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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1235955 |
審判番号 | 不服2010-4610 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-02 |
確定日 | 2011-04-28 |
事件の表示 | 特願2003-315034「回胴式遊技機の制御回路」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 80811〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成15年9月8日の出願であって、拒絶理由通知に対して平成21年7月21日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成22年3月2日に本件拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成22年8月31日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成22年10月19日に回答書が提出されている。 第二.平成22年3月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年3月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。 「 遊技媒体としての1枚のメダルと等価となる5個のパチンコ球を1単位とし、 貸し出されたパチンコ球を投入することで、当該投入されたパチンコ球を1個1個計数して、5球単位で遊技の進行が可能となり、 遊技者の始動操作によってそれぞれ複数の図柄が設けられた複数列の回胴を駆動手段によって周回駆動させ、かつ遊技者の停止操作で前記回胴を停止させ、当該回胴が停止したときの図柄配列によって抽選の結果を報知すると共に、当該抽選の結果に基づいて、前記遊技媒体を、回収又は遊技者への配当に用いる回胴式遊技機の制御回路であって、 物理的に複数に分割され、互いにハーネス接続されることで、データの送受信が可能であり、主として遊技の進行を司る主制御基板群と、 前記遊技媒体の貸し出し、回収を目的として生成される遊技媒体取込データ及び前記遊技媒体の配当を目的として生成され、改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある遊技媒体払出データを、前記分割された個々の主制御基板間での送受信を必要としない形態で管理する管理手段と、 を有する回胴式遊技機の制御回路。」 (下線部は補正によって追加された箇所。) なお、請求項2及び3は補正されておらず、請求項4は、請求項1と同じ趣旨の補正がされている。 2.補正要件(目的)の検討 請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「遊技媒体払出データ」について、「改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある」を付加する補正である。 してみると、該補正は、補正前の発明特定事項を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討 (1)引用された文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-204877号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 【0018】皿扉59の左端部(上皿57の左側)にはクレジットスイッチ70が取り付けられている。皿扉59の右端部には、1回のゲームに投入する遊技球の個数(ベット数)を選択するためのベットスイッチ60a、60b、60cが取り付けられている。ベットスイッチ60aをオン操作すると3単位(本実施例では1単位は5個)の遊技球が、ベットスイッチ60bをオン操作すると1単位の遊技球が、ベットスイッチ60cをオン操作すると2単位の遊技球が、それぞれ賭球としてスロットマシン50に取り込まれる。 【0035】また、制御装置40には、クレジット表示域71、ステッピングモータ74の駆動回路75、遊技球取込装置61、払出装置42等の装置類も接続されており、制御装置40はそれらの表示や動作を制御できる。なお、ステッピングモータ74の駆動回路75は基板14に設けられており(基板14はプリント配線基盤である。)、図4にはステッピングモータ74と駆動回路75を一つずつ(1組)しか示していないが、実際には表示ユニット13の数だけ(本実施例では3組)備わっている。 【0042】スロットマシン50は、制御装置40による起動時処理が済むとゲームを実行可能になる。ゲームの実行に際して制御装置40が実行するゲーム処理は図6に示すとおりであり、制御装置40はベットスイッチ60a?60cのいずれかがオン操作させるのを待ち(S301)、いずれかがオン操作されると、操作されたベットスイッチ60a?60cに応じた単位数の遊技球を遊技球取込装置61に取り込ませる(S302)。または、予めクレジットとして遊技球が取り込まれている場合には、クレジットを減算する。また、このときに操作されたベットスイッチ60a?60cに応じて有効な賞ライン53a?53eの設定も行う。 【0043】そして、スタートスイッチ62がオン操作されると(S303:YES)、制御装置40は、その時の乱数カウンタの乱数値をRAMに記憶させる(S304)。続いて、ボーナスフラグF1が1にセットされているか否かを判断し(S305)、これが1でない場合には当たりフラグF2が1にセットされているか否かを判断する(S306)。