• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B65B
管理番号 1236062
審判番号 無効2010-800024  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-05 
確定日 2011-05-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3908897号発明「袋による包装方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成12年8月 8日 特許出願(国内優先権主張:平成12年3月
3日)
平成19年1月26日 設定登録(特許第3908897号)
平成20年1月28日 訂正審判請求(訂正2008-390009号)
平成20年3月27日 審決(訂正を認める)
平成21年2月12日 判定請求(判定2009-600010号)
平成21年4月27日 判定(技術的範囲に属する)
平成22年2月 5日 本件無効審判請求
平成22年4月26日 答弁書提出(被請求人)
平成22年5月28日 審理事項通知書
平成22年6月21日 口頭審理陳述要領書(1)提出(請求人)
平成22年6月21日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成22年6月28日 口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人)
平成22年7月 5日 口頭審理(審理終結)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし請求項6に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は,訂正審判(訂正2008-390009号)により訂正された明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「【請求項1】包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして,その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせた後,前記袋の開口を開かせ,開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ,横に広げられた前記袋の開口端部を挟んでシールすることを特徴とする袋による包装方法。
【請求項2】包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして,その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口端部を粘着性をもつ前記搬送ベルトに対して偏平状態に付着させた後,前記袋の開口を開かせ,開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ,横に広げられた前記袋の開口端部を挟んでシールすることを特徴とする袋による包装方法。
【請求項3】包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして,その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口端部に吸引力を働かせる前記搬送ベルトに対して偏平状態に保持させた後,前記袋の開口を開かせ,開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ,横に広げられた前記袋の開口端部を挟んでシールすることを特徴とする袋による包装方法。
【請求項4】前記袋の開口に向けてエアを吹いて前記開口を開かせることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の袋による包装方法。
【請求項5】前記袋の開口を吸引によって開かせることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の袋による包装方法。
【請求項6】前記拡開口バーによって横に広げられた状態の開口端部を前記搬送ベルトと脱気用部材で挟み,前記袋と前記脱気用部材とを相対移動させ同脱気用部材によって袋の開口端と充填包装品との間にある空気をしごいて排出させた後,前記袋開口端部のシールを行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の袋による包装方法。」

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,審判請求書において,「特許第3908897号の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めており,平成22年6月21日付けの口頭審理陳述要領書(1)及び同月28日付けの口頭審理陳述要領書(2)も併せると,請求人の主張は,概略次のとおりである。(1)については,調書にも記載されているように,口頭審理において確認がなされている。
なお,請求人は平成22年7月5日付けで「口頭審理陳述要領書(3)」を提出しているが,これは審理終結後に提出されたものである。

(1)請求項1?6に係る発明は,下記証拠方法に示す甲第2号証?甲第5号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(2)甲第3号証の1をベースとしたうえで,甲第2号証のエアの吹き付けへの置換,又は甲第5号証との結合によって構成B(その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせた後)を採用し,更には,非密着状態による包装を選択したうえで,甲第4号証の1に基づいて構成D(開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ)を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(3)甲第3号証の1は,吸着ベルト46の進行方向方向両側における真空吸引を原因として,包装袋36の開口部を吸着ベルト46に対して偏平状態にさせる構成を示唆している。参考資料1及び参考資料1の2の写真撮影報告書により証明されるように,吸着ベルト46の進行方向両側における通孔52の吸引に基づく気流の影響によって,下側のフィルムの吸着ベルト46との接触領域は順次増大し,その結果,開口端部は横方向に広がり,フィルムの上側もまた下側に移行し,偏平状態が形成される。

(4)甲第5号証において,第一のノズル31は,バッグの開口に寄与するものであり,第二のノズル43は,開口端部に上方からエアを吹き付けて開口部をコンベヤベルト18に対して偏平状態にさせるものである。

〈証拠方法〉
甲第1号証:実公昭50-33402号公報
甲第2号証:米国特許第5092104号明細書
甲第3号証の1:特公昭62-12085号公報
甲第3号証の2:実願昭57-176406号(実開昭59-80204
号)のマイクロフィルム
甲第4号証の1:特開平6-191519号公報
甲第4号証の2:特開平4-72119号公報
甲第4号証の3:実願平2-54851号(実開平4-29903号)の
マイクロフィルム
甲第5号証:特表平9-501378号公報
甲第6号証:実願平3-59839号(実開平5-13901号)のCD
-ROM
甲第7号証:平成18年9月26日起案拒絶理由通知書
甲第8号証:平成18年11月8日付け手続補正書
甲第9号証:平成18年11月8日付け意見書
甲第10号証:訂正2008-390009号公報

