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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C21C
管理番号 1236036
審判番号 不服2009-16755  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-09 
確定日 2011-04-27 
事件の表示 平成11年特許願第313189号「脱炭滓を用いた溶銑脱燐方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月15日出願公開、特開2001-131624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月4日の出願であって、平成20年6月2日付けで手続補正がなされ、平成21年6月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願発明は、平成20年6月2日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「生石灰と、酸化鉄及び/又は酸素ガスを用いた溶銑脱燐方法において、
Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))を0.3以上とし、CaO/SiO_(2)が2?4.5、P_(2)O_(5)が1?7%である転炉脱炭滓を用いることを特徴とする溶銑脱燐方法。」(以下、「本願発明1」という。)

3.原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、本願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



刊行物1:特開昭57-140808号公報
刊行物2:特公平2-14404号公報
刊行物3:鉄と鋼 1990年 第6号 P.72-79(P.878-8 85)
刊行物4:特開平8-199218号公報
刊行物5:特開平8-157921号公報

4.刊行物の主な記載事項
原審の拒絶査定に引用された刊行物2及び刊行物3には次の事項が記載されている。

(1)刊行物2(特公平2-14404号公報)に記載された事項

〔2a〕「【特許請求の範囲】
1 溶銑の精錬に当つて上下両吹き機能を有した2基の転炉を使用し、かつその一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として、前記脱燐炉内へ注入した溶銑に前記脱炭炉で発生した転炉滓を主成分とする精錬剤を添加すると共に、底吹きガス撹拌を行いつつ酸素ガスを上吹きすることで溶銑温度を1200?1400℃に保ちながら溶銑脱燐を行い、次いで得られた脱燐溶銑を脱炭炉にて脱炭並びに仕上脱燐することを特徴とする、脱燐スラグ?メタルの向流的2段階接触精錬を伴う製鋼方法。
2 脱炭炉で発生した転炉滓を溶融状態で脱燐炉内の溶銑に添加する、特許請求の範囲第1項記載の製鋼方法。
3 脱炭炉で発生した転炉滓を一旦冷却凝固させた後脱燐炉内の溶銑に添加する、特許請求の範囲第1項記載の製鋼方法。
4 脱燐炉内へ注入する被処理溶銑がSi:0.30重量%以下まで予備脱珪処理されたものである、特許請求の範囲第1乃至3項のいずれかに記載の製鋼方法。」(特許請求の範囲)

〔2b〕「〈産業上の利用分野〉
この発明は、全製鋼工程を通じての造滓剤(生石灰等)使用量を極力抑えつつ高能率脱燐を行い、品質の良好な鋼をコスト安く溶製する方法に関するものである。」(第1欄第23行?第2欄第3行)」

〔2c〕「脱燐炉で使用される精錬剤(脱燐フラツクス)は脱炭炉で発生した転炉滓を主成分としたものであるが、上記転炉滓以外に酸化鉄及び蛍石を基本の副成分として配合するのが良い。例えば、
転炉滓:40?80重量%、
酸化鉄:20?60重量%、
蛍石:0?20重量%
程度の配合割合としたものが推奨される。勿論、これに限定される訳ではないが、転炉滓を滓化して低融点の脱燐スラグとしたり脱燐が進行し易いようにスラグの酸化力を高めるためには酸化鉄の併用は極めて重要である。なお、前記以外に付加的に生石灰、ドロマイト或いは石灰石を配合しても良いし、溶銑[Mn]向上のためにマンガン鉱石を配合しても良い。」(第7欄第32行?第8欄第3行)

〔2d〕「脱燐炉においては、CaO/SiO_(2)=2?3程度と脱炭炉に比して低塩基度であつても良好に脱燐が進行する。」(第8欄第18?20行)

〔2e〕「この発明の方法で使用される脱燐炉で発生するスラグは、P_(2)O_(5)含有量が4?10%にもなつているので肥料としての用途が開ける上、遊離石灰が無いため路盤材としての有効利用も可能である。」(第11欄第29?33行)