当たりフラグF2が1ではないときには、RAMに記憶させておいた乱数値が当たり値と一致するか否かにより当たり外れを判定する(S307)。 【0044】判定が外れであれば(S307:NO)、3つのステッピングモータ74を稼働させて3本の図柄ベルト12を回転させる(S308)。そして、通常モードでのベルト停止処理を実行する(S309)。ベルト停止処理では、ストップスイッチ64a?64cのいずれかがオン操作される毎に操作されたストップスイッチ64a?64cに対応する図柄ベルト12(正確にはステッピングモータ74)を停止させる処理を3回繰り返し、3本の図柄ベルト12を停止させる。 【0047】ベルト停止処理にて3本の図柄ベルト12を停止させた後、制御装置40は有効な賞ライン53a?53eに沿った3つの図柄により賞組み合わせ(この場合は特賞以外)が成立しているか否かを判断し(S314)、賞組み合わせが成立していれば、払出装置42に指示して、成立した賞組み合わせに応じた個数の遊技球を賞球として排出させる(S316、クレジットゲームなら賞球分だけクレジット数を加算しクレジット表示域71の表示を更新する)。 【0048】S316の後または賞組み合わせが成立していないときには(S314:NO)、制御装置40はS301に回帰する。一方、判定が当たりの場合には(S307:YES)、制御装置40は当たりフラグF2を1にセットし(S310)、S311に進む。また、既に当たりフラグF2が1にセットされていた場合にも(S306:YES)、S311に進む。 【0049】S311では、制御装置40は、3つのステッピングモータ74を稼働させて3本の図柄ベルト12の回転を開始させる。次に制御装置40は、特賞モードでのベルト停止処理を実行する(S312)。このベルト停止処理でも、通常モードの場合と同様に、ストップスイッチ64a?64cのいずれかがオン操作される毎に操作されたストップスイッチ64a?64cに対応する図柄ベルト12(正確にはステッピングモータ74)を停止させる処理を3回繰り返し、3本の図柄ベルト12を停止させる。ただし、特賞モードでは特賞となる賞組み合わせの成立を許すので、遊技者によってストップスイッチ64a?64cが操作されると、制御装置40は特別な作意なしに対応する図柄ベルト12を停止させる。 【0050】制御装置40は、ベルト停止処理(特賞モード)にて3本の図柄ベルト12を停止させた後、まず有効な賞ライン53a?53eに沿った3つの図柄により特賞となる賞組み合わせが成立しているか否かを判断する(S313)。特賞となる賞組み合わせが成立していないときには(S313:NO)、他の賞組み合わせが成立しているか否かを判断し(S314)、賞組み合わせが成立していれば賞球を排出させる(S316、クレジットゲームなら賞球分だけクレジット数を加算しクレジット表示域71の表示を更新)。S316の後または賞組み合わせが成立していないときには(S314:NO)、制御装置40はS301に回帰する。 摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「 1回のゲームに投入する遊技球の個数(ベット数)を選択するためのベットスイッチ60a、60b、60cが取り付けられており、ベットスイッチ60aをオン操作すると3単位(1単位は5個)の遊技球が、ベットスイッチ60bをオン操作すると1単位の遊技球が、ベットスイッチ60cをオン操作すると2単位の遊技球が、それぞれ賭球としてスロットマシン50に取り込まれ、 スタートスイッチ62がオン操作されると、制御装置40は、その時の乱数カウンタの乱数値をRAMに記憶させ、該乱数値が当たり値と一致するか否かにより当たり外れの判定を行い、3つのステッピングモータ74を稼働させて3本の図柄ベルト12を回転させ、ストップスイッチ64a?64cのいずれかがオン操作される毎に操作されたストップスイッチ64a?64cに対応する図柄ベルト12を停止させ、3本の図柄ベルト12を停止させた後、まず有効な賞ライン53a?53eに沿った3つの図柄により特賞となる賞組み合わせが成立しているか否かを判断し、特賞となる賞組み合わせが成立していないときには、他の賞組み合わせが成立しているか否かを判断し、賞組み合わせが成立していれば賞球を排出させ、 前記制御装置40には、前記ステッピングモータ74の駆動回路75、遊技球取込装置61、払出装置42等の装置類が接続され、前記制御装置40は、それらの表示や動作を制御でき、前記駆動回路75は基板14に設けられており、 前記制御装置40はベットスイッチ60a?60cのいずれかがオン操作されると、操作されたベットスイッチ60a?60cに応じた単位数の遊技球を遊技球取込装置61に取り込ませ、賞組み合わせが成立していれば、払出装置42に指示して、成立した賞組み合わせに応じた個数の遊技球を賞球として排出させる スロットマシン50。」 (2)引用発明と本願補正発明との対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技球」は、本願補正発明の「パチンコ球」に相当し、以下同様に、 「スロットマシン50」は「回胴式遊技機」に、 「3本の図柄ベルト12」は「それぞれ複数の図柄が設けられた複数列の回胴」に、 「3つのステッピングモータ74」は「駆動手段」に、 「回転させ」は「周回駆動させ」に、それぞれ相当する。 さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。 a.引用発明は、5個の遊技球を1単位としてベットを行うスロットマシンであるところ、通常のスロットマシンがメダルを用いてベットを行うことを考慮すると、引用発明においても5個の遊技球が遊技媒体としての1枚のメダルと等価となっているといえる。 