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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1236033
審判番号 不服2009-9802  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-11 
確定日 2011-04-27 
事件の表示 特願2003-540876「公共用水処理システム監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日国際公開、WO03/38685、平成17年 3月24日国内公表、特表2005-508052〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月18日の国際出願(パリ条約に基づく優先権主張、2001年10月26日、アメリカ合衆国)であって、平成21年2月5日付で拒絶査定がなされたものである。これに対し、平成21年5月11日に拒絶査定の取消しを求める審判の請求がなされるとともに、平成21年6月8日付で特許請求の範囲を補正対象とする手続補正がなされ、その後、当審による平成22年5月25日付審尋に対し、平成22年9月1日付で回答書が提出されたものである。

2.本願の発明
平成21年6月8日付の特許請求の範囲に対する手続補正(以下、「本件補正」という。)は、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもの、または形式的な補正に該当する。
したがって、本願の請求項1ないし14に係る発明(以下「本願発明1ないし14」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は次の通りである。
「特定のパラメータに対応するデータを継続して出力する複数のセンサを備えた水処理システムにおいてインターネット経由で高度分離処理の性能を監視しかつ評価する方法であって、
前記水処理システムは、前記センサからデータを収集するローカルデータ収集モジュールと、データ計算及び分析用のソフトウェアプログラムを有するサーバコンピュータと、インターネットを介して前記サーバコンピュータに接続可能なローカルコンピュータと、をさらに備えていて、
前記ローカルコンピュータにおいて、
ローカルデータ収集モジュールにアクセスして前記センサからの前記データを得るステップと、
前記データをテキストファイル形式のデータファイルにて記憶するステップと、
前記ローカルコンピュータを前記サーバコンピュータに接続するステップと、
ワールドワイドウェブを介して前記サーバコンピュータに前記データファイルをftp方式またはEメール方式で送信するステップと、
を実行し、
前記サーバコンピュータにおいて、
前記データファイルを受信して、前記サーバコンピュータ内のメモリに前記データファイルを一時的に記憶するステップと、
前記ソフトウェアプログラムを用いて、前記データファイルの前記データから前記水処理システムの現在及び今後の処理性能についてかつ以前に記憶されたデータから前記水処理システムのヒストリカルな処理性能についての計算及び分析に基づいて前記水処理システムのための分析結果を生成するステップと、
ウェブブラウザを介してリモートコンピュータからアクセスして視認できる形式で前記分析結果を前記サーバコンピュータ上で提供するとともに前記分析結果を用いて予め定められた形式の報告書を自動作成してftp方式またはEメール方式のデータファイルで予め定められた送信先に送信するステップと、
を実行することを含む方法。」(以下、「本件発明」という。)

3.刊行物に記載された発明
本願の優先権主張日前に国内で頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された次の刊行物には、以下の事項が記載されていると認められる。

