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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G07G
管理番号 1236117
審判番号 無効2009-800106  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-22 
確定日 2011-04-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第2965518号発明「ポイント集計システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2965518号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯・本件特許発明
(1)本件特許第2965518号の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明4」という。)についての出願は、平成8年10月17日の出願であって、平成11年8月13日に特許権の設定登録がなされたものである

(2)これに対し、請求人は平成21年5月22日に本件特許無効審判を請求した。

(3)被請求人は平成21年8月7日付けで答弁書を提出した。

(4)その後、請求人は、平成21年10月15日付けで、また、被請求人は平成平成21年11月30日付けで、それぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、平成22年2月22日に口頭審理が行われた。

(5)さらに、請求人は平成22年3月8日付けで、また、被請求人は平成22年3月26日付けで、それぞれ上申書を提出した。

(6)本件特許発明1?4は、本件特許の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークと接続して、前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を前記ネットワークに付加するポイント集計システムであって、
ポイントサービスに賛同する前記加盟店についての店舗特定データと、これらの加盟店でのポイント還元率データとを関係づけて格納した加盟店ファイルと、
ポイントサービスを利用できる会員についての会員特定データと、これらの会員が保持するポイント数データとを関係づけて格納した会員マスタファイルと、
前記会員が前記加盟店を利用した際に前記加盟店端末から送信される店舗特定データ、会員特定データ及び売り上げ金額データを含む送信データを、前記ネットワークの通信網を介して受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段で受信した前記店舗特定データを用いて前記加盟店ファイルにアクセスして、この店舗特定データに対応した前記ポイント還元率データを読み出すと共に、前記データ受信手段で受信した売り上げ金額データと前記ポイント還元率データとを用いて演算してポイント数を算出するポイント演算手段と、
前記データ受信手段で受信した前記会員特定データを用いて、前記会員マスタファイルにアクセスして、この会員特定データに対応した前記ポイント数データを読み出すと共に、このポイント数データに前記ポイント演算手段で算出したポイント数を加算して、最新ポイント数データとするポイント加算手段と、
前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを用いて前記会員マスタファイルの前記ポイント数データを更新するポイント更新手段とを備えることを特徴としたポイント集計システム。
【請求項2】 前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを、前記送信データの送信元である前記加盟店端末に前記ネットワークの通信網を介して返信するデータ返信手段を更に備えることを特徴とした請求項1記載のポイント集計システム。
【請求項3】 前記加盟店端末に入力されたポイント還元率変更データに基づいて、前記加盟店ファイルに格納された前記ポイント還元率データを変更する還元率データ変更手段を更に備えることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載のポイント集計システム。
【請求項4】 複数の前記ネットワークを接続して、これらのネットワークにおけるポイント数データを統合管理することを特徴とした請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポイント集計システム。」

II.請求人の主張
請求人は、本件特許発明1?4の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明1,2は、甲第1号証に記載された発明と同一、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易にすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3,4は、甲第1号証に記載された発明と同一、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易にすることができたものである、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易にすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものであり、いずれも特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証?甲第8号証を提出している。
[証拠方法]
甲第1号証:特開平6-295390号公報
甲第2号証:特開平7-73247号公報
甲第3号証:特開平7-210763号公報
甲第4号証:編者 社団法人電子通信学会、「データ通信ハンドブック 1984」、第1版第2刷、株式会社オーム社、昭和61年12月30日発行、p.317
甲第5号証:監修 郵政省、編集 株式会社情報通信総合研究所、「情報通信年鑑 ’94年版」、第1版第1刷、本間雅雄、平成6年2月28日発行、p.293
甲第6号証:編集 郵政省、「通信白書(昭和61年版)」、大蔵省印刷局、昭和61年12月25日発行、p.168-175
甲第7号証:特開昭61-156368号公報
甲第8号証:特開昭63-15558号公報

III.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件特許発明1?4は、特許法第29条第1項の規定に該当せず新規性を有するとともに、特許法第29条第2項の規定に該当せず進歩性を有するから、特許法第123条第1項第2号の規定に該当しないと主張し、証拠方法として乙第1号証を提出している。
[証拠方法]
乙第1号証:編者 社団法人電子通信学会、「データ通信ハンドブック 1984」、第1版第1刷、株式会社オーム社、昭和59年10月30日発行、p.2-3

IV.請求人の主張する無効理由に係る刊行物に記載されている事項及び発明
1.甲第1号証の記載事項
(1)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【産業上の利用分野】本発明は,商取引に伴う販売促進用サービスとして顧客端末または店舗端末を介して発行されるサービスポイントの点数管理システムに関するものである。」(【0001】)