また、引用発明は、ベットスイッチ60a、60b又は60cをオン操作することで所定数の遊技球がスロットマシン50に投入されるものということができ、遊技球がスロットマシン50に投入されたら、その遊技球を1個1個計数することは自明である。 さらに、引用発明において、遊技球が貸し出されたものであること、所定数の遊技球が計数されたら遊技の進行が可能となることも当然である。 よって、引用発明は本願補正発明の「遊技媒体としての1枚のメダルと等価となる5個のパチンコ球を1単位とし、貸し出されたパチンコ球を投入することで、当該投入されたパチンコ球を1個1個計数して、5球単位で遊技の進行が可能となり」に相当する構成を有するものということができる。 b.引用発明の「制御装置40」は、スタートスイッチ62がオン操作されると、3本の図柄ベルト12を3つのステッピングモータ74によって回転させ、ストップスイッチ64a?64cのオン操作で図柄ベルト12を停止させるものであるとともに、引用発明の「スタートスイッチ62」及び「ストップスイッチ64a?64c」を遊技者が操作することも明らかである。 よって、引用発明の「制御装置40」は、本願補正発明の「制御回路」が有する「遊技者の始動操作によってそれぞれ複数の図柄が設けられた複数列の回胴を駆動手段によって周回駆動させ、かつ遊技者の停止操作で前記回胴を停止させ」に相当する機能を備えているといえる。 c.引用発明の「制御装置40」は、賞組み合わせが成立しているか否か(本願補正発明の「抽選の結果」に相当)を、3本の図柄ベルト12を停止させた後の有効な賞ライン53a?53eに沿った3つの図柄により判断しており、それら3つの図柄は、いうまでもなく遊技者が見ることのできるものであるから、遊技者に賞組み合わせが成立しているか否かを報知する機能を備えるものといえる。 そして、引用発明の「制御装置40」は、賞組み合わせが成立していれば賞球を排出させており、逆に賞組み合わせが成立していなければ賞球を排出させない、すなわち、賭球はスロットマシン50に取り込まれたまま回収された状態となることも明らかであるから、遊技媒体を回収又は遊技者への配当に用いているものといえる。 よって、引用発明の「制御装置40」は、本願補正発明の「制御回路」が有する「当該回胴が停止したときの図柄配列によって抽選の結果を報知すると共に、当該抽選の結果に基づいて、前記遊技媒体を、回収又は遊技者への配当に用いる」に相当する機能を備えているといえる。 d.引用発明の「制御装置40」は、駆動回路75、遊技球取込装置61、払出装置42等の装置類の表示や動作を制御できるものであるから、それらの装置類とデータの送信又は受信が可能であり、主として遊技の進行を司るものであることは明らかである。 また、引用文献1に明示はないものの、引用発明の「制御装置40」が何らかの基板上に設けられていることも自明である。 そうしてみると、引用発明の「制御装置40」と本願補正発明の「回胴式遊技機の制御回路」は、“データの送受信が可能であり、主として遊技の進行を司る基板”を有する点で共通している。 e.引用発明の「制御装置40」は、操作されたベットスイッチ60a?60cに応じた単位数の遊技球を遊技球取込装置61に取り込ませるものであり、遊技球の取り込みは回収及び貸し出しを目的としていることも明らかであるから、本願補正発明の「前記遊技媒体の貸し出し、回収を目的として生成される遊技媒体取込データ」を管理する手段を有するものといえる。 また、引用発明の「制御装置40」は、賞組み合わせが成立していれば、払出装置42に指示して、成立した賞組み合わせに応じた個数の遊技球を賞球として排出させるものであり、賞球の排出は配当を目的としていることも明らかである。 そして、払出装置42への指示(本願補正発明の「遊技媒体払出データ」に相当)が、改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のあるものといえるのは、当然のことであるから、引用発明の「制御装置40」は、本願補正発明の「前記遊技媒体の配当を目的として生成され、改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある遊技媒体払出データ」を管理する手段を有するものといえる。 さらに、引用発明において、遊技球取込装置61及び払出装置42を制御している制御装置40は、複数の基板に分割されて設けられてはいないから、それらの装置を制御するための信号は基板間での送受信を必要としない形態で管理されているものといえる。 そうしてみると、引用発明の「制御装置40」は、本願補正発明の「前記遊技媒体の貸し出し、回収を目的として生成される遊技媒体取込データ及び前記遊技媒体の配当を目的として生成され、改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある遊技媒体払出データを、前記分割された個々の主制御基板間での送受信を必要としない形態で管理する管理手段」に相当する手段を有するものということができる。 以上を総合すると、両者は、 「 遊技媒体としての1枚のメダルと等価となる5個のパチンコ球を1単位とし、 貸し出されたパチンコ球を投入することで、当該投入されたパチンコ球を1個1個計数して、5球単位で遊技の進行が可能となり、 遊技者の始動操作によってそれぞれ複数の図柄が設けられた複数列の回胴を駆動手段によって周回駆動させ、かつ遊技者の停止操作で前記回胴を停止させ、当該回胴が停止したときの図柄配列によって抽選の結果を報知すると共に、当該抽選の結果に基づいて、前記遊技媒体を、回収又は遊技者への配当に用いる回胴式遊技機の制御回路であって、 データの送受信が可能であり、主として遊技の進行を司る基板と、 前記遊技媒体の貸し出し、回収を目的として生成される遊技媒体取込データ及び前記遊技媒体の配当を目的として生成され、改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある遊技媒体払出データを、前記分割された個々の主制御基板間での送受信を必要としない形態で管理する管理手段と、 を有する回胴式遊技機の制御回路。