• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1236185
審判番号 不服2008-6458  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-14 
確定日 2011-05-02 
事件の表示 特願2002- 97872「固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-297692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年3月29日の出願であって、平成19年8月30日付け拒絶理由通知に応答して同年11月5日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年11月5日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】箔抵抗率が0.27?0.7mΩの平滑なアルミニウム箔の片面または両面に、2μm?0.2μmの長さ範囲で自己相似となるアルミニウムまたは酸化アルミニウムからなる微粒子の凝集物が付着した電極箔と、セパレータとを巻回し、このセパレータで導電性ポリマーからなる固体電解質を保持した固体電解コンデンサ。」

3.引用刊行物に記載された発明
本願の出願日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平11-317331号公報(以下「引用例」という。)には、「高表面積フォイル電極の製造法」(発明の名称)に関して、図1A及び図1Bとともに、以下の事項が記載されている。
なお、以下の検討において、各引用箇所の下線は当審で付した。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解コンデンサ用の電極、厳密には、表面積を増大させた、そのような電極、特に陽極および陰極を製造する方法、およびそのように製造されたそれらの電極に関する。」

「【0018】本発明は、従来のエッチングにおけるような、材料を除去することによってではなく、材料を付加することによってバルブ金属フォイルの表面積を増大させるので、本発明は、電解コンデンサ用の電極などの用途に厚さのより薄いフォイルを使用することができる。」

「【0025】
【実施例】例1:フラクタル状アルミニウム表面の蒸着アルミニウムは、0.002トル?0.005トルの圧力の窒素と2×10^(-4)トル?5×10^(-4)トルの圧力の酸素との無水雰囲気内で300℃の温度に保持された純粋アルミニウムフォイル基材上に、熱抵抗性蒸着によって、蒸着させられた。この蒸着速度は約300Å/sec.であった。
【0026】図1Aおよび図1Bは、そのように作製されたフラクタル状アルミニウム表面の顕微鏡写真である。この表面は、フラクタル状不活性金属表面に対する米国特許第5,571,158号でボルツ(Bolz)その外によって報告されたような、カリフラワー状組織を有する。この「カリフラワーヘッド」は直径が約2ミクロンである。その「花蕾」は直径が約0.2ミクロンであるので、その表面は、少なくとも0.2ミクロン?2ミクロンの距離スケールで自己相似となる。これは表面の外観によって確認される。例えば、黒くて輝いている(鏡のように反射する)アレグレット(Allegret)その外の電極またはニューマン(Neumann)その外の電極などの、50%よりも高い酸化アルミニウム含有量を有する電極と異なり、この表面は、ブラックマット(分散的に反射する)であり、この表面が可視光の波長の長さスケールのフラクタル状構造体を有することを示す。
【0027】以下の表はこれらの表面の1つのEDS基本分析である。
【0028】
【表1】(ここでは、表1は当審により省略された。)
これは化学量論に従い、30.3%のアルミニウムはAl_(2)O_(3)の形式であり、69.7%はアルミニウム金属であった。
【0029】電解コンデンサ用の陽極を造るために、アルミニウムが約3ミクロン?約6ミクロンの厚さに蒸着されることが好ましい。」

「【0031】図2の陰極は、アルミニウムフォイル基材の片面のみにアルミニウムを蒸着させることによって作製された。アルミニウムがこれらの基材の両面に蒸着された場合、静電容量は2倍となっていたであろう。」

そして、「【0018】本発明は、従来のエッチングにおけるような、材料を除去することによってではなく、材料を付加することによってバルブ金属フォイルの表面積を増大させるので、本発明は、電解コンデンサ用の電極などの用途に厚さのより薄いフォイルを使用することができる。」という記載から、「アルミニウムフォイル基材」がエッチングされているような材料ではなく、平滑であることは明らかである。

以上から、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「平滑なアルミニウムフォイル基材の片面または両面に、0.2ミクロン?2ミクロンの距離スケールで自己相似となる、30.3%のアルミニウムはAl_(2)O_(3)の形式であり、69.7%はアルミニウム金属からなる蒸着アルミニウムが蒸着した電極を有する電解コンデンサ。」

