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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1236193
審判番号 不服2010-602  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2011-05-02 
事件の表示 特願2005-46506号「焼却灰の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年9月7日出願公開、特開2006-234209号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年2月23日の出願であって、平成21年10月21日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月27日)、これに対し、平成22年1月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年1月13日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項2について、本件補正前に「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを空気から分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mm の微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成すると共に、上記含炭ブリケット(2)中の上記微粉コークス(4)の含有量を全体の1重量%乃至4重量%に設定し、次に、上記含炭ブリケット(2)を、追加塊コークス(5)と共に、溶融炉(1)内へ投入して、上記焼却灰(3)を溶融しつつ上記微粉コークス(4)の含有量を増大させながら上記含炭ブリケット(2)を下方のベッドコークス層(19)へ降下移動させて、該ベッドコークス層(19)の上層部近傍(Z)にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス(9)及び追加塊コークス(5)の燃焼と共に、上記焼却灰(3)を溶融して溶融スラグ(S)として出滓させることを特徴とする焼却灰の処理方法。」とあったものを「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを、サイクロンによって粗微粉コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、上記分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの上記粗微粉コークスを、混練用の微粉コークス(4)として、該微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成すると共に、上記含炭ブリケット(2)中の上記微粉コークス(4)の含有量を全体の1重量%乃至4重量%に設定し、次に、上記含炭ブリケット(2)を、追加塊コークス(5)と共に、溶融炉(1)内へ投入して、上記焼却灰(3)を溶融しつつ上記微粉コークス(4)の含有量を増大させながら上記含炭ブリケット(2)を下方のベッドコークス層(19)へ降下移動させて、該ベッドコークス層(19)の上層部近傍(Z)にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス(9)及び追加塊コークス(5)の燃焼と共に、上記焼却灰(3)を溶融して溶融スラグ(S)として出滓させることを特徴とする焼却灰の処理方法。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、含炭ブリケット(2)について、本件補正前の請求項2に「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを空気から分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成する」こととあったものを「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを、サイクロンによって粗微粉コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの粗微粉コークスを、混練用の微粉コークス(4)として、該微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成する」ことと限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭64-56184号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「2.特許請求の範囲
焼却灰をブリケットにして溶融炉に装入し、コークスにより加熱溶融して処理する方法において、前記ブリケットに予め粉粒状コークスを含有させることを特徴とする焼却灰の溶融処理方法。」(第1ページ左下欄第4行?同第8行。下線は当審にて付与。以下同様。)
b)「(産業上の利用分野)
本発明は、例えば都市ゴミや石炭等の固体可燃物の焼却灰をコークスにより加熱溶融して処理する方法に関するものである。
(従来の技術およびその問題点)
焼却灰の溶融処理方法として、焼却灰をセメントや水等のバインダーで固化してブリケットとし、これをコークスと共に竪型溶融炉で溶融処理する方法が従来から行なわれている。
かかる従来の溶融処理方法に於いて使用し得るコークスは例えば20?100mm程度の塊コークスであって、価格が高く、例えば1?5mm程度の安価な粉粒状コークスは使用することができない。
これは、もし粉粒状コークスを使用すると、[1]([1]は○に1)炉内のコークスベツド中の空隙率が小さくなって炉内圧が高くなり、従って送風ブロワ-の吐出圧を上げなければならない、[2]([2]は○に2)コークス粒子が流動層を形成すると、炉を安定に操業できない、[3]([3]は○に3)流動層を形成しない場合に於いても、粉状コークスが炉内で飛散する等々の不具合を生じるからである。
本発明は以上の点に鑑みて創案されたもので、即ち焼却灰の溶融処理に際して安価な粉粒状コークスを使用し得るようにすることを目的とするものである。」(第1ページ左下欄第10行?同右下欄第14行)
c)「(問題点を解決するための手段)
前述した目的を達成するために、本発明は、焼却灰をブリケットにして溶融炉に装入し、コークスにより加熱溶融する方法において、前記ブリケットに予め粉粒状コークスを含有させることを要旨とするものである。
(作用)
本発明は粉粒状コークスを含有させたブリケット1を、例えば図に示すような竪型溶融炉2に装入して、炉2内の塊コークス3の燃焼により加熱溶融するのであるが、この際、ブリケット1内に含有している粉粒状コークスも燃焼して焼却灰の加熱溶融に供される。従ってその分だけ塊コークス3の量を低減することができる。そして、粉粒状コークスはブリケット1内に含有させた状態で供給するので、コークスベッドの空隙率を小さくしたり、流動層を形成したりすることもなく、また飛散することもない。」(第1ページ右下欄第14行?第2ページ左上欄第12行)
d)「(実施例)
焼却灰100に対して、重量比100:10:8で、夫々5mm以下の粉粒状コークスとセメントを加え、これに適量の水を加えて固化して45mm×30mm×20mmのブリケットを作り、これを20?50mmの塊コークスと共に溶融した。焼却灰100を溶融するのに要した塊コークスは重量比で100:10であり、これは粉粒状コークスを含有していない従来のブリケットの場合に必要な量の略半分であった。
(発明の効果)
本発明は以上の通り、焼却灰をブリケットにして溶融炉に装入し、コークスにより加熱溶融して処理する方法において、該ブリケットに予め粉粒状コークスを含有させたので、焼却灰の溶融に必要な塊コークスの量をブリケットに含まれる粉粒状コークスの量だけ低減することができ、塊コークスと粉粒状コークスの大きな価格差により、ランニングコストを大きく低減し得るという効果がある。そして粉粒状コークスはブリケットに含有した状態で供給するのであるから、コークスベッド中の空隙率を小さくしたり、流動層を形成したり、あるいは飛散したりという操業上の不都合も発生しないという効果がある。」(第2ページ左上欄第13行?同右上欄第16行)
e)上記c、dの記載事項及び図面の図示内容によると、ブリケット1は、例えば、図に示すような竪型溶融炉2に装入されるものであることが記載され、竪型溶融炉2が投入口を具備すること、及び、竪型溶融炉2内の塊コークス3からなる層の上方にブリケット1と塊コークス3とを混合した層が収納されることが図示されている。
そして、塊コークス3からなる層がコークスベッドを形成することは明らかである。
したがって、刊行物には、ブリケット1と塊コークス3とを竪型溶融炉2に投入して、竪型溶融炉2内のコークスベッドを形成する塊コークス3からなる層の上方にブリケット1と塊コークス3とを混合した層を形成することが示されている。
f)上記c、dの記載事項及び図面の図示内容によると、焼却灰が加熱溶融されること、竪型溶融炉2が底部に出口を具備することが図示されていることから、刊行物には、加熱溶融された焼却灰の出口を具備することが図示されているといえる。