(イ)「【発明が解決しようとする課題】・・・また店舗側としても,単にサービスの点数を発行して顧客を定着させるだけでなく,店舗の実情に則し,かつ顧客の手間を煩わせず購入行為自体を楽しめるような販売促進をサポートする点数管理システムを必要としている。
本発明は上記問題点の解決を図り,顧客が点数の記録媒体や所定の会員カードを所持しなくても,事業者のコンピュータにより点数の発行・集計が可能であり,かつ顧客が必要なときに常に点数情報を知ることができるシステムを提供することを目的とする。また,様々な購入条件に対する点数付与方法を簡単に設定できるようにし,一層の販売促進を可能とすることを目的とする。・・・」(【0008】?【0010】)

(ウ)「顧客認識手段4は,データ入力手段から入力されたサービス提供を希望する顧客のID信号により顧客を認識する手段である。データ入力手段2は,処理装置1に組み込まれ,あるいは公衆回線等通信回線を介して接続された端末3,例えば顧客端末あるいは店舗内に配置された店舗端末である。点数通知手段5は,通信回線の空きを使用するかまたは商取引やサービス提供に先立って,該当する顧客の累積点数および目標点数等の点数情報を第1次情報としてデータ入力手段2へ送出し,サービス内容記憶手段6から読み出した顧客の希望する分野のサービス情報をデータ入力手段2へ送出する手段である。点数集計手段7は,顧客の商取引状態に応じて顧客の累積点数を加算または減算する条件監視手段8により累積点数を定期的に更新し,また顧客の点数を顧客の選択により予め設定された団体へ加算する一括集計や,他グループ店舗へ所定の変換レートで変換を行う手段である。点数発行手段9は,コンピュータを使用して様々な点数付与率を設定する点数付与率管理手段10を持ち,これにより商取引に応じて予め定められた点数付与率を乗じて算出された点数を発行する手段である。」(【0012】)

(エ)「【実施例】以下,本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1に示す構成例において,1はCPUおよびメモリを備えた処理装置であって,店舗または事業グループのセンタまたはVANセンタ等に設置されるもの,2はデータ入力手段,3は顧客端末または店舗端末,4は顧客認識手段,5は点数通知手段,6はサービス内容記憶手段,7は点数集計手段,8は条件監視手段,9は点数発行手段,10は点数付与率管理手段を表す。またデータ入力手段2は,処理装置1側に一体に組み込まれて店舗内に設置されてもよく,また実施例にあるように公衆回線等通信回線を介して接続された端末3(顧客端末または店舗端末)側に設けられてもよい。」(【0015】)

(オ)「処理装置1は店舗内に設置されるか,また複数の店舗を有する大規模な構成の場合にはその計算センタや事務処理センタに設置される。来店購入者用の店舗端末35も1台または複数台が処理装置1に接続され,店舗端末35または顧客端末30a,30bから顧客ID信号(番号)が入力されると(図2),処理装置1は顧客認識手段4で顧客を認識し,その顧客の累積点数等の点数情報が存在すれば点数通知手段5によりその点数情報を送出する(図2)。そして,購入情報が入力されると点数発行手段9で算出した点数情報を点数集計手段7へ送出し,点数集計手段7においてその点数を集計し,更新された点数情報を点数通知手段5に送出する。点数通知手段5は店舗端末35または顧客端末30a,30bへその点数情報を送出して表示する。」(【0022】)

(カ)「・・・1.点数を管理する機能
点数管理として,点数の発行,集計,通知があげられる。
1.1. 点数を発行する機能
図8は点数発行手段の全体概要図である。図8において,処理装置1としてホスト計算機または店舗コンピュータまたはPOSレジスタが使用される。処理装置1内に購入条件テーブル14を備え,管理者端末11から複数の購入条件を随時,任意に設定することができるようになっている。購入条件には,各々点数付与率および被点数算出情報が対応づけられている。店舗端末35または顧客端末30から商品購入情報を受信すると,予め記憶されている商品購入情報ログ13を参照し,受信情報を加工/抽出処理して,所定フォーマットの商品購入情報15を作成する。商品購入情報15には,端末ID,購入年月日,購入時刻,顧客ID,購入した各商品ごとの商品コード,数量,金額,および購入した合計数量,合計金額情報等が含まれる。そして,この商品購入情報15をもとに,購入条件テーブル14および各種参照データベース12を参照して,今回の購入が購入条件テーブル14の条件を満たすかどうかを判定する。条件を満たしていれば,今回購入点数を算出して点数集計手段7へ送出する。」(【0054】)

(キ)「 ・・・1.1.1. 特定条件購入を計数する機能
1.1.1.1. 店の特定日購入を計数する機能
店舗が特定日を条件として使用する点数発行において,店舗が定める日や曜日での購入,平日または休日の購入や,短期間での集中購入または限定した地域の顧客の点数付与率を変化させて計数する。これにより特売日やセール中の販売促進効果を高め,顧客のリピート購入を増大させ,新規開店時または新地区参入時の販売促進効果を高めることができる。」(【0065】)