2.被請求人の主張
被請求人は,答弁書において,「本審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めており,平成22年6月21日付けの口頭審理陳述要領書も併せると,被請求人の主張は,概略次のとおりである。

(1)請求項1の発明は,工程A?E(A.包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして;B.その開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせた後;C.前記袋の開口を開かせ;D.開口した前記袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げ;E.横に広げられた前記袋の開口端部を挟んでシールする)をこの順に結合したことに特徴を有し,特有の作用・効果を奏する。甲号証のそれぞれに記載された発明の単なる寄せ集めではない。

(2)請求項1の発明は,袋内に2本の拡開口バーを挿入する前に袋の開口を開かせるために,その前工程で,一見袋の開口を開くこととは反するような,袋の開口端部に上方からエアを吹き付けるという工程を有することにより,開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせ,袋の開口を確実に開かせるようにしたものである。

(3)薄くて腰の弱いプラスチックの袋に背の高いスライス食パンのような包装品を充填した場合には,袋の開口端部が変形し易く,袋の開口に向けてエアを吹き付けてその開口を開かせようとしても,いびつに変形している袋の開口部が却って潰れてしまったり,開口端部の上縁を真空吸着により持ち上げて開口を開かせようとしても,上手く吸着できないか,いびつに変形したまま持ち上げられたりする。

第4 当審の判断
1.刊行物に記載された事項
(1)甲第1号証
請求人が甲第1号証として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,実公昭50-33402号公報には,包装装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
1a)「そして次に上記袋体6,6,6を,上記搬送装置の末端部において,密封装置4の移送台42上に順次移乗せしめる。この時上記袋体6はこれを移送台42上に横臥せしめると共に,その開放された口端部6”が補助移送台43上に軽接触する様載置せしめればよく,斯くする時は上記袋体6が移送機構41上を移送されつつ,先づ上記口端部6”が圧延機構45により扁平状に圧延される扁平状に圧延された上記口端部6”が回転ブラツシ46’により皺伸しされつつ整形機構46内に移送されると移送機構41が停止して,口端部6”は,次の工程で円滑に密封し得る様,回転ブラツシ46’によつて圧延皺を伸ばされ整形せしめられる。
整形された上記口端部6”は,間欠移送する移送機構41によつて密封機構47に移送され,その停止時には,引込装置48が口端部6”を外側方へ引込むと同時にシールカツター装置49が動作し,これによりシール予定部6’が溶着密封されてシール部6aを形成すると共に,口端部6”が溶断され,該口端部6”が上記引込装置48により外方へ排除せしめられる事になる。」(第8欄第42行?第9欄第19行)

(2)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,米国特許第5092104号明細書には,図面とともに次の事項が記載されている(和訳は請求人による)。
2a)「Referring to the drawings in detail and, in particular to FIG.1, a universal bag spreader apparatus of this invention, indicated generally at 12, is utilized in conjunction with a baked goods production system 14. The baked goods production system 14 utilizes 1) a bakery and packing assembly 20 wherein a product, such as hamburger or hot dog buns, are baked to achieve a baked product 16 which is placed in a container member 18 that may consist of a clear plastic bag of various sizes, shapes, and thicknesses; 2) a continuous conveyor assembly 22 to convey the bag container member 18 enclosing the baked product 16 on a belt or roller conveyor structure;」(第5欄第51?63行;詳細な図面および特に図1を参照すると,12で示された本発明の汎用袋拡開装置は,焼成商品生産システム14に関連して利用される。焼成商品生産システム14は,1)内部でハンバーガーやホットドッグ用のパンのような物品が焼成されて焼成品16となり,これは種々の寸法,形状および厚みの透明なプラスチック袋からなる容器18中に配置される焼成包装組立体20と,2)前記焼成品16を封入した袋容器18をベルトまたはローラーコンベア上で搬送する連続コンベヤ集合体22とを利用している。)
2b)「The primary object of the universal bag spreader apparatus 12 of this invention is to utilize air flow to place the open bag end of the container member 18 in the best condition for subsequent operation through the bag closing assembly which is spread out and flattened to a minimum height.」(第11欄第45?50行;本発明に係る汎用袋拡開装置12の主たる目的は,空気流を利用して容器18の開放袋端を,次工程のために袋閉成機構によって拡開され平坦にされて最小の高さとなった最良状態にすることにある。)
2c)「The universal bag spreader apparatus of this invention provides a means of achieving an adjustable air flow and volume which can be directed through a discharge nozzle in a precise manner against the top and open end of a container member operable to 1) first contact and drive out any air contained with the container member through the open end thereof; and 2) force an outer open end of the air evacuated container member into a flattened condition for a subsequent bag closing operation, thus placing in the best condition for attaching a clip member and tie member thereto.」(第13欄第30?40行;本発明に係る汎用袋拡開装置は,容器の頂部および開放端に対して排気ノズルを介して調節可能な空気流を指向させる手段を提供するものであり,この空気流は1)第1に容器の開放端に接触して該容器に含まれている空気を追い出し,また2)空気が排出された容器の外部開放端を次の袋閉成工程のために平坦となる条件として,該容器にクリップや締具を装着するのに最適な状態におくものである。)