刊行物: 国際公開第00/36412号

a.(第14ページ第3?21行)
「1. A method for monitoring and assessing the performance of an advanced separation and/or ion exchange processes comprising the steps of
a) means for accessing raw operating data from a water treatment system's electronic or PLC control system,
b) storage means for holding said raw operating data in an electronic format on a local computer,
c) transmitting said stored raw data via the world wide web using secure "ftp" or E-mail methods to a remotely located web server computer,
d) temporarily storing such raw data on said web server computer,
e) accessing such data asynchronously from said web server by software machine,
f) manipulating said collected data into an analysis result,
g) uploading the results of said analysis to a web server in a format suitable for access and visualization with any commercially available web browser program.」
b.(第15ページ第1?4行)
「4. The method of claim 1 wherein said software machine includes routines to send e-mail or paper notify selected individuals on the basis of the performance of the system being analyzed.」
c.(第3ページ第20?29行)
「The instant invention is a method of monitoring advanced separation and/or ion exchange processes through the collection of data which is manipulated to generate preconfigured performance, maintenance, quality assurance, quality control, regulatory, cost reports, performance graphing and historical trends. The data is collected from sensors located at an equipment site and transferred to a remote located by use of the Internet where all data received can be used for the generation of reports also accessible by Internet connection.」
d.(第5ページ第13?19行)
「The present invention overcomes these limitations by presenting data in the context of the by now familiar web browser such as Netscape Navigator or Internet Explorer. This data is furthermore already analyzed and formatted in a configuration that allows even non-technical personnel to readily grasp the current state of system performance.」
e.(第6ページ第29行?第7ページ第11行)
「Data is first collected by the use of sensors and on-line analytical devices from numerous locations on a water treatment system. For instance, a typical micro filter or reverse osmosis sensor group would include, but is not limited to: raw water temperature, conductivity, PH, pressure, and turbidity; permeate flow, turbidity, pressure, and conductivity; concentrate flow and pressure as well as on/off operation of the operating pump. The data generated by the sensors and on-line liquid devices are forwarded to a data capture module or programmable controller 10 which performs the required analog to digital conversion for use in transmitting data files 12 and 14 to a main server located off-site by use of local Internet access. Data files may also be transferred by modem to a processing site. The local data capture module, or programmable controller 10, continuously scans sensor data inputs and automatically logs and archives operating data at specified intervals.」
f.(第7ページ第31?33行)
「In this manner, the software is designed to continuously scan sensor input and compare the current value with alarm set points in a pre-determined report 30.」
g.(第8ページ第3?6行)
「The device further has the ability to notify authorized users by E-mail or use of a pager when process conditions meet or exceed, or appear likely to exceed, normal alarm conditions.」
h.(第8ページ第17?22行)
「The software program continually updates the reports for the customer or a customer may view the reports or download them from the web site.
In the preferred embodiment, the reports are configured to each customer's requirements when a service agreement is established,(以下略)」
i.(第10ページ第1?4行)
「Projected membrane element life to be provided estimated upon the operational life remaining (based on current performance and trends) and estimated sinking fund value for membrane replacement.」
j.(第10ページ第29?31行)
「The data set collected is then converted to a comma delimited string value and stored locally on the hard disc in a sequential file.」
k.(第8ページ第10?13行)
「The customer is capable of accessing data related to his processing equipment including all data, information and reports by use of any computer having Internet access capability.」

摘記事項e.中の「raw water temperature, conductivity, PH, pressure, and turbidity; permeate flow, turbidity, pressure, and conductivity; concentrate flow and pressure as well as on/off operation of the operating pump」が、「特定のパラメータ」に該当することは明らかである。また、「local data capture module」、すなわち「ローカルデータ収集モジュール」は継続的にセンサーをスキャンしてデータを収集しており、これが、センサーが継続してデータを出力することを意味していることは、自明である。

そこで、技術常識を勘案しつつ、刊行物記載の事項を本件発明の記載に照らして和文化して整理すると、刊行物には次の発明が記載されていると認められる。
「特定のパラメータに対応するデータを継続して出力する複数のセンサを備えた水処理システムにおいてインターネット経由で高度分離処理の性能を監視しかつ評価する方法であって、
前記水処理システムは、前記センサからデータを収集するローカルデータ収集モジュールと、データ計算及び分析用のソフトウェアプログラムを有するサーバコンピュータと、インターネットを介して前記サーバコンピュータに接続可能なローカルコンピュータと、さらに備えていて、
前記ローカルコンピュータにおいて、
ローカルデータ収集モジュールにアクセスして前記センサからの前記データを得るステップと、
前記データをデータファイルにて記憶するステップと、
前記ローカルコンピュータを前記サーバコンピュータに接続するステップと、
ワールドワイドウェブを介して前記サーバコンピュータに前記データファイルをftp方式またはEメール方式で送信するステップと、
を実行し、
前記サーバコンピュータにおいて、
前記データファイルを受信して、前記サーバコンピュータ内のメモリに前記データファイルを一時的に記憶するステップと、
前記ソフトウェアプログラムを用いて、前記データファイルの前記データから前記水処理システムの現在及び今後の処理性能についてかつ以前に記憶されたデータから前記水処理システムのヒストリカルな処理性能についての計算及び分析に基づいて前記水処理システムのための分析結果を生成するステップと、
ウェブブラウザを介してリモートコンピュータからアクセスして視認できる形式で前記分析結果を前記インターネット上で提供するとともに前記分析結果を用いて報告書を自動作成してftp方式またはEメール方式のデータファイルで予め定められた送信先に送信するステップと、
を実行することを含む方法。」(以下、「刊行物記載発明」という。)