(ク)「図14は特定地区設定による点数発行処理説明図である。図14の例では,予め図9(c)の特定地区点数付与率設定画面で設定された購入条件が購入条件テーブル14に記憶されている。店舗端末35または顧客端末30から商品購入情報を受信すると,その受信情報を加工/抽出し,所定フォーマットの商品購入情報15を作成する。そして,その商品購入情報15中の端末IDをキーに端末データベース12aから地区コードを検索抽出し,その地区コードに関する購入条件テーブル14の中の購入条件と照合判定する。条件を満たす場合には,今回購入点数を算出して点数集計手段7に送出する。この例では,端末データベース12aから検索された地区コードが1234であり,その地区コードは購入条件を満たすので,点数付与率3%×合計金額33000円=99点を今回購入点数とする。・・・」(【0068】)

(ケ)「・・・1.1.4. アクシデント性を付加する機能
顧客に対して事前に予期できないようなアクシデント性を付加して点数を発行する。そのため,商品点数を未開示状態で顧客に発行する。また,ゲーム感覚で点数を獲得できるようにするため,端末操作に応じて商品点数や点数付与率をランダムに発生させたり,顧客端末のゲームソフトで点数を賭けてその結果に基づいた点数や点数付与率で顧客が点数を獲得できるようにする。また,例えば来店1万人目というような特別な顧客にボーナスポイントを発行する。これにより購買行為を娯楽化し,顧客の購買意欲を向上させる。」(【0075】)

(コ)「図23は累積点数更新処理説明図である。図23において,点数集計手段7は,点数発行手段9で発行された今回購入点数を顧客データベース12bに記憶されたその顧客の累積点数に加算し,最新購入年月日を更新する。・・・」(【0077】)

(サ)「・・・1.2.4. 累積点数を変換する機能
点数集計手段7は,顧客または事業者の要望により,同一グループの共通センタ等を経由して各店舗間で顧客の累積点数を移動させたり,他グループまたは異種店舗間で予め定めたレートで顧客の累積点数を変換したりする。これにより,複数種類の点数サービスを共通化させることなどができ,顧客に対するサービス性を向上させることができる。
1.3. 点数を通知する機能
点数通知について前述の図1を用いて説明する。図1において,点数通知手段5は,点数集計手段7で集計した顧客の累積点数や希望サービスに対する目標点数,不足点数等を含む点数情報およびサービス内容記憶手段6に記憶されたサービス情報を端末3へ送出する。マルチメディア端末等の顧客端末および専用店舗端末,銀行等共用端末,店内ビデオカートPOSレジスタ端末,バーコードスキャナ付端末等の店舗端末で通知する以外にも,電話による音声サービスやファクシミリで通知する,パソコン通信画面やテレビ電話のような双方向テレビ画面で表示する,CATVの特定チャンネルを常時参照可能状態にする,電子カタログ(CD-ROM)の定期発行やICカードで提供する,公衆回線の空き状態を利用して顧客端末に情報を送出するといった手段があげられる。」(【0082】)

(シ)「また,キャッシュディスペンサなどの銀行端末に同様な機能を追加することにより,設備流用によるシステムコストの低減,銀行・店舗のタイアップよるサービスの強化を図ることができる。」(【0085】)

(ス)「以上説明したように,本発明は次のような種々の態様で実施することが可能である。・・・
(4) 上記(1) の構成において,点数発行手段は,購入条件により点数付与率を変化させる。・・・
(8) 上記購入条件は,特定地域内店舗を対象に設定される。
(9) 上記購入条件は,店舗内の特定の売り場を対象に設定される。・・・
(41)点数集計手段は,ひとつの店舗グループが管理する点数を,顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に,所定のレートで変換する手段を持つ。」(【0109】?【0129】)

(セ)「【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,来店購入という商取引形態に限らず,公衆回線等を利用した通信販売にも利用が可能であり,直かに顧客と接することなく点数情報やサービス情報を通知したり,サービスを提供したりすることが可能になる。また,従来よりも多様な条件をもとにして点数付与率を設定することができ,点数付与率の変更も随時可能である。したがって,人的負担を増大させることなく,商取引形態や顧客のニーズに柔軟に対応することができるようになる。顧客端末または店舗端末へのアクセスに対して顧客を認識すると直ちにその顧客の累積点数を端末に表示し,また,商品購入等の精算以前に選択した商品の獲得点数を直ちに表示することにより購買意欲を増進させることができる。さらに,顧客はいつでも自分の累積点数や目標点数等の点数情報を知ることができ,点数サービスに対する関心が高まるという効果がある。」(【0138】)

(ソ)甲第1号証に記載されたサービスポイントの点数管理システムにおいて、店舗端末35は「来店購入者用」(記載事項(オ))であり、顧客が来店して商品を購入した店舗の店舗端末35から商品購入情報を処理装置1に送ると解される(記載事項(カ)、(ク))から、店舗端末35は、サービスポイントの点数管理システムに加盟している加盟店ごとに設置されていることは明らかである。