(3)甲第3号証の1
請求人が甲第3号証の1として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,特公昭62-12085号公報には,真空包装装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
31a)「第1図は,本発明装置の実施例が好適に応用される一連の真空包装ラインの概略構成を示す。この真空包装ラインは,被包装物10の搬送経路に従つて,製袋充填セクシヨン12,包装袋の開口開放セクシヨン14および真空包装セクシヨン16の3つのブロツクに大別される。」(第6欄第33?38行)
31b)「第1図の実施例では,包装袋36はその開口部を横にして水平に搬送され,真空吸引ノズル66は該開口部に水平に挿入されるようになつている」(第6欄末行?第7欄第3行)
31c)「製袋充填セクシヨン12につき概略説明すると,ロール状に巻かれた気密性でかつ加熱溶着等のヒートシール可能な包装用フイルム18を,一対の引張りローラ20により繰出すと共に,ターニングバー22を介して走行方向を転換させ,フオーマ(製袋器)24により折返して断面形状において横U字形を呈する連続フイルムを形成する。
スプロケツト26に巻掛けされて循環走行する無端チエン28に,図示形状のプツシヤ30を所定間隔で配設し,このプツシヤ30により被包装物10を,前記横U字形に形成したフイルム18の間に送り込む。被包装物10を挟持したフイルム18は,コンベヤ32上を搬送されると共に,このコンベヤ32の所定位置に上下の関係で対向的に配設した加熱切断刃34(本体作動部は図示せず)により,所定間隔で横方向に加熱融着および切断されて,一端部が開口し内部に被包装物10を充填した個々の包装袋36が得られる。」(第7欄第9?27行)
31d)「前記の製袋充填セクシヨン12におけるコンベヤ32の搬送方向下流に,包装袋の開口開放セクシヨン14が整列的に隣接配置される。この包装袋の開口開放セクシヨン14は,少なくとも一端部が開口した包装袋36(実施例では一端部のみ開口している)の開口部を充分開放せしめて,後工程での真空吸引ノズルの挿入を容易にするために設けられる。そして包装袋36を搬送ベルト面に吸着固定する吸着ベルト46と,この吸着ベルト46の側方に配置されて,前記包装袋36の開口部を送気により充分開放させる送気ノズル48とから基本的に構成される。すなわち,吸着ベルト46は,水平に所定間隔離間して平行配置したローラ50,50に巻掛けた無端ベルトコンベヤであつて,その搬送ベルト面に多数の通孔52が穿設されると共に,対向する上下のベルトの間に真空源(図示せず)に接続する真空箱54が介装され,該真空箱54の上方開口部は,上部搬送ベルト面の裏側に近接して臨んでいる。従つて,真空箱54を真空源に連通すれば,吸着ベルト46の上部搬送ベルト面には負圧帯域が形成され,この負圧帯域に載置された包装袋36は,吸着ベルト46に確実に吸着固定されたまま搬送されることになる。」(第8欄第14?37行)
31e)「前記製袋充填セクシヨン12(例えば第1図?第3図の何れか)で被包装物10を充填され,かつ少なくとも一端部を開口された個々の(非連続の)包装袋36は,次工程の包装袋の開口開放セクシヨン14に移送される。そして真空箱54の真空付勢を行なうことにより負圧帯域が形成された吸着ベルト46の搬送ベルト面に,前記包装袋36は確実に吸着固定されて矢印方向に搬送される(第7図1参照)。
このように吸着ベルト46に吸着担持された包装袋36が,前記の送気ノズル48の前方を通過すると,その通過タイミングに合わせて(または常時作動により)図示しないコンプレツサからの圧縮空気が,該ノズル48から包装袋開口部に向けて供給送気され,これによつて該開口部は充分に開放される(第7図2参照)。この場合に,包装袋36はベルト46に確実に安定吸着されているから。前記ノズル48からの送気によつて吹飛ばされたり,位置ずれを生じたりすることはない。
開口部が充分開放された包装袋36は,真空包装セクシヨン16に搬送され,第1図および第7図3に示すように,搬送ベルト56およびその上方に平行に配設された押えベルト58とにより挟圧保持される。これによつて包装袋36は,搬送途次において,搬送ベルト56に対し位置ずれを来たすことはない。このように両ベルト56,58により包装袋36が挟圧保持されるのとタイミングを合わせて,第1図のように同期的に周回走行している一連のノズル66が,順次対応の包装袋36の開口部に挿入され(第7図3),ノズル挿入状態で搬送される途次において,前記一対の弾性ベルト82,82により包装袋36の開口部周縁は密着的に挟圧される(第7図4参照)。またこれと同時に,包装袋36に挿入されている当該の真空吸引ノズル66は,弁作用下に真空ポンプ76に連通して真空吸引が行なわれ,包装袋36の脱気がなされる(第7図4および第7図5)。」(第12欄第5行?末行)
31f)「次いで包装袋36は,前記真空吸引ノズル66が開口部中に挿入され,かつ前記一対の弾性ベルト82,82により開口部周辺を密着的に挟圧された状態のまま搬送され,その間に前記第1の密封融着装置84により,開口部周辺の密封融着(シール)が施される(第7図6参照)。」(第13欄第6?11行)

