明では基板の一方面に配しているのに対して,引用発明はどの面に配しているのか不明である。

(相違点3)
パッケージの一方面と上記樹脂基板の一方面に夫々設けた信号端子間の接続に関して,補正発明では「複数の球状の半田」の溶融によるとされているのに対して,引用発明は「ロウ材」によるものである。

(相違点4)
パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子の接続に関して,補正発明は「パッケージの導波管端子および上記樹脂基板の導波管端子の周囲を取り囲むように配列された導波管接続部を構成する複数の球状の半田にて接続され」ているのに対して,引用発明は「ロウ材にて接続され」ている。

(相違点5)
補正発明には,「樹脂基板の一方面と反対側の当該樹脂基板の裏面には,導波管端子に接続されたアンテナ素子が配され,
上記アンテナ素子は,上記樹脂基板の裏面のアンテナ素子に接続された導波管端子と,
上記樹脂基板の一方面の導波管端子および上記導波管接続部を通じて,パッケージの導波管端子に接続される」との構成が備えられているが,引用発明の前記構成はない。

(4)判断
そこで,上記相違点について検討する。
(相違点1)について
摘記事項ア等から明らかなように,引用発明は,マイクロ波領域,ミリ波領域における信号伝送やレーダーに用いるマルチチップモジュールに関するものであるが,そこで使用されるチップ(素子)として半導体素子が用いられることは,最も普通のことであって,引用発明の「高周波部品」として半導体素子が含まれていることは,ほとんど自明ということができる。また,当業者であれば,引用文献中の「高周波部品」との記載から,半導体素子を想起することは,当然のことにすぎない。
してみると,引用発明の「高周波部品」を半導体素子と限定する程度のことに,格別な創意工夫を見出すことはできない。

(相違点2)について
配線ボード(樹脂基板)の上下のどちらに周辺回路を配するかは,使用される配線ボードの構造や取り付けられる部品の大きさ,数量,部品同士の電気関係等を考慮して設計的に定められる単なる配置の選択にすぎない。したがって,引用発明において,周辺回路を基板の一方面に単に配する程度のことは,単なる設計的事項にすぎない。

(相違点3)(相違点4)について
パッケージと配線ボード(樹脂基板)の夫々設けた信号端子間をロウ材を,溶融することで接続する典型的な技術として,「複数の球状の半田」を溶融して接続する手法は,原審の拒絶理由通知で引用された特開2001-267473号公報を例示するまでもなく,フリップチップボンディング,半田バンプボンディング等の名称で本件の原出願日の数十年間から広く知られている周知技術である。(相違点3)
そして,パッケージの導波管端子および樹脂基板の導波管端子の周囲を取り囲むように配列された導波管接続部を構成する複数の球状の半田にて接続する技術も,原審の拒絶理由通知で引用された特開2002-185203号公報(段落【0030】?【0032】,図5等),あるいは,特開平11-340701号公報等に示されているように,周知技術にすぎない。
してみると,複数の球状の半田を溶融して接続する点では軌を一にする,2つの周知技術を適用して,
「パッケージの一方面と樹脂基板の一方面に夫々設けた信号端子間は,複数の球状の半田を溶融して接続されるとともに,上記パッケージの導波管端子と上記樹脂基板の導波管端子は,上記パッケージの導波管端子および上記樹脂基板の導波管端子の周囲を取り囲むように配列された導波管接続部を構成する複数の球状の半田にて接続」する程度のことは,当業者であれば,容易になし得るものである。

(相違点5)について
例えば,原審の拒絶理由通知で引用された特開平5-183328号公報(段落【0018】?【0020】,図3等)にも示されているように,
基板の一方面と反対側の当該基板の裏面には,端子に接続されたアンテナ素子が配され,
上記アンテナ素子は,上記基板の裏面のアンテナ素子に接続された端子と,
上記基板の一方面の端子および接続部を通じて,パッケージに接続される構造
は周知といえるから,
引用発明の「パッケージ」の出力は導波管端子であることを考慮すれば,
引用発明に前記周知のアンテナ構造を適用して,
「樹脂基板の一方面と反対側の当該樹脂基板の裏面には,導波管端子に接続されたアンテナ素子が配され,
上記アンテナ素子は,上記樹脂基板の裏面のアンテナ素子に接続された導波管端子と,
上記樹脂基板の一方面の導波管端子および上記導波管接続部を通じて,パッケージの導波管端子に接続される」とする程度のことは,格別な創意工夫を要することなく,導出できる技術的事項である。

そして,補正発明に関する作用・効果も,引用発明,周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

してみると,補正発明は,引用発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)平成21年 3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成20年 7月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2 補正について」の項中の「(1)補正後の本願発明」の冒頭に記載した「本願発明」のとおりである。

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,及び,その記載事項は,上記「第2 補正について」の項中の「(2)引用発明」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,前記「第2 補正について」の項の「(1)補正後の本願発明」で検討したように,上記補正発明から当該補正に係る構成の限定を省いたものであるから,本願発明の構成要件にさらに限定要件である上記構成を付加したものに相当する補正発明が,上記「第2 補正について」の項中の「(4)判断」に記載したとおり,引用発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明,周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-22 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願2006-140239(P2006-140239)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01P)
P 1 8・ 121- Z (H01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 儀同 孝信  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 新川 圭二
高野 洋
発明の名称 高周波送受信モジュール  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高橋 省吾  

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