(タ)記載事項(イ)の「顧客が点数の記録媒体や所定の会員カードを所持しなくても,事業者のコンピュータにより点数の発行・集計が可能であり」という記載からして、顧客は会員といえる。

(チ)記載事項(ウ)?(ク)の記載及び「本発明の点数管理システムの構成例を示す図」である図1の記載からして、処理装置1が公衆回線等通信回線を介して接続された店舗端末35から送信される商品購入情報を受信するのは、顧客が店舗で商品を購入した際であって、処理装置1は、店舗端末35から送信される端末ID、顧客ID、購入した合計金額情報等が含まれる商品購入情報を通信回線を介して受信するデータ受信手段を備えているといえる。
そして、甲第1号証には、「本発明は次のような種々の態様で実施することが可能である。・・・ 点数発行手段は,購入条件により点数付与率を変化させる。・・・ 上記購入条件は,特定地域内店舗を対象に設定される。」(記載事項(ス))と記載されており、この「特定地域内店舗を対象」とは、特定の地域内にある店舗を対象にするものと解されるから、購入条件が「特定地域内店舗を対象に設定される」態様と「特定地区設定による点数発行処理」(記載事項(ク),図14)の態様とはほぼ同様のものといえる。
しかも、「特定地区設定による点数発行処理」の態様についての記載(記載事項(ク))及び「特定地区を購入条件とする点数発行処理の説明図」である図14の記載からして、甲第1号証に記載されたサービスポイントの点数管理システムの処理装置1がデータ受信手段を備えていることは明らかであるから、「特定地域内店舗を対象に設定される」態様は、商品購入情報が参照される購入条件テーブル14に特定地域内の店舗を対象としたコードに対応した点数付与率が記憶されるとともに、点数発行手段9は、データ受信手段で受信した端末IDをキーに端末データベース12aから特定地域内の店舗を対象としたコードを検索抽出し、そのコードに関する購入条件テーブル14の中の購入条件と照合判定し、条件を満たす場合には、購入条件テーブル14からそのコードに対応した点数付与率を読み出すとともに、該点数付与率にデータ受信手段で受信した合計金額情報を乗じて今回購入点数を発行するものといえる。

(ツ)記載事項(コ)の「図23において,点数集計手段7は,点数発行手段9で発行された今回購入点数を顧客データベース12bに記憶されたその顧客の累積点数に加算し,最新購入年月日を更新する。」という記載及び「点数集計手段による累積点数更新処理の説明図」である図23の記載からして、顧客データベース12bには顧客IDに対応した累積点数が記憶され、点数集計手段7は、データ受信手段で受信した顧客IDを用いて顧客データベース12bにアクセスして、この顧客IDに対応した累積点数を読み出すとともに、この累積点数に点数発行手段9で発行された今回購入点数を加算した点数を、顧客IDに対応した累積点数として顧客データベース12bの累積点数を更新するといえる。

これら記載事項及び図面の記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「加盟店ごとに設置された複数の店舗端末35が通信回線を介して接続された処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システムであって、
処理装置1は、
特定地域内の店舗を対象としたコードに対応させて特定地域内の店舗を対象とした点数付与率を記憶した購入条件テーブル14と、
会員である顧客についての顧客IDと、これらの顧客の顧客IDに対応させて顧客の累積点数を記憶した顧客データベース12bと、
顧客が商品を購入した際に店舗端末35から送信される端末ID、顧客ID及び購入した合計金額情報を含む商品購入情報を通信回線を介して受信するデータ受信手段と、
データ受信手段で受信した端末IDをキーに端末データベース12aから特定地域内の店舗を対象としたコードを検索抽出し、その特定地域内の店舗を対象としたコードに関する購入条件テーブル14の中の購入条件と照合判定し、条件を満たす場合には、購入条件テーブル14からそのコードに対応した特定地域内の店舗を対象とした点数付与率を読み出すとともに、該点数付与率にデータ受信手段で受信した合計金額情報を乗じたものを今回購入点数として発行する点数発行手段9と、
データ受信手段で受信した顧客IDを用いて顧客データベース12bにアクセスして、この顧客IDに対応した累積点数を読み出すとともに、この累積点数に点数発行手段9で発行された今回購入点数を加算した点数を、顧客IDに対応した累積点数として顧客データベース12bの累積点数を更新する点数集計手段7と、
更新された点数情報を、店舗端末35へ通信回線を介して送出する点数通知手段5とを備え、
点数集計手段7は、更新された点数情報を点数通知手段5に送出し、
店舗端末35の端末操作に応じて点数付与率をランダムに発生させることができ、
点数集計手段7は、ひとつの店舗グループが管理する点数を、顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に、所定のレートで変換し、複数種類の点数サービスを共通化させることができる、
サービスポイントの点数管理システム。」