上記記載事項31a)?31f)及び図面の記載によれば,甲第3号証の1には,次の発明が記載されているといえる(以下,「甲3の1発明」という。)。
「製袋充填セクション12,開口開放セクション14及び真空包装セクション16からなる真空包装装置であって,製袋充填セクション12で被包装物10が充填され,かつ,一端部が開口された個々の包装袋36は,開口開放セクション14において,多数の通孔52が穿設された吸着ベルト46の裏側に臨む真空箱54を真空付勢することで負圧帯域が形成された該吸着ベルト46の搬送ベルト面に吸着固定されつつ搬送され,送気ノズル48の前方を通過する時に送気ノズル48から圧縮空気が送気されて開口部が開放され,次いで,開口部が充分に開放された包装袋36は,真空包装セクション16に搬送され,搬送ベルト56および押えベルト58により挟圧保持され,両ベルトと同期して走行する真空吸引ノズル66が開口部に挿入されるとともに,一対の弾性ベルト82により開口部周縁が挟圧され,真空吸引により包装袋36の脱気がなされた後,密封融着装置84により開口部周辺のシールが施されるものであり,少なくとも開口開放セクシヨン14および真空包装セクシヨン16において包装袋36は開口部を横にして水平に搬送される真空包装装置。」

(4)甲第3号証の2
請求人が甲第3号証の2として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,実願昭57-176406号(実開昭59-80204号)のマイクロフィルムには,袋体のシール装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
32a)「(53)はエアーによる袋体(A)の吸引部材で,袋体(A)の開口部を開放させるものであつて,テンション装置(44)の前方側に設けられている。なお,上記吸引部材に代えて,エアー噴射部材を備えて,袋体(A)の開口部にエアーを吹き込むことで開口部を開放させるようにしてもよい。」(第7頁第19行?第8頁第5行)

(5)甲第4号証の1
請求人が甲第4号証の1として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,特開平6-191519号公報には,粉粒体の袋詰め方法について,図面とともに次の事項が記載されている。
41a)「この発明は,例えば米粒のような粉粒体を袋に充填するための方法に関し,特に充填容量に応じた種々の袋型式への対応に有利な方法に関する。」(段落【0001】)
41b)「スライド部64には,互いに接近する方向へ曲折され,且つ先端部67が先細りとされたエキスパンダー爪68が各々垂下状態で取り付けてある。」(段落【0015】)
41c)「69は上下動用のエアシリンダで,スライドバー63やリンク66等と共にエキスパンダー爪を上下動させるものである。従って,このエキスパンダー爪68は上下・左右に移動自在となる。」(段落【0016】)
41d)「エキスパンダー機構53のエキスパンダー爪68は,白米充填動作時に予め袋5の開口部35内に挿入されており,白米6の投入が完了してスイングアーム51の挟持手段57が袋5から離れる際に,互いに離反すべく更に外側にスライドする。従って,袋5の開口部35は内側から幅サイズいっぱいにフルに押拡げられるので,袋5内に白米6が充填されているにもかかわらず開口部35はいったん真っ直ぐになる。この時におけるエキスパンダー爪68の先端81の位置は袋5のシール部85の下端よりも下方に位置しており,その先端81から上方の部分(シール部85を含む)のシワ防止を図っている。〔図6(イ)及び図7(イ)〕。」(段落【0027】)
41e)「シール動作〔図6(ハ)及び図7(ハ)〕上記エキスパンダー動作にて整えられた袋5のシール部85をヒートシール体70で挟持することにより,シール部85を溶着する。」(段落【0029】)

