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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1236235
審判番号 不服2007-27400  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-04 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2002-146541「洗浄処理液、着色画像の形成方法、カラーフィルターの製造方法、及び、カラーフィルター付きアレイ基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月28日出願公開、特開2003-336097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年5月21日の出願であって、平成17年3月1日に手続補正書が提出され、平成19年5月16日付けで拒絶理由が通知され、平成19年7月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成19年8月29日付けで拒絶査定がされ、平成19年10月4日に拒絶査定不服審判が請求され、平成19年10月31日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書が提出され、平成22年5月28日付けで審尋がされたところ、何ら回答がされなかったものである。

第2 平成19年10月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成19年10月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】 アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物を含有し、加圧条件下で被処理対象物に付与される洗浄処理液であって、アルキルエーテル系界面活性剤が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする洗浄処理液。
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数10?18のアルキル基を表し、R^(2)は水素原子及びCH_(3)の少なくともいずれかを表す。nは5?12の整数である。
【請求項2】 液圧による加圧の圧力が、0.01?100MPaである請求項1に記載の洗浄処理液。
【請求項3】 加圧が、ブラシ、スポンジのいずれかの加圧手段により行われる請求項1に記載の洗浄処理液。
【請求項4】 被処理対象物が、基板上に、少なくとも、感光層及び酸素遮断層を順次積層してなる請求項1から3のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項5】 塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び、メタケイ酸カリウムの少なくともいずれかの無機アルカリ化合物である請求項1から4のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項6】 塩基性化合物の、洗浄処理液における含有量が、0.01?50質量%である請求項1から5のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項7】 アルキルエーテル系界面活性剤の、洗浄処理液における含有量が、0.01?50質量%である請求項1から6のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項8】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層を基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有する着色画像の形成方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とする着色画像の形成方法。
【請求項9】 感光層が、酸価が20?300の樹脂、顔料、光重合性不飽和結合を分子内に1以上含有するモノマー、及び、光重合開始剤を含有する着色画像形成材料により形成される請求項8に記載の着色画像の形成方法。
【請求項10】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層を基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有し、同一基板上に複数の着色画像を形成するカラーフィルターの製造方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項11】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層をTFTアレイ基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有し、同一TFTアレイ基板上に複数の着色画像を形成するカラーフィルター付アレイ基板の製造方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とするカラーフィルター付アレイ基板の製造方法。」
を、
「【請求項1】 基板、または感光層を用いてパターンを形成した基板を洗浄する洗浄処理液であって、アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物を含有し、加圧条件下で被処理対象物に付与され、かつ、前記アルキルエーテル系界面活性剤が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする洗浄処理液。
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数16?18のアルキル基を表し、nは11?12の整数である。
【請求項2】 液圧による加圧の圧力が、0.01?100MPaである請求項1に記載の洗浄処理液。
【請求項3】 加圧が、ブラシ、スポンジのいずれかの加圧手段により行われる請求項1に記載の洗浄処理液。
【請求項4】 被処理対象物が、基板上に、少なくとも、感光層及び酸素遮断層を順次積層してなる請求項1から3のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項5】 塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び、メタケイ酸カリウムの少なくともいずれかの無機アルカリ化合物である請求項1から4のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項6】 塩基性化合物の、洗浄処理液における含有量が、0.01?50質量%である請求項1から5のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項7】 アルキルエーテル系界面活性剤の、洗浄処理液における含有量が、0.01?50質量%である請求項1から6のいずれかに記載の洗浄処理液。
【請求項8】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層を基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有する着色画像の形成方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とする着色画像の形成方法。
【請求項9】 感光層が、酸価が20?300の樹脂、顔料、光重合性不飽和結合を分子内に1以上含有するモノマー、及び、光重合開始剤を含有する着色画像形成材料により形成される請求項8に記載の着色画像の形成方法。
【請求項10】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層を基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有し、同一基板上に複数の着色画像を形成するカラーフィルターの製造方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項11】 少なくとも、アルカリ現像可能な感光層をTFTアレイ基板上に形成する感光層形成工程、及び、該感光層を露光し現像する露光・現像工程を有し、同一TFTアレイ基板上に複数の着色画像を形成するカラーフィルター付アレイ基板の製造方法であって、更に、請求項1から7のいずれかに記載の洗浄処理液を用いて洗浄処理する洗浄処理工程を有することを特徴とするカラーフィルター付アレイ基板の製造方法。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
補正後の請求項1は、補正前の請求項1の発明を特定する事項である「洗浄処理液」を、「基板、または感光層を用いてパターンを形成した基板を洗浄する洗浄処理液」と限定し、かつ、同発明を特定する事項である「アルキルエーテル系界面活性剤」について、「下記一般式(a)で表される
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数10?18のアルキル基を表し、R^(2)は水素原子及びCH_(3)の少なくともいずれかを表す。nは5?12の整数である。」であったものを「下記一般式(a)
で表される
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数16?18のアルキル基を表し、nは11?12の整数である。」と限定する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。また、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