2.甲第4号証の記載事項
(1)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には次の事項が記載されている。
「付加価値通信網(VAN:value added network)(317頁右欄15?16行)

3.甲第5号証の記載事項
(1)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には次の事項が記載されている。
「VAN(Value Added Network:付加価値通信網)」(293頁右欄末行)

4.甲第6号証の記載事項
(1)本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には次の事項が記載されている。
(マ)「VANの特徴は,既存の通信ネットワークに各種の機能を付加して,いわばソフト的なネットワークを構築しているところにある。また,センターに複数のホストコンピュータが置かれるVANもある。」(170頁末行?171頁2行)

(ミ)「VANは,企業内通信ネットワークを相互に接続するものとして登場した。」(173頁3?4行)

(ム)「VANの発展形態」を表す第2-3-4図には、「複数のネットワークを接続する」態様が示されている。

V.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「点数」は本件特許発明1の「ポイント」に相当し、同様に、「店舗端末35」は「加盟店端末」に相当する。
そして、甲1発明の「加盟店ごとに設置された複数の店舗端末35と通信回線を介して接続された」「システム」は「ネットワーク」といえるとともに、甲1発明の「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」は「点数の発行・集計を行う」から、本件特許発明1の「ポイント集計システム」と「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークを有するポイント集計システム」である点で一致する。

甲1発明の「特定地域内の店舗」の「店舗」は「ポイントサービスに賛同する加盟店」であることが明らかであるから、甲1発明の「特定地域内の店舗を対象としたコード」は「ポイントサービスに賛同する加盟店についての店舗を特定するデータ」といえる。
してみると、甲1発明の「特定地域内の店舗を対象としたコード」と本件特許発明1の「店舗特定データ」とは「店舗を特定するデータ」である点で一致する。
また、甲1発明の「点数付与率」は本件特許発明1の「ポイント還元率データ」に相当するから、甲1発明の「特定地域内の店舗を対象とした点数付与率」と本件特許発明1の「加盟店でのポイント還元率データ」とは、「ポイントサービスに賛同する加盟店でのポイント還元率データ」である点で一致する。
そして、甲1発明の「テーブル14」は一種の「ファイル」であるから、「ポイントサービスに賛同する加盟店に関するファイル」である「購入条件テーブル14」は「加盟店ファイル」といえるとともに、甲1発明の「記憶」は本件特許発明1の「格納」に相当し、同様に、「対応させて」は「関係づけて」に相当する。
以上によれば、甲1発明の「購入条件テーブル14」と本件特許発明1の「加盟店ファイル」とは、「ポイントサービスに賛同する加盟店についての店舗を特定するデータと、これらの加盟店でのポイント還元率データとを関係づけて格納した加盟店ファイル」である点で一致する。

甲1発明の「顧客」が「ポイントサービスを利用できる会員」であることは明らかであって、甲1発明の「顧客ID」は本件特許発明1の「会員特定データ」に、同様に、「顧客の顧客IDに対応した顧客の累積点数」は「会員が保持するポイント数データ」に、「対応させて」は「関係づけて」にそれぞれ相当するから、甲1発明の「会員である顧客についての顧客IDと、これらの顧客の顧客IDに対応させて顧客の累積点数を記憶した顧客データベース12b」は本件特許発明1の「ポイントサービスを利用できる会員についての会員特定データと、これらの会員が保持するポイント数データとを関係づけて格納した会員マスタファイル」に相当する。

甲1発明の「顧客が加盟店で商品を購入した際」は本件特許発明1の「前記会員が前記加盟店を利用した際」に相当し、同様に、「購入した合計金額」は「売り上げ」に、「購入した合計金額情報」は「売り上げ金額データ」に、「通信回線」は「通信網」にそれぞれ相当するから、甲1発明の「データ受信手段」と本件特許発明1の「データ受信手段」とは「前記会員が前記加盟店を利用した際に前記加盟店端末から送信される会員特定データ及び売り上げ金額データを含む送信データを、前記ネットワークの通信網を介して受信するデータ受信手段」である点で一致する。

甲1発明の「特定地域内の店舗を対象としたコード(店舗を特定するデータ)を検索抽出し、その特定地域内の店舗を対象としたコードに関する購入条件テーブル14(加盟店ファイル)の中の購入条件と照合判定する」ことは、「店舗を特定するデータを用いて加盟店ファイルにアクセスする」ことといえる。
また、甲1発明の「該点数付与率にデータ受信手段で受信した合計金額情報を乗じたものを今回購入点数として発行する」ことは「演算してポイント数を算出する」ことであるから、甲1発明の「点発行手段9」は、「ポイント演算手段」といえる。
してみると、甲1発明の「点数発行手段9」と本件特許発明1の「ポイント演算手段」とは、「前記店舗を特定するデータを用いて前記加盟店ファイルにアクセスして、この店舗を特定するデータに対応した前記ポイント還元率データを読み出すと共に、前記データ受信手段で受信した売り上げ金額データと前記ポイント還元率データとを用いて演算してポイント数を算出するポイント演算手段」である点で一致する。