(6)甲第4号証の2
請求人が甲第4号証の2として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,特開平4-72119号公報には,袋詰機における袋口縁部シール装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
42a)「接近時の張り部材44が袋Cの口に挿入されるようにスライダ37を前進させ,袋Cの口に挿入された張り部材44を離隔させて袋Cの口縁部を一直線状に張った状態にし,その後,シール部材44が袋Cの口縁部を介して受台12に押し付けられるようにシール部材58を下降させる手段」(特許請求の範囲)

(7)甲第4号証の3
請求人が甲第4号証の3として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,実願平2-54851号(実開平4-29903号)のマイクロフィルムには,真空包装機のチヤンバー内で袋口を緊張させる装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
43a)「第3図に示す如く真空包装用のチャンバー(1)(2)は,袋(3)の開口部を溶封するためのシールバー(4)(5)を備えているが,吸盤(6)(7)に吸着した袋の開口部を単にシールバー(4)(5)で挟んで溶封するだけでは被包装物(8)の存在で不定形に膨れている袋の開口部を絞ることになるため,袋の開口部には多数のしわが発生してしまう。そこでこの種の真空包装機では分割されたチャンバー(1)(2)を密封する前に,第4図にも示す如く袋内に一対の爪(9)(9)を挿入し,これら両爪を矢印(10)(10)方向に変位させて袋口を締張させると同時に,対向面に凹凸のある一対の挟持バー(11)(12)で袋口を挟みつけたあと,チャンバー(1)(2)を密封すると共に,該チャンバー内を減圧し,それからシールバー(4)(5)で袋口を溶封するようにしている。」(第2頁第17行?第3頁第11行)
43b)「該アームに設けた一対の爪(31)(31)を前記袋内に挿入したあと,第1押圧要素(35)でレバー(33)に押圧力を加え,その押圧運動をリンク(34)を介して揺動体(26)(26)に作用させることにより,袋の開口部は前記の一対の爪(31)(31)によって緊張される。又前記アーム(24)には一対の揺動架構(37)(37)が支持され,これら揺動架構の端に設けた固定爪片(43)(43)は可動爪片(46)(46)とでそれぞれクランプを形成しているので,前記のようにアームを袋に接近させたとき,袋の両側縁にそれぞれクランプを被せることができ,そのあとアクチュエータ(45)(45)でクランプの間隔を狭める一方,第2押圧要素(47)で前記揺動架構に押力を加えることによって,袋の両側縁はクランプによって外側にしごかれ,かかる状態で袋を挟持バーで挟持することができる。」(第5頁第9行?第6頁第4行)

(8)甲第5号証
請求人が甲第5号証として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,特表平9-501378号公報には,熱溶融性プラスチック材料製のバッグを製造し且つ位置決めする機械について,図面とともに次の事項が記載されている。
5a)「熱溶融性プラスチック材料で出来たバンドであって,長手方向の折り線に沿って折り重ねられ,互いに重なり合った上下のフラップを有しており,その下方のフラップが上方のフラップを横方向に越えて突出するようになされている該バンドを,所定の方向に送り且つ間欠的に前進させる手段」(第2頁第5?8行)
5b)「こうした機械の極く一般的な適用分野は,焼いた後にその風味が失われないように密封バッグ内に直接,挿入しなければならない,ベーカリ製品又はパン塊のような腐敗し易い商品,又は食料品を包装する分野である。」(第5頁第6?8行)
5c)「充填前に,バッグの開放側部を通じて各バッグに圧縮空気を噴射して,バッグを膨張させる噴射手段と,該噴射手段により膨張させる間に各バッグをその下方フラップの縁部に沿って保持する固定手段」(第7頁第11?13行)
5d)「該加圧装置は,固定したバッグ内に圧縮空気を噴射する第一のノズルをその略中央位置に備えることが望ましい。
固定手段の上流に配置され且つ固定すべきバッグの縁部に直接,向けられた第二のノズルを提供し,水平位置にて固定手段と同一高さで搬送面と安定した接触状態にバッグを保つことが可能である。」(第7頁第21?25行)
5e)「バンドBは,厚さ数ミクロンで,透明であることが望ましい熱溶融プラスチック材料で形成したフィルムで構成され,該フィルムは,予め長手方向に沿って折り重ねられている。フィルムは,その二つのフラップの内の一方のフラップFが他方のフラップよりも幅が広くなるように折り重ねられ,一方のフラップFの縁部が他方のフラップの縁部よりも突出するようにする。」(第8頁第23?27行)
5f)「ブレード11により為される融着及び切断の結果,三つの連続した側部に沿って閉鎖される一方,突出するフラップFがある側方の縁部にて開放した,互いに隣接する二つのバッグの側縁部が形成される。」(第9頁第18?20行)
5g)「コンベヤベルト18上におけるバッグに対する把持力を強くするため,ベルトの表面には,一連の穴21が形成されており,下方チャンバ22により空気がこれらの穴を通じて吸引される。チャンバ22は,パイプ23により吸引装置24に接続されている。
コンベヤベルト18により保持されたバッグの突出フラップFは,コンベヤベルトの側方にてフレームの側部に乗る。
バッグを充填する際にバッグの突出するフラップFを固定する装置が,端部の延伸ローラ19に近接する位置に配置されている。」(第9頁末行?第10頁7行)
5h)「ノズル31が固定装置25の加圧部材27に挿通されてインペラに接続され,固定装置25が突出するフラップFを固定した後に,バッグを膨張させ得るようになされている。」(第10頁第15?17行)
5i)「本発明によれば,固定装置25の直ぐ上流で,突出するフラップFに圧縮空気ジェットを噴射して理想的な挿入状態を確実にするための第二のノズル43が,フレームの縁部に固定されて設けられる。
更に,コンベヤベルト18に対するバッグの把持力を増すため,ベルトの表面は,例えばシリコンゴムのような,僅かに接着性のある材料層で覆われている。」(第11頁第11?15行)
5j)図3を参照すると,固定装置25はコンベアベルト18の側方に配置されていることが看てとれる。

