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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1235933 |
審判番号 | 不服2009-11121 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-06-15 |
確定日 | 2011-04-28 |
事件の表示 | 特願2008- 88480「デジタルカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月24日出願公開、特開2008-172848〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願の手続の経緯は概要次のとおりである。 特許出願(分割出願) :平成20年 3月28日 (原出願日 平成14年8月30日) 拒絶理由通知 :平成20年11月10日(起案日) 意見書 :平成21年 1月16日 手続補正(明細書の補正) :平成21年 1月16日 拒絶査定 :平成21年 4月20日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成21年 6月15日 手続補正(明細書の補正) :平成21年 6月15日 前置審査報告 :平成21年 8月19日 審尋 :平成22年10月 5日(起案日) 回答書 :平成22年11月 8日 第2 平成21年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成21年6月15日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正における補正事項 上記手続補正(以下「本件補正」という)では、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「撮影されるべき画面の所定部分における画像の単位時間あたりの変化量が所定値を越えたか否かを判断する判断手段」について、その判断が「前記操作部材の操作により定められた露出条件において、」「前記単位時間毎に繰り返し」行われるとの特定事項を付加する補正がなされている。 2.本件補正の適法性 そこで、本件補正につき、その上記補正が適法なものであるか否かについて検討する。 (1)補正できる範囲の制限規定(第17条の2第3項)に対する適法性 上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0019】,【0022】?【0025】の記載、および同じく願書に最初に添付した図面の図3の記載等に基づくものであることが認められ、したがって同明細書または図面に記載した範囲内においてする補正であると認められる。 (2)補正の目的の制限規定(第17条の2第4項)に対する適法性 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明の特定事項である上記判断手段での所要判断機能に限定を加えるものであって、かつ、補正の前後において請求項1に記載された発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題は同一であることが認められ、したがって当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 (3)独立特許要件(第17条の2第5項)に対する適法性 上記(2)で認定したとおり、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるので、以下、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正後発明」という。)が独立特許要件を満たすものであるか否かについて検討する。 ア.補正後発明 補正後発明は、本件補正による補正後の請求項1の下記の記載により特定されるものである。 「被写体に対する測光を行う測光手段と、 操作部材の操作により、前記測光手段による測光結果に基づいて露出を制御する露出制御手段と、 前記操作部材の操作により定められた露出条件において、前記操作部材の操作の後に、撮影されるべき画面の所定部分における画像の単位時間あたりの変化量が所定値を越えたか否かを前記単位時間ごとに繰り返し判断する判断手段と、 前記変化量が前記所定値を越えたと判断されると記録動作を行う記録動作制御手段とを備え、 前記露出制御手段が前記操作により定めた露出条件で、前記記録動作制御手段が撮影および記録動作を行うことを特徴とするデジタルカメラ。」 イ.刊行物の記載および同刊行物記載の発明 (ア)刊行物の記載 原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-320167号公報(以下「引用刊行物」ともいう。)には次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は,自動撮影カメラおよびカメラの自動撮影方法に関する。」 