甲1発明の「累積点数に点数発行手段9で発行された今回購入点数を加算した点数」は、本件特許発明1の「最新ポイント数データ」に相当するから、甲1発明の「点数集計手段7」は、本件特許発明1の「ポイント加算手段」に相当する。

甲1発明の「累積点数に点数発行手段9で発行された今回購入点数を加算した点数を、顧客IDに対応した累積点数として顧客データベース12bの累積点数を更新する」ことは、本件特許発明1の「前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを用いて前記会員マスタファイルの前記ポイント数データを更新する」ことに相当するから、甲1発明の「点数集計手段7」は、本件特許発明1と同様の「ポイント更新手段」を有するといえる。

加えて、以上の検討結果から、甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」が、本件特許発明1の「ポイント集計システム」と同様に、「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークを有し、前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を有する」ものであることは明らかである。

以上によれば、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークを有し、前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を有するポイント集計システムであって、
ポイントサービスに賛同する加盟店についての店舗を特定するデータと、これらの加盟店でのポイント還元率データとを関係づけて格納した加盟店ファイルと、
ポイントサービスを利用できる会員についての会員特定データと、これらの会員が保持するポイント数データとを関係づけて格納した会員マスタファイルと、
前記会員が前記加盟店を利用した際に前記加盟店端末から送信される会員特定データ及び売り上げ金額データを含む送信データを、前記ネットワークの通信網を介して受信するデータ受信手段と、
前記店舗を特定するデータを用いて前記加盟店ファイルにアクセスして、この店舗を特定するデータに対応した前記ポイント還元率データを読み出すと共に、前記データ受信手段で受信した売り上げ金額データと前記ポイント還元率データとを用いて演算してポイント数を算出するポイント演算手段と、
前記データ受信手段で受信した前記会員特定データを用いて、前記会員マスタファイルにアクセスして、この会員特定データに対応した前記ポイント数データを読み出すと共に、このポイント数データに前記ポイント演算手段で算出したポイント数を加算して、最新ポイント数データとするポイント加算手段と、
前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを用いて前記会員マスタファイルの前記ポイント数データを更新するポイント更新手段と
を備えるポイント集計システム。」

そして、両者は、以下の相違点1?3で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1の「ポイント集計システム」は、「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークと接続して、前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を前記ネットワークに付加する」ものであるのに対して、甲1発明の「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」は「前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を有するポイント集計システム」といえるものの、本件特許発明1のように、「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークと接続して」、「ポイントサービス機能を前記ネットワークに付加する」ものであるか否か不明な点。

(相違点2)
「店舗を特定するデータ」が、本件特許発明1では「店舗特定データ」であるのに対して、甲1発明では「特定地域内の店舗を対象としたコード」である点。

(相違点3)
「前記加盟店ファイルにアクセスして、この店舗を特定するデータに対応した前記ポイント還元率データを読み出す」ために用いられる「前記店舗を特定するデータ」が、本件特許発明1では、「前記会員が前記加盟店を利用した際に前記加盟店端末から送信される送信データ」に「含まれる」とともに、「データ受信手段で受信」されたものであるのに対して、甲1発明では、「顧客が商品を購入した際に店舗端末35から送信される商品購入情報」に「含まれる」とともに、「データ受信手段で受信」される「端末IDをキーに端末データベース12aから検索抽出された」ものである点。

(2)当審の判断
(相違点1)について
甲第1号証には、「キャッシュディスペンサなどの銀行端末に同様な機能を追加することにより,設備流用によるシステムコストの低減,銀行・店舗のタイアップよるサービスの強化を図ることができる。」(記載事項(シ))と記載されている。
ところで、銀行端末は、普通、当該端末が設置された銀行の店舗が加盟する所定の銀行ネットワークに接続されていると解されるから、上記記載は、甲1発明の「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」の機能を「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワーク」に追加することを示唆するものといえる。
してみると、甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」を「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワークと接続して、前記加盟店を会員が利用した際の売り上げに応じたポイントをその会員の獲得ポイントとして集計するポイントサービス機能を前記ネットワークに付加」し、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

念のために、甲第1号証の記載事項(シ)以外の他の記載事項を考慮した相違点1の容易想到性についても検討する。
甲第4号証?第6号証の記載事項からして、「VAN」という用語が複数のネットワークを相互に接続する付加価値通信網を意味することは本件特許出願前に周知であるといえる(例えば、記載事項(ミ)、記載事項(ム))。
してみると、甲第1号証における「サービスポイントの点数管理システム」の「処理装置1」を「VANセンタ等に設置」するという記載(記載事項(エ))に接した当業者であれば、「VANセンタ」として、複数のネットワークが配設されているものを理解するといえる(例えば、記載事項(マ))。