3 本願補正発明
本願補正発明は次のとおりである。
「基板、または感光層を用いてパターンを形成した基板を洗浄する洗浄処理液であって、アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物を含有し、加圧条件下で被処理対象物に付与され、かつ、前記アルキルエーテル系界面活性剤が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする洗浄処理液。
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数16?18のアルキル基を表し、nは11?12の整数である。」

4 刊行物および刊行物に記載された事項
本願の出願前に頒布された刊行物1?3は以下のとおりであり、以下の事項が記載されている。
刊行物1:特開2002-40653号公報
(原査定における引用文献1)
刊行物2:特公平3-46038号公報
刊行物3:特開2001-64675号公報
(原査定における引用文献3)

(1)刊行物1:特開2002-40653号公報
(1a)「5モル%?80モル%の下記一般式Iの重合性モノマーと5モル%?80モル%のカルボン酸基含有モノマーを必須成分として含む共重合で得られるアルカリ可溶性樹脂と、該アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、10?120重量部の1,2-キノンジアジド化合物を含むことを特徴とするポジ型感光性熱硬化性樹脂組成物。
【化1】・・・)」(特許請求の範囲の請求項1)

(1b)「本発明は、ポジ型感光性熱硬化性樹脂組成物、転写材料、および画像形成方法に関し、特に液晶表示素子等のパネル用スペーサーや絶縁膜、カラーフィルター上の配向分割制御材や平坦化用オーバーコート材等を形成するための樹脂組成物、この樹脂組成物層を有する転写材料、ラミネート方式により前記構造物を製造するのに好適な画像形成方法に関する。」(段落【0001】)

(1c)「A工程に示すように、表面に酸化珪素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス板、ノンアルカリガラス板、石英ガラス板等の公知のガラス板11あるいはプラスチックフィルムなどの透明基板上に、通常の方法で、半導体や抵抗や導体のスパッタリングやCVDにより金属・非金属類の薄膜を形成し」(段落【0016】)

(1d)「(2)ポジ型感光性熱硬化性樹脂層転写材料の転写法」(段落【0055】)

(1e)「(基体上への耐性薄膜パターンの形成方法)形成された塗膜に所定のパターンのマスクを介して、光照射した後、現像液を用いて現像処理して光照射部分を除去することによりパターン形成する。」(段落【0056】)

(1f)「上記感光性熱硬化性樹脂層の現像液としては、アルカリ性物質の希薄水溶液を使用するが、さらに、水と混和性の有機溶剤を少量添加したものを用いても良い。」(段落【0057】)

(1g)「また、上記の水と混和性のある適当な有機溶剤としては、・・・を挙げることができる。・・・現像液には、さらに公知の界面活性剤を添加することができる。」(段落【0058】)

(1h)「露光部分の現像スカムを除去するには、現像液中の回転ブラシで擦るか湿潤スポンジで擦るなどの方法、あるいは現像液を噴霧した際の噴霧圧を利用する方法が好ましい。」(段落【0059】)