〔2f〕「〈実施例〉
実施例 1
まず、トーピード内で脱硫・脱珪処理した第1表の上段に示される如き成分組成の溶銑160トンを脱燐炉として使用する上下両吹き複合吹錬転炉に注銑し、これに、同様形式の脱炭炉で発生した転炉滓を冷却・凝固して30mm以下の粒径に破砕したもの20Kg/t、同様の粒径を持つ鉄鉱石16Kg/t、並びに蛍石4Kg/tとを混合状態で添加して12分間の脱燐処理を行つた。
なお、使用した脱燐炉並びに脱炭炉は、上述のように何れも炉底よりガス吹き込み撹拌が可能な160トン上下両吹き複合吹錬転炉であり、以下の何れの実施例においても第2表に示すような操業条件が採用された。
このようにして得られた脱燐銑(成分組成は第1表の中段に示す)を一旦鍋中に出銑してから脱炭炉に注銑し、通常の転炉操業で用いる生石灰の10Kg/tと蛍石1Kg/tとを造滓剤として主吹錬を実施した。なお、この際、終点温度(吹錬終了温度)が1635℃となるように冷却材としての鉄鉱石を適時添加した。
このとき発生した転炉滓は20Kg/tであり、これを鉄鉱石及び蛍石と共に再び次のチヤージの脱燐剤原料として脱燐炉に添加して脱燐を行うと言う一連の操作を繰り返した。」(第12欄第30行?第15欄第2行)

(2)刊行物3(鉄と鋼 1990年 第6号 P.72-79(P.87 8-885)に記載された事項

〔3a〕「FeOとFe_(2)O_(3)を含むスラグと高炭素濃度溶鉄間のりん反応」(論文名)

〔3b〕「また,特に酸化性雰囲気下におけるスラグ中Fe^(2+),Fe^(3+)が溶銑中Pの酸化反応に及ぼす影響はこれまでに検討されていない.
本研究においては,機械撹拌条件,及び雰囲気中酸素分圧を系統的に変化させ,Li_(2)O-CaO-SiO_(2)-Fe_(t)O系スラグによる高炭素濃度溶鉄中Pの酸化反応速度を測定し,雰囲気中酸素分圧,スラグ中Fe^(2+),Fe^(3+)濃度及び撹拌回転数の影響を調べた.さらに酸化性雰囲気下におけるスラグ中酸化鉄による溶鉄中Pの酸化反応モデルを作成し,Pの酸化反応機構を検討した。」(第72頁右欄第1行?第11行)

〔3c〕「りんの酸化反応とスラグ中Fe^(3+)の関係については,以下のように考えられる.Fig6,7に示したようにPo_(2)が高いほどFe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が大きい.これより,スラグ中Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))の増加は界面酸素ポテンシャル及びLpの増大をもたらすと考える.したがって,Fig.12においてPo_(2)の増加とともに脱りん反応速度-Δ[%P]/Δtが大きくなること,また、Fig.13においてFe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が高いほど((%P)/[%P])_(max)が大きくなることは,Lpに及ぼす界面酸素ポテンシャルの影響によって説明される.」(第77頁左欄第6行?第15行)

〔3d〕Fig.6.及びFig.7.には、雰囲気中の酸素分圧Po_(2)とFe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))の関係について、Po_(2)が、おおよそ0.1atm以上で、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が0.3を超えることが図示されており、また、Fig.12.及びFig.13.には、それぞれ、雰囲気の酸素分圧Po_(2)に対する脱りん反応速度-Δ[%P]/Δtとの関係、及び、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))に対するスラグ中りんとメタル中りんの濃度比の最大値((%P)/[%P])_(max)との関係について、雰囲気の酸素分圧Po_(2)の増加に伴い脱りん反応速度が上昇すること、及び、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))の増大に伴い、((%P)/[%P])_(max)が上昇し、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が0.3以上では、((%P)/[%P])_(max)は20を超えることが図示されている。