「【0007】この発明は,被写体の動き,特定の色,輝度の高さに応答して自動的に被写体の撮影を行うカメラおよびそのようなカメラを用いた自動撮影方法を提供するものである。」 「【0060】 【実施例】図1は第1,第2および第4の発明の実施例を示すもので,自動撮影カメラの電気的構成の一部を示すブロック図である。この実施例では自動撮影カメラはディジタル電子スチル・カメラである。」 「【0063】自動撮影動作においては,一定時間(たとえば20ms)ごとに被写体が撮影され,撮影された1駒分の被写体像を表わすアナログ映像信号が上記一定時間ごとにCCD11から転送されるようにCPU10によって制御される。画像メモリ13は1駒分の画像データを記憶するもので,このメモリ13に記憶される画像データは上記一定時間ごとに更新される。したがって画像メモリ13には常に最新の画像データが記憶されることになる。 【0064】CCD11からの1フィールド分の画像データの読出しには通常1/60secの時間がかかる。CCD11への露光時間があらかじめ定められており,この露光時間が経過した時点でCCD11の受光素子に蓄えられた信号電荷が転送路または蓄積部に高速で転送される。その後,CCD11の受光素子の電荷のクリア処理(逆転送,基板抜き等)が行われ,再びCCD11の受光素子への被写体像を表わす信号電荷の蓄積が開始される。転送路または蓄積部に転送された信号電荷はこの露光と併行して1/60secの期間で順次読出される。 【0065】CCD11への露光量の制御は好ましくは絞りによって行われ,上述のように露光時間は固定される。もっとも,露光時間を上記の信号電荷読出しのための時間を考慮した範囲内で制御してもよいし,必要ならばメカニカルなシャッタを用いて露光制御を行うこともできる。 【0066】画像メモリ13に記憶されている画像データのうち,被写体像の動きを検出すべき領域内に属する画像データが画像切出し部14によって読出される。切出すべき範囲はCPU10によって制御される。この範囲はカメラの使用者によって任意に設定できるようにしておくことが好ましい。」 「【0068】画像切出し部14によって取出された被写体の画像の一部分を表わす画像データは動き検出部15を経て,補助画像メモリ16に与えられて記憶される。 【0069】補助画像メモリ16は,切出される画像データの少なくとも2倍の記憶容量をもっている。したがってこのメモリ16には,画像メモリ13から取出された最新の画像データと,それよりも所定時間前に画像メモリ13から取出された画像データとが記憶される。所定時間前の画像データは前回の(すなわち,上記の撮像周期20ms前の)ものでもよいし,撮像周期の複数倍の時間前のものでもよい。」 「【0070】メモリ16に記憶されている最新の画像データと所定時間前の画像データとを用いて,この所定時間の間に被写体に動きがあったかどうかが動き検出部15によって調べられる。 【0071】動きがあったかどうかは,たとえば次式を満足するかどうかで決定される。 【0072】 【数1】 _(x2,y2) S {f(t-a,x,y)-f(t,x,y)}^(2)dxdy≧B ^(x1,y1) 【0073】但し,f(t,x,y)は時刻tにおける画素データ,f(t-a,x,y)は時刻t-aにおける(時間a前の)画素データ,Bはしきい値を定めるパラメータである。 【0074】上記の式は,被写体画像の所定範囲(x1?x2,y1?y2)内において,最新の画像データと所定時間a前の画像データとの差の2乗が各画素ごとに算出され,その結果を上記所定範囲にわたって積分(加算)した値が所定のしきい値B以上であるかどうかという条件を表現している。この式を満足する場合に動きがあったものと判定される。」 「【0076】動きがあったと判定されると撮影が行われる。 【0077】撮影方法には大別して2つある(第1の発明と第2の発明)。 【0078】第1の発明においては画像メモリ17に記憶されている最新の画像データがデータ圧縮部19に与えられ,圧縮された画像データが記録媒体(たとえばメモリ・カード,磁気ディスク,磁気カード等)に記録されることにより撮影が完了する。」 「【0079】第2の発明においては,動きが検出された時点でCCD11がクリアされ,その後,改めて露光が行われることにより被写体が撮影される。露光時間経過後にCCD11から読出される映像信号はA/D変換回路12でディジタル画像データに変換されて一旦画像メモリ13に与えられる。その後,第1の発明と同じようにデータ圧縮されて記録媒体20に記録される。」 「【0086】図4は第5および第6の発明,ならびに第11および第12の発明の実施例を示すものである。基本的構成および動作は図1に示すものと同じである。したがって,図1に示すものと同一ブロックには同一符号が付されている。 【0087】この実施例では被写体の特定の色に反応して撮影が自動的に行われる。 【0088】画像メモリ13に記憶される画像データはR,GおよびBの色データである。