(1i)「(実施例1)
[感光性溶液の製造と絶縁層の形成(ハイアパーチャー方式絶縁膜用塗布法]・・・これに種々の穴径を有するテストチャートであるフォトマスクを重ねて、2KW超高圧水銀灯で、600mJ/cm^(2)の露光を行い、1重量%モノエタノールアミン水溶液を用いてスプレイ現像機で現像した。・・・得られた絶縁層画像の解像された穴径は4μmであり、また現像残膜が無く、ホール形状もスロープが23度と良好であった。」(段落【0070】?【0071】)

(2)刊行物2:特公平3-46038号公報
(2a)「1 強アルカリ性剤3?50重量%、HLB3?18の非イオン界面活性剤0.01?30重量%及び次の一般式(I)
・・・
で表わされる可溶化剤0.01?30重量%を含有し、pHが10以上であることを特徴とする強アルカリ性洗浄剤組成物。」(1頁1欄特許請求の範囲)

(2b)「本発明は、高濃度の強アルカリ剤中に、洗浄剤として充分な高濃度の非イオン界面活性剤を可溶化して一液型とした洗浄剤組成物に関する。
水溶性強アルカリ、例えばカセイソーダ、カセイカリ、オルソ珪酸ソーダ、メタ珪酸ソーダは酸の中和、油脂類の鹸化反応等に用いられ、又電気伝導性を有する事からも種々の用途に工業的に有用である。一方、非イオン界面活性剤は浸透性、乳化性、分散性、起泡性を有し、各種洗浄剤の洗浄性の有効成分又は洗浄性向上剤として非常に有用である。また、ガラス、繊維、金属、陶器等硬表面への水の濡れ性向上剤としても有効であり、工業的及び香粧品関係に頻繁に使用されている。そこで無機強アルカリ剤と非イオン界面活性剤とを組み合わせて使用する事により、浸透性、乳化性、分散性、洗浄性、濡れ性に優れた強アルカリ剤として高度な機能を有する有益な組成物を得ることが期待される。」(1頁1欄16行?2欄11行)

(2c)「しかるに従来、強アルカリ剤と非イオン界面活性剤を含む一液性の高濃度水溶液を得ることは非常に困難であつたため、強アルカリ剤と非イオン界面活性剤を併用する必要のある場合、止むなく粉末又はフレーク状組成物等固体品として供給するか、あるいは液体として取扱う場合には二つの液体として供給し使用の際二液を混合する方法を取つているのが現状であつた。」(1頁2欄12?19行)

(2d)「そこで、本発明者らはこのような作用を防ぐべく鋭意検討を重ねた結果、ある特定のカルボン酸の塩を可溶化剤として使用することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至つた。」(2頁3欄15?19行)

(2e)「本発明において用いられる非イオン界面活性剤は・・・などが挙げられる。好ましいものは次の一般式

(式中、R_(1)は炭素数6?18の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数1?12の炭化水素基を置換基として持つ芳香族基をあらわす。pは1?50の整数、好ましくは3?20の整数を表わす)
で表わされるものであつて、且つHLBが3?18のものである。・・・ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、・・・ポリオキシエチレンステアリルエーテル、・・・などが挙げられる。」(2頁4欄37行?3頁5欄23行)

(2f)「本発明において用いられる強アルカリ剤は水溶性の強アルカリ剤であれば良いが、具体例としてはカセイソーダ、カセイカリ、・・・など珪酸ナトリウム;・・・などリン酸ナトリウム類;・・・のアルカノールアミン等である。」(3頁5欄32?39行)

(2g)「また、本発明の強アルカリ性洗浄剤組成物は、高い洗浄性を有するので、特に金属表面の洗浄用として優れており、その中でも特に電解洗浄用アルカリ剤として効果を発揮することができる。」(3頁6欄7?10行)

(3)刊行物3:特開2001-64675号公報
(3a)「(A) 下記一般式(I)?(III) で表される非イオン界面活性剤の1種以上、及び (B)アルカリ剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物。
【化1】