(9)甲第6号証
請求人が甲第6号証として提出した,本件特許の出願前(優先日前)に頒布された刊行物である,実願平3-59839号(実開平5-13901号)のCD-ROMには,袋内の残気排除装置について,図面とともに次の事項が記載されている。
6a)「図3に示すように,各側の押付部材3,3が物品入り袋10の外側から袋内の物品上面5aの中央部付近に向けて前進し,該各押付部材3,3のチューブ31,31によって袋外面が押圧されるようになる。そのとき,各チューブ31,31は,物品入り袋10側(特に内部の物品の上面5a)の抵抗力に応じて適度に弾性変形し,該チューブ31の表面が物品上面5aに沿って順応するようになり,袋4の内面を広範囲に亘って物品上面5aに密着させるようになる。従って,当初物品入り袋10内に存在していた残気A(図1参照)を袋の上部開口部から大量に排除させることができる。尚,このとき,レベラーローラ13,13によって袋上部が上方にたくし上げられて,袋4の上部側を左右から接合させるように作用する。伸長したエアシリンダ2,2は所定タイマー後,縮小せしめられて,袋内の残気排除作業は完了する。そして,残気排除作業が終わった物品入り袋10は,コンベア11に乗って次工程(開口部シール工程)側に送られる。」(段落【0024】)

2.本件発明1について
(1)本件発明1と甲3の1発明との対比
本件発明1は,袋の開口端部に上方からエアを吹き付けて同開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせる工程,袋の開口を開かせる工程,開口した袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げる工程,横に広げられた袋の開口端部を挟んでシールする工程をこの順序で行うものであり,また,包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにしてこれらの工程を行うものと解するのが相当である。
甲3の1発明の「被包装物10」,「包装袋36」及び「開口部」は,それぞれ本件発明の「包装品」,「袋」及び「開口端部」に相当し,甲3の1発明の「吸着ベルト46」と「搬送ベルト56」は,本件発明の「搬送ベルト」に相当する。
甲3の1発明は,送気ノズル48から圧縮空気が送気されて包装袋36の開口部が開放されるものであるから,本件発明1における「袋の開口を開かせ」との要件(工程)を備える。また,甲3の1発明は,密封融着装置84により袋の開口部周辺のシールが施されるものであるから,本件発明1における「袋の開口端部を挟んでシールする」との要件(工程)を備える。
したがって,本件発明1と甲3の1発明は,本件発明1の表記にできるだけしたがうとすれば,
「包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして行う包装方法であって,袋の開口を開かせる工程と,袋の開口端部を挟んでシールする工程を含む,袋による包装方法。」の点で一致し,次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は,袋の開口を開かせる工程の後であって,かつ,袋の開口端部を挟んでシールする工程の前に,開口した袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に広げて袋の開口を横に広げる工程を含むのに対して,甲3の1発明は,そのような工程を含まない点。
[相違点2]
本件発明1は,袋の開口を開かせる工程の前に,袋の開口端部に上方からエアを吹き付けて袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせる工程を含むのに対して,甲3の1発明は,そのような工程を含まない点。