この色データのうちの特定の色,たとえば赤(R)の色データが画像内の所定の領域について,色データ抽出部34によって抽出され,メモリ16に記憶される。 【0089】メモリ16には最新の色データと所定時間前の色データとが記憶されている。色比較部35は,これらの色データを用いて上述した式(f(t,x,y),f(t-a,x,y)は色データを示す)にしたがって,特定の色について変化があったかどうかを判定する。 【0090】特定の色について変化があったと判定されると,撮影が行われる。撮影には第1および第2の発明で説明した2つの方法がある。」 (イ)刊行物記載の発明 上記刊行物の記載によれば、該刊行物記載の発明として、次の点を要件とする発明を認定することができる。なお、以下において、認定の根拠となる上記刊行物の記載箇所を当該刊行物の記載中の段落番号(【0001】,【0007】・・・等)で示す。 a.発明の対象(【0001】,【0007】,【0060】) 被写体の動き、特定の色等に応答して自動的に被写体の撮影を行う自動撮影カメラ。当該カメラは実施例ではディジタル電子スチル・カメラ。 b.自動撮影動作における被写体の撮影(【0063】) 自動撮影動作においては、一定時間(例えば20ms)ごとに被写体を撮影。撮影された1駒分の映像信号を上記一定時間ごとにCCD11から転送して画像メモリ13に画像データとして上記一定時間ごとに更新記憶。(画像メモリ13には常に最新の画像データが記憶される。) c.露光量の制御(【0065】) CCD11への露光量の制御を好ましくは絞りによって行い、露光時間(【0064】でいう、CCD11で定められる露光時間、すなわち電荷蓄積時間)は固定。 ただし、露光時間を制御してもよいし、必要ならばメカニカルシャッタを用いて露光制御を行うこともできる。 d.画像データの読み出しと記憶(【0066】,【0068】,【0069】) 画像メモリ13に記憶されている画像データのうち、被写体像の動きを検出すべき領域内の画像データを画像データ切出し部14によって読み出し、読み出した(切出した)画像データを補助画像メモリ16に記憶。補助画像メモリ16は、切り出される画像データの少なくとも2倍の記憶容量をもっており、このメモリ16に、画像メモリ13から取出された最新の画像データと、それよりも所定時間前に画像メモリ13から取出された画像データとが記憶されるようにする。上記所定時間前の画像データは、例えば前回の(すなわち上記の撮像周期20ms前の)画像データ、あるいは上記撮像周期の複数倍の時間前の画像データ。 e.被写体の動きの有無の判定(【0070】?【0074】) 補助画像メモリ16に記憶されている上記最新の画像データと所定時間前の画像データとを用いて、この所定時間の間に被写体に動きがあったかどうかを動き検出部15で判定。判定は【数1】の式(【0072】参照)を満足するかどうかによってなされるが、上記の式は、被写体画像の所定範囲(x1?x2,y1?y2)内において、最新の画像データと所定時間a前の画像データとの差の2乗を各画素ごとに算出し、その結果を上記所定範囲にわたって積分(加算)した値が所定のしきい値B以上であるかどうかという条件を表しており、この式を満足する場合に被写体に動きがあったと判定する。 f.自動撮影(【0076】?【0079】) 被写体に動きがあったと判定されると、撮影(すなわち動きありの判定に応じた自動撮影)を行う。この撮影では、例えば画像メモリ13(上記【0078】の記載で「画像メモリ17」とあるのは「画像メモリ13」の誤記と認められる)に記憶されている最新の画像データをデータ圧縮して記録媒体に記録したり、あるいは、動きが検出された(動きありと判定された)時点でCCD11をクリアし、改めて撮影し直した画像データをデータ圧縮して記録媒体に記録する。 g.被写体の色の変化に応じた自動撮影(【0086】?【0090】) 上記の自動撮影は、被写体の特定の色に変化があった場合にも同様に行われるようにすることができ、この場合、上記補助画像メモリ16には最新の色データと所定時間前の色データ(それぞれ撮影画像内の所定の領域から抽出した特定の色のデータ)とが記憶され、これら色データを用いて、色比較部35(図4)で、上記の式(【数1】)にしたがって特定の色に変化があったかどうかを判定し、変化があったと判定されると上記の自動撮影が行われるようにする。 ウ.対比 以下、上記補正後発明をその各要件毎に上記引用刊行物記載の発明(以下「引用発明」ともいう)と対比する。 (ア)発明の対象について 補正後発明の対象は「デジタルカメラ」であるが、引用発明が対象とする「自動撮影カメラ」も、その実施例では「デジタル電子スチル・カメラ」、であって、「デジタルカメラ」といえるものである。 (イ)測光手段、露出制御手段について 補正後発明でいう「測光手段」、「露出制御手段」については、引用発明では特に示されていない。 しかしながら、引用発明の自動撮影カメラ(デジタルカメラ)でも、露光量の制御すなわち露出制御はなされているのであるから(上記要件c.)