5.当審の判断

(1)刊行物2に記載された発明
ア)刊行物2の〔2b〕の「この発明は、全製鋼工程を通じての造滓剤(生石灰等)使用量を極力抑えつつ高能率脱燐を行い、品質の良好な鋼をコスト安く溶製する方法に関するものである。」との記載によれば、刊行物2には、造滓剤(生石灰等)の使用量を極力抑えつつ高能率に脱燐を行う『脱燐方法』が記載されているといえる。
そして、刊行物2の〔2a〕の「溶銑の精錬に当つて上下両吹き機能を有した2基の転炉を使用し、かつその一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として、前記脱燐炉内へ注入した溶銑に前記脱炭炉で発生した転炉滓を主成分とする精錬剤を添加すると共に、底吹きガス撹拌を行いつつ酸素ガスを上吹きすることで溶銑温度を1200?1400℃に保ちながら溶銑脱燐を行い」との記載によれば、前記『脱燐方法』は、脱燐炉内の溶銑に対して、脱炭炉として用いた転炉にて発生する転炉滓を主成分とする精錬剤を添加し、酸素ガスを上吹きすることにより、溶銑脱燐を行うものであるから、『酸素ガスを用いた溶銑脱燐方法において、脱炭炉で発生した転炉滓を主成分とする精錬剤を用いる溶銑脱燐方法』ということができる。

イ)ここで、前記『転炉滓を主成分とする精錬剤』に関し、刊行物2の〔2c〕の「脱燐炉で使用される精錬剤(脱燐フラツクス)は・・・例えば、転炉滓:40?80重量%、酸化鉄:20?60重量%、蛍石:0?20重量%程度の配合割合としたものが推奨される。」、「転炉滓を滓化して低融点の脱燐スラグとしたり脱燐が進行し易いようにスラグの酸化力を高めるためには酸化鉄の併用は極めて重要である。」、及び、「なお、前記以外に付加的に生石灰、ドロマイト或いは石灰石を配合しても良い」とのそれぞれの記載や刊行物2の〔2f〕の「実施例1 ・・・得られた脱燐銑・・・を一旦鍋中に出銑してから脱炭炉に注銑し、通常の転炉操業で用いる生石灰の10Kg/tと蛍石1Kg/tとを造滓剤として主吹錬を実施した。・・・ このとき発生した転炉滓は20Kg/tであり、これを鉄鉱石及び蛍石と共に再び次のチヤージの脱燐剤原料として脱燐炉に添加して脱燐を行うと言う一連の操作を繰り返した。」との記載によれば、前記『転炉滓を主成分とする精錬剤』は、『転炉滓を主成分とし、生石灰及び酸化鉄を含有する精錬剤』ということができる。
そして、〔2d〕の「脱燐炉においては、CaO/SiO2=2?3程度と脱炭炉に比して低塩基度であつても良好に脱燐が進行する。」との記載によれば、『脱燐炉においては、CaO/SiO_(2)が2?3程度』であるといえる。

ウ)以上の記載事項及び認定事項を、本願発明1の記載ぶりに則り整理すると、刊行物2には次の発明が記載されているといえる。

『生石灰と、酸化鉄及び酸素ガスを用いた溶銑脱燐方法において、CaO/SiO_(2)が2?3程度である脱炭炉で発生した転炉滓を用いる溶銑脱燐方法。』(以下、「刊行物2発明」という。)

(2)本願発明1と刊行物2発明との対比
本願発明1と刊行物2発明とを対比すると、刊行物2発明の『脱炭炉で発生した転炉滓』は、本願発明1の「転炉脱炭滓」に相当する。
そうすると、本願発明1と刊行物2発明とは、「生石灰と、酸化鉄及び酸素ガスを用いた溶銑脱燐方法において、CaO/SiO_(2)が2?3程度である転炉脱炭滓を用いる溶銑脱燐方法」である点において一致し、以下の点において相違する。