(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。
甲3の1発明は,真空包装を行う装置であり,具体的には,真空吸引ノズル66が包装袋36の開口部に挿入されるとともに一対の弾性ベルト82により開口部周縁が挟圧され,真空吸引により包装袋36の脱気がなされた後,開口部周辺のシールが施されるものであるが,被包装物の種類などに応じて,これを真空包装を行わない包装装置に変更することも可能である。甲第4号証の1には,袋の開口部内に挿入した一対のエキスパンダー爪を互いに離反すべく外側にスライドすることにより,開口部を押拡げて真っ直ぐにした後,袋のシール部を溶着する粉粒体の袋詰め方法が記載されている(記載事項41aないし41e参照)。この「エキスパンダー爪」は,本件発明1の「拡開口バー」に相当する。甲3の1発明において,真空包装をやめ,包装袋36の開口部内に一対のエキスパンダー爪を挿入し,これを互いに離反すべく外側にスライドすることにより,開口部を押拡げて真っ直ぐにした後,開口部周辺にシールを施すこと,すなわち相違点1は,甲第4号証の1を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。なお,甲3の1発明では,真空吸引ノズル66の開口部への挿入を容易にするため,その前工程において,開口部を充分に開放しておくこととしているが,上記のように甲3の1発明に甲第4号証の1に記載された発明を適用する場合,開口部を開放する工程を,エキスパンダー爪の開口部への挿入を容易にするために利用すればよい。

相違点2について検討する。
袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせた後に袋の開口を開かせることの技術的意義について,本件明細書には,「本発明の包装方法によると,包装品を充填した袋の開口端部は先ず搬送ベルトに偏平状態にして保持され,袋はこの状態で開口されるので袋の開口部は確実に大きく開かれる。」(段落【0008】)及び「このように,本発明の包装方法によれば,極く薄くて腰の弱いプラスチックの袋であっても,その開口が確実に開かれ,そこに挿入した拡開口バーにより袋の開口端部は確実に偏平状態に伸ばされて皺を生じさせることなくシールすることができる。」(段落【0009】)と記載されている。袋の開口を開かせる前に,袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせておくのは,薄くて腰の弱いプラスチックの袋であっても,袋の開口部が確実に大きく開かれるようにするためであることが理解される。
甲第2号証には,焼生品を封入したプラスチック袋からなり,ベルト上で搬送される容器の開放端に排気ノズルを介して空気流を指向させることにより,該開放端を平坦にし,次工程において容器にクリップや締具を装着するのに最適な状態とする袋拡開装置が記載されている(記載事項2aないし2c参照)。甲第2号証における,ベルト上で搬送される容器の開放端に排気ノズルを介して空気流を指向させることにより,該開放端を平坦にする工程が,本件発明1における袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせる工程に相当するとしても,該工程の後に続くのは,容器にクリップや締具を装着する工程であって,容器の開放端を開かせる(袋の開口を開かせる)工程ではない。
甲第5号証には,プラスチックフィルムから構成されるバンドが長手方向の折り線に沿って折り重ねられ,互いに重なり合った上下のフラップのうち,下方フラップFの縁部が上方フラップの縁部よりも突出するようにされたものを融着・切断することにより,三つの連続した側部にて閉鎖されるとともに突出するフラップFがある側方の縁部にて開放するバッグを形成し,コンベヤベルト18上に吸引保持された該バッグの突出する下方フラップFの縁部をコンベアベルト18の側方に配置された固定装置25により固定した後に,固定装置25に備えられた第一のノズル31からバッグの開放側部を通じてバッグ内に圧縮空気を噴射してバッグを膨張させ,その後,バッグにベーカリ製品等の商品を充填するバッグ製造機械であって,固定装置25の上流に配置された第二のノズル43から,突出する下方フラップFの縁部に向けて圧縮空気を噴射し,バッグを搬送面と安定した接触状態に保つバッグ製造機械が記載されている(記載事項5aないし5j参照)。この第二のノズル43は,コンベアベルト18の側方に位置する下方フラップFの縁部に向けて圧縮空気を噴射するものであるから,バッグの開口部をコンベヤベルト18に対して偏平状態にする作用を奏するとはいえない。また,第二のノズル43から圧縮空気が噴射される工程及び第一のノズル31からバッグ内に圧縮空気が噴射される工程は,三方シールが施されて個々のバッグが形成された後に行われ,このときバッグにはベーカリ製品等の商品はまだ充填されていないから,第二のノズル43から圧縮空気が噴射される前から既にバッグは全体が偏平になっていると考えられる。以上のことから,仮に,第一のノズル31からバッグの開放側部を通じてバッグ内に圧縮空気を噴射してバッグを膨張させる工程が,本件発明1における袋の開口を開かせる工程に相当するとしても,該工程の前に,バッグの開口部が確実に大きく開かれるようにするために,バッグの開口部をコンベヤベルト18に対して偏平状態にさせる(袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせる)工程が行われていないことは明らかである。
また,請求人が本件特許を無効とすべき根拠として提出する甲第3号証の2,甲第4号証の1ないし甲第4号証の3のいずれにも,袋の開口を開かせる前に,袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせることは記載も示唆もされていない。
したがって,甲第2号証,甲第3号証の2,甲第4号証の1ないし甲第4号証の3,甲第5号証のいずれにも,相違点2に係る本件発明1の要件は記載も示唆もされていないのであるから,本件発明1は,甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
なお,甲第1号証,甲第6号証にも,袋の開口を開かせる前に,袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせることは記載も示唆もされていない(甲第1号証について言えば,袋体の開放された口端部が扁平状に圧延される工程が,本件発明1における袋の開口部を搬送ベルトに対して偏平状態にさせる工程に相当するとしても,該工程の後に続くのは,皺伸し整形し,溶着密封する工程であって,口端部を開かせる工程ではない。)から,甲第1号証及び甲第6号証を考慮したとしても,本件発明1は,甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)請求人の甲第3号証の1に関する主張に対して
請求人は,甲第3号証の1では,口頭審理陳述要領書(1)に添付した参考資料1及び口頭審理陳述要領書(2)に添付した参考資料1の2の写真撮影報告書により証明されるように,吸着ベルト46の進行方向両側における通孔52の吸引に基づく気流の影響によって,下側のフィルムの吸着ベルト46との接触領域は順次増大し,その結果,開口端部は横方向に広がり,フィルムの上側もまた下側に移行し,偏平状態が形成されるから,甲第3号証の1は,包装袋36の開口部を吸着ベルト46に対して偏平状態にさせる構成を示唆している旨主張する。しかし,甲第3号証の1には,包装袋36の開口部が吸着ベルト46に対して偏平状態になることについて,記載はされていない。甲第3号証の1には,多数の通孔52が穿設された吸着ベルト46の裏側に臨む真空箱54を真空付勢することで負圧帯域が形成された該吸着ベルト46の搬送ベルト面に対して,一端部が開口された包装袋36が吸着固定されることが記載されているが,この吸着固定時に包装袋36の開口部が吸着ベルト46に対して偏平状態になることが明らかであるということもできない。参考資料1及び参考資料1の2は,甲第3号証の1において,多数の通孔52の配置の仕方や真空箱54による真空付勢力等の条件次第では,包装袋36の開口部が吸着ベルト46に対して偏平状態になる可能性があることを示すに過ぎないものである。