、そのための適宜の露出制御手段を設けているといえ、また、デジタルカメラ等における露出制御手段は、通常、測光手段による測光結果に基づいて露出制御を行うものであり、引用発明での露出制御手段も、特段の断りがない限り、そのような測光手段による測光結果に基づいて露出制御を行う通常の露出制御手段でよい(少なくともこれを排除するものではない)と解される。 もっとも、補正後発明では、上記露出制御手段による露出制御を「操作部材の操作により」行うとしているが、この点は、補正後発明での上記判断手段についての特定事項との関連を考慮すると、実質的には、上記判断手段での判断(画像の変化量についての判断)に先立って、上記操作部材の操作によって露出条件を設定するというものと解されるところ、そのような点は、下記「(ウ)判断手段について」で述べるように引用発明では特に示されていない。 (ウ)判断手段について 補正後発明での判断手段は、その前記特定事項を項分けして示すと、 1)前記操作部材の操作により定められた露出条件において、前記操作部材の操作の後に、 2)撮影されるべき画面の所定部分における画像の 3)単位時間あたりの変化量が所定値を越えたか否かを前記単位時間ごとに繰り返し判断する ようにしたものであるが、引用発明では、該判断手段に対応するものとして、被写体に動きがあったかどうかを判定する動き検出部15(上記要件e.)や、被写体の特定の色に変化があったかどうかを判定する色比較部35(上記要件g.)が設けられているので、以下、上記判断手段を上記特定事項別に上記動き検出部15や色比較部35と対比する。 a.特定事項1)について 上記特定事項1)は、上記判断手段での判断が、「前記操作部材の操作により定められた露出条件において、前記操作部材の操作の後に、」なされる、つまり、上記判断手段での判断に先だって、上記操作部材の操作によって露出条件を設定することを特定しているものであるが、引用発明での上記動き検出部15や色比較部35ではその点は特に示されていない。 b.特定事項2)について 上記特定事項2)によると、上記判断手段で判断対象とする画像は「撮影されるべき画面の所定部分における画像」であるが、この「撮影されるべき画面の所定部分における画像」とは、明細書の記載(段落【0023】等)に照らし、撮影画像の画面内で判断対象とすべき部分(例えば人物の顔の部分)の画像に他ならないところ、この点では、上記動き検出部15でも、その動き判定の対象とする画像(補助画像メモリ16に取り込んだ画像)は、撮影画像(画像メモリ13に一時記憶されている画像)中の「被写体の動きを検出すべき領域内の画像」であって(上記要件d.)、この画像は、上記特定事項2)でいう「撮影されるべき画面の所定部分における画像」ともいえるものである。 また、この点は上記色比較部35で色の変化を判定する場合の判定対象画像についても同様である。(上記要件g.参照) c.特定事項3)について 上記特定事項3)によると、上記判断手段での判断は、基本的には、上記判断対象とする画像につき、“その変化量が所定値を越えたか否か”を判断するものである。そこで、まずこの点について上記動き検出部15をみると、該動き検出部15では、“最新の画像データと所定時間前の画像データとの画素毎の差から求めた値”(画素毎の差の2乗を所定の範囲すなわち上記動きを検出すべき領域にわたって積分した値)が所定のしきい値B以上であるかどうかによって被写体に動きがあったかどうかを判定しているところ(上記要件e.)、上記“最新の画像データと所定時間前の画像データとの画素毎の差から求めた値”は画像の変化量を示す値に他ならず、そうすると、動き検出部15での上記被写体に動きがあったかどうかの判定も、画像(上記動き判定の対象とする画像)の変化量についての判定であって、該変化量を所定値(しきい値B)と比較してその大小を判断しているものといえる。 然るに、上記判断手段での「変化量が所定値を越えたか否か」の判断も、上記変化量を所定値と比較してその大小を判断しているものといえ、この点では上記動き検出部15での判断と共通するから、結局、上記判断手段と動き検出部15とは、いずれも上記判断対象とする画像につき、“その変化量を所定値と比較してその大小を判断する判断手段”といえるものである。 もっとも、上記変化量の大小判断は、上記のとおり、動き検出部15では、「所定値以上であるか否か」によりなされ、上記判断手段では「所定値を越えたか否か」によりなされているのであるから、この点では両者の判断に違いがある。 次に、上記特定事項3)によると、上記判断手段での判断(画像の変化量の大小判断)は、「単位時間あたりの」変化量について「前記単位時間ごとに繰り返し」判断するものであるが、この点では、動き検出部15での上記判断も、引用発明の上記要件b.d.e.から明らかなように、一定時間(例えば20ms)毎に被写体を撮影して得た画像データにつき、その最新の画像データと所定時間前の(例えば撮像周期20ms前の)画像データとから、この所定時間の間に被写体に動きがあったかどうかの判断(所定時間の間における上記画像の変化量の大小判断)を行っているのであるから、上記判断手段での判断と同じく、「単位時間あたりの」変化量について「前記単位時間ごとに繰り返し」変化量の大小を判断しているものといえる。 