〔式中、R^(1)?R^(6)はそれぞれ炭素数1?22の直鎖のアルキル基を示し、R^(1)とR^(2)の炭素数の和、R^(3)とR^(4)の炭素数の和、及びR^(5)とR^(6)の炭素数の和はそれぞれ5?23である。EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x_(1), x_(2), x_(3), x_(4),x_(5), x_(6), x_(7)及びx_(8)はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x_(1), x_(2),x_(3), x_(4), x_(5)及びx_(8)はそれぞれ1以上の数、x_(1)+x_(2)≧4、x_(3)+x_(4)≧4、x_(5)+x_(6)+x_(7)+x_(8)≧4、x_(6)+x_(7)≧1である。y_(1), y_(2), y_(3), y_(4)及びy_(5)はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y_(1)<x_(1)+x_(2)、0<y_(2)<x_(3)+x_(4)、y_(3)+y_(5)≧0.1 、y_(3)≧0、y_(4)≧0、y_(5)≧0、y_(3)+y_(4)+y_(5)<x_(5)+x_(6)+x_(7)+x_(8)である。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕」(特許請求の範囲の請求項1)

(3b)「本発明は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチック等の硬質表面の洗浄に用いられる硬質表面洗浄剤組成物に関し、詳しくは、低温においても良好な洗浄力を有する硬質表面用アルカリ洗浄剤組成物に関する。」(段落【0001】)

(3c)「また、硬質表面用のアルカリ洗浄剤は一般に濃縮製品として市販されており、洗浄時に水等の水溶性媒体により希釈して使用する。均一透明な濃縮製品を作成する際、高濃度のアルカリ存在下において、溶解しない非イオン界面活性剤を溶解させるために可溶化剤を用いている(特許第1679917号)。」(段落【0004】)

(3d)「本発明の硬質表面洗浄剤組成物は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチックス等を低温で洗浄する際に有効であり、特に製鉄所等における鋼板の連続洗浄、すなわち浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等においてその効果を発揮する。」(段落【0038】)

(3e)「表1及び表2に示す組成を有する本発明及び比較の洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製し、」(段落【0044】)

(3f)「【表1】

」(段落【0046】)

5 対比・判断
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「アルカリ可溶性樹脂と、該アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、10?120重量部の1,2-キノンジアジド化合物を含むことを特徴とするポジ型感光性熱硬化性樹脂組成物」(摘記(1a))及び「転写材料、および画像形成方法に関し」(摘記(1b))、記載されるところ、「ポジ型感光性熱硬化性樹脂層転写材料」を「転写」し、「基体上へ」「耐性薄膜パターン」を「形成」し、「現像」し、「露光部分の現像スカムを除去するには、現像液中の回転ブラシで擦るか湿潤スポンジで擦るなどの方法、あるいは現像液を噴霧した際の噴霧圧を利用する方法が好ましい」こと(摘記(1d)、(1e)、(1h))が、記載されている。
そして、現像液としては、「アルカリ性物質の希薄水溶液を使用」し(摘記(1f))、「現像液には、さらに公知の界面活性剤を添加することができる」(摘記(1g))のであるから、刊行物1には、現像スカムを除去するためアルカリ性物質の希薄水溶液に公知の界面活性剤を添加したものが用いられることが、記載されている。
そうすると、刊行物1には、
「ポジ型感光性熱硬化性樹脂層転写材料を転写し、基体上へ耐性薄膜パターンを形成し、現像し、露光部分の現像スカムを除去するには、アルカリ性物質の希薄水溶液に公知の界面活性剤を添加した現像液を用い、現像液中の回転ブラシで擦るか湿潤スポンジで擦るなどの方法、あるいは現像液を噴霧した際の噴霧圧を利用するなどの方法で行うこと」
が記載されているから、このように用いる現像液の発明、すなわち、
「ポジ型感光性熱硬化性樹脂層転写材料を転写し、基体上へ耐性薄膜パターンを形成し、現像し、露光部分の現像スカムを除去するために用いられる現像液であって、アルカリ性物質の希薄水溶液に公知の界面活性剤を添加した現像液を用い、現像液中の回転ブラシで擦るか湿潤スポンジで擦るなどの方法、あるいは現像液を噴霧した際の噴霧圧を利用するなどの方法で行う、現像液」
という発明(以下、「引用発明Z」という。)が記載されているといえる。