上記a?dの記載事項、上記e、fの認定事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「焼却灰の溶融処理に際して安価な粉粒状コークスを使用し得るようにすることを目的として、
5mm以下の粉粒状コークスを予めブリケットに含有させ、
焼却灰100に対して、重量比100:10:8で、夫々5mm以下の粉粒状コークスとセメントを加え、これに適量の水を加えて固化してブリケット1を作り、
コークスベッドを形成する塊コークス3からなる層の上方に、ブリケット1と塊コークス3とを竪型溶融炉2に投入して、ブリケット1と塊コークス3とを混合した層を形成し、
粉粒状コークスはブリケット1内に含有させた状態で供給されるので、コークスベッドの空隙率を小さくしたりすることなく、炉2内の塊コークス3の燃焼により、ブリケット1内に含有している粉粒状コークスも燃焼してブリケット1の焼却灰が加熱溶融に供され 、
加熱溶融された焼却灰の出口を具備する
焼却灰の溶融処理方法。」

3.対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「粉粒状コークスを予めブリケットに含有させ」ることは、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「粗微粉コークスを、混練用の微粉コークスと」することに相当し、以下同様に、
「焼却灰100に対して、重量比100:10:8で、夫々5mm以下の粉粒状コークスとセメントを加え、これに適量の水を加えて固化してブリケット1を作」ることは「微粉コークスと、焼却灰と、を予め混練して含炭ブリケットを形成する」ことに、
「ブリケット1と塊コークス3とを竪型溶融炉2に投入」することは「含炭ブリケットを、追加塊コークスと共に、溶融炉内へ投入」することに、
「粉粒状コークスはブリケット1内に含有させた状態で供給されるので、コークスベッドの空隙率を小さくしたりすることなく、炉2内の塊コークス3の燃焼により、ブリケット1内に含有している粉粒状コークスも燃焼してブリケット1の焼却灰が加熱溶融に供され」ることは、炉2内の塊コークス3がコークスベッドを形成するものとブリケット1と混合状態で投入されるものとからなるものであり、そして、コークスベッドに到達するまでの間に、灰が外周部から徐々に溶融されるものであることは、例えば、本願明細書において、従来技術として提示された特許3405951号の段落【0010】?【0012】や、特開平10-148321号公報の段落【0020】、【0021】に記載されているように本願出願前の技術常識であり、また、灰の溶融に伴って、粉粒状コークスは、徐々に燃焼されるものであることから、「焼却灰を溶融しつつ微粉コークスの含有量を増大させながら含炭ブリケットを下方のベッドコークス層へ降下移動させて、該ベッドコークス層の上層部近傍にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス及び追加塊コークスの燃焼と共に、焼却灰を溶融」することに、
「加熱溶融された焼却灰の出口を具備する」ことは「焼却灰を溶融して溶融スラグとして出滓させること」に、
「焼却灰の溶融処理方法」は「焼却灰の処理方法」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「5mm以下の粉粒状コークス」と、本件補正発明の「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを、サイクロンによって粗微粉コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、上記分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの上記粗微粉コークス」とは、前者における「粉粒状コークス」は、粉状や粒状のコークスを含むものであり、「5mm以下」は、「0.15mm乃至1.0mm」を含むものであるから、両者は、「粒径0.15mm乃至1.0mmの粗微粉コークス」である点で共通する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「0.15mm乃至1.0mmの粗微粉コークスを、混練用の微粉コークスとして、該微粉コークスと、焼却灰と、を予め混練して含炭ブリケットを形成し、
次に、上記含炭ブリケットを、追加塊コークスと共に、溶融炉内へ投入して、焼却灰を溶融しつつ微粉コークスの含有量を増大させながら含炭ブリケットを下方のベッドコークス層へ降下移動させて、該ベッドコークス層の上層部近傍にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス及び追加塊コークスの燃焼と共に、焼却灰を溶融して、溶融スラグとして出滓させる、
焼却灰の処理方法。」