4.対比
以下に本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「アルミニウムフォイル基材」、「Al_(2)O_(3)」、「アルミニウム金属」、「蒸着アルミニウム」、「電極」は、それぞれ、本願発明の「アルミニウム箔」、「酸化アルミニウム」、「アルミニウム」、「微粒子の凝集物」、「電極箔」に相当する。

そうすると、両者は、
「平滑なアルミニウム箔の片面または両面に、2μm?0.2μmの長さ範囲で自己相似となるアルミニウムまたは酸化アルミニウムからなる微粒子の凝集物が付着した電極箔を有する電解コンデンサ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「箔抵抗率が0.27?0.7mΩの平滑なアルミニウム箔」を用いているのに対して、引用発明は、「アルミニウムフォイル基材」の箔抵抗率が特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は、「電極箔と、セパレータとを巻回し、このセパレータで導電性ポリマーからなる固体電解質を保持した固体電解コンデンサ」であるのに対して、引用発明は、「電極を有する電解コンデンサ」であって、セパレータ等の構成が特定されていない点。

5.判断
(5-1)相違点1について
電解コンデンサを作製する場合に、所望の性能となるように、電極箔の箔厚を最適化したり、箔抵抗率を最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、また、本願の明細書には、「【0021】なお、この発明で用いる電極箔は、測定の結果、箔抵抗率が0.27?0.7mΩとなったものが好適であり、更には0.34?0.55mΩの電極箔を用いると更に好適な結果が得られたが、これに限定されるものではない。」と記載されるように、箔抵抗率が0.27?0.7mΩであることが、顕著な効果をもたらすものでもないことから、引用発明の「アルミニウムフォイル基材」の箔抵抗率を「0.27?0.7mΩ」にすることは当業者が適宜なし得た事項である。

さらに、本願の出願日前に日本国内において頒布され、拒絶査定の理由において引用された刊行物である特開2000-331894号公報には、「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用の陽極箔の化成設備で使用される、化成用電源装置の制御方法に関するものである。」、「【0015】 【実施例】〔コンピュータによるシュミレーション結果〕まず、化成設備の最終段をコンピュータによるシミュレーションによって確認した。」、「【0017】化成箔の長さを28m、化成箔の幅を50cm、箔抵抗R1を0.6mΩ、液抵抗R2はアジピン酸アンモニウムを使用したと想定して0.17Ω、換算容量Caを300A・秒/V、化成用の電源装置の最大電流を1000Aとし、化成設備のA点より、エッチング箔が化成槽に進入し、順次化成されながらC点に到達する工程を想定した。その結果を図5に示す。」と記載されるように、コンピュータによるシミュレーションにおいて、エッチング箔ではあるが、アルミニウムからなる陽極箔の箔抵抗を0.6mΩとして設定しており、0.6mΩは0.27?0.7mΩに含まれることから、0.27?0.7mΩという箔抵抗率は、シミュレーションで想定されるような、通常取り得る値にすぎない。

(5-2)相違点2について
「電極箔と、セパレータとを巻回し、このセパレータで導電性ポリマーからなる固体電解質を保持した固体電解コンデンサ」は、例えば、本願の出願日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2001-358040号公報に、「【請求項1】弁金属からなる陰極箔と表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、前記陰極箔と陽極箔の間に導電性ポリマーからなる電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて、 前記陰極箔の表面に化成皮膜を形成し、さらにその上の一部に金属窒化物からなる皮膜を形成し、前記導電性ポリマーが前記化成皮膜と金属窒化物に接していることを特徴とする固体電解コンデンサ。」と記載されるように、当業者における周知技術であるので、引用発明の「蒸着アルミニウムが蒸着した電極を有する電解コンデンサ」に対して、上記周知技術を用いることで、本願発明のように「電極箔と、セパレータとを巻回し、このセパレータで導電性ポリマーからなる固体電解質を保持した固体電解コンデンサ」とすることは当業者が容易になし得た事項である。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例に記載された発明(引用発明)及び当業者における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-22 
結審通知日 2011-02-23 
審決日 2011-03-10 
出願番号 特願2002-97872(P2002-97872)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸本 泰広  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 小野田 誠
高橋 宣博
発明の名称 固体電解コンデンサ  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