(2)対比
引用発明Zにおける「ポジ型感光性熱硬化性樹脂層転写材料を転写し、基体上へ耐性薄膜パターンを形成し、現像し」たものは、基板に感光層を用いてパターンを形成したものであるから、本願補正発明における「感光層を用いてパターンを形成した基板」に相当し、
本願補正発明において、「加圧条件下で被処理対象物に付与され」とは、本願補正明細書の段落【0011】に「前記加圧の手段としては、特に制限はないが、洗浄処理液自体の液圧により加圧する手段等が挙げられる。前記液圧により加圧する手段としては、例えば、シャワー洗浄、超音波洗浄、超高圧シャワー等が挙げられる。その他、例えば、ブラシ、スポンジ等の部材により加圧する手段がある。」と記載されているから、引用発明Zにおける「回転ブラシで擦るか湿潤スポンジで擦るなどの方法」や「液を噴霧した際の噴霧圧を利用するなどの方法」は、本願補正発明における「加圧条件下で被処理対象物に付与され」に相当し、
引用発明Zにおける「現像液」は、現像スカムを除去するものであるから「洗浄処理液」といえ、
引用発明Zの「アルカリ性物質」が本願補正発明の「塩基性化合物」に相当することは明らかであり、両者ともに、「洗浄処理液」として、塩基性化合物と界面活性剤を含む液を用いるものである。
そうすると、両者は、
「感光層を用いてパターンを形成した基板を洗浄する洗浄処理液であって、界面活性剤及び塩基性化合物を含有し、加圧条件下で被処理対象物に付与されることを特徴とする洗浄処理液」
である点で一致し、
(i)塩基性化合物とともに用いられる「界面活性剤」が、本願補正発明においては、「アルキルエーテル系界面活性剤であって、一般式(a)で表されるもの」であるのに対し、引用発明Zにおいては、「公知の界面活性剤」である点、
で、相違する。

(3)判断
ア 相違点(i)について
引用発明Zは、例えば(1c)に摘記したようにガラス板等の硬質表面に適用するものであるところ、ガラス板等の硬質表面を洗浄するのに、アルカリ剤と非イオン界面活性剤とを含有する洗浄液を用いることは、当業者に公知である。
すなわち、刊行物2は、刊行物3の段落【0004】に「特許第1679917号」(摘記(3c))として記載されているものの特許公報であるところ、刊行物2にも刊行物3にも、アルカリ剤と非イオン界面活性剤とを含有する硬質表面に用いる洗浄液について記載されている(摘記(2a)、(2b)、(3a)、(3b)等参照)。
そして、刊行物2には、強アルカリ性剤と非イオン界面活性剤と可溶化剤を含有する洗浄剤組成物が記載され(摘記(2a))、洗浄対象には、ガラス、金属、陶器等の硬質表面が含まれ(摘記(2b))、ここで可溶化剤は、強アルカリ性剤と非イオン界面活性剤とを溶解するために用いるものであるから(摘記(2c)、(2d))、洗浄における有効成分は強アルカリ剤と非イオン界面活性剤といえる。
ここで、強アルカリ剤としてはカセイソーダ、珪酸ナトリウム、リン酸ナトリウム類、アルカノールアミン等が例示され(摘記(2f))、非イオン界面活性剤としては、「好ましいもの」として、次の一般式(以下、「一般式A」という。)


(式中、R_(1)は炭素数6?18の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数1?12の炭化水素基を置換基として持つ芳香族基をあらわす。pは1?50の整数、好ましくは3?20の整数を表わす)」が挙げられている(摘記(2e))。
この一般式Aに含まれる非イオン界面活性剤をアルカリ剤とともに用いることは、刊行物2に記載されているのであるから、一般式Aで示される非イオン界面活性剤を適宜選択することは、当業者が普通に試みる範囲内のものといえるところ、本願補正発明において特定される「アルキルエーテル系界面活性剤であって、一般式(a)で表されるもの」は、上記一般式Aに包含されるものであるから、引用発明Zにおて、塩基性化合物とともに用いられる「界面活性剤」として、一般式Aに包含されるところの、例えば、「アルキルエーテル系界面活性剤であって、一般式(a)で表されるもの」を選択することは、当業者が普通に試みる範囲内のものといえる。
したがって、引用発明Zにおいて、「界面活性剤」として、「アルキルエーテル系界面活性剤であって、一般式(a)で表されるもの」を用いることは当業者にとって容易である。

