ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D |
---|---|
管理番号 | 1235954 |
審判番号 | 不服2010-4460 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-01 |
確定日 | 2011-04-28 |
事件の表示 | 特願2004-152809「車両用電子制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 8日出願公開、特開2005-337017〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年5月24日の出願であって、平成21年3月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年5月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月13日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し同年9月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月19日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し平成22年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に同日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において同年9月6日付けで書面による審尋がなされ、これに対し同年11月5日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成22年3月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年3月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成22年3月1日付けで提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、下記の(a)に示す本件補正前の(すなわち、平成21年9月17日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を下記の(b)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「車両内の通信手段により互いにデータの送受信を行う複数の電子制御装置を備え、該各電子制御装置が、更新可能な情報を記憶する記憶手段を有して、該記憶情報に基づいて制御対象の制御を行う車両用電子制御装置において、 上記記憶情報の更新を行う書き換え装置と上記通信手段を介して通信可能とし、 上記通信手段は、複数の電子制御装置間のデータ送受信モードと上記記憶情報の更新モードとの2種の通信設定モードを有して、該通信設定モードは上記各電子制御装置毎に設定でき、 上記記憶情報の更新時には、更新に先立って、上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え、該更新モードへの切り換えは、上記書き換え装置から該更新モード用の通信速度、サンプリングポイントなどの通信設定情報を受信して行うことを特徴とする車両用電子制御装置。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「車両内の通信手段により互いにデータの送受信を行う複数の電子制御装置を備え、該各電子制御装置が、更新可能な情報を記憶する記憶手段を有して、該記憶情報に基づいて制御対象の制御を行う車両用電子制御装置において、 上記記憶情報の更新を行う書き換え装置と上記通信手段を介して通信可能とし、 上記通信手段は、複数の電子制御装置間のデータ送受信モードと上記記憶情報の更新モードとの2種の通信設定モードを有して、該通信設定モードは上記各電子制御装置毎に設定でき、 上記記憶情報の更新時には、更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有すべく、更新に先立って上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え、該更新モードへの切り換えは、上記書き換え装置から該更新モード用の通信速度、サンプリングポイントなどの通信設定情報を受信して行うことを特徴とする車両用電子制御装置。」(アンダーラインは補正個所を示す。) 2.本件補正の適否についての判断 2-1.本件補正の目的 特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「更新に先だって上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え、」について「更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有すべく、」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2.独立特許要件 上記2-1.で検討したように、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、次に、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2-2-1.原査定の拒絶理由に引用された引用例 2-2-1-1.特開2002-149433号公報(以下、「引用例1」という。) (1)引用例1の記載事項 引用例1には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として当審において付したものである。