以上、補正後発明での上記特定事項3)について引用発明での動き検出部15と対比したが、引用発明での前記色比較部35も、画像の変化量といえる特定の色の変化量について動き検出部15と同様の判定処理を行っており(前記要件g.)、したがって、動き検出部15との対比において認定した上記認定事項は、色比較部35との対比においても同様に認定できるものである。 (エ)記録動作制御手段について 補正後発明での記録動作制御手段は、「前記変化量が前記所定値を越えたと判断されると記録動作を行う」ものであるが、引用発明でも、被写体に動きがあった、あるは被写体の特定の色に変化があったと判定されると撮影画像を記録媒体に記録するようにしており(前記要件f.要件g.)、そのような撮影画像の記録動作を行うための適宜の記録動作制御手段を設けているといえるところ、該記録動作制御手段と上記補正後発明での記録動作制御手段とは、上記(ウ)、c.での認定事項を前提とすると、いずれも、“前記変化量(前記判断手段で判断対象とする画像の変化量)が上記所定値との比較により大きいと判断されると記録動作を行う”ようにしたといえるものである。 (オ)露出制御と、撮影および記録動作との関連について この点についての補正後発明での特定事項は、「前記露出制御手段が前記操作により定めた露出条件で、前記記録動作制御手段が撮影および記録動作を行う」というものであるが、ここでいう「撮影および記録動作」とは、明細書の記載(段落【0023】?【0026】等)に照らし、撮像素子(CCD)による被写体の撮影動作と、撮影画像の記録媒体への記録動作(上記判断手段での画像の変化量についての判断に応じた記録動作)をいうものと解されるところ、引用発明でも、同様の撮影動作と記録動作が行われていることは、引用発明の前記要件b.要件f.から明らかである。 また、上記特定事項では、上記記録動作および撮影動作を記録動作制御手段が行う(制御する)としているが、明細書の記載(段落【0014】,【0015】等)や図2の記載に照らすと、上記撮影動作や記録動作は、実際にはシステムコントロール回路により制御されており、上記特定事項ではこのシステムコントロール回路を「記録動作制御手段」と称しているものと解され、そのような意味においては、引用発明も同様の記録動作制御手段を有しているといえる。 そうすると、結局、上記特定事項中の「前記記録動作制御手段が撮影および記録動作を行う」との点は、引用発明でも同様になされているといえる。 しかしながら、上記特定事項では、上記撮影および記録動作を「前記露出制御手段が前記操作により定めた露出条件で」行うとしているところ、この点については引用発明では特に示されていない。 エ.一致点および相違点 以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点および相違点は次のとおりであることが認められる。 【一致点】 両者はいずれも、 「被写体に対する測光を行う測光手段と、 前記測光手段による測光結果に基づいて露出を制御する露出制御手段と、 撮影されるべき画面の所定部分における画像の単位時間あたりの変化量を所定値と比較してその大小を前記単位時間ごとに繰り返し判断する判断手段と、 前記変化量が前記所定値との比較により大きいと判断されると記録動作を行う記録動作制御手段とを備え、 前記記録動作制御手段が撮影および記録動作を行うことを特徴とするたデジタルカメラ」 であるといえる点。 【相違点】 相違点(1) 補正後発明では、上記露出制御手段による露出の制御が「操作部材の操作により」なされ、上記判断手段による判断が「前記操作部材の操作により定められた露出条件において、前記操作部材の操作の後に」行われ、また、上記記録動作制御手段が上記撮影および記録動作を「前記露出制御手段が前記操作により定めた露出条件で」行うようにしているのに対し、そのような点は引用発明では特に示されていない点。 相違点(2) 上記判断手段における変化量の大小判断が、補正後発明では、「所定値を越えたか否か」を判断する(所定値を越えると変化量が大きいと判断する)ものであるのに対し、引用発明では「所定値以上であるか否か」を判断する(所定値以上であれば変化量が大きいと判断する)ものである点。 オ.判断 (ア)相違点(1)について 引用発明に対する補正後発明の上記相違点(1)は、要は、上記判断手段での画像の変化量についての判断、該判断に必要な撮影動作および該判断に応じた記録動作が、上記操作部材の操作(明細書記載の実施例ではシャッタ釦の半押し)により、上記露出制御手段によって露出条件が定められた(上記測光手段による測光結果に基づく適正な露出量が設定された)後に行われるようにしたしたというに他ならないものである。 然るに、引用発明でも、上記「ウ.対比」の(イ)で認定したように、露出制御手段による露出制御(露光量の制御)がなされているところ、この露出制御について、引用発明では、好ましくは絞りによって行い、必要ならばメカニカルシャッタを用いて行うとしていること(前記要件c.)