イ 本願補正発明の効果について
本願補正発明の奏する効果は、本願補正明細書の段落【0136】に記載されるように、「現像残渣等の汚れの洗浄除去性に優れ、表面の平滑性、エッジ形状が良好で、解像度の高い着色画像を形成可能な洗浄処理液、・・・を提供することができる。」といえるところ、引用発明Zにおいても、具体的には「スプレイ現像機で現像」(摘記(1i))しているから、(1h)に摘記したように「露光部分の現像スカムを除去」しているものであり、そうすることで、「得られた絶縁層画像の解像された穴径は4μmであり、また現像残膜が無く、ホール形状もスロープが23度と良好であった」(摘記(1i))と品質の高いものが得られているのであるから、引用発明Zにおいても、本願補正発明と同様の効果を奏しているものといえる。
また、本願補正明細書の【表2】によれば、一般式(a)において、「R1は炭素数16?18のアルキル基を表し、nは11?12の整数」であるものが、他のアルキルエーテル系界面活性剤を用いたときと比して、格別に優れた効果を奏するとはいえないから、本願補正発明の上記効果は、この本願補正発明において特定されるアルキルエーテル系界面活性剤を用いたことによるものではなく、アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物の両者を含有する洗浄液を用いたことによる効果とせざるを得ず、アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物の両者を含有する洗浄液が、硬質表面等の洗浄において、優れた効果を奏することも、刊行物2、3に記載されるように当業者に公知のことであるから(摘記(2g)、(3c)参照)、この程度のことは当業者の予測しうる範囲のものといえる。
そうしてみると、本願補正発明の奏する効果は、刊行物1?3に記載されたものから当業者が予測しうるものといえる。

ウ まとめ
よって、本願補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)結論
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年10月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成19年7月17日付けの手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、「請求項1に係る発明」(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「アルキルエーテル系界面活性剤及び塩基性化合物を含有し、加圧条件下で被処理対象物に付与される洗浄処理液であって、アルキルエーテル系界面活性剤が、下記一般式(a)で表されることを特徴とする洗浄処理液。
【化1】

但し、一般式(a)において、R^(1)は炭素数10?18のアルキル基を表し、R^(2)は水素原子及びCH_(3)の少なくともいずれかを表す。nは5?12の整数である。」

第4 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、引用文献3には、その請求項1に、一般式(I)?(III) で表される非イオン界面活性剤の1種以上、及び (B)アルカリ剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物が記載され(式は省略)、そして、該一般式(I)で表される非イオン界面活性剤の具体例として、段落[0046]の表1に、該一般式(I)において、R^(1)及びR^(2)のアルキル基の合計炭素数が9?17であって、x1+x2+y1の合計が5?12の範囲内にある化合物が記載されており、それらの非イオン界面活性剤は、本願の請求項1に一般式(a)で表されているアルキルエーテル系界面活性剤に該当するものであることは明らかであるから、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第5 刊行物及び刊行物に記載された事項
原査定で引用された引用文献3は、「第2[理由]4」に「刊行物3」として示したものであり、刊行物3に記載された事項は、「第2[理由]4(3)」に示したとおりである。

第6 対比・判断
1 刊行物3に記載された発明
刊行物3には、(3a)に摘記した硬質表面洗浄剤組成物について記載されるところ、(A) の非イオン界面活性剤としては、一般式(I)?(III) で表される非イオン界面活性剤の1種以上を含有するものであるから、(I) で表される非イオン界面活性剤を含有する場合について検討する。
一般式(I)には、基として、R^(1)、R^(2)、x_(1)、x_(2)、y_(1)が含まれているから、この一般式(I)を包含する場合の硬質表面洗浄剤組成物について書き直す。

すると、刊行物3には、
「(A) 下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤の1種以上、及び (B)アルカリ剤を含有する硬質表面洗浄剤組成物。
【化1】