そして、このような「VANセンタ」に「サービスポイントの点数管理システム」の「処理装置1」をわざわざ設置する場合、通常は何らかの技術的な意図を持って設置されると解すべきであるから、「VANセンタ」に配設されているネットワークに「処理装置1」を接続し、「サービスポイントの点数管理システム」の機能を上記複数のネットワークに付加することも当業者であれば必要に応じて適宜選択し得る技術選択肢の一つにすぎない。
以上によれば、甲第1号証の記載事項(エ)からしても、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得る程度のものといえる。

(被請求人の主張)
上記の点につき、被請求人は、次の点を主張する。
(a)甲第1号証には、点数管理システムが既存のネットワークを利用したり付加したりする技術的思想が開示されていない。

(b)甲第1号証には、処理装置1の設置場所について「VANセンタ」とすることができる旨の記載があるだけであり、VAN等既存のネットワークを利用したり、当該ネットワークに点数管理の機能を付加する技術的思想は開示されていない。

そこで、被請求人の主張について検討する。
(a)銀行端末がネットワークを構成していると解され、甲第1号証(記載事項(シ))から、『甲1発明の「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」の機能を「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワーク」に追加すること』が示唆されていると解されるのは上記のとおりである。

(b)確かに、甲第1号証には、処理装置1を「VANセンタ」に設置することができる旨の記載があるだけであるが、周知技術を参酌すると、「VANセンタ」に配設されているネットワークに「処理装置1」を接続することを当業者であれば容易に想到し得ることは上記のとおりである。

以上によれば、被請求人の主張(a),(b)は採用することができない。

(相違点2)について
甲第1号証には、【発明が解決しようとする課題】の欄に「また店舗側としても・・・店舗の実情に則し,かつ顧客の手間を煩わせず購入行為自体を楽しめるような販売促進をサポートする点数管理システムを必要としている。」(記載事項(イ))と記載され、「新規開店時・・・の販売促進効果を高めることができる。」(記載事項(キ))と記載されており、「店舗の実情に即し」の「店舗」及び「新規開店」の店舗は個々の店舗と解されるから、甲第1号証には、「サービスポイントの点数管理システム」において個々の店舗の実情や新規開店に応じて販売促進効果を高めることが示唆されている。
してみると、甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」において、個々の店舗の実情や新規開店に応じて販売促進効果を高めるために、点数付与率を設定する単位を「特定地域内の店舗」から個々の店舗に変更し、本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得る程度の事項である。
上記容易想到性の判断の妥当性は、甲第1号証に、点数付与率が設定される購入条件について「上記購入条件は,店舗内の特定の売り場を対象に設定される。」(記載事項(ス))と記載されているように、点数付与率を設定する単位を店舗より小さい店舗内の特定の売り場とすることが記載されていることからも裏付けられる。

(相違点3)について
システムを設計するに当たり、送信するデータの種類を増減したり、データベースを参照するようにするか否かは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項といえる。
してみると、甲1発明において、端末IDをキーに端末データベース12aから「特定地域内の店舗を対象としたコード」を検索抽出することにかえて、店舗端末35から送信される商品購入情報に「特定地域内の店舗を対象としたコード」が「含まれる」とともに、「データ受信手段で受信」されるようにし、本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項とすることは当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項である。

そして、本件特許発明1による効果も、甲1発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.本件特許発明2について
(1)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項に加え、次の発明特定事項(以下、「限定事項1」という。)を限定したものである。
「前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを、前記送信データの送信元である前記加盟店端末に前記ネットワークの通信網を介して返信するデータ返信手段を更に備えること」

(2)対比
甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」は、次の構成要件を備えるものである。
「更新された点数情報を、店舗端末35へ通信回線を介して送出する点数通知手段5とを備え、
点数集計手段7は、更新された点数情報を点数通知手段5に送出し」

そこで、「V.本件特許発明1について(1)対比」における検討結果を参酌して本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「点数集計手段7は、更新された点数情報を点数通知手段5に送出し」「更新された点数情報を、店舗端末35へ通信回線を介して送出する点数通知手段5」は本件特許発明2の「前記ポイント加算手段で得られた最新ポイント数データを、前記送信データの送信元である前記加盟店端末に前記ネットワークの通信網を介して返信するデータ返信手段」に相当し、甲1発明は、上記限定事項1に相当する構成を備えているといえるから、両者は、上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3でのみ相違し、他に相違点はない。

(3)当審の判断
上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3については、上記「V.本件特許発明1について(2)当審の判断」で検討したとおりである。

また、本件特許発明2による効果も、甲1発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VII.本件特許発明3について
(1)本件特許発明3
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項に加え、次の発明特定事項を限定したものである。
「前記加盟店端末に入力されたポイント還元率変更データに基づいて、前記加盟店ファイルに格納された前記ポイント還元率データを変更する還元率データ変更手段を更に備えること」