、絞りやメカニカルシャッタで露光量を制御する場合、一般のデジタルカメラで見られるように、撮影動作の前に、操作部材を操作して(シャッタ釦を半押しして)適正な露出量を事前に設定するのが通常であること、そのような露出量の事前設定が引用発明(その実施例であるデジタルカメラ)では困難となる特段の事情があるとも認められないこと、の各点を合わせ考慮すると、補正後発明の上記相違点(1)に係る事項は、引用発明での上記露出制御を行う上での一実施態様として当業者が容易に想到し得たというべき事項である。 (イ)相違点(2)について 一般に変化量を所定値と比較してその大小を判断する際、所定値以上であるか否かを判断する(所定値以上であれば変化量が大きいと判断する)ことや所定値を越えたか否かを判断する(所定値を越えると変化量が大きいと判断する)ことはいずれも常套の判断手法であり、引用発明では、上記画像の変化量の大小判断に、上記所定値以上であるか否かを判断する判断手法を採用しているが、その採用に格別の必然性や技術的意義があるとはいえず、要は上記常套の判断手法のうちの一方を採用したというにすぎないものと認められ、そうすると、これに代え、補正後発明のように上記常套の判断手法の他方を採用することは、当業者が設計上の選択事項として容易になし得たというべき事項である。 (ウ)まとめ(判断) 以上のように、引用発明に対する補正後発明の上記相違点(1)、(2)は、当業者が容易に想到し得たというべきものであり、また補正後発明をその技術的効果を含め総合的にみても、引用発明に比し格別のものがあるとは認められない。 したがって、補正後発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ.むすび 以上のとおりであるから、補正後発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての検討 1.本願発明 平成21年6月15日付け手続補正を上記のとおり却下したので、本願の発明は、同手続補正による補正がなされる前の特許請求の範囲(平成21年1月16日付け手続補正書記載の特許請求の範囲)の請求項1ないし請求項3の各請求項に係る発明であるところ、これら発明のうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」ともいう。)は、同請求項1の下記の記載事項により特定されるものである。 記 「被写体に対する測光を行う測光手段と、 操作部材の操作により、前記測光手段による測光結果に基づいて露出を制御する露出制御手段と、 前記操作部材の操作の後に、撮影されるべき画面の所定部分における画像の単位時間あたりの変化量が所定値を越えたか否かを判断する判断手段と、 前記変化量が前記所定値を越えたと判断されると記録動作を行う記録動作制御手段とを備え、 前記露出制御手段が前記操作部材の操作により定めた露出条件で、前記記録動作制御手段が撮影および記録動作を行うことを特徴とするデジタルカメラ。」 2.刊行物の記載および同刊行物記載の発明 これに対し、前記「第2 補正の却下の決定」で引用した刊行物(特開平4-320167号公報、原査定で引用する刊行物1)の記載および同刊行物記載の発明は前記「第2 補正却下の決定」 の2.(3)イ.の(ア)、(イ)で認定したとおりである。 3.本願発明1の想到容易性 上記本願発明1は、前記補正後発明からみて、その判断手段での判断(画像の単位時間当たりの変化量についての判断)が「前記操作部材の操作により定められた露出条件において、」「前記単位時間毎に繰り返し」行われるとの補正後発明での特定事項を省いたもので、その余の点では補正後発明と違いがないものであるところ、補正後発明が、前記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、上記「第2 補正の却下の決定」の2.(3)ウ.ないしオ.で認定、判断したとおりであり、したがって、本願発明1も、同様の理由により、上記引用刊行物記載の発明から当業者が容易に想到し得たというべきものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、原査定の理由のとおり、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の請求項2および請求項3に係る各発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-23 |
結審通知日 | 2011-03-01 |
審決日 | 2011-03-16 |
出願番号 | 特願2008-88480(P2008-88480) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関谷 隆一、日下 善之 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
佐藤 直樹 渡邊 聡 |
発明の名称 | デジタルカメラ |
代理人 | 潮 太朗 |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 藤 拓也 |