〔式中、R^(1)?R^(2)はそれぞれ炭素数1?22の直鎖のアルキル基を示し、R^(1)とR^(2)の炭素数の和は5?23である。
EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。
x_(1), x_(2)はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x_(1), x_(2)はそれぞれ1以上の数、x_(1)+x_(2)≧4である。
y_(1)はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y_(1)<x_(1)+x_(2)である。
また、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤」も本願発明の「アルキルエーテル系界面活性剤」も非イオン界面活性剤であり、引用発明の「アルカリ剤」と本願発明の「塩基性化合物」は同じものといえ、引用発明も「洗浄剤組成物(バランス量は脱イオン水である)を調製」(摘記(3e))とされているから洗浄液といえ、本願発明も、特許請求の範囲の請求項4に記載されるように硬質表面を洗浄する場合を含むから、両者は、
「非イオン界面活性剤及び塩基性化合物を含有する、硬質表面洗浄液」
である点で一致し、
(i)「非イオン界面活性剤」が、本願発明においては、「一般式(a)で表されるアルキルエーテル系界面活性剤」であるのに対し、引用発明においては、「一般式(I)で表される非イオン界面活性剤」である点、
(ii)「洗浄液」が、本願発明においては、「加圧条件下で被処理対象物に付与される」ものであるのに対し、引用発明においては、そのような限定はされていない点、
で、一応相違する。

3 判断
相違点について検討する。
ア 相違点(i)について
引用発明において、R^(1)とR^(2)のアルキル基の炭素数の合計は5?23であって9?17の場合を包含し、R^(1)とR^(2)のアルキル基の炭素数の合計が9?17の場合は、本願発明においてR^(1)が「10?18のアルキル基」の場合と同じである。
引用発明において、(EO)基と(PO)基の両方を含むことと、本願発明において、「R^(2)は水素原子及びCH_(3)の少なくともいずれかを表す」ことは、同じことである。
本願発明の「n」は、引用発明の「x_(1)+x_(2)+y_(1)」と同じ意味であるところ、引用発明においては、「x_(1), x_(2)はそれぞれ1以上の数、x_(1)+x_(2)≧4である。0<y_(1)<x_(1)+x_(2)である。」とされているから、本願発明の「nは5?12の整数である」と重複するものである。
また、以上の数値範囲は、(3f)に摘記した【表1】において、No.3?6、10、17とされた例が、引用発明の実施例であって、かつ、本願発明における一般式(a)の条件を満たしていることからも裏付けられる。そして、引用発明においては、基R^(1)とR^(2)が結合した炭素が「2級炭素」となっているが、本願発明においても、本願明細書の段落【0017】に、「R^(1)としては、炭素数1?100のアルキル基であれば、直鎖状であっても分岐状であっても特に制限はない」と記載されていることから、本願発明におけるR^(1)が分岐状の場合、「2級炭素」も包含することになり、この点にも差異はない。
そうすると、本願発明における「一般式(a)で表される」「アルキルエーテル系界面活性剤」と引用発明における「下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤」とに違いはない。
したがって、相違点(i)は、実質的に相違しない。

イ 相違点(ii)について
(3d)に摘記したように、引用発明においても「浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄」を含み、本願明細書の段落【0011】に記載された「加圧の手段としては、特に制限はないが、洗浄処理液自体の液圧により加圧する手段等が挙げられる。前記液圧により加圧する手段としては、例えば、シャワー洗浄、超音波洗浄、超高圧シャワー等が挙げられる。
その他、例えば、ブラシ、スポンジ等の部材により加圧する手段がある。」と重複するものである。
したがって、相違点(ii)も、実質的に相違しない。

4 まとめ
よって、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物3に記載された発明である。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2002-146541(P2002-146541)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C11D)
P 1 8・ 121- Z (C11D)
P 1 8・ 113- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
松本 直子
発明の名称 洗浄処理液、着色画像の形成方法、カラーフィルターの製造方法、及び、カラーフィルター付きアレイ基板の製造方法  
代理人 廣田 浩一  

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