3.本件発明2ないし6について
本件発明2における「同開口端部を粘着性をもつ前記搬送ベルトに対して偏平状態に付着させ」との要件と,本件発明1における「同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせ」との要件を比較すると,前者における「同開口端部」は後者における「同開口部」と同義といえることから,前者は,後者を備えた上で,さらに,搬送ベルトが「粘着性をもつ」こと及び開口端部を搬送ベルトに対して「付着」させることが特定されたものである。したがって,本件発明2は,本件発明1の下位概念にあたる。
本件発明3において,「搬送ベルトに対して偏平状態に保持させ」る対象は,袋の開口端部であると解するのが相当である。そこで,本件発明3における「同開口端部に吸引力を働かせる前記搬送ベルトに対して偏平状態に保持させ」との要件と,本件発明1における「同開口部を前記搬送ベルトに対して偏平状態にさせ」との要件を比較すると,前者における「同開口端部」は後者における「同開口部」と同義であり,前者における「偏平状態に保持させ」は後者における「偏平状態にさせ」と同義といえることから,前者は,後者を備えた上で,さらに,搬送ベルトが「同開口端部に吸引力を働かせる」ものであることが特定されたものである。したがって,本件発明3は,本件発明1の下位概念にあたる。
請求項4ないし請求項6はいずれも,請求項1ないし請求項3を引用する従属項であるから,本件発明4ないし本件発明6も本件発明1の下位概念にあたる。
したがって,本件発明2ないし本件発明6は本件発明1の下位概念の発明であるから,本件発明1が甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上,本件発明2ないし6も,甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,本件発明1ないし本件発明6についての特許が,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。
また,他に本件発明1ないし本件発明6を無効とすべき理由も見当たらない。
なお,審判に関する費用の負担については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条により請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-07-13 
出願番号 特願2000-240048(P2000-240048)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 健一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 豊島 ひろみ
鈴木 由紀夫
登録日 2007-01-26 
登録番号 特許第3908897号(P3908897)
発明の名称 袋による包装方法  
代理人 山田 健司  
代理人 多賀 久直  
代理人 岩永 和久  
代理人 山本 喜幾  
代理人 中野 圭二  
代理人 赤尾 直人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