相違点1;本願発明1では、転炉脱炭滓中のFe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が0.3以上であるのに対し、刊行物2発明では、脱炭炉で発生した転炉滓中のFe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が不明である点。

相違点2;本願発明1では、転炉脱炭滓中のP_(2)O_(5)が1?7%であるのに対し、刊行物2発明では、脱炭炉で発生した転炉滓中のP_(2)O_(5)の含有量が不明である点。

(3)相違点についての判断
以下、相違点1、2について検討する。

(3-1)相違点1について
刊行物2の〔2c〕の「転炉滓を滓化して低融点の脱燐スラグとしたり脱燐が進行し易いようにスラグの酸化力を高めるためには酸化鉄の併用は極めて重要である」との記載によれば、刊行物2発明は、転炉脱炭滓に酸化鉄を添加する処理がスラグの酸化力を高め、融点降下による脱燐スラグの滓化や脱燐の進行に有効であることを認識してなされたものであるといえる。
そして、刊行物2には、スラグ中のFe^(3+)とFe^(2+)について、その具体的な量的関係についての記載は認められないものの、刊行物3の〔3a〕、〔3b〕には、FeO、Fe_(2)O_(3)を含むCaO-SiO_(2)-Fe_(t)O系のスラグにおいて、高炭素濃度溶鉄中のりん、すなわち、溶銑中のりんの酸化反応等に及ぼす影響について検討を行った旨記載され、具体的には、刊行物3の〔3c〕に、その雰囲気中の酸素分圧Po_(2)を高くすることにより、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))を大きくし、その結果、脱りん反応速度-Δ[%P]/Δt、及び、メタル中のりん濃度[%P]に対するスラグ中のりん濃度(P%)の比を大きくできることが記載され、また、Fig6.7.12.13.からは、Fe^(3+)/(Fe^(3+)+Fe^(2+))が0.3以上の数値範囲にて、脱りん反応速度及びメタル中のりん濃度[%P]に対するスラグ中のりん濃度(P%)の比を増大させることが示されているといえるから(〔3d〕参照)、刊行物2発明において、酸素分圧を調整し、Fe^(3+)の(Fe^(3+)+Fe^(2+))に対する比を刊行物3に示された0.3以上とし、脱りん速度の向上等を図ることは当業者が容易に想到し得ることである。
そうすると、相違点1は、当業者が容易になし得る事項である。

(3-2)相違点2について
刊行物2発明は、その脱炭炉で発生した転炉滓中のP_(2)O_(5)の含有量が不明であるものの、刊行物2の〔2e〕の「この発明の方法で使用される脱燐炉で発生するスラグは、P_(2)O_(5)含有量が4?10%にもなつている」との記載によれば、脱燐終了時点におけるP_(2)O_(5)の含有量は4?10%であり、脱燐能を有する前記転炉滓が脱燐処理前において、これより低い含有量であることは明らかであるから、本願発明1におけるP_(2)O_(5)の含有量である1?7%と重複し一致するものといえる。
そうすると、前記相違点2は、実質的なものとすることはできない。

また、仮に、前記相違点2が、実質的なものであるとしても、転炉滓を溶銑脱燐に用いる際のP_(2)O_(5)の含有量が、1?1.5%、或いは、1.6%であることは、普通に知られている事項であるから(要すれば、例えば、前者については、刊行物1の2頁右上欄の2行?8行を、後者については、特開平8-3611号公報の【0010】及び表2を参照。)、刊行物2発明において、P_(2)O_(5)の含有量を1?7%程度とすることは当業者が容易になし得るものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、本出願前に国内で頒布された刊行物である刊行物2及び刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、原査定の理由により拒絶すべきでものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-07 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-03-03 
出願番号 特願平11-313189
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 孔一井上 猛  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 山本 一正
植前 充司
発明の名称 脱炭滓を用いた溶銑脱燐方法  
代理人 内藤 俊太  
代理人 田中 久喬  

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