5.対比
本件発明と刊行物記載発明とを対比すると、両者は以下の諸点において一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「特定のパラメータに対応するデータを継続して出力する複数のセンサを備えた水処理システムにおいてインターネット経由で高度分離処理の性能を監視しかつ評価する方法であって、
前記水処理システムは、前記センサからデータを収集するローカルデータ収集モジュールと、データ計算及び分析用のソフトウェアプログラムを有するサーバコンピュータと、インターネットを介して前記サーバコンピュータに接続可能なローカルコンピュータと、をさらに備えていて、
前記ローカルコンピュータにおいて、
ローカルデータ収集モジュールにアクセスして前記センサからの前記データを得るステップと、
前記データをデータファイルにて記憶するステップと、
前記ローカルコンピュータを前記サーバコンピュータに接続するステップと、
ワールドワイドウェブを介して前記サーバコンピュータに前記データファイルをftp方式またはEメール方式で送信するステップと、
を実行し、
前記サーバコンピュータにおいて、
前記データファイルを受信して、前記サーバコンピュータ内のメモリに前記データファイルを一時的に記憶するステップと、
前記ソフトウェアプログラムを用いて、前記データファイルの前記データから前記水処理システムの現在及び今後の処理性能についてかつ以前に記憶されたデータから前記水処理システムのヒストリカルな処理性能についての計算及び分析に基づいて前記水処理システムのための分析結果を生成するステップと、
ウェブブラウザを介してリモートコンピュータからアクセスして視認できる形式で前記分析結果を提供するとともに前記分析結果を用いて報告書を自動作成してftp方式またはEメール方式のデータファイルで予め定められた送信先に送信するステップと、
を実行することを含む方法。」である点。
<相違点1>
ローカルコンピュータにおいてデータを記憶するステップは、前者では「テキストファイル形式」のデータファイルにて行うのに対し、後者ではデータファイルの形式について明記がない点。
<相違点2>
分析結果の提供は、前者では「サーバコンピュータ上」で行うのに対し、後者では「インターネット上」で行う点。
<相違点3>
報告書は、前者では予め定められた形式のものが送信されるのに対し、後者ではこの点について明記がない点。

6.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

6.1 <相違点1>について
上記摘記事項j.によれば、刊行物記載発明において、データは「comma delimited string value」の「sequential file」としてローカルコンピュータに記憶される。つまり、刊行物記載発明ではデータは数字列の形式で記憶されるのであり、この数字列はテキスト形式、すなわち文字列からなる形式、ということができる。
したがって、<相違点1>に係る発明特定事項は実質的な相違ではない。
また、データをテキストファイル形式でまとめることは従来周知の技術であるから、<相違点1>に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものということもできる。

6.2 <相違点2>について
刊行物記載発明においても、分析結果の提供をインターネット上で行う際に、サーバコンピュータを介して行っていることは、当業者にとって自明であるから、刊行物記載発明でもサーバコンピュータ上で分析結果を提供しているということができる。
したがって、<相違点2>に係る発明特定事項は、単に表現上の違いに過ぎず、実質的な相違ではない。

6.3 <相違点3>について
刊行物には、例えば、摘記事項c.には「preconfigured (中略)reports」、摘記事項d.には「This data is furthermore already analyzed and formatted in a configuration that allows (以下略)」、摘記事項f.には「pre-determined report」、摘記事項h.には「reports are configured to each customer's requirements」との記載があり、これらの記載から、刊行物記載の発明では、少なくとも、顧客、すなわち送信先ごとに、顧客の要求に応じて、予め定められた項目について、報告書が自動作成されることが理解される。
送信先ごとに要求に応じて予め定められた項目について報告する場合、それを送信先の顧客が要求する、予め定められた形式で作成することは、サービスの一環として、当業者が容易に想到し得るものであり、その効果も格別のものということはできない。

6.4 まとめ
各相違点は上記のとおり、実質的な相違でないもの、または当業者が容易に想到し得るものであり、しかも、本件発明には、刊行物記載発明に基づいて普通に予測される範囲を超える格別の作用効果を見出すこともできないため、本件発明は刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願発明2ないし14について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

.
 
審理終結日 2010-11-24 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-13 
出願番号 特願2003-540876(P2003-540876)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男二階堂 恭弘  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
刈間 宏信
発明の名称 公共用水処理システム監視方法  
代理人 藤村 元彦  

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