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] “基板”に関して、本願補正発明は「物理的に複数に分割され、互いにハーネス接続される」基板群となっているのに対し、引用発明は、そのような構成になっているか明らかでない点(特に、「駆動回路75」が「ステッピングモータ74」の動作を制御できるものか明らかでなく、駆動回路75の設けられる基板14と制御装置40の設けられる基板が、物理的に分割され、互いに送受信可能にハーネス接続されるものか明らかでない)。 (3)相違点の検討及び判断 特開2001-224761号公報(以下「引用文献2」という。)には、スロットマシンにおいて、遊技全体の制御を司る主基板200と、リールの回転及び停止の制御を担当する回胴装置基板400を物理的に別々の基板とし、それらを互いに回胴装置ハーネス450で接続することによって信号の送受信が可能となる構成(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる(特に、段落【0013】【0031】【0032】及び【図1】【図2】を参照)。 そして、引用発明及び引用文献2記載の技術は、ともにスロットマシンの制御装置に関するものである点で共通しているので、引用発明に引用文献2記載の技術を適用し、「駆動回路75」に3本の図柄ベルト12の回転及び停止の制御を担当させるとともに、「制御装置40」が設けられる基板と「駆動回路75」が設けられる基板14を物理的に別々の基板とし、それらを互いにハーネスで接続することによって信号の送受信を可能として、上記相違点に係る本願補正発明のような構成とすることは、回胴式遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到できることである。 なお、請求人は、回答書において、引用文献2には主基板200と副基板(回胴装置基板400等)がハーネスを介して接続されている旨が記載されているのであって、本願補正発明のように主制御基板同士をハーネス接続するものとは異なると主張している。 しかし、「主制御基板」の定義が回胴式遊技機の分野において明確に定められているとはいえない上、本願の特許請求の範囲や発明の詳細な説明においても「主制御(回路)基板」と「副制御回路基板」との違い、又は「主制御回路」と「副制御回路」との違いは明確となっていない。 さらに、本件の請求項2には「前記分割された個々の主制御基板が、主従の関係を持ち、・・・前記従側の主制御基板が前記駆動手段を備える」と記載されているところ、「従側の主制御基板」と、引用文献2に記載されている「回胴装置基板400」に、格別な機能的差異を見いだすことはできない。 (4)まとめ 以上のように上記相違点は、当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第三.本願発明について 1.本願発明 平成22年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年7月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 遊技媒体としての1枚のメダルと等価となる5個のパチンコ球を1単位とし、 貸し出されたパチンコ球を投入することで、当該投入されたパチンコ球を1個1個計数して、5球単位で遊技の進行が可能となり、 遊技者の始動操作によってそれぞれ複数の図柄が設けられた複数列の回胴を駆動手段によって周回駆動させ、かつ遊技者の停止操作で前記回胴を停止させ、当該回胴が停止したときの図柄配列によって抽選の結果を報知すると共に、当該抽選の結果に基づいて、前記遊技媒体を、回収又は遊技者への配当に用いる回胴式遊技機の制御回路であって、 物理的に複数に分割され、互いにハーネス接続されることで、データの送受信が可能であり、主として遊技の進行を司る主制御基板群と、 前記遊技媒体の貸し出し、回収を目的として生成される遊技媒体取込データ及び前記遊技媒体の配当を目的として生成される遊技媒体払出データを、前記分割された個々の主制御基板間での送受信を必要としない形態で管理する管理手段と、 を有する回胴式遊技機の制御回路。」 2.特許法第29条第2項の検討 (1)引用文献記載事項 原査定における引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)引用発明と本願発明との対比 本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「遊技媒体払出データ」について、その限定事項である「改ざんなどによって不正に遊技媒体の獲得に結びつく可能性のある」という構成を省いたものといえる。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第四.むすび 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?4)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-25 |
結審通知日 | 2011-03-01 |
審決日 | 2011-03-15 |
出願番号 | 特願2003-315034(P2003-315034) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 励 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 井上 昌宏 |
発明の名称 | 回胴式遊技機の制御回路 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |