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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1236242
審判番号 不服2008-5560  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2001-381032「電源回路及び磁気記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 4日出願公開、特開2003-188024〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月14日の出願であって、平成19年5月1日付け拒絶理由通知に応答して同年7月4日付けで手続補正がなされたが、平成20年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成19年7月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 ギャップを有する中脚、中脚を挟んで対向する一対の外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する一対の横ビームからなるコア部と、該コア部に捲回されたコイルからなる巻線部とを含む変圧器を備える電源回路において、
前記コイルを、前記コア部の前記中脚に、前記ギャップを囲むように密に捲回したことを特徴とする電源回路。」

3.引用刊行物に記載された発明
本願の出願日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2000-223324号公報(以下「引用例」という。)には、「コンバータトランスおよびそれを用いた電子機器」(発明の名称)に関して、図1とともに、以下の事項が記載されている。
なお、以下の検討において、各引用箇所の下線は当審で付した。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数個の巻溝を有するコイルボビンと、複数の分割巻線で構成されその分割巻線を直列に接続したものに他の分割巻線を並列に接続した一次主巻線と、複数の分割巻線で構成されその分割巻線を直列に接続したものを並列に接続した二次主巻線と、上記巻線を施したコイルボビンに組込まれるギャップを有する磁芯から構成され、この磁芯のギャップに対応するコイルボビンの巻溝に一次主巻線と二次主巻線の分割巻線の1つが積層巻きされ、他のコイルボビンの巻溝に上記一次主巻線と二次主巻線の分割巻線を交互に巻装してなるコンバータトランス。」

「【請求項16】 請求項1?15のいずれか1つに記載のコンバータトランスを電源用として用いた電子機器。」

「【0036】(実施の形態1)以下本発明のコンバータトランスの実施の形態1を図1および図2を用いて説明する。七つの巻溝19a?19gを有するコイルボビン16に一次主巻線11を四つの分割巻線11a,11b,11c,11dとして巻溝19a,19c,19e,19gに巻装して分割巻線11aと11bを直列に、分割巻線11cと11dも直列に接続し、さらに直列に接続した分割巻線11a-11bと11c-11dを並列に接続し、主の出力負荷に供給する二次主巻線13を四つの分割巻線13a,13b,13c,13dとして巻溝19b,19c,19d,19fに巻装して分割巻線13aと13bを直列に、分割巻線13cと13dも直列に接続し、さらに直列に接続した分割巻線13a-13bと13c-13dを並列に接続する。
【0037】磁芯17のギャップ20に相対する巻溝19cには一次主巻線11を四つに分割した分割巻線11bと二次主巻線13を四つに分割した分割巻線13bが配置されることになり、一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bの間には絶縁材料18を挿入する。また補助の出力負荷に供給する二次補助巻線14は巻溝19bに巻装し、もう一方の二次補助巻線15は巻溝19dに巻装して、最後に磁芯17を組み込んで形成されている。なお、一次補助巻線12は一次主巻線11の分割巻線11aを巻装している巻溝19aに巻装されている。
【0038】この実施の形態1によれば、一次主巻線11の分割巻線11a,11b,11c,11dと二次主巻線13の分割巻線13a,13c,13dが交互に構成され、さらに巻溝19cには一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bが巻装されているため、図21のコイルボビンの構造と比較して以下の性能改善が可能となる。
【0039】一次主巻線11の分割巻線11a,11b,11c,11dと二次主巻線13の分割巻線13a,13b,13c,13dとの対向距離を小さくでき、かつ対向面積を大きくできることによって結合が非常に密になり、コンバータトランスの変換効率を高くでき、温度上昇を低くできる。
【0040】特に磁芯17のギャップ20に相対する位置に主巻線である一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bを配置することにより、磁芯17のギャップ20から発生する漏れ磁束21を一次主巻線11と二次主巻線13で吸収させることにより、コンバータトランスの外部に漏れる磁束21は低減でき輻射ノイズ性能も良くなり、かつ漏れ磁束21を熱に変換することにより、他の巻線の発熱を抑えることができる。
【0041】さらに、一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bを同巻溝に巻装した巻溝19cの巻幅を他の巻溝の巻幅より広く形成することにより、漏れ磁束21の吸収を多くでき、よりコンバータトランスの外部に漏れる量を低減でき、かつ漏れ磁束21を熱に変換する量も増えるため、さらに他の巻線の発熱を抑えることができる。」

そして、図1より、「磁芯17のギャップ20」は中脚に有り、「磁芯17」の左端は外脚となっており、また、「磁芯17」は、中脚及び外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する上端部及び下端部を有することは明らかである。

以上から、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ギャップを有する中脚、外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する上端部及び下端部からなる磁芯17と、該磁芯17に組込まれた巻線を施したコイルボビンとを含むコンバータトランスを用いた電源において、
主巻線である一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bを、磁芯17のギャップ20に相対する位置に配置したことを特徴とする電源。」

4.対比
以下に本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「磁芯17」、「コンバータトランス」、「電源」は、それぞれ、本願発明の「コア部」、「変圧器」、「電源回路」に相当する。