(2)対比
「V.本件特許発明1について(1)対比」における検討結果を参酌して本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3に加えて次の相違点4で相違し、他に相違点はない。

(相違点4)
本件特許発明4が「前記加盟店端末に入力されたポイント還元率変更データに基づいて、前記加盟店ファイルに格納された前記ポイント還元率データを変更する還元率データ変更手段を更に備える」のに対して、甲1発明では「店舗端末35の端末操作に応じて点数付与率をランダムに発生させることができる」点。

(3)当審の判断
上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3については、上記「V.本件特許発明1について(2)当審の判断」で検討したとおりである。
そこで、相違点4について検討する。
甲第1号証には、点数付与率(ポイント還元率データ)を変更することについて、「処理装置1内に購入条件テーブル14を備え,管理者端末11から複数の購入条件を随時,任意に設定することができるようになっている。購入条件には,各々点数付与率および被点数算出情報が対応づけられている。」(記載事項(カ))と記載され、甲第1号証には、管理者端末11からとはいえ、購入条件テーブル14(加盟店ファイル)に格納された点数付与率(ポイント還元率データ)を変更することが記載されている。
そして、甲1発明において「店舗端末35の端末操作に応じて点数付与率をランダムに発生させる」のは、付加的に「購買行為を娯楽化し,顧客の購買意欲を向上させる」(記載事項(ケ))ためであるから、そのような付加的事項を考慮しなければ、管理者端末11の有する上記機能を店舗端末35に持たせて、本件特許発明3の相違点4に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項である。
してみると、本件特許発明3の相違点4に係る発明特定事項は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得る程度のものといえる。

また、本件特許発明3による効果も、甲1発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VIII.本件特許発明4について
(1)本件特許発明4
本件特許発明4は、本件特許発明1の発明特定事項に加え、次の発明特定事項(以下、「限定事項2」という。)を限定したものである。
「複数の前記ネットワークを接続して、これらのネットワークにおけるポイント数データを統合管理すること」

(2)対比
甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」は、次の構成要件を備えるものである。
「点数集計手段7は、ひとつの店舗グループが管理する点数を、顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に、所定のレートで変換し、複数種類の点数サービスを共通化させることができる」

甲1発明の「店舗グループ」は「ポイントサービスのネットワーク」と解されるから、「ひとつの店舗グループが管理する点数を、顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に、所定のレートで変換し、複数種類の点数サービスを共通化させること」は、「複数のネットワークにおけるポイント数データを統合管理すること」といえ、この場合、「複数の前記ネットワークを接続して」いることは明らかである。
してみると、甲1発明は、上記限定事項2に相当する構成を備えているから、「V.本件特許発明1について(1)対比」における検討結果を参酌して本件特許発明4と甲1発明とを対比すると、両者は、上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3でのみ相違し、他に相違点はない。

(3)当審の判断
上記「V.本件特許発明1について(1)対比」であげた相違点1?3については、上記「V.本件特許発明1について(2)当審の判断」で検討したとおりである。

また、本件特許発明4による効果も、甲1発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明4は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、仮に甲1発明が、限定事項2に相当する構成を備えておらず、該限定事項2が新たな相違点5となる場合の容易想到性についても検討する。
甲第6号証の記載(記載事項(ミ)、(ム))から、「複数のネットワークを接続すること」は本件特許出願前に周知であったといえるとともに、該周知技術を甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」に適用し、複数のポイントサービスのネットワークと接続したものとすることに格別の困難性は見出せない。
ところで、甲1発明は「ひとつの店舗グループが管理する点数を、顧客の要望に応じて他の店舗グループが管理する点数に、所定のレートで変換し、複数種類の点数サービスを共通化させる」ものであるから、上記周知技術を甲1発明の「サービスポイントの点数管理システム」に適用するに当たり、「複数のネットワークにおけるポイント数データを統合管理する」ようにすることは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項である。
そして、本件特許発明4による効果も、甲1発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。
してみると、仮に甲1発明が、上記限定事項2に相当する構成を備えていないとしても、本件特許発明4は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

11 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?3は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)に基いて当業者が容易にすることができたものであり、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)乃至は甲第1号証に記載された発明(甲1発明)及び周知技術に基いて当業者が容易にすることができたものであるから、本件特許発明1?4は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-25 
結審通知日 2010-05-28 
審決日 2010-06-09 
出願番号 特願平8-274856
審決分類 P 1 113・ 121- Z (G07G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 黒石 孝志
亀丸 広司
登録日 1999-08-13 
登録番号 特許第2965518号(P2965518)
発明の名称 ポイント集計システム  
代理人 西出 眞吾  
代理人 須郷 知徳  
代理人 佐藤 睦  
代理人 升永 英俊  

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