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワーク上にある演算装置のメモリに対して書き込みを行うメモリ書込装置に係り、特に演算装置の通信速度を予め変更してからメモリへ書き込み処理を行うことによって、通信エラーを減らすとともに高速な書込処理を行うことのできるメモリ書込装置に関する。」(段落【0001】) (イ)「【0003】図3に示すように、従来のメモリ書換システム101は、自動車に搭載されて内燃機関型エンジンの制御を行うエンジン制御装置(以下ECUという)102と、このECU102に内蔵されたエンジン制御用のプログラムやデータを書き換えたり、新規に書き込む際にECU102に接続されるメモリ書換装置103とから構成されている。」(段落【0003】) (ウ)「【0008】…(中略)…メモリ書換装置103が接続されていない通常時には、そのブートプログラムによってフラッシュROM120a内のエンジン制御プログラム(エンジン制御用の制御プログラム)をコールして、エンジンの制御を行う。」(段落【0008】) (エ)「【0022】まず、図1は本実施形態のメモリ書込装置によってメモリへの書き込みが行われるメモリ書込システムのブロック図である。ここでは、書き込みの対象である書込対象メモリとしてフラッシュメモリを例として説明し、さらにそのフラッシュメモリを具備する書込対象演算装置の一例としてエンジン制御装置(以下ECUと略す)を例にして説明する。 【0023】図1に示すように、メモリへの書き込み処理を行うメモリ書込装置1は、書き込み処理が行われる際にネットワークであるバス2に接続され、このバス2には複数のECU3A、3B、・・・、3Nが接続されている。 【0024】ここで、メモリ書込装置1は、ECUを通常通信停止状態にする信号であるready信号をすべてのECU3A、3B、・・・、3Nに送信する通常通信停止手段11と、この通常通信停止手段11により送信されたready信号によって、ECUのすべてが通常通信停止状態であるか否かを確認する通信状態確認手段12と、この通信状態確認手段12によりすべてのECU3A、3B、・・・、3Nが通常通信停止状態であると確認されたときには、ECUの通信速度を変更させる信号であるchange信号をすべてのECU3A、3B、・・・、3Nに送信する通信速度変更手段13と、この通信速度変更手段13により送信されたchange信号の返送信号をすべてのECU3A、3B、・・・、3Nから受信したときには、フラッシュメモリ17A、17B、・・・、17Nに対して書き込み処理を行うメモリ書込手段14とを含んでいる。」(段落【0022】ないし【0024】) (オ)「【0029】次に、図2に基づいて本実施形態のメモリ書込装置1による書込対象メモリへの書き込み処理を説明する。 【0030】まず、メモリ書込装置1がバス2に接続されて初期設定が行われると(S201)、メモリ書込装置1は通常モードで動作している各ECU3A、3B、・・・、3Nに対して、通常モードを停止させるための信号であるready信号をブロードキャスト方式で送信する(S202)。 【0031】このready信号を受信した各ECU3A、3B、・・・、3Nは速やかに通常モードを終了して通常通信停止状態となる(S03)。 【0032】一方、メモリ書込装置1ではready信号を送信すると、バスモニタ状態に移行して割り込み処理等によるバスラインのチェックを所定時間実行する(S204)。このとき、まだ通常モードで動作しているECUがあるか否かを判断し(S205)、通常モードで動作しているECUがあるときにはステップS202に戻って再度ready信号を送信する(S202)。 【0033】また、すべてのECUが通常通信停止状態であることが確認されたら、メモリ書込装置1は通信速度を変更するための信号であるchange信号を各ECU3A、3B、・・・、3Nに対してブロードキャスト方式で送信するとともに(S206)、メモリ書込装置1の通信速度もchange信号で送信した通信速度に変更して高速化する(S207)。例えば、20kbpsの通信速度を100kbpsに高速化する。 【0034】そして、各ECU3A、3B、・・・、3Nはchange信号を受信すると、change信号に記録された通信速度に変更して高速化し(S208)、さらにchange信号のレスポンスとなるchange response信号を返送するとともに(S209)、書き込み処理が行われる状態に遷移する(S210)。ただし、change response信号は同期を合わせるために100msなどの設定時間経過後に送信する。 【0035】そして、メモリ書込装置1はすべてのECU3A、3B、・・・、3Nからchange response信号を受信したか否かを判断し(S211)、change response信号をすべてのECUから受信することができずに、メモリ書込装置1を含め通信速度が高速化されないECUがある場合には書込対象であるフラッシュメモリ17への書き込みに関する処理は行われず、パワーオンリセット(S212)後に、ステップS201に戻って同様の処理を再び行うことになる。 【0036】また、メモリ書込装置1がすべてのECU3A、3B、・・・、3Nからchange response信号を受信しているときには、各ECUのフラッシュメモリに対して書き込みに関する処理を行い(S213)、本実施形態のメモリ書込装置1によるメモリへの書き込み処理は終了する。」(段落【0029】ないし【0036】) (2)引用例1記載の発明 上記(1)及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「自動車内のバス2により互いにデータの送受信を行う複数のECU3A、3B、・・・、3Nを備え、該各ECU3A、3B、・・・、3Nが、更新可能な情報を記憶するフラッシュメモリ17A、17B、・・・、17Nを有して、該記憶情報に基づいて制御対象の制御を行う自動車用ECU3A、3B、・・・、3Nにおいて、 上記記憶情報の更新を行うメモリ書込装置1と上記バス2を介して通信可能とし、 上記バス2は、複数のECU3A、3B、・・・、3N間の通常モードと上記記憶情報の書込モードとの2種の通信設定モードを有し、 上記記憶情報の更新時には、更新に先立って上記通常モードを終了して通常通信停止状態とすると共に、上記バス2の通信設定モードを、上記通常モードから上記書込モードへ切り換え、該書込モードへの切り換えは、上記メモリ書込装置1から該書込モード用の通信速度情報であるchange信号を受信して行う自動車用ECU3A、3B、・・・、3N。」 2-2-1-2.特開2001-123874号公報(以下、「引用例2」という。) 引用例2には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、アンダーラインは、発明の理解の一助として当審において付したものである。 (カ)「【0031】図1に示すように、本実施形態のプログラム書換システムでは、車両内の各部を制御する3つのECU(電子制御装置)1,2,3が、車両内に配設された通信線4を介して互いにデータ通信可能に接続されている。…(後略)…」(段落【0031】) (キ)「【0033】…(中略)…メモリ書換装置7は、通信線4側に予め設けてあるコネクタ4aに当該メモリ書換装置7側のコネクタ7aを嵌合させることにより、その通信線4に接続され、これにより、3つのECU1,2,3と通信線4とからなる車両内の制御ネットワークシステムに参加する。…(後略)…」(段落【0033】) (ク)「【0047】…(中略)…図4に示すように、まずS210にて、所定時間以内にメモリ書換装置7から自己のECUに対する書換要求コマンドが送信されて来たか否かを判定することにより、書換モードに移行すべきか否かを判断する。尚、メモリ書換装置7から送信される書換要求コマンドには、プログラム書き換え対象のECUを示す識別コードが含まれている。そして、このS210では、メモリ書換装置7からの書換要求コマンドを受信し、且つ、その書換要求コマンドに含まれている識別コードが自己のECUを示すコードであれば、自己のECUに対する書換要求コマンドが送信されて来たと判定して、書換モードに移行すべきと判断する。」(段落【0047】) (ケ)「【0057】次に、メモリ書換装置7は、前述したように、ECU1,2,3のうちの何れかのプログラムを書き換える際に、作業者によりコネクタ4a,7aを介して通信線4に接続される。そして、メモリ書換装置7では、作業者により操作スイッチのうちの書換開始スイッチがオンされると、マイコン7bが、図5(A)に示すメイン処理を実行する。 【0058】即ち、S410にて、作業者が操作スイッチを介してプログラム書き換え対象のECUの番号と、そのECUに送信すべき書換対象プログラムの情報(ファイル名等)とを入力するのを待ち、それらが入力されると、その入力情報に従って、プログラム書き換え対象のECUと、そのECUに送信すべき書換対象プログラムとを選択する。 【0059】次に、S420にて、上記S410で選択したプログラム書き換え対象のECUの識別コードを含んだ書換要求コマンドを、通信線4へ送信し、続くS430にて、プログラム書き換え対象のECUとの間で前述した認証処理を行う。そして、続くS440にて、認証処理の結果がOKであるか否かを判定し、認証処理の結果がOKでなければ、S450に進んで、プログラムを書き換えるための処理を中止する。 【0060】一方、認証処理の結果がOKであったならば(S440:YES)、S460に移行して、プログラム書き換え対象のECUへ書換処理プログラムを送信し、これにより、そのECUにプログラムを書き換えるための処理(図4のS290?S320)を開始させる。そして、続くS470にて、プログラム書き換え対象のECUへ、上記S410で選択した書換対象プログラムを送信する。」(段落【0057】ないし【0060】) 2-2-2.対比 本願補正発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の発明における「自動車」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「車両」に相当し、以下同様に、「バス2」は「通信手段」に、「ECU3A、3B、・・・、3N」は「電子制御装置」に、「フラッシュメモリ17A、17B、・・・、17N」は「記憶手段」に、「書込装置1」は「書き換え装置」に、「通常モード」は「データ送受信モード」に、「書込モード」は「更新モード」に、「上記通常モードを終了して通常通信停止状態とする」は「上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止する」に、「change信号」は「通信設定情報」に、それぞれ相当する。 そうすると、本願補正発明と引用例1記載の発明は、 「車両内の通信手段により互いにデータの送受信を行う複数の電子制御装置を備え、該各電子制御装置が、更新可能な情報を記憶する記憶手段を有して、該記憶情報に基づいて制御対象の制御を行う車両用電子制御装置において、 上記記憶情報の更新を行う書き換え装置と上記通信手段を介して通信可能とし、 上記通信手段は、複数の電子制御装置間のデータ送受信モードと上記記憶情報の更新モードとの2種の通信設定モードを有し、 上記記憶情報の更新時には、更新に先立って上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え、該更新モードへの切り換えは、上記書き換え装置から該更新モード用の通信速度情報である通信設定情報を受信して行う車両用電子制御装置。」 の点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違している。 (1)本願補正発明においては、「該通信設定モードは上記各電子制御装置毎に設定でき、上記記憶情報の更新時には、更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有すべく、更新に先立って上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え」るのに対し、 引用例1記載の発明においては、「上記記憶情報の更新時には、更新に先立って上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え」るが、該通信設定モードは上記各電子制御装置毎に設定できるのか、すなわち、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換えるのか否か明らかでなく、したがって、更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有するのか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。 (2)「更新モード用の通信設定情報」が、本願補正発明においては、「通信速度、サンプリングポイントなど」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「通信速度情報」である点(以下、「相違点2」という。)。 2-2-3.相違点1及び2についての判断 (ア)相違点1について 上記2-2-1-2.によると、引用例2には、 「車両内の各部を制御するECU1,2,3が、車両内に配設された通信線4を介して互いにデータ通信可能に接続されている車両用ECUにおいて、メモリ書換装置7は、ECU1,2,3のうちの何れかのプログラムを書き換える際に、作業者によりコネクタ4a,7aを介して通信線4に接続され、作業者が操作スイッチを介してプログラム書き換え対象のECUの番号と、そのECUに送信すべき書換対象プログラムの情報とを入力すると、その入力情報に従って、プログラム書き替え対象のECUと、そのECUに送信すべき書換対象プログラムとを選択し、書換モードに移行する」技術、すなわち、「記憶情報の更新時には、更新対象の電子制御装置のみ更新モードへ切り換える」技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が記載されている。 そうすると、引用例1記載の発明において、引用例2記載の技術を適用し、もって、「該通信設定モードは上記各電子制御装置毎に設定でき、上記記憶情報の更新時には、更新に先立って上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換える」構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 そして、上記構成とすることにより、更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有することとなる。 因みに、車両内の複数の各電子制御装置が、フラッシュメモリに記憶された制御プログラムに従って、互いに車両内ネットワークを介してデータ送信することで互いの異常を検出し、制御プログラムの書き換えプログラムを受信すると制御プログラムを書き換える車両用電子制御装置において、「書き換え装置から書き換えプログラムを受信すると、複数の電子制御装置のうちの書き換え対象の電子制御装置は、フラッシュメモリ内の制御プログラムの書き換えを行い、複数の電子制御装置のうちの書き換え対象以外の電子制御装置は、異常検出を停止し車両内ネットワークへのデータ送信を停止する」構成、すなわち、「書き換え対象の電子制御装置と書き換え装置だけが車両内ネットワークを占有する」構成は、本願明細書において背景技術を示すものとして引用された特開2003-172199号公報にも開示されているように周知技術というべきものでもある。 (イ)相違点2について 通信設定情報として、サンプリングポイントを考慮することは、ごく普通に行われていることにすぎない。 そうすると、引用例1記載の発明において、通信設定情報として、通信速度に加えてサンプリングポイントも考慮することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 そして、本願補正発明を全体としてみると、その作用効果も、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 2-2-4.まとめ、 したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2-3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成22年3月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.の[理由]1.(a)に記載されたとおりのものである。 2.引用例の記載内容及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2.の[理由]2-2-1.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2.の[理由]2-1.で検討したように、実質的に、本願補正発明から「更新に先だって上記複数の電子制御装置間のデータの送受信を停止すると共に、上記通信手段の通信設定モードを、上記更新対象の電子制御装置のみ上記データ送受信モードから上記更新モードへ切り換え、」の限定事項である「更新対象の電子制御装置のみが上記通信手段を占有すべく、」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.の[理由]2-2.に記載したとおり、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-23 |
結審通知日 | 2011-03-01 |
審決日 | 2011-03-15 |
出願番号 | 特願2004-152809(P2004-152809) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02D)
P 1 8・ 575- Z (F02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松下 聡 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
西山 真二 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 車両用電子制御装置 |
代理人 | 大岩 増雄 |
代理人 | 村上 啓吾 |
代理人 | 児玉 俊英 |
代理人 | 竹中 岑生 |