また、引用発明の「コイルボビン」に施された「巻線」は、本願発明の「コア部に捲回されたコイルからなる巻線部」に相当する。

さらに、引用発明の「上端部及び下端部」は、本願発明の「一対の横ビーム」と対応しており、両者は、「上端部及び下端部」である点で一致する。

また、引用発明の「主巻線である一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13b」は、本願発明の「コイル」に相当し、引用発明の「ギャップ20に相対する位置に配置した」ことは、引用例に「【0041】さらに、一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bを同巻溝に巻装した巻溝19cの巻幅を他の巻溝の巻幅より広く形成することにより、漏れ磁束21の吸収を多くでき」という記載から、「漏れ磁束21の吸収を多く」するために、「コイル」を「ギャップ20に相対する位置に」幅広く「配置」していることから、本願発明の「ギャップを囲むように捲回した」ことに相当する。

そうすると、両者は、
「ギャップを有する中脚、外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する上端部及び下端部からなるコア部と、該コア部に捲回されたコイルからなる巻線部とを含む変圧器を備える電源回路において、
前記コイルを、前記コア部の前記中脚に、前記ギャップを囲むように捲回したことを特徴とする電源回路。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「コア部」が「ギャップを有する中脚、中脚を挟んで対向する一対の外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する一対の横ビーム」から構成されているのに対して、引用発明は、「外脚」と「横ビーム」の構成が特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は、「コイル」を「ギャップを囲むように密に捲回」しているのに対して、引用発明は、「捲回」の程度が特定されていない点。

5.判断
(5-1)相違点1について
変圧器において、「中脚を挟んで対向する一対の外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する一対の横ビームからなるコア部」は、以下のように、当業者における周知技術である。

(a)本願の出願日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2000-222874号公報には、図3及び図4に、「中脚を挟んで対向する一対の外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する一対の横ビームからなるコア部」が示されている。

(b)本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-64439号公報には、図7(a)、(b)とともに、「【0007】次に、図7(a)、(b)は図5に示した電流共振型コンバータ回路などに用いられている1次巻線コイルL_(11)と2次巻線コイル_(12)が分割配置されたコンバータトランスの断面図及び概要を示した図の一例である。この図で11、12はトランスT_(11)のコアを形成する鉄心であり、基礎鉄心13から中央磁脚14及びその両側に磁脚15、16から形成されるE字型の同一形状からなる抜き打ち鉄心である。」

(c)本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-353627号公報には、図8とともに、「【0010】絶縁コンバ-タトランスPITは、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング出力を二次側に伝送する絶縁コンバータトランスPITは、図8に示すように、例えばフェライト材によるE型コアCR11、CR12を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コアが備えられ、このEE型コアの中央磁脚に対して、分割ボビンB11を利用して一次巻線N1と、二次巻線N2をそれぞれ分割した状態で巻装している。そして、中央磁脚に対しては図のようにギャップGを形成するようにしている。これによって、一次側と二次側とで所要の結合係数による疎結合が得られるようにしている。ギャップGは、E型コアCR11,CR12の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短く形成することで形成することが出来る。」

そして、引用発明の「磁芯17」に上記周知技術を適用して、本願発明のように、「ギャップを有する中脚、中脚を挟んで対向する一対の外脚、及び前記中脚及び前記外脚の上端及び下端をそれぞれ連結する一対の横ビームからなるコア部」とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

(5-2)相違点2について
引用例には、「【0040】特に磁芯17のギャップ20に相対する位置に主巻線である一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13bを配置することにより、磁芯17のギャップ20から発生する漏れ磁束21を一次主巻線11と二次主巻線13で吸収させることにより、コンバータトランスの外部に漏れる磁束21は低減でき輻射ノイズ性能も良くなり、かつ漏れ磁束21を熱に変換することにより、他の巻線の発熱を抑えることができる。」と記載されている。
これは、漏れ磁束21がコイルに吸収されることで、漏れ磁束21を低減できることを示しているのであるから、コイルの巻数が少なければ、コイルの巻線間を通過して漏れ磁束が増加し、コイルの巻線が多ければ、漏れ磁束はコイルに多く吸収され、漏れ磁束が減少することは、当業者であれば直ちに察知し得た事項であり、漏れ磁束を吸収するために、巻線の密度をどの程度とするかは、許容される漏れ磁束や漏れ磁束の巻線による吸収効率等を考慮して、当業者が適宜選択し得る事項であるから、それらを考慮した結果、「コイル」を「密に捲回」することは、当業者が適宜なし得た事項である。

さらに、別の検討をしてみると、変圧器の巻線を密に捲回することは、当業者における周知技術であり、引用発明に記載された「主巻線である一次主巻線11の分割巻線11bと二次主巻線13の分割巻線13b」の巻き方として、上記周知技術を適用して、本願発明のように、「コイル」を「密に捲回」することは当業者が適宜なし得た事項である。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例に記載された発明(引用発明)及び当業者における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-23 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2001-381032(P2001-381032)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 高橋 宣博
西脇 博志
発明の名称 電源回路及び磁気記録再生装置  
代理人 前田 実  
代理人 山形 洋一  
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