[相違点1]
混練用の微粉コークスとして、本件補正発明では、灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを、サイクロンによって粗微粉コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの粗微粉コークスを用いるのに対して、刊行物に記載された発明では、5mm以下の粉粒状コークスを用いる点。

[相違点2]
本件補正発明では、含炭ブリケット中の微粉コークスの含有量を全体の1重量%乃至4重量%に設定したのに対して、刊行物に記載された発明では、焼却灰100に対して、重量比100:10:8で、夫々5mm以下の粉粒状コークスとセメントを加え、これに適量の水を加えて固化してブリケットを作る点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
焼却灰の回収処理の技術分野において、赤熱コークスを乾式消火させる際に生じる粒径0.15mm?1.0mmを含む粉コークスを、集塵装置により回収して、再利用のために造粒することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開昭56-36593号公報の特に第1表や、特開昭59-39333号公報の特に実施例1、第2表を参照。以下「周知の技術事項1」という。)。
そして、気流中に含まれる微粉を回収処理する技術分野において、比較的大きい径の粉をサイクロンにより回収後、比較的小さい径の粉を別の集塵手段により回収することは、本願出願前に普通に行われている技術事項である(例えば、特開2003-190838号公報の段落【0002】や、特開昭63-61085号公報の従来の技術の項を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
また、気流中に含まれる微粉を回収処理する技術分野において、集塵手段として集塵バックを用いることも、本願出願前における技術常識である。
さらに、本件補正発明において、粒径が0.15mm乃至1.0mmの平均粒径を有する粗微粉コークスを分離回収することに臨界的意義を確認することはできない。
これらのことから、粉粒状コークスを再利用のために造粒することを目的として、刊行物に記載された発明に上記周知の技術1、2及び上記技術常識を適用して、粉粒状コークスとして、灼熱状態の塊コークスを熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散する微細なコークスからサイクロンによって空気から分離回収した、平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの粉粒状コークスを用いること、かつ、サイクロンによって粉粒状コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、サイクロンによって分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの粉粒状コークスを粉粒状コークスとして用いることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2について
刊行物に記載された発明において、ブリケット1中の粉粒状コークスの含有量を全体の何%に設定するのかは、塊コークス3やコークスベッドの竪型溶融炉2内における収納状態、ブリケット1の成型性、ブリケット1と塊コークス3との混合割合、ブリケット1と塊コークス3の燃焼温度、燃焼圧力、燃焼雰囲気といった燃焼条件などの諸条件を総合勘案し、実験等を通して当業者が適宜決定し得る事項である。
しかも、本件補正発明において、含炭ブリケット中の微粉コークスの含有量を全体の1重量%乃至4重量%に設定したことに臨界的意義を確認することはできない。
したがって、刊行物に記載された発明において、焼却灰100に対して、重量比100:10:8で粉粒状コークスとセメントを加えることに換えて、ブリケット1中の粉粒状コークスの含有量を全体の1?4重量%とすることは、当業者にとっての格別の創意工夫が見い出せない。
本件補正発明の奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

(3)小括
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年1月13日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年4月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを空気から分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mm の微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成すると共に、上記含炭ブリケット(2)中の上記微粉コークス(4)の含有量を全体の1重量%乃至4重量%に設定し、次に、上記含炭ブリケット(2)を、追加塊コークス(5)と共に、溶融炉(1)内へ投入して、上記焼却灰(3)を溶融しつつ上記微粉コークス(4)の含有量を増大させながら上記含炭ブリケット(2)を下方のベッドコークス層(19)へ降下移動させて、該ベッドコークス層(19)の上層部近傍(Z)にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス(9)及び追加塊コークス(5)の燃焼と共に、上記焼却灰(3)を溶融して溶融スラグ(S)として出滓させることを特徴とする焼却灰の処理方法。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明における含炭ブリケット(2)について、「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを、サイクロンによって粗微粉コークスを、及び、集塵バッグによって細微粉コークスを、各々、空気から分離回収し、分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの粗微粉コークスを、混練用の微粉コークス(4)として、該微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成する」こととあったものを「灼熱状態の塊コークスが熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される際に、空気中に揮散した微細なコークスを空気から分離回収して得られる平均粒径が0.15mm乃至1.0mmの微粉コークス(4)と、焼却灰(3)と、を予め混練して含炭ブリケット(2)を形成する」こととその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-14 
結審通知日 2011-02-22 
審決日 2011-03-07 
出願番号 特願2005-46506(P2005-46506)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F23G)
P 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山城 正機  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
長崎 洋一
発明の名称 焼却灰の処理方法  
代理人 中谷 武嗣  

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